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姉公認になりました?
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「アンタってお人好しよね」
姉がふとそんな事を言った。
お人好し…そうだろうか、俺は姉に条件を出したんだけど…
姉は呆れて「私のために言った条件でしょ?」と言った。
何も言えず口ごもる。
俺はそんな出来た人間ではない、全部自分のためだ。
全部ゲームの未来を変えるための…
「まぁ良いわ、とりあえず作戦だけど次の作戦会議で詳しく話すとお父様は言っていたわ」
「……うん」
まだトーマを殺す以外何も情報がないらしい。
俺も英雄ラグナロクの影響でどのくらいゲームが変わってるのか分からないから想像も出来ない。
姉は本当に良いのだろうかと心配になる。
父の命令に背き裏切る事になるんだ。
もし姉が罪を償って帰ってきても、帰る場所がなくなる。
姉は分かっているのか、父を…シグナム家を裏切る事がどういう事か。
「姉さん、本当にいいの?トーマを守るって事は」
「…お父様お母様を裏切る事になる?分かってるわよ、そんな事…………いいのよ、もう私は壊れた人形だから」
姉は悲しげにそう言った。
…人形?まるで英雄ラグナロクが言った言葉のようだ。
トーマを操り人形のように英雄ラグナロクは言った。
じゃあもしかして姉はお父様の…
この話はゲームにはなかった、姉のエピソードなんて勿論なかったから…
舞台裏で、こんな悲しい出来事があったなんてと驚いた。
「分かってた、お父様が私を可愛がるのは私という立派な殺人兵器を作るため…だからいろんな悪い事を教わり悪い事だって知りながらお父様の命令に従った…………けど逆らったからもう私はお父様にもお母様にもいらない存在になったのかもね」
「…姉さん」
「良かったわね、可愛がられなくて」
もしかして姉さんが俺に当たりがきつかったのは俺が姉さんより自由に過ごしていたからだろうか。
姉さんが汚い事をしていた裏で俺はきっと部屋でお絵かきなんかして平和に暮らしていた。
そう思うとゲームのヴィクトリアも嫌いになれない。
悪い事は悪い事だけど、ヴィクトリアも苦しんでいた。
そして今、父を裏切る事により本当に自由になるのだろう。
その先が罪を償うための牢獄でも、手を汚さない事に安堵するだろう。
俺は涙を流した、少しでも本当の姉を知ろうとしなかった自分を悔いた。
もっと早くに姉に歩み寄っていたらすぐに救えたかもしれないけど…
「本当に私の弟?ぶっさいくねー」
「…うっ、ぐすっ」
「でも、優しい子ね」
初めて姉の笑顔を見た。
…いや、見ていた…赤ん坊の頃、純粋だった姉はキラキラと輝いていた。
罪に染まってしまった今でも綺麗な笑顔は変わらないと思った。
姉はポケットから桜色のハンカチを取り出して俺の涙を拭う。
ほんのりいいにおいがした。
姉はため息を吐いた。
「私、リンディって女が嫌いなの」
「…いきなり何?」
「だっていつもトーマの近くにいてムカつくじゃない!」
頬を膨らませる姉が何だか可愛く見える。
実際に行動するところは全然可愛くないけど…
俺はリンディはいい子だと知っているが、火に油を注いでしまうから苦笑いしか出来ない。
姉とリンディ、姉が丸くなれば友達になれそうな気がするけど無理だろうか。
そんな未来が来たらいいなと密かに思う。
「アルトなら…まぁ姉贔屓で譲れるけどね」
「何の話?」
「…アルトとトーマが結婚したら私の義弟になるし、一石二鳥よね」
「結婚って俺とトーマは男だよ!?」
「それが、何よ…まだ少ないけど同性の夫婦がいるって知らないの?」
知らないしそんなのゲームには一言もなかった。
姉は当然のように子供の話まで進めている、姉さん…子供は産めないよ?
俺はともかくトーマの気持ちを尊重しようよーと言っても姉は全く聞いていなかった。
姉がふとそんな事を言った。
お人好し…そうだろうか、俺は姉に条件を出したんだけど…
姉は呆れて「私のために言った条件でしょ?」と言った。
何も言えず口ごもる。
俺はそんな出来た人間ではない、全部自分のためだ。
全部ゲームの未来を変えるための…
「まぁ良いわ、とりあえず作戦だけど次の作戦会議で詳しく話すとお父様は言っていたわ」
「……うん」
まだトーマを殺す以外何も情報がないらしい。
俺も英雄ラグナロクの影響でどのくらいゲームが変わってるのか分からないから想像も出来ない。
姉は本当に良いのだろうかと心配になる。
父の命令に背き裏切る事になるんだ。
もし姉が罪を償って帰ってきても、帰る場所がなくなる。
姉は分かっているのか、父を…シグナム家を裏切る事がどういう事か。
「姉さん、本当にいいの?トーマを守るって事は」
「…お父様お母様を裏切る事になる?分かってるわよ、そんな事…………いいのよ、もう私は壊れた人形だから」
姉は悲しげにそう言った。
…人形?まるで英雄ラグナロクが言った言葉のようだ。
トーマを操り人形のように英雄ラグナロクは言った。
じゃあもしかして姉はお父様の…
この話はゲームにはなかった、姉のエピソードなんて勿論なかったから…
舞台裏で、こんな悲しい出来事があったなんてと驚いた。
「分かってた、お父様が私を可愛がるのは私という立派な殺人兵器を作るため…だからいろんな悪い事を教わり悪い事だって知りながらお父様の命令に従った…………けど逆らったからもう私はお父様にもお母様にもいらない存在になったのかもね」
「…姉さん」
「良かったわね、可愛がられなくて」
もしかして姉さんが俺に当たりがきつかったのは俺が姉さんより自由に過ごしていたからだろうか。
姉さんが汚い事をしていた裏で俺はきっと部屋でお絵かきなんかして平和に暮らしていた。
そう思うとゲームのヴィクトリアも嫌いになれない。
悪い事は悪い事だけど、ヴィクトリアも苦しんでいた。
そして今、父を裏切る事により本当に自由になるのだろう。
その先が罪を償うための牢獄でも、手を汚さない事に安堵するだろう。
俺は涙を流した、少しでも本当の姉を知ろうとしなかった自分を悔いた。
もっと早くに姉に歩み寄っていたらすぐに救えたかもしれないけど…
「本当に私の弟?ぶっさいくねー」
「…うっ、ぐすっ」
「でも、優しい子ね」
初めて姉の笑顔を見た。
…いや、見ていた…赤ん坊の頃、純粋だった姉はキラキラと輝いていた。
罪に染まってしまった今でも綺麗な笑顔は変わらないと思った。
姉はポケットから桜色のハンカチを取り出して俺の涙を拭う。
ほんのりいいにおいがした。
姉はため息を吐いた。
「私、リンディって女が嫌いなの」
「…いきなり何?」
「だっていつもトーマの近くにいてムカつくじゃない!」
頬を膨らませる姉が何だか可愛く見える。
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俺はリンディはいい子だと知っているが、火に油を注いでしまうから苦笑いしか出来ない。
姉とリンディ、姉が丸くなれば友達になれそうな気がするけど無理だろうか。
そんな未来が来たらいいなと密かに思う。
「アルトなら…まぁ姉贔屓で譲れるけどね」
「何の話?」
「…アルトとトーマが結婚したら私の義弟になるし、一石二鳥よね」
「結婚って俺とトーマは男だよ!?」
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俺はともかくトーマの気持ちを尊重しようよーと言っても姉は全く聞いていなかった。
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