残酷なこの世界で、

やっこ

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第1章

第25話

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「お、お嬢!なりません…っ、今すぐお止めくださいぃぃ!!」

 ジルが喚き出す中、蓮華は突然の口付けに驚愕して咄嗟に顔を逸らす。嫌悪感を露わに睨みつけるが、エレナは愉快そうに笑みを浮かべた。脇腹に這わされる細い指に息を呑む。
 視界が狭く、暗くなっていった。嫌だ嫌だと、子供のように怯え拒むことしかできなくなる。
 体を、心を犯される感覚……刻み付けられた記憶。
 次々と伸ばされる手に押さえつけられ、暴かれ、汚される。どれだけ叫ぼうと、助けは来ない。

「……へぇ、なるほど。あなたはこっちらの方が有効みたいね」

 何かを察したようにエレナは目を細める。首元に顔を寄せられたかと思うと生暖かいものが這わされ、蓮華は込み上げる恐怖からきつく瞼を閉じた。
 誰も、助けなど来ない。そう諦めて、自分はこのまま死んでいくのだと思っていた。
 でも”あの人”は…。”あの人”だけが…。
 
「ざまぁねぇな、新入り」
「…っ!」

 頭上から降ってきた声に、弾かれたように顔を上げる。見上げた先、木の上に立つ陸翔と視線が交わった。
 その手には、銀のワイヤー。

「きゃあっ、何よこれ!?」

 閃光が走ったかと思えば、エレナの体にワイヤーが巻き付く。光が反射し輝いて見える細い糸は、しかし頑丈で引きちぎることは不可能。

「お嬢!貴様ァ…ッ」
「おっと、大人しくしてろよ根暗従者。異能持ちは俺も例外じゃないぜ?」

 そう言って陸翔は不敵な笑みを浮かべる。ワイヤを持つのとは逆の手を上げて見せると、指先に小さな稲妻が走った。

「このワイヤーは電気を通すからな。その気になればお前の主人を感電させられる」
「な…ッ」
「動くなよ?その女をこんがり焼け焦がしたくなかったらな」

 笑みを深めるその顔は見事な悪人面で、これではどちらが犯罪者か分からない。
 押し黙ったジルは僅かな葛藤の末、やむなくその場にひさをついた。

「……約束しろ。お嬢には一切手を出さないと…ッ」
「あぁ、神に誓って」

 すべてを犠牲にしてでも、ジルはエレナを優先する。幼いころからお側で仕え続けてきた。この命は、エレナお嬢様の為に──。

「いい従者じゃねぇか」

 心にもないことは吐き捨て、陸翔は高く左手を掲げる。
 次には視界を白く埋め尽くすほどの閃光が走り、轟音と共に鋭いいかずちが落とされた。



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