1 / 1
ヤリたい男ヤラない女
しおりを挟む私、服飾関係のOL27歳。
橘《たちばな》 麻里《まり》。
今はクリスマスシーズン真っ盛り。
服飾関係に務める私は年始一発目のかきいれイベントである福袋の追い込み作業に追われていた。
会社がもつ各ブランドの各店舗ごとにマーケティングをして企画立案、仕入れから売り上げ見込みやら売り場構成ととにかくやることがいっぱいで息つくヒマもないのだ。
「昨日までにやっとけって言ったでしょ?なんでできてないのっ。」
私が担当してる新人がホント使えない。
入社した当初からわかりやすく教えてあげてるのに未だに要領を得ない。
ただでさえ忙しいこの時期なのに勘弁して欲しい。
「はい麻里。コーヒーどうぞ。」
隣りのデスクに座る同期の美和《みわ》がオフィスに置いてあるコーヒーサービスから、わざわざ私の好きなカプチーノを入れて持ってきてくれた。
美和はとても気が利く。
見た目もいつもきちんとしてて優しいお姉さんて感じだ。
どんなに忙しくても私のようにイライラすることもない。
仕事もできるし、すごく頼りになる。
「ありがと、美和。」
カフェモカを飲みながら美和がニッコリと微笑む。
私はといえば身長170cm、髪はショート。
いつもパンツスタイルのスーツでまんま宝塚の男役だ。
高校時代はそのへんにいるイケメンより女子にもてた。
性格もキツく、思ったことは言う。
男みたいだと自分でも思う。
「そうだっ新人っ、発注はちゃんとしたんでしょうね?」
「……はいっ大丈夫です。」
ああっ忙しすぎてイライラする。
今日もきっと終電帰りだ。
美和がチョコレートの入った包みをそっと私に渡す。
「美味しいよ。新商品。」
私が好きなシリーズの新しい味だ。
私がよく食べてるのを何気に覚えてくれてたんだ。
美和のこういう気使い、ホント神ってる。
美和には最近年下の彼氏が出来たらしい。
たまにニヤニヤしてる美和はすごく幸せそうだ。
こんな私にも付き合って5年になる彼氏がいる。
私も付き合いたての頃はニヤニヤしてたこともあったっけ?
いやなかったな……
なんせ出会いがサイアクだったから。
よくあんなんで付き合いだしたなぁって思う……
5年前───────────
入社したての私は金曜日になると決まって最寄り駅の一つ前で降りていた。
屋台のおでんを肴に熱燗を一杯ひっかけるためだ。
おっさんみたいだが、その田舎を思い出させてくれるレトロな雰囲気にすっかりハマってしまった。
電車が橋を通過する時にそのおでん屋は見える。
今日も堤防のすぐ隣りの道でやっている灯りが見えた。
「竹輪と玉子と大根と熱燗!」
私はいつも決まったメニューを選ぶ。
店の店主はだいぶ年のいったおじぃちゃんだった。
煮たら良い出汁が出そう……
そんな失礼なことを考えながら一人で飲んでいたら新しく客がやってきた。
あまりこの時間に客がきたことはないのだが……
「竹輪と玉子と大根と熱燗!」
私とまったく同じメニューを注文してドカッと隣りの席に座った。
でかっ……!
横目で見たその客は、190cmは優にある体格の良いラガーマンみたいなサラリーマンだった。
横目で見たつもりだったのだが、バチっと目が合ってしまった。
男がのぞき込むように私を見ていたからだ。
「おう、イイ女だな。一発ヤラせろ。」
私は未だかってこんな挨拶をする人間を見たことがない。
食べてた玉子を口から飛ばしそうになった。
「俺、デカい女好きなんだよ。ヤラせろ。」
どうやらサイコウの店でサイテイな客に出くわしてしまったらしい。
「背がデカいと言うのは女性にとっては失礼です。」
もっと失礼なことを言われているのだがあえてスルーした。
「背じゃねえよ。俺から見たら小さいもんだ。ケツだ。ケツがデカいのが好きなんだ。ヤラせろ。」
こいつの語尾、さっきからおかしくね?
