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お礼のご飯
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「いやぁ~ありがとうございました!危うくボッタクられる所でしたよ!」
「いやぁ~なになに!いいってばさ!」
もじゃもじゃさんとオレたちはスクロールの代金を払ってさっさと店を出た。
「あの……でもこの店に何か買い物に来たんじゃないですか?えっと……、あ、申し遅れましたが、トウゴ・ニシカタと言います。良ければあなたのお名前は?」
「あぁ、そうだったそうだった、私はミズィ・オーヨウ。ちょっとは魔法に詳しい魔法使いの端くれだよ」
「ミズィさんですか、助かりました。魔法に詳しい方が話に入ってくれて無かったら今ごろ大損する所でした。改めてありがとうございます」
「いいっていいって!もぉ~!そんなそんな!くゅぅふふふふ!」
露骨に照れてるな。そして笑い方が変。
「まぁーほら!お世話になったし、金も浮いた事だから、せっかくだから晩ご飯でも奢りますよぉ!なぁトウゴ!」
こういう時のコミュ力の高さよ。ゼニいい事言うなあ。
「そうですね、ご迷惑じゃなかったらぜひ奢らせてください」
「いやいや!いやぁ~!そんな大層なことは!してないけど!奢りたいって言うならぁ~仕方がないかなぁ~、奢られちゃうかなぁ!くゅぅふふふ!」
「じゃあさっそく行こうぜ!もう日も暮れかかってるし!オレらこの街に来たばっかりなんだけど、ミズィさんのおすすめの店ってある!?奢りだからってあんまり高い所は無しッスよ!」
「わぁーかってるわかってる!ってそういやお兄さんの名前聞いてなかったんじゃない?何くんなのさぁ?」
「ゼニッス!ゼニ・サッコーカって言います!ささ!行きましょうミズィさん!何となくミズィさんについてったら間違い無さそうだ!」
「わかるぅ~?それわかっちゃう~?ゼニくん見る目ありすぎでしょお!お兄さんプレッシャーかかりまくってますよ!」
なんだなんだ?なんかこの2人意気投合してるぞ?とにかくミズィさんは煽てに弱すぎるって事は理解した。
ウキウキで先頭を歩くミズィさん、そしてその横でワイワイ騒ぐゼニ。なんか盛り上がってるなぁー。その2人の会話に時折混ざりつつしばらく歩くと、飲食店がいくつも並ぶエリアに着いた。
「この辺ならなんでもあるんだわ。何が食べたい?って私が奢られる方だった!いやぁ!ねぇ!くゅぅふふふ!じゃあ私おすすめの肉料理が美味い店にしちゃうよ!しちゃうよー!何も言わずについてらっしゃい!」
「イェーイ!!!」
ノリノリで腕を天に向かって突き上げるゼニに合わせてオレも突き上げる。こういうのも悪くないな。魔物や魔法で溢れる世界ってもっと殺伐としてるのかと思ったけど、案外そうでも無くて良かった。
「ここの料理はねぇ~スパイスがいい!とにかくスパイスがいい!なんて言うの?こう……ビリっと来るのよ。分かる?分かるかなぁ~?」
「分かんないから今日勉強するッス!なぁトウゴ!」
「あ、うん!もちろん!」
このテンションについて行くのがやっとだ。ミズィさんに連れられて入ったお店は肉料理が美味いで有名らしい。ってミズィさんが言ってた。晩ご飯時にはほんの少し早かった事もあったが、それでも店内は混みあっていた。待つことも無くテーブルに着けたのはラッキーだったそうだ。店内は結構雑多としていてほぼ満席。客席にいてもそこらじゅうから漂う肉とスパイスの匂いがさらにお腹を空かせる。
テーブルに案内されて席に座る。この世界に来てこういう店に入るのは初めてだからちょっとソワソワする。周りを見渡すと、どうやら客のほとんどがソジンの様だ。おそらくそれがこの国ならではの風景で、他の国ではこうでは無いのだろう。つまりこの世界では珍しい光景なのかも知れない。
席に座って数分後、お姉さんが水の入ったグラスとメニュー表を持って来た。
「何にします?今日のおすすめはシールドオーク肉ですよ。シールドオークなんてなかなか入って来ないから、お客さんラッキーですよ」
オーク食うのか……。オークってあれだろ?豚だけど人みたいなやつ……。
「いいねぇ!シールドオークかぁ!脂がのってて美味いんですよねぇ!?」
「おぉ?分かるねぇゼニくん、いかにもそうだよ!美味い!よし!それにしよう!」
うお、オーク肉で決まってしまった。オークかぁ……、複雑……。
「オーク肉ですね!じゃーあー、私のおすすめの料理はぁ、そうですね、豪快にステーキなんてどうです?シールドオーク肉の脂身の甘さを1番美味しく味わえますよ!」
「決まりじゃああ~ん!お姉さんそれ3つ!あとパンにする?それともコメにする?あ、もちろんサラダは付けるよね!?ドレッシングは私ゴマがいいなぁ!」
「コメ!?米があるんですか!?」
「え?あるよ?このメラスぐらい大きな街ならだいたいあるよ?まぁパンよりはちょっと値が張るけどね」
うおおー!この世界に来ても米が食えるとは!もしかしたら醤油や味噌なんて物にも出会えるかもな!!!
