黒と白の関係

タニマリ

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黒と白の関係 前編

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朝からなんでこんな状態に落ちいっているのだろう……


「真剣なんだ。毎朝君を見てて…すごく可愛いなって。」


人が行き交う混雑したホームのど真ん中で、青年実業家風のサラリーマンから熱烈な愛の告白を受けていた。
この人朝の電車で何度か見かけた記憶はあるな。
そういえば熱っぽい視線を送られていたかも……

「良かったら連絡先教えてくれないかな?」
「あの……何か勘違いされてませんか?」

「なんでも好きなものを買ってあげるからっ。」
グイグイと間合いを詰めてくるサラリーマン。
ダメだ。完全に勘違いされている。

野次馬が集まってきた。
この中で真実を告げるのは抵抗があるが仕方がない。


「俺は────……」
「こいつ男ですよ?」


俺より先に後ろから答えられてしまった。
そう…俺は男だ。
男物の制服だって着てるのに……

「ウソでしょ?君が男って…からかってる?」
「信じてないみたいだしチンチン見せてやったら?」
後ろからまた、はやし立てるように口を挟んでくる。

「ふざけんなよ…黒っ。」

俺は振り向いてその相手をにらみつけた。
そいつの名は黒沢《くろさわ》 健《たける》。通称、黒。
俺とは小学生からのくされ縁だ。

「もう男でも構わないっ。付き合ってくれ!」
「白やったじゃん、金持ちサラリーマンと付き合えて。羨ましいわ。」

黒に対して俺の名前は白根《しろね》 一樹《いつき》。
通称、白と呼ばれている。

黒は今日も違う女を連れていた。
しかも俺が可愛いなって気になってた子じゃん!
黒は俺に見せつけるように彼女とベタベタしながら、アッカンベーってしてきた。
その挑発的な態度にムカっときた。

「ねぇ…君……」
「うるせぇ!男と付き合えるわけねぇだろっ!!」

俺はサラリーマンを一喝してから学校へと向かった。



黒のやつっ……面白がりやがって!
だいたいなんで俺はいつも男から告白されるんだっ?
俺のどこが女に見えるって言うんだっ!


俺の身長は160cmもない。
でもまだ高二だっ。これからガンガン伸びる可能性だってあるっ。
それに男か?ってくらい華奢な体型だ。
食べても太らない体質なのだけど、頑張って食べりゃどうにかなるっ。

色素が薄いせいか髪も目も肌も全体的にトーンが淡い。
それも染めたり日焼けしたらなんとかなるっ。

顔にいたっては自分で言うのもなんだが、目がクリっとしていてそこら辺のアイドルより抜群に可愛い……


つまり今現在では、総合的に客観的に相対的に判断しても、女にしか見えないっ……くそっ!




小学生の頃は黒白コンビと言われて女の子からかなりモテていた。
同じ学年の女の子が全員、俺達にバレンタインのチョコをくれたほどだ。


中学生の頃、俺は背が伸びず顔も幼いままで、いつしかカッコイイからカワイイと言われるようになっていた。

対して黒はぐんと成長し、立派なイケメンへと変貌を遂げた。


黒は女にモテまくり……
白は男にモテまくり……
なんなんだこの差はっ?!


俺だって女にモテたいっ彼女が欲しいっ!












「白君どしたの?また黒君とケンカでもしたの?」
教室の机で突っ伏してイライラしていたら、隣の席の咲希《さき》ちゃんが話しかけてきた。

「もう、サラリーマンだし男だわっだしお気にの女の子とベタベタだしでムッカーなんだわ。」
「……よくわかんないけど、相変わらずなんだね。」
咲希ちゃんが控えめにフフっと笑った。
穏やかなその笑顔に、俺の気持ちがちょっとだけ和んだ。


にしても黒のやつ……

俺は自分の後ろにあるポッカリと空いたままの黒の席を見つめた。
俺と一緒の電車で来たのに一限目サボりやがって…あの子とイチャイチャしてるに違いない。

羨ましい…いや、黒なんか羨ましくねぇっ!






