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第2部 第1章 ケース オブ ショップ店員・橋姫『恋するあやかし』
二 初めての東京国立博物館
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二
「すごい。まるで外国の舞踏会会場みたい」
舞踏会会場など行ったことなかったが、想像以上の見事な造りに芽依は圧倒された。
大理石の大階段に吹き抜けの格子天井。はめ込まれたガラスからは柔らかな光が館内へと注がれている。
「すごい……」
博物館内は重厚な歴史を感じさせる雰囲気が広がっていた。
とはいえ、それは京都を代表する仏閣のような歴史感ではなく。明治期大正期以降の日本に代表されるような洋風混じりに分類されるような雰囲気であり、開かれた博物館ながらも、とりわけ敷居の高さを感じさせるものがあった。
(こんなに厳かな博物館なら、きちんとした服を着てくればよかった)
芽依は黒の5分袖の黒の薄ニットにグレーのフレアスカート。そしていつでも羽織れるようにブルーのカーディガンを肩にかけつつも地味な配色の装いであった。
対する天童は、ラフな白シャツにくすみブルーのジャケット、そしてくるぶしが見えるアースブルーのパンツを履き、こげ茶色のオックスフォードシューズを履いていた。
さらに天童の憎いところは、ジャケットの袖をまくり上げて、チェック柄の裏地を見せているところだ。
そして鞍馬は白Tに黒のジレを合わせ、ダメージジーンズと黒ブーツといつも通りの格好ながらも、こちらも爽やかな顔立ちで抜け感を持ち合わせていた。
ラフでありながらも、お洒落心を忘れていないあやかし。さらには顔の良さまで持ち合わせていることに、芽依は二人に嫉妬した。
(どうしたら、こなれ感って持てるようになるの?)
上京して4年が経とうとしているというのに、芽依は東京を追い出されかけている。
(こちとら首の皮一枚、なんとか繋がっている人間か……)
すると、天童が気付いて芽依に声をかけた。
「阿倍野芽依、何してんだよ。早く来いよ」
「あ、はい……」
芽依は天童に促され、二人の後を追いかけた。
***
天童は一階左手から始まる展示室へと入っていった。
部屋に並ぶ展示ケースの中には、かつての貴重そうな調度品や彫刻品が展示されている。
だが、天童はそれらに目もくれず、そのまま展示室を闊歩していく。
「あの天童さん、このあたりの展示は見ないんですか?」
「ああ、その辺は小物だ。まあ気が向いたら見ておけ」
(小物?)
そうはいうが、展示ケース前に掲げられたプレートには重要文化財の文字が見て取れた。
(重要文化財って、相当貴重ってことだよね?)
だが、美術品の見方もわからぬ芽依は、天童の後を追いかけるしかなかった。
展示室は非常に広々としていた。そして天井も高い。
話声すら気をつけなければならないほど静かな空間に、作品は厳かな空気を放ちながら展示されている。それはまるで、美術品たちが静かに休息をしているようでもあった。
展示室は部屋同士が繋がっており、部屋が変わると展示物も違うものが展示されていた。
どうやらここは、部屋をめぐりながら日本美術の流れを感じられる配置がされているらしい。
だが天童の足は止まることなく、目指す場所があるのか、靴音を鳴らして闊歩していく。
そして、他の部屋よりもやや狭く薄暗い部屋にはいると、天童はようやくその足を止めた。
そこは、刀剣が陳列されている部屋だった。
天童はとあるガラスケースの前で腕を組んで立ち止まっている。
「見ろ、阿倍野芽依。これが俺の首を切り落とした太刀、国宝童子切安綱だ」
「すごい。まるで外国の舞踏会会場みたい」
舞踏会会場など行ったことなかったが、想像以上の見事な造りに芽依は圧倒された。
大理石の大階段に吹き抜けの格子天井。はめ込まれたガラスからは柔らかな光が館内へと注がれている。
「すごい……」
博物館内は重厚な歴史を感じさせる雰囲気が広がっていた。
とはいえ、それは京都を代表する仏閣のような歴史感ではなく。明治期大正期以降の日本に代表されるような洋風混じりに分類されるような雰囲気であり、開かれた博物館ながらも、とりわけ敷居の高さを感じさせるものがあった。
(こんなに厳かな博物館なら、きちんとした服を着てくればよかった)
芽依は黒の5分袖の黒の薄ニットにグレーのフレアスカート。そしていつでも羽織れるようにブルーのカーディガンを肩にかけつつも地味な配色の装いであった。
対する天童は、ラフな白シャツにくすみブルーのジャケット、そしてくるぶしが見えるアースブルーのパンツを履き、こげ茶色のオックスフォードシューズを履いていた。
さらに天童の憎いところは、ジャケットの袖をまくり上げて、チェック柄の裏地を見せているところだ。
そして鞍馬は白Tに黒のジレを合わせ、ダメージジーンズと黒ブーツといつも通りの格好ながらも、こちらも爽やかな顔立ちで抜け感を持ち合わせていた。
ラフでありながらも、お洒落心を忘れていないあやかし。さらには顔の良さまで持ち合わせていることに、芽依は二人に嫉妬した。
(どうしたら、こなれ感って持てるようになるの?)
上京して4年が経とうとしているというのに、芽依は東京を追い出されかけている。
(こちとら首の皮一枚、なんとか繋がっている人間か……)
すると、天童が気付いて芽依に声をかけた。
「阿倍野芽依、何してんだよ。早く来いよ」
「あ、はい……」
芽依は天童に促され、二人の後を追いかけた。
***
天童は一階左手から始まる展示室へと入っていった。
部屋に並ぶ展示ケースの中には、かつての貴重そうな調度品や彫刻品が展示されている。
だが、天童はそれらに目もくれず、そのまま展示室を闊歩していく。
「あの天童さん、このあたりの展示は見ないんですか?」
「ああ、その辺は小物だ。まあ気が向いたら見ておけ」
(小物?)
そうはいうが、展示ケース前に掲げられたプレートには重要文化財の文字が見て取れた。
(重要文化財って、相当貴重ってことだよね?)
だが、美術品の見方もわからぬ芽依は、天童の後を追いかけるしかなかった。
展示室は非常に広々としていた。そして天井も高い。
話声すら気をつけなければならないほど静かな空間に、作品は厳かな空気を放ちながら展示されている。それはまるで、美術品たちが静かに休息をしているようでもあった。
展示室は部屋同士が繋がっており、部屋が変わると展示物も違うものが展示されていた。
どうやらここは、部屋をめぐりながら日本美術の流れを感じられる配置がされているらしい。
だが天童の足は止まることなく、目指す場所があるのか、靴音を鳴らして闊歩していく。
そして、他の部屋よりもやや狭く薄暗い部屋にはいると、天童はようやくその足を止めた。
そこは、刀剣が陳列されている部屋だった。
天童はとあるガラスケースの前で腕を組んで立ち止まっている。
「見ろ、阿倍野芽依。これが俺の首を切り落とした太刀、国宝童子切安綱だ」
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