「じゃあコメで!コメでお願いします!」
「くゅうふふふふ!じゃあみんなコメでいいかな!あ、お姉さん!お腹空いてるから先にサラダ持ってきてちょーだい!ドレッシングはたっぷりかけてね!そこはケチんないでよ!」
「分かりましたよ!少々お待ちくださいね!」
店員のお姉さんは眩しい笑顔で奥へと消えて行った。水をちびちび飲みつつ周りをキョロキョロしてたらゼニがなんか嫌な顔をした。なんだよ、だって珍しいんだもん。この世界初心者のオレには全てが珍しく見える。数分後、お姉さんがサラダを持ってきた。サラダとは言うものの、3人分だとはいえ山盛りの野菜が大皿に載せられて届いた。そしてドレッシング。茶色いこれはオレが想像するあれだよな?
「いただきます!!!」
いち早くゼニががっつく。それに続いてミズィさんもサラダに手をつける。そしてオレも。
「ゴマだ……ゴマドレッシングじゃんこれ……」
「いやゴマドレッシング注文したんだから、ゴマドレッシングじゃなかったら困るでしょ。あぁたなぁに言ってんの?」
「あー、気にしないでください。こいつ変わってるんで」
「変わってるってなんだよ、失礼な。このゴマドレッシングがオレの生まれた所と同じ味がしたんで驚いているんですよ。この辺りにもゴマがあるんだな、って」
「ゴマぁ?そりゃあ世界中にあるでしょ。むしろ世の中にはもっと変わったドレッシングだってあんのよ。ジェネラルオークの血を固めたぷるっぷるのドレッシングは衝撃的な味だったよ?」
またオークかよ……。うう、抵抗あるなぁ。
「お待たせしましたぁ~」
お姉さんがドン!っとワゴンに乗せて運んできた皿を3つ、それぞれの前へ置く。さらに小さめのボウルもそれぞれの前へ。皿にはめちゃくちゃいい匂いのするステーキ、ボウルにはほっかほかの白米が盛られていた。
「コメだ!」
「コメだよ」
ミズィさんが笑ってる。そしてオーク肉……めっちゃいい匂いじゃあーん……。
「うおおー!うめぇー!これうめぇー!」
ゼニもう食ってる。早えぇな。
「くゅぅふふふ、そらぁ美味いでしょお~、シールドオークって言ったら脂身の甘さが段違いだからねぇ!」
「そうなんですよぉ~!シールドオークって言うのは、群れの中でもその硬い皮で仲間を守るタンク役なのであまり積極的に動かないんですよ。速く動くよりも、より体を大きく、より体を重くした方が都合がいいので、必然的に体に多くの脂肪を蓄えるんです。それが上質な脂身になるって訳ですね」
「な、なるほど……」
とは言えオークだろ?勇気いるなぁ……。でも2人ともめちゃくちゃ美味そうだ。お姉さんも感想期待してそうだし……。
「い、いただきまふ!」
割と小さめに切った肉を一気に口に放り込む。そしてひと噛み。
「う……うまい!!!なんだこれ!めちゃくちゃうまい!!!」
「うふふ!良かったぁ~!じゃあゆっくりしていってくださいね!」
お姉さんに軽く会釈をして、その後は無言で肉と米をかき込んだ。とにかくうまい!気がつくと頭の中からオークの姿は消えていた。
「いやぁ~なになに!いいってばさ!」
もじゃもじゃさんとオレたちはスクロールの代金を払ってさっさと店を出た。
「あの……でもこの店に何か買い物に来たんじゃないですか?えっと……、あ、申し遅れましたが、トウゴ・ニシカタと言います。良ければあなたのお名前は?」
「あぁ、そうだったそうだった、私はミズィ・オーヨウ。ちょっとは魔法に詳しい魔法使いの端くれだよ」
「ミズィさんですか、助かりました。魔法に詳しい方が話に入ってくれて無かったら今ごろ大損する所でした。改めてありがとうございます」
「いいっていいって!もぉ~!そんなそんな!くゅぅふふふふ!」
露骨に照れてるな。そして笑い方が変。
「まぁーほら!お世話になったし、金も浮いた事だから、せっかくだから晩ご飯でも奢りますよぉ!なぁトウゴ!」
こういう時のコミュ力の高さよ。ゼニいい事言うなあ。