結局黒は昼休みも過ぎた五限目にようやくやってきた。
「黒沢君、何度も言うけど理由のない遅刻は……」
「女が俺を離してくれなかったんですよ。もっともっと~って言われて。」
今年新任の若い女性担任は黒の話に顔が真っ赤になった。
からかわれて可哀想に……
黒は席に着く途中俺と目が合うとアッカンベーってしてきた。
こいつは俺によくこの舌を出す仕草をしてくる。
これをされると俺がムカつくのを知っているからだ。

あの舌……いつかチョン切ってやりたいっ。


黒は椅子に座ると、後ろから俺の髪を引っ張ってきた。

「いってぇな!なんだよっ?」
「これ今なにやってんの?」
そんなもん、隣の女子に聞きゃあいいだろーがっ。

「学園祭のクラスの出しもん決めてんだよっ。」
「ふ~ん…なんに決まったの?」

「自分で黒板読め。」
「……シンデレラ?なんで?」

そんなもん俺も知るかよ。
うちのクラスは劇でシンデレラをすることに決まった。
女子達は衣装を本格的に作るぞと張り切っている。

「白はなにするの?」
「大道具。」

「じゃあ俺もそれにしよっと。」


黒はこういう時はいつも俺と一緒にやりたがる。
友達がいないわけでもないのに……

こいつの俺に対する態度はわけがわからない。

懐いてきたかと思ったら急に怒り出したりするし、嫌味を言ってきたかと思ったらさり気なくフォローしてくれたりするし……
俺のこと嫌いだとか言うくせに親しげに話しかけてくる。

女子からの人気No.1かもしれないが、俺にとっちゃ黒は支離滅裂やろうだ。



黒が後ろで寝息をたてている。
こいつはいったい学校になにしに来ているんだろうか?
暖かな日差しが黒を包んでいる。
窓際の俺達の席はポカポカとした気持ちの良い空間が出来ていた。
昨日は夜遅くまでゲームをしてたからな…俺も眠い。
眠気には勝てず、ウトウトしていたらそのまま眠ってしまっていた。

俺はこの時寝てしまったことを死ぬほど後悔することになる。













目を覚ますと放課後になっていた。
大きく伸びをしていると、クラスメイトがこちらをチラチラ見ていることに気付いた。
なんだ……?俺の顔になんか付いてる?

「……主役に決まったの。」
咲希ちゃんが言いづらそうに話しかけてきた。
「主役?へぇおめでとう。」
咲希ちゃんが主役かー。
大人しい性格だから主役なんて意外だけど、きっと可愛らしいシンデレラになるんだろうな。

「違うよ、私じゃなくて…シンデレラは白君なの。」



…………はい?


ちょっと待て。
なんで男の俺がシンデレラ?!

「その方が面白いだろうって…白君大道具に決まってたのに変更になったの。」
驚きすぎて声も出ない……
本人の同意もなしに主役ってなんだよ…?
しかも女装しろってか?!



………って、あれ?

てことは王子様役は女子がするのか?
もしかしてスラッと背の高いこのクラスで一番美人な高橋さんかっ?



期待を胸に黒板を見ると、王子様役の名前には

───黒沢 健───

と書かれていた。



「ちょっと待て───っ!有り得ねぇだろ!!」 
「きゃっ、白君?」
つい咲希ちゃんに怒鳴ってしまった。
後ろの席はもぬけの殻だ。
「黒もう帰った?あいつこのこと知ってんのっ?」

黒は一年の時の学園祭はサボりっぱなしだった。
こんな面倒臭いことあいつが納得するはずがない。
黒と結託して今すぐこのふざけたキャスティングを変更するように直談判してやるっ!

「黒君は知ってるよ。この配役決めたの黒君だし……」
「はぁっ?」

「黒君が王子様役してくれるなんて無理だと思ってたから立候補してくれた時はみんな大喜びして…で、姫役は白じゃなきゃイヤだって言ったの。」


なんなんだそれは……
文化祭を利用した新手の嫌がらせか?
それにしちゃ王子様役になった黒も大勢の観客の前で女装した俺と恋愛ごっこするわけだろ?
恥ずかしくねぇのか?
いったいなにがしたいんだっ?
意味がわからねぇっ!


