ヴァンパイアキング、コンビニでバイトする

山口三

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47・覚悟を決めろ

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 大迫伸二があのモザイク状になってモニターに吸い込まれたのは、宏樹の時やクリーチャーが消える時と同じだ。だからかなりの確率で大迫伸二はゲームの中に逃げたんだろう。

 宏樹の例から見るとゲームの中では時間は止まったままで老いもせず、食べ物も必要なし。ジョンソンソフトウエアに詐欺や横領で訴えられても警察の手は届かない。時効が成立するまで隠れていればいいんだ。
 しかも自分が術者でプログラミングした本人だから記憶が消える事もない。もしかしたら出入りも自由自在かもしれない。

「だが今は隠れたばかりだ。そうそう出ては来ないだろう」

 宏樹の言う通りだ。俺は少し意気込んだ。「じゃあこっちから行くんだな!」

「そうなるが、きっちり作戦を練って行かないとな」


 俺たちは作戦会議に入った!

 と聞こえはいいが、まずゲーム内にどうやって入るかで躓いた。その次に問題になったのはディアンだった。

「えっ、変身出来なくなった?」
「うん・・高田順子の記憶が戻ってからは昼夜関係なく変身が出来なくなっちゃったの」

「それはかなりの痛手だな。直巳じゃほとんど戦力にならん」
「いやっ、それはっ・・それはそうかもしれないけど。リヴァイアサンの時は俺だって活躍したじゃないか!」

「あれはボスを遠距離攻撃できる仕様のお陰だ」
「うっ」

「直巳が弱っちいのは仕方ないとして、私が心配なのは落合さんの魂が戻った時に落合さんが私みたいに普通の人間に戻っちゃうんじゃないかって事。普通の人間がゲーム内に隠れている大迫室長を見つけ出して、その上に魂まで奪う事が出来るのか・・それが心配なの」

 確かに。ディアンにそんな事が起きてるなんて想像もしてなかったから、ダンジョンでクリーチャーに遭遇してもキングが倒せばいいと簡単に考えていた。それに魂がどこに隠されているかも全然分からないんだよな。ヒントは無いのか、ヒントは。

 問題が山積してる上に時間もないときた。俺達大丈夫なんだろうか?




 あれから宏樹とディアンはちょくちょくジョンソンソフトウエアに出向いている様だった。ディアンはこの問題が片付いたら本格的に復帰するようで、今も小さな仕事を手伝っているらしい。宏樹もやっとバイトに代わりの大学生が決まって、本当に人手が足りない時だけコンビニで働いている。

「ほぼ準備は整ったよ」
「準備って大迫伸二と対決する準備の事か?」
「そうだ。ディアンが早野さんに頼んで2、3日会社のパソコンを借りることになったんだ」

「パソコンならうちにもあるじゃないか。宏樹のノーパソもあるしさ」
「ソフトウエア会社のパソコンだからね、性能が段違いなんだよん、直巳君! それに1台じゃないんだから」

 ディアンは大迫伸二がPrizonerのプログラムに改変を施した事を早野に言ったらしい。もちろん宏樹をゾンビ状態にするための改変だとは言ってない。でも早野氏もその道のプロだ。プログラムをチェックして改変されたのは事実だとすぐ分かったらしい。

「それを私と落合さんとで元に戻すと約束したの。それと二人でまたジョンソンに戻る事を条件に貸してくれることになったんだ」

「ディアンは変身出来なくなったから外部からサポートしてくれる」
「決行は明後日、金曜の夜。月曜の朝まで借りてるからそれまでに大迫室長を見つけ出して解決するよ!」

「お、おう。んで俺の役目は? 俺もディアンの手伝いか?」
「何言ってるにゃ。直巳は落合さんと一緒にダンジョンに潜るんだよ」
「そういう事だ。ダンジョンでは何があるか分からん、覚悟を決めておけよ」

 な、なにそれ!? まるでこれから戦場にでも向かう様な言い方して。それに俺の意向は聞かないの? 俺が宏樹と行くことは決定事項なのかよ!

「俺が行ったって役に立たないよ・・」
「そこはディアンちゃんに任せなさい。抜かりはない!」
「会っておきたい人間がいたら今の内だぞ」

 おいおいおい、脅してくれるなぁ。でも会っておきたい人か・・。

「宏樹、美味いカレーの作り方教えてくれよ」


 

 木曜の夕方。

 俺は宏樹に教わってカレーを作った。サラダとスープも用意した。

「よし、米も硬めに炊けた。あとは待つだけだ」

 ピンポ~ン

 来たっ! ダッシュで玄関に向かう俺。ドアを開けるとにこやかな顔のるり子さんが立っていた。

「こんばんわ。カレーをおよばれに来ました」
「るり子さん、突然誘ってすみません」
「いいの。五十嵐君のカレー、楽しみにしてたんだから」

 そんな風に言われると宏樹に手伝って貰って作ったカレーに後ろめたさを感じるが、時間がなかったんだから仕方ないよな。

 リビングを抜けてキッチンに入って来たるり子さんは椅子に座りながら「あら、今日は従兄さんはバイト?」と聞いて来た。

「ええ、そうなんです」

 そうなんです、なんて答えたがこれも事実じゃない。俺がるり子さんと二人にして欲しいと宏樹とディアンに頼んだんだ。ニヤニヤしながらもあの二人は快諾してくれた。


「美味しい! 一口目は甘いのに食べて行くと結構辛さが効いてくるのね。私、辛い方が好きなの!」
「良かったぁ。辛すぎて食べられなかったらどうしようって作ってから気づいちゃって」

 そうなんだよ! 味見してあまりの辛さに宏樹に文句を言ったくらいなんだ。俺は全然平気だけど、るり子さんが辛いのだめだったらどうすんだよ! ってさ。

 カレーについての話題が盛り上がったのは勿論、俺たちは色んな話をした。だが当初の目的を忘れちゃいけない。今日こそ、今日こそ、るり子さんに告白するんだ! 伝えたい言葉を置き去りにして命がけのダンジョンになんか潜れない。

 ああ~でも緊張する。なんて言い出せばいい? いきなり「付き合って下さい」なんて言ったらるり子さんを困らせるに決まってる。

 ぐるぐる考えていて変な沈黙の時間が流れてしまった。るり子さんが椅子から立ち上がった音で俺は我に返った。

「食器は私に洗わせてね。食後のデザートにバウムクーヘンを買って来たから、五十嵐君は飲み物担当で!」

 るり子さんはテキパキと食器をシンクに運んで行く。

「あ、洗うのは‥俺がやります! るり子さんの手が荒れるじゃないですか!」

 食器洗いのスポンジを持ったるり子さんの手を俺は思わず掴んでしまった。



 
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