「そうですね、ご迷惑じゃなかったらぜひ奢らせてください」
「いやいや!いやぁ~!そんな大層なことは!してないけど!奢りたいって言うならぁ~仕方がないかなぁ~、奢られちゃうかなぁ!くゅぅふふふ!」
「じゃあさっそく行こうぜ!もう日も暮れかかってるし!オレらこの街に来たばっかりなんだけど、ミズィさんのおすすめの店ってある!?奢りだからってあんまり高い所は無しッスよ!」
「わぁーかってるわかってる!ってそういやお兄さんの名前聞いてなかったんじゃない?何くんなのさぁ?」
「ゼニッス!ゼニ・サッコーカって言います!ささ!行きましょうミズィさん!何となくミズィさんについてったら間違い無さそうだ!」
「わかるぅ~?それわかっちゃう~?ゼニくん見る目ありすぎでしょお!お兄さんプレッシャーかかりまくってますよ!」
なんだなんだ?なんかこの2人意気投合してるぞ?とにかくミズィさんは煽てに弱すぎるって事は理解した。
ウキウキで先頭を歩くミズィさん、そしてその横でワイワイ騒ぐゼニ。なんか盛り上がってるなぁー。その2人の会話に時折混ざりつつしばらく歩くと、飲食店がいくつも並ぶエリアに着いた。
「この辺ならなんでもあるんだわ。何が食べたい?って私が奢られる方だった!いやぁ!ねぇ!くゅぅふふふ!じゃあ私おすすめの肉料理が美味い店にしちゃうよ!しちゃうよー!何も言わずについてらっしゃい!」
「イェーイ!!!」
ノリノリで腕を天に向かって突き上げるゼニに合わせてオレも突き上げる。こういうのも悪くないな。魔物や魔法で溢れる世界ってもっと殺伐としてるのかと思ったけど、案外そうでも無くて良かった。
「ここの料理はねぇ~スパイスがいい!とにかくスパイスがいい!なんて言うの?こう……ビリっと来るのよ。分かる?分かるかなぁ~?」
「分かんないから今日勉強するッス!なぁトウゴ!」
「あ、うん!もちろん!」
このテンションについて行くのがやっとだ。ミズィさんに連れられて入ったお店は肉料理が美味いで有名らしい。ってミズィさんが言ってた。晩ご飯時にはほんの少し早かった事もあったが、それでも店内は混みあっていた。待つことも無くテーブルに着けたのはラッキーだったそうだ。店内は結構雑多としていてほぼ満席。客席にいてもそこらじゅうから漂う肉とスパイスの匂いがさらにお腹を空かせる。
テーブルに案内されて席に座る。この世界に来てこういう店に入るのは初めてだからちょっとソワソワする。周りを見渡すと、どうやら客のほとんどがソジンの様だ。おそらくそれがこの国ならではの風景で、他の国ではこうでは無いのだろう。つまりこの世界では珍しい光景なのかも知れない。
席に座って数分後、お姉さんが水の入ったグラスとメニュー表を持って来た。
「何にします?今日のおすすめはシールドオーク肉ですよ。シールドオークなんてなかなか入って来ないから、お客さんラッキーですよ」
オーク食うのか……。オークってあれだろ?豚だけど人みたいなやつ……。
「いいねぇ!シールドオークかぁ!脂がのってて美味いんですよねぇ!?」
「おぉ?分かるねぇゼニくん、いかにもそうだよ!美味い!よし!それにしよう!」
うお、オーク肉で決まってしまった。オークかぁ……、複雑……。
「オーク肉ですね!じゃーあー、私のおすすめの料理はぁ、そうですね、豪快にステーキなんてどうです?シールドオーク肉の脂身の甘さを1番美味しく味わえますよ!」
「決まりじゃああ~ん!お姉さんそれ3つ!あとパンにする?それともコメにする?あ、もちろんサラダは付けるよね!?ドレッシングは私ゴマがいいなぁ!」
「コメ!?米があるんですか!?」
「え?あるよ?このメラスぐらい大きな街ならだいたいあるよ?まぁパンよりはちょっと値が張るけどね」
うおおー!この世界に来ても米が食えるとは!もしかしたら醤油や味噌なんて物にも出会えるかもな!!!
