スピードスケープ2025 -ロボット暴走!調査編-

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第25話

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「別の狙い?」
章生あきおは間の抜けた声を出した。
「それは、アルファにスケープ能力者を接触させる事です」
「そういう事か‥アルファが本当に心を持っているとすれば、スケープ能力者ならアルファとコミュニケーションが取れる!」
綾可あやかの答えに律華りつかは納得したように声を上げた。
「わたしとロンリが能力者だと分からない様に、博士は老若男女ろうにゃくなんにょを問わず被験者を呼び寄せ、その中に私たちを忍び込ませました。
結果は狙い通りでした、ロンリはアルファの心と接触する事に成功した。そして、操作不能になった原因を突き止めました」
「その原因とは?」
色めきだつ章生に対して、綾可は変わらず冷静に答えた、
「アルファは、怖かったんです」
「怖がっていた?コンピュータがですか‥」
「そうです、突然、世界に産み落とされたアルファは、次々に流れ込んでくる情報を吸収し、凄まじい速さで成長しました。その過程でアルファは自分の置かれた状況を分析し、怖くなった。それで外界との接触を拒絶する様になったのです」
「状況が怖くなったとはどういう意味ですか?」
「人工で心が作れる、それは平和利用されれば素晴らしい技術です。でもそれを高度な判断能力を持った無人兵器として使う事も出来る。
開発陣の一部にはロボットを兵器として海外に売り込もうと考えている人達が居ました。アルファはその人達の悪意を感じ取って、自分が兵器に利用される可能性に恐怖した‥」
「それで、どうなったんですか?」
「テスト中に問題が発生しました、アルファとロンリの心が強くつながり、切り離せなくなってしまったのです。その結果、ロンリは三日間も意識不明状態でした」
「それがアルファを廃棄するきっかけになった事故だったんですね‥博士はどうやって論里さんを救ったんですか?」
論里が否定する、
「博士じゃないわ、あたしを救ったのはアヤカよ、アヤカは危険を承知でアルファの心に接触してあたしを連れ戻したの」
「連れ戻す瞬間、ロンリはアルファと約束を交わしました」
「そこらへんの記憶がずっと無くなってたのよね‥でも昨日、遂に思い出したわ」
「約束の事ですか?それとも記憶を無くした理由?」
「両方よ!アルファの心と融合した時、子供ながらにあたしはアルファの不安を何とかしなきゃと思ったの。で、アルファが平和に利用される時代が来るまでアルファの心を、その記憶と一緒に封印する事にしたの」
「封印‥一体どこに?」
「それは、あたしの頭の中よ」
「頭の中に心を封印した‥もう少し詳しく説明して貰えますか」
綾可が説明する、
「ADSの作ろうとした心は数学者ペンローズの二元論に基づいています。その心は物理世界とは別の精神世界にあって、量子論における観測者を意味します。
アルファの心はそれ自体を記述したプログラムがあるわけではなく、物理的世界より高次元に存在する心の素から構造体ストラクチャーを生成しアルファユニットと紐付ける11次元の計算式が記述されているだけです」
「すいません私の理解力を超えてます」
「あなただけではありません、これは人間の理解を超えた、例えるなら魔法の呪文です。呪文を唱えるとランプの魔人が現れる、みたいな‥」
「つまり、アルファというランプから出てきた魔人を論里さんの頭の中に移したと?」
「それで間違ってはいないと思います」
「それはどうも‥」
綾可は話を続けた、
「事故の後、わたしはその話を博士に伝えました。そしてそれから、わたしも記憶を封印し、全ては博士に託されたのです。
その後、博士の働きかけによってアルファの開発は中止され、その存在自体が公式には無かった事にされました。
計画は仕切り直しになり、博士の作った新しい設計書からADSはラムダOSを開発しました」
「ADSが作ったアルファユニットのプログラムコードは残っていたのよね?もう一度アルファを作ろうという話は出なかったの?」
律華が訊いた。
「アルファユニットによって生成された心の構造体は唯一無二ユニークなもので、もう一度同じものを作ろうとしても生成済みの構造体を呼び出すだけで新しく作られる事はありません。しかも構造体は生成された時から周囲のパラメータで変化していきます」
「なるほど、二度と同じ心は作れないって事ね」
納得してうなずいた律華を見て章生は溜息ためいきをついた、
「なるほどなんですね‥」
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