私は残ってた熱燗とおでんの具を一気に口にほおばって店主にお勘定っと言った。
こんなやつ相手にしてたら頭が腐る。
「金なら俺がおごってやる。ヤラ……」
「うるさい!さっきからヤラせろヤラせろって!一つ覚えの猿がっ!!自分で払うわ!!」
「俺のも払ってくれんの?」
「払うわけねーだろーがっ!!」
なんなんだあいつは!!
せっかくの週末の私のオアシスがっ……
発情期の猿によって汚されたっ!
「おーい、デカ尻女~。」
後ろから声がする。
マジかあいつ!追いかけてきやがったっ。
私は思いっきり走った。
元陸上部を舐めんじゃねぇ。
ラガーマンもしつこく追いかけてくる。
ずっとデカ尻女と言いながら……
私の尻はそんなにデカくねぇわ!
一キロくらい走ったところで腕を捕まれてしまった。
酒を飲んですぐ走ったもんだから酔いがかなり回ってしまいリバースしてしまった。
サイアクだ……
「大丈夫か?」
「大丈夫なわけないでしょ!なんなのよ?!」
「いや、スマホ忘れて行ったから。」
「デカ尻とか言う前にそれを先に言え!!」
私はラガーマンが差し出したスマホをひったくった。
クソっ、家に帰って飲み直そう。
私がスタスタ歩き出すとラガーマンも後ろからついてきた。
「何よっまだなんか用?絶対ヤラさせないわよ!」
「いや、俺も家こっち。てかヤラせろよ。」
まだ言うか。
「俺あそこのアパートなんだ。」
男が指先すアパートは、私の住んでるアパートだった……
「まさかお隣りさんだとわね~。」
ニコニコしながら言うラガーマンを無視して部屋に入った。
まさかこんなやつが隣人なんてデンジャラスすぎる。
引っ越したばかりだからお金なんてない。
スマホが鳴った。
「おやすみ、デカ尻女。純平《じゅんぺい》より」
私は隣りに向かって壁を思いっきり蹴った。
あいつっ……人のスマホ勝手に見やがった!!
また金曜日がきた。
隣りの純平とかいうやつは仕事が忙しいのか毎日朝早く出て帰るのも深夜だ。
壁の薄いアパートなので音でわかる。
何回もおでん屋に通っていたが会ったのはあの日だけだ。
橋の上から見える灯りが私を呼んでいる……
大丈夫だよねと思い、今日も一個前の駅で降りた。
「竹輪と玉子と大根と熱燗!」
いつものメニューを頼むと視界の端にあいつがうつった。
「よっデカ尻女。」
私を見て気安く声を掛けてきた。
外から死角になるとこにわざと座ってたな。
「やっぱ熱燗はナシで!持ち帰りにして下さいっ。」
こんなやつと飲みたくない。
「ここツクネもうまいぞ。」
「ツクネは苦手なんです!」
「気が合うな。俺もだ。」
なんなんだこいつはっ!
純平は当然のように家へと帰る私の後ろからついてきた。
「着拒しただろ?」
「ヤラせろとかメール来たら普通するでしょ?!あんなことしてたらいつか捕まるから!」
「誰にでもしてるように言うなよ。」
純平は私の行く手をさえぎるように前に回り込んできた。
「口説き方を間違えた。反省してる。」
どこをどう間違えたらあんな風になるんだ。
「とりあえず一発ヤラせてくれ。俺すっげぇタフだから。」
「死ねっ猿が!!」
純平の股間を思いっきり蹴り上げ、そのまま走って帰った。
隣りの壁から純平のおーいっという声が聞こえる。
私は無視しておでんを肴に日本酒をガブガブ飲んだ。
飲まなきゃやってられない。
マジで引っ越すことを考えよう。
私は酔っ払ってテーブルに突っ伏したまま寝てしまった。
一階なのにベランダの窓を開けっ放しにして……
何かの物音に気付くと同時に床に押し倒された。
「きゃっ……!」
「騒ぐと殺す。」
口を塞がれ身動きが取れない。
何これ……夢?
