『無能な聖女』と婚約破棄された私、実は伝説の竜を唯一従える『真の守護者』でした。~今さら国に戻れと言われても、もう遅いです~

スカッと文庫

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第10話:聖女の戴冠、そして愛という名の加護

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王国の消滅から一年。
かつての「死の森」は、今や帝国の北方を彩る世界で最も美しい聖域と化していた。エルナの溢れる神聖魔力と、銀竜シルの守護によって、枯れ果てていた大地は奇跡の蘇生を遂げたのだ。

帝都の中央大聖堂。
今日、この場所で、一人の少女が新たな歴史の主役となる。

「エルナ、準備はいいか。……そんなに緊張しなくても、我がお前を離すはずがないだろう」
白銀の礼装に身を包んだシルが、私の指先にそっと口づけた。彼の琥珀色の瞳には、一年前の鋭い殺気はなく、ただ私への深い独占欲と慈しみだけが宿っている。
「ええ。……もう、あの日々を思い出して震えることもないわ」

私が纏っているのは、帝国の国色である黒と、聖女の純白が編み込まれた極上のドレス。かつて王宮で投げ捨てた安っぽいティアラではなく、伝説の竜の鱗があしらわれた、世界に唯一つの王冠(ティアラ)が私の頭上に輝いている。

大扉が開くと、地響きのような歓声が巻き起こった。
数万の民衆が、私を「救世主」として、そして「帝国の光」として迎えている。
その最前列、玉座の前には、ゼクス皇帝が不敵な笑みを浮かべて立っていた。

「来たか。……我が帝国の、そして我ら二人の『至宝』よ」
ゼクスは私の手を取り、跪くことなく、対等なパートナーとして私を玉座の隣へと導いた。

「これより、エルナ・フォン・ゼノスを、帝国の守護聖妃として戴冠する。……彼女の祈りは帝国の礎となり、彼女の敵は、私と銀竜が塵一つ残さず滅ぼすだろう!」

ゼクスの力強い宣言に、帝都全土が揺れるほどの喝采が響く。
私は、その光景を眩しく見つめた。
かつては「無能」と蔑まれ、泥水を啜らされた。
信じていた者に裏切られ、暗い森へ捨てられた。
けれど、あの絶望があったからこそ、私は自分を正当に愛してくれる二人と出会えたのだ。

「……エルナ。貴女は今、幸せか?」
シルが隣で囁く。
「ええ。……これ以上の幸せなんて、想像もできないわ」

ふと、遠い辺境の地を思う。
そこでは、かつての王子カイルと、男爵令嬢ミレーヌが、ドロドロの泥に塗れて石を掘っているはずだ。彼らの名前を知る者はもうおらず、ただの「無能な大逆人」として、朽ち果てていく運命。
だが、今の私の心には、彼らへの憎しみすら残っていない。
復讐とは、相手を忘れるほどの幸福を手に入れて、初めて完了するものなのだと知ったから。

「さあ、エルナ。祝宴の始まりだ」
ゼクスが私の腰を引き寄せ、シルが私の手を握る。
二人の強大な男性に守られ、私は新しい世界の女王として、一歩を踏み出した。

空には、シルの分身である銀色の光が舞い、帝都を祝福するように降り注いでいる。
私の祈りは、もう誰のためでもない。
私を愛し、私が守りたいと願う、この大切な場所のために。

聖女エルナの物語は、ここで一旦幕を閉じる。
けれど、私たちが創り出す「伝説」は、まだ始まったばかりなのだ。
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