「じゃあコメで!コメでお願いします!」
「くゅうふふふふ!じゃあみんなコメでいいかな!あ、お姉さん!お腹空いてるから先にサラダ持ってきてちょーだい!ドレッシングはたっぷりかけてね!そこはケチんないでよ!」
「分かりましたよ!少々お待ちくださいね!」
店員のお姉さんは眩しい笑顔で奥へと消えて行った。水をちびちび飲みつつ周りをキョロキョロしてたらゼニがなんか嫌な顔をした。なんだよ、だって珍しいんだもん。この世界初心者のオレには全てが珍しく見える。数分後、お姉さんがサラダを持ってきた。サラダとは言うものの、3人分だとはいえ山盛りの野菜が大皿に載せられて届いた。そしてドレッシング。茶色いこれはオレが想像するあれだよな?
「いただきます!!!」
いち早くゼニががっつく。それに続いてミズィさんもサラダに手をつける。そしてオレも。
「ゴマだ……ゴマドレッシングじゃんこれ……」
「いやゴマドレッシング注文したんだから、ゴマドレッシングじゃなかったら困るでしょ。あぁたなぁに言ってんの?」
「あー、気にしないでください。こいつ変わってるんで」
「変わってるってなんだよ、失礼な。このゴマドレッシングがオレの生まれた所と同じ味がしたんで驚いているんですよ。この辺りにもゴマがあるんだな、って」
「ゴマぁ?そりゃあ世界中にあるでしょ。むしろ世の中にはもっと変わったドレッシングだってあんのよ。ジェネラルオークの血を固めたぷるっぷるのドレッシングは衝撃的な味だったよ?」
またオークかよ……。うう、抵抗あるなぁ。
「お待たせしましたぁ~」
お姉さんがドン!っとワゴンに乗せて運んできた皿を3つ、それぞれの前へ置く。さらに小さめのボウルもそれぞれの前へ。皿にはめちゃくちゃいい匂いのするステーキ、ボウルにはほっかほかの白米が盛られていた。
「コメだ!」
「コメだよ」
ミズィさんが笑ってる。そしてオーク肉……めっちゃいい匂いじゃあーん……。
「うおおー!うめぇー!これうめぇー!」
ゼニもう食ってる。早えぇな。
「くゅぅふふふ、そらぁ美味いでしょお~、シールドオークって言ったら脂身の甘さが段違いだからねぇ!」
「そうなんですよぉ~!シールドオークって言うのは、群れの中でもその硬い皮で仲間を守るタンク役なのであまり積極的に動かないんですよ。速く動くよりも、より体を大きく、より体を重くした方が都合がいいので、必然的に体に多くの脂肪を蓄えるんです。それが上質な脂身になるって訳ですね」
「な、なるほど……」
とは言えオークだろ?勇気いるなぁ……。でも2人ともめちゃくちゃ美味そうだ。お姉さんも感想期待してそうだし……。
「い、いただきまふ!」
割と小さめに切った肉を一気に口に放り込む。そしてひと噛み。
「う……うまい!!!なんだこれ!めちゃくちゃうまい!!!」
「うふふ!良かったぁ~!じゃあゆっくりしていってくださいね!」
お姉さんに軽く会釈をして、その後は無言で肉と米をかき込んだ。とにかくうまい!気がつくと頭の中からオークの姿は消えていた。
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