にしてもリアルな強盗……
頭がまだぼんやりしていて状況がうまく飲み込めない。
刃物がキラりと光ったのを見て血の気が引いてった。
いきなり凄い音が響いた。
強盗だと気付いた純平が壁をぶち破って入って来たのだ。
「俺が口説こうとしてる女に何してやがる。」
ホコリが舞う中から怒りの形相で現れた純平はターミネーターのように見えた。
「カベ──っ!!どうすんだコレ!!」
私は強盗を突き飛ばして純平に怒鳴った。
「直しゃいいだろ!」
「窓開いてんだからこの強盗みたいに普通に窓から入って来なさいよ!!」
「なんだよっ俺は強盗以下かっ?!」
「少なくとも強盗の方がきちんと入ってきてるからね!!」
「あの……ケンカはおやめになった方が…」
「うるさーいっ!その物騒なもん早くしまえっ!!」
すっかり涙目になった強盗は大家さんが呼んだ警察によって御用となった。
壁の修理屋が来るのは一週間後らしい。
ことがことなので修理費は大家さんが出してくれるようだ。
にしても穴がデカい。デカすぎる。
家具を置いても塞ぎきれなかった。
あのくそバカエロ猿ゴリラめ……
「なぁ俺助けたのになんで怒られるの?」
まだ見えてる隙間から純平が話しかけてくる。
「話かけないで!私を襲おうとかしたら殺すからね!」
こいつならやりかねない。
私は枕元に包丁を置いた。
「いくらなんでもそんなことするかよ。襲われそうになったばっかりの女の子に……」
襲われそう?
そっか……強盗だと思ってたけど強姦だったかもしれないんだよな。
ナイフ持ってたから殺されてたかもしれないし。
純平のとんでもない行動に強盗に入られたことなんてどこかに吹き飛んでしまっていた。
思い出したら笑けてきた。
「……ありがとう。」
とりあえず礼は言っておこう。
「俺に惚れた?」
「それはないな。」
「ヤッちゃう?」
「それは絶対ないな。」
なのになんでかあの後付き合ってかれこれ5年になる。
ホント不思議。
山のような仕事に追われ私のイライラ度はMAXだった。
スマホがブーブー鳴っている。
純平からでメールの内容は見なくてもわかる。
私達は今でもあのアパートで隣同士で住んでいる。
家賃がもったいないから広い部屋で一緒に住もうと何度も言われたんだが冗談じゃない。
あんな性欲の強いやつと住んだら毎日好きなだけヤラれる。
私がいいよという日だけ私の部屋で過ごしている。
でも毎年このクソ忙しい時期だけは一ヶ月以上そんなのはナシだ。
昼休憩の時間になりスマホを見てみた。
「もう我慢できん。ヤラせろ。」
ほぼ同じようなメールが午前中だけで20件近く入っていた。
仕事しろよ……
美和がトイレから帰ってきてデスクでお昼を食べている。
隠してはいるがちょっと口元がニヤついている。
この時間、年下彼氏とメールのやり取りをしているらしい。
こないだ彼のことを詳しく聞こうとしたらすごく照れた。
真っ赤になっちゃって超可愛いかった。
またメールが鳴る。
「先っぽだけでも入れさせて。」
毎年この時期になると別れようかなとマジ思う。
今日も終電帰りになった。
何日か前に私が担当してた新人が辞めてしまい目が回りそうなほど忙しくなった。
ちょっとキツく当たりすぎたかな……
今年は橋の上からあの灯りが見えない。
だいぶ年のいったおじぃちゃんだったからな……
気が滅入る。
家に帰ると純平が部屋の前で待っていた。
「なぁ麻里……」
「ダメ!明日も休日出勤。」
「違う違う、おまえ最近ちゃんと食べてないだろ?」
純平はそう言っておでんの入った袋をくれた。
「コンビニのだけどな。麻里の好きな竹輪と玉子と大根。」
「…ありがとう。部屋で頂く。」
たまに優しいんだよな純平って。
私の前ではほぼ猿みたいにサカってるけど。
部屋に入ろうとしたら純平が後ろから抱きついてきた。
「ちょっ…今日はムリだって!」
「30秒だけ。抱きつくぐらいならいいだろ?」
抱きつくだけならか……
純平にしたらかなり抑えている方だ。
抱きつくだけで済むのか怪しいけど。
でも30秒過ぎても離れる気配がない。
「……30秒延長でお願いします。」
「うち、そういう制度ないから。玉蹴り食らわすよ?」
「麻里、クリスマスイブは早く帰れそう?」
抱きついたままで純平が聞いてきた。
「う~ん…会社のみんなもそのつもりで頑張ってはいるから。多分帰れるかな。」