いつの間にか俺の周りにはクラスメイトが集まってきていた。

「私達手芸部が衣装作りを全面的にバックアップするわ。」
「大道具は俺達に任せな。立派なお城作るぜっ。」
「監督は映研の私がビシバシするから覚悟してね。」

なんか……盛り上がってる?
今更下りるとは言えない雰囲気じゃね?


「白君可愛いし、黒君格好良いからきっと素敵な舞台になるよっ。頑張ろうね。」

咲希ちゃんにそう言われ、もううんっとしか言えなかった。
黒は格好良くて、俺は可愛いなのね……
そこは白君も格好良いって言って欲しかった…トホホ……














次の日から学園祭へ向けての準備が始まった。
その前に一言いってやりたくて登校してきた黒を捕まえたのだが……

「俺今、超不機嫌。」

なんで朝からブチ切れてんだよっ?
黒は切れ長の三白眼の目をしているので、怒っていたらマジで縮み上がるくらい顔が怖い。
俺が一番苦手な黒だ。
一言くらい文句言わせろよ……



台本が出来たというので早速パラパラとめくって読んでみた。
なんてことはない普通のシンデレラの話である。
普通じゃないのはシンデレラが俺ってことだけだな。
もう乾いた笑いしか出てこねぇわ。
でも最後のシーンを見て驚愕した。

キスシーンが書いてあったからだ。

「おいコラっなんじゃこりゃ?ふざけすぎだろ?!」
俺は台本を渡してきた監督に抗議した。
こんなもんシンデレラが靴を履けてちゃんちゃんで終わっていい話だ。
なんでわざわざ城で王子様と二人っきりになってプロポーズされてキスしなきゃならんのだっ。

「その方がラスト盛り上がるでしょ?」
「こんなの黒だって絶対反対するぞ?!」





「キスシーン?俺は別にいっけど。」



……なんであっさりOKしてんだよ……

頭が痛くなってきた。
黒に裏切られた気分だ。


「キスシーンくらいでわめいてんじゃねぇわ、童貞君が。」
黒が俺のことを小馬鹿にしてきた。

「学園祭でホントにするわけねぇだろ?そう見せるだけだ。」
「それくらいわかってるわ!でもヤダろっ!」

「……なにおまえ…もしかしてキスもしたことない?」

うっ……痛いところをつかれてしまった。
黒が俺の頭を両手で包み込むように掴み、ニヤつきながら顔を近づけてきた。


「こんな風にされると男でもドキドキしちゃう?」


相手は黒だとわかっているのに心臓の鼓動が早くなっていく……
なにこれ?
こんなの好きな女の子としたら心臓やばくね?


「白ってさぁ……」


黒が至近距離のまま俺をじっくりと観察しだした。
「なんだよっ?」
「こんなに間近で見ても女にしか見えねぇんだな。」

黒はそう言ってさらに顔を寄せてきた。

「黒っ冗談がキツすぎるぞっ!」
「じっとしてろ。」

黒の顔がなんかマジだ…… 
冗談だろ?冗談だよなっ?
このままだとホントにぶちゅっとなっちまうんだが?
逃れようにも頭を掴んでいる黒の握力が強すぎて全然動けないっ。
あともうほんの数ミリで唇が重なるってなった時……


「すごいっ生BLだっ!」
「二人とも絵になる~っ!」

その声に黒はパッと俺から離れた。
いつの間にかクラスの女子から注目を浴びていた。
スマホで写真撮ってる子までいる。
女子ってこんなん好きだな……


「……チッ…冗談に赤くなってんじゃねぇわ。童貞が!」
「はぁっ?いくらなんでも赤くなんか……」

……うん?黒の方こそなんか顔赤くないか?
俺からの視線を避けるようにして黒は教室を出ていった。


「黒君ヤル気満々だね~迫真の演技だったぁ。」
「劇楽しみだね~。」




……照れた?……んなわけないか……


あいつがそんなにウブなわけがない。
だいたい男の俺相手に赤くなりようがない。




















本格的な立ち回りの稽古が始まった。
当たり前だけど主役のシンデレラって出番が多いしセリフも多い……


継母 「シンデレラ!このほこりは何!?」
妹  「まあ汚い!」
姉  「あなたお掃除をさぼっているんじゃなくて?」
シンデレラ「そんな、とんでもねぇ。」


「カ────ット!シンデレラっ言葉遣い汚い!」

なにが大変てお上品に女言葉で話さなきゃいけないのが言い慣れないっつーか恥ずかしいっつーか……





「私には夢のような話。どうせあのいじわるなお母様は、私を家に縛り付けておくつもりでしょうね……」
「いけない…っ!もうこんな時間。ごめんなさい、王子様。私、もう帰らなければならないのです……」

今日も休憩時間に脚本を手にブツブツと自主練中。


「気持ち悪っ。」
後ろにいる黒が茶化すようにつぶやく……
誰のせいだよ、誰の?
俺だって鳥肌立つくらい気持ち悪いわっ。

「黒おまえ、今日は練習参加しろよ?」
「だって俺出番少ないし、本番近くなってからで良くね?」

「今日は踊りの稽古するんだってよ。相手役の王子様がいねぇと練習になんないだろ?」
「あー?俺今日は女子大生と合コンあるからムリ。」

黒がいつものように俺に向かってアッカンベーをした。
じょ、じょしだいせいだと?
羨ましい…いや、黒なんか羨ましくねぇっ!

自分で立候補しときながらサボりまくりってどういうことなんだっ。
結局ヤル気なんて微塵もねぇじゃん。



「これとこれと……」
隣の席で咲希ちゃん達手芸部一同が衣装に必要な材料の買い物リストを作っていた。
この間寸法を計られたのだが、黒に比べて自分のスモールさにかなり凹んだ。
手芸部の学園祭で発表する作品制作も兼ねているらしく、王子様とシンデレラの衣装はいちから作るらしい。
すごく大変そうだ。


「だいぶ重くなるかもだけど咲希だけで大丈夫かな?」
「大丈夫。ひと駅だし。」

「俺荷物持ちに付いて行こうか?」
「えっ…白君いいの?」

手伝ってあげたいって親切心もあるけど、咲希ちゃんとデート出来るなって気持ちの方が大半を占めていた。
なんとなく咲希ちゃんて…気になってるんだよな。


「白、踊りの練習は?」
黒が口を挟んできた。
なんか顔がめっちゃ怒っている…怖っ。

「く、黒が来ないんだから出来ねぇだろ?」
「俺出るから。」

はぁっ?
女子大生との合コンがあるって言ってたのに?


「俺と踊るのと買い物とどっち選ぶんだ?」
「……黒が来るならそりゃ踊りだけど……」

俺がそう答えると黒はニッと笑った。

「放課後まで寝るから時間になったら白が起こせよ。優しくな。」
なんだか嬉しそうに自分の席でスヤスヤと寝始めた。


なんなんだいったい……
こいつの思考回路、わけワカメだなっ。












1.2.3、1.2.3

知らなかった。
俺って…踊りの才能ゼロなんだ……

社交ダンスの基本であるワルツのボックスステップが全く踏めない。
みんなはなんなく出来ているのに、俺だけ足がもたつく絡まるしまいにゃコケる。

王子様とシンデレラだけで踊るシーンがあるっていうのにどうしよう……泣きそうだ。


「白、こっち来い。一緒に踊りながら教えてやるから。」
「黒~。」

手招きする黒のそばまで行くと黒は俺の右手をぎゅっと握り、背中の肩甲骨に手をやった。
社交ダンスでのホールドの形なのだが、思わず体が仰け反り、早速黒の足を踏んでしまった。


