世界最強が集う果ての地に召喚された彼らはそこで異世界最強を目指す

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第一章 魔王……そして圧倒的戦力差

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 嶺二は農作エリアの木陰に座って、ミカンをかじった。
  視界に広がる無数の木の葉が揺らす木漏れ日は、とても心和む風景である。果物を採集している魔族がちらほらいて……木に登る者、採ったその場で果物をかじる者、果物をカゴに詰める者の様子が窺えた。

「……暇だ、ちくしょ」

 呟く嶺二は、ボーッと魔族たちを見つめている。だらしなく木の幹に背中を預けて足を伸ばす嶺二を、誰も気にかけることはなく時間だけが過ぎて行く。
 そんな嶺二の傍にいるのはただ一匹。

「レラもシェミルもどっか行っちまうし、ソールは相変わらず魔力回路だし、マリアはどうでもいいが……ドロビィ、俺の傍にいてくれるのはお前だけだな」
「びゅり?」

 嶺二と同じような格好で座っているドロビィを見て言うと、彼は空に向かってため息を放つ。

「はぁ~。縁起でもねぇが、あの化け物たちが攻め込んで来てくれりゃ暇も潰せるってのにな」

 その時、嶺二の右方から早い足音が聞こえた。嶺二はそこへ顔を向けることなく、やってきた者が隣に立ったところで。

「何だよ……ターシャ」

 息切れをしながら嶺二を見つめているのはターシャ。ただの息切れにしては焦りを感じるそれに、嶺二がゆっくりと顔を向ける。

「どうした、そんな顔して」

 ターシャは眉をひそめて、瞳を震わせていた。

「嶺二さん、今すぐ本部に来てください!」
「あ? 何があった?」
「神様が来たんです。それで、皆を集めろって……」

 嶺二は僅かに口角を上げ、すぐに立ち上がるとターシャを置いて走り出した。

「ちょと……待ってください嶺二さ~ん!」



 本部のリビングでは、ソファに足を組んで凛々しく座る神様。それを緊張の眼差しで見つめるのはマリア、ソール、レラの三人。誰ひとりとして言葉を発さない中、リビングの戸が乱暴に開けられた。
 皆の視線がそこへ向くと、入ってきた男は神様を見つけるなりニヤリと笑う。

「へっ……マジで居やがった」

 長い銀髪に、身体を取り巻く白と金の帯。そんな奇抜な格好をした者の姿をそう簡単には忘れない。
 マリアがその男……嶺二に小声で短く言った。

「……来い」

 嶺二はマリアの横に立つと、腰に手を当ててソレに向かって。

「三日ぶりくらいだな神様。調子はどうよ?」

 嶺二はバカにするような目を神様に向けている。神様が送り込んできたレビギルを、漏れなく撃破したことに対しての煽りの意が込められているだろう。
 神様は、ふっと笑って言った。

「お元気そうで何よりです、嶺二」

 それだけ言って、尚も笑顔を向けられる嶺二は舌打ちしてから。

「……んで、何の用だよ? 面白い話を持ってきたんだろ?」

 そこでリビングの戸が再び開くと、すぐに息切れが聞こえてくる。

「はぁ……はぁ……私を置いていくなんて酷いです嶺二さん」
「おおターシャか、遅かったな」

 ターシャはそう言った嶺二を睨みつけた直後、はっとして皆の横に並んだ。
 そうして皆が揃った時、神様はゆっくりと立ち上がり相変わらずの笑顔で口を開く。

「また皆さんの元気そうな顔が見られて安心しました。どうやら住民も増えたみたいで……私が最後にここへ来た時よりも随分と活気が出ましたね」

 褒められていながらも、皆は緊張した表情を緩めることはない。神様がそんなことを言うためだけにここに来たのではないと分かっているからだ。

 神様は笑顔から一転、その表情に力を込めて真剣な表情で皆を見据える。

「皆さんの顔を見る限り、前置きは不要なようですね」

 一度目を閉じた神様は、今度は鋭い目付きで開いた。

「警告します。直ちに戦力を増強しなさい」

 その言葉を聞いた面々は、一様に唾液を飲み下す。
 そしてまずマリアが。

「それは、どういうことでしょうか……?」
「大きな戦争が幕を開けたのです」

 皆がその言葉に呆然として立つ中で嶺二が言う。

「戦争だぁ? おいおい神様よ。この世界には俺たちしかいないんだぜ? どこで戦争が起きたってんだよ」
「嶺二以外の皆さんなら既にお分かりのことでしょう」

 嶺二が皆の顔を見渡すと、それらは明らかに分からないといった様子ではない。さらに緊張感が増していた。

「お、おいおい……どういうことだよ?」

 嶺二が再び神様に視線を向けると、彼女は答える。

「あなた達が戦う相手は、こことは異なる世界……異世界なのです」
「異世界……?」
「ここは三回に渡って起きた大きな戦争により、あえなく荒廃しました。次に戦争が始まる頃、この世界は間違いなく占領れる運命にあったのです。……つまり、私は消滅し、別の神様がこの世界を管理することになるということ」