私とヤリたくて仕方ないのだろうなこの男は。
「その日ディナーでも食べに行かない?」
「えっ……?」
意外だった。
毎年クリスマスイブは早く帰って来れたけど、いつもずっと私の部屋だったからだ。
「ダメ?」
「いいけど……もう日にちないよ。予約取れるかな?」
純平は任せろっと言って私の部屋のドアを閉めた。
ホントに抱きつくだけたった。
30秒と言った時間は全然守れていなかったけど…
クリスマスイブ。
サイアクなことが起きた。
こないだ辞めた新人が私が担当している商品の発注をしていなかったからだ。
今から発注をしてもとても間に合いそうにない。
顔面蒼白になってる私に美和が今ある在庫の中から福袋を新しく作ろうと言ってくれた。
手が空いてるメンバーで在庫の確認に動き出す。
18時になるとみんな予定があるからと頭を下げて帰っていった。
クリスマスイブなのだから仕方がない。
私も純平にメールした。
行けなくなったと……
きっともうお店に着いてる時間だ。
スマホがブーブーなるので電源を落とした。
「麻里、港区の倉庫は直接行って見た方が早いから今から行ってくるね。」
美和だけがずっと残って手伝ってくれた。
年下彼氏と初めてのクリスマスイブなのに……
ありがたくて泣きそうになった。
私も美和も終電帰りになってしまった。
部屋の前に行くと純平が待っていた。
いつになく正装をしている。
高級なお店を予約してくれたのは知っていた。
すごく怒ってる。
スマホの電源も消したままだった。
「メールで行けなくなっただけってなんだよ?ちゃんと説明しろよ。」
「仕事が忙しくてちゃんと説明する時間もなかったの。」
「イブは定時で帰れるって言ってただろ?」
「新人が発注してなくて……」
なんかもう説明するのが面倒になってきた。
「とにかく忙しかったの!」
「俺との約束すっぽかすほどにか?」
「そうよ!!」
私だって……私だって好きですっぽかしたんじゃないのにっ……
「俺と仕事とどっちが大事なんだ?!」
「う……っ。」
なんかもう悲しいやらムカつくやらで頭ん中グチャグチャになった。
「うるさーいっ!!」
気付いたら純平の頬を思いっ切し引っぱたいていた。
純平からこんなくだらない質問をされるなんて思わなかった。
そのまま布団に潜り込んで泣きながら寝た。
次の日会社に行くと美和が隠しようのないくらいニヤついていてホッとした。
美和の方までケンカになってたらどうしようかと心配していたからだ。
「美和、ニヤニヤしっぱなし!もうっ私も年下彼氏欲しいっ!」
自分の方はクソ男ーっ!!と言って誤魔化した。
こうでも言っとかないと純平の昨日の怒った顔が浮かんできて泣きそうになる。
他のことや私のために怒ったところは何度も見たことはあったけど、私に対してあれだけ怒った純平を見たのは初めてだった。
大抵怒るのは私の方で、純平はいつもどぎつい下ネタで私のことを笑わせてくれた。
たまに優しかったり、ほぼエロかったりするけれど、それをひっくるめて私は純平のことが全部大好きだった。
カップルばっかりのクリスマスイブのレストランで、一人ぽつんと帰らなければならなかった純平の気持ちなど、昨日の私は微塵も考えなかった。
どんなに惨めだっただろう……
そりゃあんだけ怒るよね。
なのに私は謝るどころか引っぱたいてしまった。
一発退場もんだ。
私だったら絶対別れる。そんな女……
今日も終電帰りだった。
純平と会うのが怖い。
純平が私に何か言うのを聞くのが怖い。
橋からあの灯りは見えなかったけれど、私は一つ前の駅で電車を降りた。
堤防の道をあてもなく歩いてみる。
川から吹きすさぶ風がとても冷たくて…純平の肌の温もりが恋しくなった。
でもそれを私が触れることはもうない。
私はそれだけのことをしてしまったのだ。
ぼんやり川を眺めていると、後ろから近づいてくる靴音が聞こえてきた。
振り向かなくてもわかる。純平だ。
「麻里、昨日のことで話がある。」
一気に私の心臓が脈打つ。
きた……別れ話だ。
もう避けようがない。
優しい純平はどう言おうか悩んでるようだった。
5年も付き合ったんだ。
ひどい女でも情が沸いているんだろう。
最後くらい、純平の優しさに甘えるのは辞めよう。
「俺達……」
「私達……」
「結婚しよう!」
「別れよう!」
──────────えっ?!