「白っもっとくっつけ。踊りづらいっ。」
「黒の歩幅デカいわ。俺に合わせろよっ。」

「足ばっか見すぎだ。姿勢が前かがみになってる。」
「ムズっ。王子のおまえがもっとリードしろよ。」


何回黒の足を踏んじまっただろう……
それでも黒は根気よく教えてくれた。



「本番はドレス着てヒール履くんだろ?大丈夫か?」 
一向に上達しない俺に黒が心配そうに聞いてきた。
確かにそうだ……
衣装着ながらなんて今よりもっと難易度が上がる。
もしコケてドレスが破れたりなんかしたらどうしよう……
咲希ちゃんらが一生懸命作ったドレスなのに……


「黒…コケそうになったら支えてくれる?」

ぎこちなく踊りながらも黒を見つめてお願いした。
黒は俺と目が合うと驚いた顔をして固まった。

「……黒?」
「……てめぇ。見上げながらおねだりしてくんじゃねぇ。殺すぞ。」
すっげぇ目でにらまれた。
殺すってなんでだよ…物騒だな。


「……やべ。離脱する。」


黒はそう言い残してどこかに行ってしまった。
さすがに不器用過ぎて付き合いきれなくなったかな。

セリフにしろ踊りにしろ、全然上手くいかなくていい加減疲れてきた。
楽勝だと思って嫌々ながらも引き受けたシンデレラ…思っていた以上に難しい。
みんなの足を引っ張りまくりだ。
俺、ちゃんとやりきれるんだろうか……





「白、これいる?」

壁にもたれかかって意気消沈していた俺に、黒はジュースを買ってきてくれた。
呆れて帰ったのかと思っていたのに…しかも俺の好きなカルピスソーダじゃん。
黒は俺にジュースを渡すとすぐ隣に座った。

「ありがと、黒。」
「…ん。それ飲んだら練習再開するぞ。」


黒は態度がデカいし見た目が派手だし目付きが鋭いから不良で怖いってイメージを持たれている。
そこが女子には危険な香りがするとウケてたりするのだが……


でも本当は優しくて良いやつだ。
俺が困っている時は必ず助けてくれる。


だから黒からすげぇ理不尽な態度を取られてもどれだけ振り回されても、煮えくり返るくらい腹の立つことをされても……結局俺はあっさりと許してしまうのだ。

小学生から気心がしれた俺に甘えてるんだろうな。




「白さぁ…隣に座ってる子のこと好きなの?」
「うん?咲希ちゃんのこと?」

好きなのかな…可愛いし気にはなってるけど。

「前まで陸上部の子のこと可愛いって言ってたよな?」
「その子は黒が自分の彼女にしたじゃねぇかっ。」

「白って気が多すぎねぇ?」
「おまえにだけは言われたかねーわ!」

見る度に違う女連れやがって……
うらや……あぁもう!
黒なんか全然羨ましくなんかねぇ!


「黒っ!いい加減一人の女の子を大切にしろよっ。」
「……なんで?」

「取っかえ引っ変えするより、じっくり付き合った方が絶対いいって。」
「大して好きでもない女と?」

「大して好きでもない女と付き合うなよっ!」
「俺だってこの気持ちをどうすりゃいいんだかわかんねぇんだよ。」

「はあ?」


なんだよそれは……?
好きこのんで女遊びしてるんじゃないのか?
黒が口をつぐみ、訴えるような目で俺のことを見つめてきた。
言いたいことがあるなら言えばいいのに。
なんだか悲しそうな感じがするんだけど、相当悩んでいるのか……?
黒がなにを考えてるのか、わけがわからんのは今に始まったことじゃないけど……


「もういい…白と話してるとイライラする。」


黒はイラつきながら立ち上がり教室から出ていった。
また急に怒り出すし……
今度こそ帰ったのかなと思ったら、すぐに戻ってきた。


「白おまえもうしゃべんな。立て。出来るまで練習する。」



夜遅くまで黒と特訓して、なんとか形にはなった。





俺にとって黒は一番長く一緒にいた存在で、そばにいないことの方が不自然に感じるほどだ。

俺のことを決して見捨てない黒に、心のどこかでは頼っている……






小学生から気心がしれた黒に甘えているのは

俺も同じなのかもしれない────────













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