 嶺二だけはポカーンと聞いているが、神様は続けた。

「しかし、私はこの世界を手放したくはありません。かつて活気に溢れていた『ハテノチ』をもう一度この目で見たいのです。そのために、あなた達を急かすように刺客を送りつけていました」

 神様は数秒ためて一言。

「…………第四次異世界衝突が勃発しました」

 嶺二以外の皆は、同時に狼狽の声を漏らした。

「異世界……衝突っ」
「そんな……」
「……二百年の時を経て、ついに始まってしまったのか」
「し、信じられませんわ……」

 皆の震えた声に、嶺二はのうてんきに頭をかいて言う。

「何だそれ? ぶつかったような名前だが」

 マリアはすぐに嶺二の胸ぐらを掴んで睨みつけた。

「知らないのかお前……! 異世界衝突とは、全ての世界が加わる巨大な戦争だ! それが始まるきっかけはこれまで一度も明確になったことはなく。どこで始まったのか、誰が始めたのかも分からない謎の大戦であり、そのことから別名『神々の遊び』と言われることもある。……神が全ての世界をふるいにかけ、選別しているのだとな」

 鋭い剣幕を放つマリアに対して、嶺二は耳をほじって気だるげに言う。

「分かった分かった。……んで、もうその戦いは始まってんだっけ? ここはいつ攻められるんだ?」

 皆の視線は神様に向いた。

「神様である私にも、それは分かりません」
「あ? 世界の外で戦争が起きたことを知ってんなら、そのくらい分かるんじゃねぇのか」
「この戦いは、神々の意志により決定したものですので」
「なっ……」

 マリアも先ほど、そのような事を話していた。ただの噂話のような言いぶりだったが、やはりマリアの表情を見るに初めて知った事実のようだ。
 ということは、と。レラが神様に向かって言う。

「神様……あなたが、この戦争を始めたわけですの?」
「違います。発言権は、世界力上位八世界の神々が握っていますので。私のような神がどうこうできるものではありません」
「そんな……」
「ハテノチが全世界トップクラスの世界力を持てば、私にもそれをどうにかできる権限が与えられるのですが……まさかこれほどまでにも早く始まってしまうとは……」

 緊張感漂う中、マリアは神様の言葉も聞かずに顎に手を当てて独り言のように呟いている。
 それを見た嶺二は「おい」と一言。

「む……何だ嶺二」
「さっきから何ブツブツ言ってんだよ」
「……す、すまない」

 明らかに様子のおかしいマリアに、嶺二は眉をしかめて彼女の肩を掴んだ。

「何考えてたんだよ。この中で一番頭がいいのはお前なんだから、とりあえず何か言えよ」
「……ああ」

 また意味のわからないことを言ってくるのだろうと、嶺二は聞いておきながらも間抜けな顔でその言葉に耳を貸す。
 
「我々は、この戦いで終わる」

 あまりにも簡単な言葉に、嶺二を含め皆が唖然とした。
 それはもちろん嶺二にも理解できて、マリアにしては単調な言葉にやはり怪しんだ。

「何勝手なこと言ってんだ。やってみなきゃ分かんねぇだろうが」
「分からないのか……? この世界で戦えるのは誰だ? お前とソール、そして生まれて間もない魔族たちだけだ。お前がいた世界には何人いた?」
「……それは」

 個々の戦力に差はあれど、想像しただけでも数の力で押されることは明確。日本にいたころの嶺二は国の軍を相手に暴れることはあっても、世界を相手にするとなればその腰も引けたことだろう。今まさに、そんな状況に彼らは立たされている。それも相手はひとつやふたつの世界ではないのだ。

 そこで神様が口を開く。

「恐らく、ここを狙っている世界は多くあります。無条件で手に入れられると思っているのですから当然ですね。ですがその推測は、あながち間違いでないとは思いたくありません。……しかし今分かっていることがひとつ。皆さんも既にお分かりの通り、私たちと他の世界とでは……」



 神様は厳かな眼光を放って一言。



「絶望するほどの……圧倒的戦力差があります」



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