純平の方を見ると指輪の箱を私に渡そうとしていた。
えっ……何……
これはもしかして……
プロポーズ?!
えっでも私っ。
プロポーズの言葉に被せ気味に断っちゃってない?!
「ああ、そうかよっ。」
純平は吐き捨てるようにそう言って指輪が入った箱を川に投げ捨てた。
「5年間楽しかったよ!じゃあな!!」
ゆっ、指輪─────────!!
私は指輪が飛んでいった川の方に駆け寄った。
まだ浮いてるっ沈んでない。
川の流れも急じゃない、穏やかだ。
人間、寒さじゃ即死はしない。
私は泳げるっ大丈夫だ!
私はコートを脱ぎ、ブーツを脱ぎ捨てた。
「なっ、何やってんだ麻里?!」
純平がギョッとした顔で叫んだ。
時計も防水じゃないから外した。
カシミアのセーターも水を含みそうなので脱いだ。
「なんでいきなりストリップショーしてんの?!」
ズボンも濡れたらまとわりつきそうだ。
ベルトを外した。
「取りに行くのっまだ間に合う。」
「おまえプロポーズ断っただろう?!」
「断るわけないじゃないの!嬉しいに決まってんでしょ!」
ズボンを脱ぎ捨て川に飛び込もうとしたら純平が先に川に飛び込んだ。
すごい水しぶきがあがった。
コートも靴もマフラーも……
全部着たまま飛び込みやがった。
純平が浮いて来ない。
水を含みすぎて重くて溺れてしまったのだろうか……
「取ったど───!!」
指輪を掴んで水面から顔を出した純平はテレビの芸人みたいに神々しく見えた。
「麻里────っ!結婚してくれ───!!」
なんだこのめちゃくちゃなプロポーズはっ!!
ホント純平といると…………
「何笑ってんだ麻里!」
「だって……ダメっお腹苦しいっ。」
「早く服を着ろ!襲われるぞっ!!」
「こんな寒空の中下着姿の頭のおかしい女襲う人いないって。」
「いやいる!なぜなら俺はそんな麻里を見てこの冷たい川で縮こまるどころかビンビンだからだっ!」
「だから、純平くらいしかいないって。」
「とりあえず上がっておいで。」
「とりあえずヤラせろっ!!」
ゴリゴリの体育会系の純平もさすがに次の日風邪を引いた。
「何食べたい?帰りに買って帰るから。」
家で寝ている純平にメールをした。
「麻里が食べたい。」
「私以外で。」
「ムリ。食欲ない。」
性欲はあるのね……
「麻里、今日は早く帰ったら?」
私の左手の薬指を見て美和が言った。
「美和も早く帰ったら?」
私は美和の鳴り止まないスマホを指さして言った。
「一緒に帰るか…」
「だね。」
今日は早く帰ってあげよう。
私の大好きな
くそバカエロ猿ゴリラの待つあの部屋に。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
18
この作品の感想を投稿する
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる