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異世界
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「お、お前、まだいたのか……」
仰向けに寝そべる俺を見下ろしているのは金髪の少女リーザ、人間を迷いなく殺せる逸材だ。彼女はきっと殺し屋か何かに違いない。
「何で? なんで生きてるの?」
どんぐり眼をぱちぱちとさせ、額に汗を垂らすリーザ。口元が多少ひきつっているのが分かる。それも無理はないだろう、心臓を貫いたはずの人間が虫の息で生きているのならまだしも、潰された目は元に再生し、傷口などなくなっているのだから。
「お、お前、何者……」
後ずさるリーザに俺は好機と読んで立ち上がった。
「俺か? そうだな……不死者、とでも言っておこうか」
「あ、アンデッド……」
冷徹でもなく、あの取り繕ったどんぐり眼でもなく、眼を見開いて本気で恐怖している様子のリーザ。
一歩ずつ俺が近づくと、彼女は一歩下がる。
「お前は、触れちゃならねぇモンに触れちまったようだ……」
「え……あ……」
ポキポキと指の骨を鳴らしながら近づく。後ずさっていたリーザは逃げることを諦めたのか、マチェーテを構える。
正直戦闘は困る、俺は死なないが痛いものは痛い、それに格闘術とかも知らないし。
「まあ待て、話を聞け。俺はお前に道を――」
「ふんっ!!!」
彼女のマチェーテが俺の脳天からまっすぐに喉元まで切り込まれる。
俺は顔面を真っ二つにしたそのマチェーテの柄を彼女の右手ごと掴んだ。
「タかラよォ……」
「ひっ……」
「はなシをきへっテ……」
「ご、ごめんなさ――」
修復率百パーセント。
「言ってんだろうがァァァアアア!!!」
マチェーテから離れた彼女の手を引き寄せ、反対の手で拳を作りリーザの顔面へ渾身の一撃。
マチェーテを手放したリーザはどたばたと地面を転がっていく。
「ああー痛かった……」
細い傷穴だった心臓はすぐに修復。二つに分かれた頭部の修復には数秒とかからなかったが、リーザの方は鼻血を流してダウン。
「これ、返しとくよ」
彼女の胸の上にマチェーテを置く。
「いたぁい……いたいよぉ……ひっぐ」
仰向けのまま目を擦りむせび泣くリーザに少し戸惑うが、今はメアリを捜し出すため、それでも道を聞くしかあるまい。
彼女の横にしゃがみ、問い出す。
「教えない……」
答えはNOだった。そう簡単に許可が出るとは思ってなかったが、なるほど、こいつはどうやらふてくされてるらしい。頬を膨らませぷいっとそっぽを向いてしまった。
……困った。俺はこの長い人生のうちでメアリくらいしか親しく関わった女性はいない。初期に比べてだいぶ感情をみせるようにはなったメアリだがそれでもこの子のような馬鹿正直な態度は滅多に見せない。
俺は対応に悩んでいた。
「な、なんでも言うこと聞きますから……」
何を言ってるんだ俺は。むしろ俺が脅迫する側にもなり得るというのになぜ下手に回ってるんだ。
その言葉に反応したリーザは俺に視線を向け、睨みつけるように目を細める。
「……私を、殺して」
軍人ですかあなたは。女の子が言うセリフじゃないと思うな。この世界の価値観や文化といったものがどれだけ俺のそれとかけ離れているものかは定かではないが、剣と魔法の世界。それは俺の世界でいうナイフと銃、といったところだろうか。だが剣とナイフを比較するのはまだしも銃と魔法は無理があるかもしれない。
残念ながら俺の世界ではまだ魔法というものは架空の存在である。魔法が実際どのようなものなのかということでさえその目で見るまで確定付けることはできないだろう。
ナイフと銃を使うのが兵士なら、彼女もまた兵士なのだろうか。下手をすれば自決という可能性もある。
……絶対にさせない。
俺の世界に、色はなかった。灰色の世界にたった一箇所だけ輝く星、メアリ。だがこの世界には俺が忘れかけていた色がある。空、海、土、植物……そして無論リーザもだ。下心があるように思えるかもしれないが、俺は性欲を失いかけていた。だがここに来たことにより睡眠に次ぐ性欲の喪失を回避することができ、歓喜に震える他ない。一見下品に思わせる性欲という感情は、自己を保つためには必要不可欠な存在だと思う。もちろん睡眠欲も。
それに懐かしきかつ美しき人類の姿を久しぶりに拝めたんだ、俺が殺すだなんてそんな乱暴な真似できるはずがない。
もちろん答えはNOだ。
それにこの子がかなりの悪で、殺さなければならない状況にあったとしても、俺はこの子を殺せないだろう。女の子を殺せば一生後悔することになる。終わりの見えない一生を延々とだ。
鼻血も止まり、呼吸も落ち着いてきたリーザは仰向けに寝たまま真っ直ぐ空に向けて手を伸ばす。
俺は伸ばされた手をただぼーっと眺めた。その細く白い、頼りがいのない腕には何か、この腕にしては重すぎる何かを抱えている気がした。それはそうだろう、こんな子が無意味に刃物振り回して人を襲うはずがない。何か理由があるに違いないのだ、俺が力になれたら……。
リーザの手がブンブンと虚空を掻く。おまじないか何かだろうか。俺は正座をしてその様を冷静に見守る。
その刹那、リーザが鋭い目つきで俺に顔を向けた。
「立ちたいから手を貸してって言ってるのに。バカ」
冷静に考えたら確かに手を貸せという動作に見えなくもないが言われてはいない。今まで触れるな近づくなみたいなオーラを出しておきながらわざわざ手を握らせるようなことは流石にしないと思ったのだ。
言われたからには俺は快く手を貸してやり、リーザを立たせる。
彼女は立った後、放した手をわさわさしてぼーっと眺めていた。
そして今度は俺とその手を見比べる。
「どうした?」
すると彼女は恐る恐る再度手を伸ばす。また、手を握れと?
マチェーテは地面にある、引き寄せ殺される、というリスクはないだろう。そもそも俺に「殺される」というリスクなど皆無であった。
そっと、その柔らかく冷たい手を握る。
「こっちの方が、いいかも……」
「こっちの方って……?」
殺し屋モードのリーザとは打って変わって、目尻はとろんと垂れ下がり、穏やかに上がる口角は多重人格の可能性さえ信じさせた。
「俺の手は食っても美味しくないぞ」
少しボケをかましてみる。いやもしかしたら本当に俺の手を食べる気なのかもしれない。だがこの神妙な間を繋ぐ言葉として最適なのはそういうことではない。
「お前、人の手を握るのは初めてか?」
リーザは首を横に振る。
「お前の手は、暖かい」
そりゃそうだ、人間だから。
握手をすることにより彼女の心境を変えたのは確かだが、それだけでは満足できまい、今のリーザになら道を聞いても快く受けてくれそうだ。
「……いやだ」
二回目の玉砕。だが俯き気味に答えた彼女のその手は、まだ放してくれそうにない。
何故教えてくれないのか、そこを冷静に探る必要がある。可能性としてはただ俺を困らせたいだけなのか。それとも道を知らない、俺のような新参者であるのか。
「質問を変えよう、お前はここら辺に詳しいのか」
「詳しいもん」
ふむ。それならば俺を困らせたいだけのようだ。
仕方ない、あまりしたくはなかったが、力ずくでいうことを聞かせるしかないか。
◇
レンガの建物が連なる村。時折スープの香ばしい香りがメアリの鼻下を撫でる。
「ここが俺の住む村、マヤだ」
森で出会った青年ジルクの案内により、人の住む村へと足を踏み入れることが出来たメアリ。生活感溢れる人々の声や料理の香り。足元の柔らかい感触は硬い感触に変わる。
「穏やかな村だな、それでいてとても賑わっている」
メアリの評価は高いようだ。ほっと息を吐くジルク。
「気に入って貰えて良かった。村の中を案内するよ」
そう言ってメアリの手を握り、先導する。
しばらく村を歩くと、今度は階段を降りて日光の温もりを感じなくなり、地下へ。
ひんやりと肌を摩る冷気は夏に感じようものなら心地のいいものかもしれない。
「悪いけど、少しここで待っていてくれ」
「分かった、待っていよう」
ジルクは小走りで階段を上り、地下から姿を消す。
ここは個室になっているようだ、迂闊に動き回って物を倒したりなんかしたら事だ、メアリはそこでじっと待っておくことにした。
体感時間などとうに信用出来なくなったメアリだが、およそ五分がたった頃だろうか。階段から足音が聞こえてきた。
「なるほど、やはりそうだったか」
足音は一人のものだけではない、少なくとも十人はいる。陽も届かないこんな場所で自己紹介だなんて陰気なことするとは思えない。
メアリの訝しげな表情に、先頭を切って登場したジルクが問う。
「目が見えなくても流石に気づくか……いや、見えないからこそかな? 今お前はどんな状況にあるか知っているか?」
さっきまでの彼の口調とは比べる手間も必要ないほどに変わっている。トーンは低く、鋭い。視力を失ったメアリの耳にはそれがよく伝わってきた。
「ああ、私は今拉致されているのだろう。そしてこれから陵辱の渦に呑まれるのだ」
きひっと不気味な笑をこぼすジルク。それはメアリの脳内で正解のアラームとなった。
「これだけ長く生きていても人間の性を見抜くには事足りんというのか……」
足音が近づくもメアリは後ずさることなく、呆気なく両腕をとられ壁に押し付けられた。
メアリを押し付ける者の吐息が彼女の前髪に吹きかかる。
「はぁ……はぁ……メアリちゃんだっけ? 可愛いなぁ可愛いなぁ」
声質的に中年の男性、肥満気味と把握。吐息の温度が上がる、顔が近づいて来ている証拠だ。メアリの推測では下劣な接吻のあと、今でも腹部に擦るようにして当てられているナニかで陵辱される。
「コトンよ、これまで溜めておいたものを全て彼女の中に出してやれ」
「言われるまでもないぜジルク? 既に俺のモノははちきれそうなんだ。はやくスッキリしてぇよぉ……」
先に接触したのは唇ではなく舌。メアリの上唇を不気味に撫で回す。
「ああ美味しい……! 美味しいよぉメアリたんん!!」
ヒートアップした男の舌はメアリの唇を強引にこじ開けて口内に侵入する。
メアリの口内を満たすほどの図太い舌。ヌルヌルと彼女の舌に絡みつく。
「ぶっはぁ……んふっふぉお……」
時折出来る唇の隙間から荒い吐息を漏らす男。
下方では「本気。」と書かれたメアリのTシャツが豊満な胸を揉まれるついでに捲られ、地肌に男のナニかが擦られていた。
「すこ、すごい……メアリの肌すごくすべすべしてる……! あぁ……もうぢょっと、やばいかもっ……」
次の瞬間、男はメアリの膝を崩し、反り勃ったソレを彼女の唇に当てる。
「メアリ。コトンは童貞なんだ、みっともないほどに興奮しているが許してやってくれ」
また、きひっと笑いをこぼすジルク。メアリは悲鳴さえあげることはないが、抵抗もしない。しても力では勝てないと分かっているからだ。
「でゅふ……いくら無口なメアリちゃんも奥まで突っ込まれたら……」
今度は舌ではない、舌よりも硬く、それでも肉感のあるものがメアリの口をこじ開けていく。
◇
俺はリーザを力ずくでねじ伏せることに成功した。ペタッと諦めたように座り込む彼女は、それでも首を横に振る。
「もう一戦、あと一戦だけ……」
「しょうがないな、一戦だけだぞ」
お互いが向き合い、リーザの戦慄の眼差しが俺を突く。
「行くぞ……」
俺は拳をぐっと握りしめ、叫んだ。
「最初はグー! ジャンケン……!!」
次の瞬間、二人揃って「ポン!」と虚空にパンチを繰り出す。俺の手は拳、リーザは指を二本立ててVの字。
膝から崩れ落ちるのはリーザ。
「勝てないよぉ……ひっぐ」
俺たちがやっているのはジャンケン。五〇戦五〇勝で俺が勝ち越している。運ゲーであるジャンケンで勝率百パーセントを誇っている理由は一つ、彼女は出す手を「ポン」のかなり前に作ってしまっているからだ。
元々は三回戦の二本先取りってルールだったのに「もう一戦」が連なりこんなことに……。そこまでして俺に道を教えるのが嫌なのか?
「リーザ、そろそろ教えてくれないか。一番近くの村まで案内してくれるだけでいいんだ。その後は俺たちは無関係だ、お前のことは追いかけたりしないし探したりもしない」
村に行けば人がいる、その分だけ情報もたくさんあるはずだ。とりあえず今はできるだけ多くの人と出会い、情報を提供してもらわなければならない。彼女のことはちょっと惜しい気もするが、メアリを捜し出すことが最優先。そのためならたとえ女神のプロポーズであっても迷わず断ろう。
力なく座り込むリーザは口先だけちょびちょびと動かして返す。
「それが嫌なんだもん……」
「ん? 何だって?」
彼女はガバっと立ち上がり、叫ぶ。
「和人と離れるのが嫌なのっ!!」
困った。この反応に関しては返す言葉を用意していなかった。目をそらすでも無く、頬を赤らめるでもない彼女の真っ直ぐな表情は、まさに無邪気、無垢、正直という言葉がこれ以上ないくらいに当てはまる。
俺はちょこんと彼女の頭にチョップ。痛くないはずだが「へぅっ」と反射的に声を漏らし両手で頭を抑えるリーザの愛嬌に口角が上がりそうになるのを堪える。
「人のこと散々切りつけておいて……」
そういえばこいつ、会った時とは随分と変わってるな。人見知りなのか?
リーザは柔らかそうな金髪を人差し指でくるくると絡めさせ、申し訳なさそうに俯く。
「だって……だって」
俺が不死身じゃなかったらこんなやり取りもなかったわけだ。それでも不死身な俺が彼女に出会ったということは何かの縁なのかもしれない。リーザが今までどれだけの人を殺してきたか知らないが、それを問い詰め、責め立てるのは軍人に人を殺すなと言っている様なものだ。彼女もまた何かを守るために「戦っていた」と思うことにしよう。
リーザの頭に、今度は手のひらをポンとのせ、撫でてやる。
「行こうか、一緒に……ん?」
俺の言葉に、俯いていた顔がパァっと上がって歓喜の表情になるリーザを気にする余裕が無い程に胸が焼ける感覚に襲われる。
「なんだ、これ」
熱い、苦しい、鬱陶しい。この嫌な感覚はなんだ?
そして何よりも俺を支配しているのは「不安」だった。俺の中から「自信」と呼べるものが不安に押し潰され、そして更にそれは大きく募っていく。
「和人……?」
俺の異変に気がついたのか、リーザが心配そうに袖を引っ張ってくる。
次の瞬間、心臓にピリっと鋭い痛みが走ると、反射的に俺の顔はリーザの背後を見据えた。
不安が募り、不安に支配され、押し潰され、そしてそこから出た答えは失ったはずの自信を通り越し……「確信」へと変わる。
「メアリ、そこか……」
俺の向く先を振り返るリーザは慌てて俺を止めにかかる。
「この先はダメ」
「どうしてだ」
「マヤがいるから……私でも勝てない」
マヤというのは人の名前だろうか、リーザでも勝てないということはかなり腕の立つ者だろう。しかしメアリが危険に晒されているということは間違いない。この胸焼けともとれる胸騒ぎは放ってはおけないのだ。
歩みを進めようとする俺を両手で抑えるリーザ。
「だめだってば!」
「お前がそんなに恐れるほどの相手なら、尚更行かないといけないんだ俺は」
「どうして?」
大切な友人がそこにいる可能性が高いこと、その友人は盲目であるということ、そして友人もまた、俺のようにここら辺に関しては全くの無知であることを話した。
「その友だち、女の人?」
「ああ、そうだ」
なぜ、そんな絶望に見舞われたような顔をする?
「マヤは……みんな金髪。だって、金髪の人としか……」
この世界もまた、灰色になった。リーザでさえも、灰色に。
その灰色の世界に、赤黒く燃え盛るのは俺の右手、憎悪が幻覚となって現れたのだろうか。
「リーザ、ありがとうな」
彼女の肩にぽんと左手を置き、その横を通過する。
伸ばそうとする彼女の手が届かぬよう、俺は肩に置いた手で勢いよく突き放した。
「ぎゃふっ!」
尻餅を着いたリーザに振り向くことなく、俺は次第に大きくなっていく赤黒い炎を右手に走り出した。
やはりリーザは追ってくる。
「和人、止まって!」
止まる理由が無い、意味が無い。メアリが危険な目にあっている、それだけで「止まる」ということに関する如何なる理由も無意味となる。
強引に止めようと俺の手を握ろうとしたリーザが悲鳴を上げた。
不本意に俺の足が止まる。
「ああっ……! うっ……」
一瞬だけ触れた彼女の人差し指の先が爛れている。
「リーザ……?」
右手の炎を見る。まさかこいつが? 幻覚じゃないのか。大袈裟になるのか適当なのかはわからないが、これはひょっとして魔法? しかし何故いきなり魔法なんかが……トリガーになる可能性といえばメアリの危険? 実際にメアリが危険にさらされている現場を見た訳では無いが、彼女と何かしらで通じた俺の体がそう教えてくれたのかもしれない。そしてそんなメアリ守るための防衛機能……。ここに来る前までは平和な世界にいたから発動することが無かったのか。もしこの炎が、メアリが感じる危険度に比例して大きくなっているのだとしたら……。
既に炎は俺の体を包み込めるほどに大きく燃え盛っていた。
「ごめんリーザ。俺、行かないと」
「私も行く」
また困る反応だ。マチェーテの柄を再び握るリーザに俺は時間を食っていた。
それを察したのかリーザは眉をくいっと上げて力強い声音で続ける。
「これからは、正義のために振るうから。もう『復讐』なんかじゃないから」
その長く、美麗に揺れる金髪は彼女にとって負の遺産となっているのかもしれない。嫌でも視界に映るその金髪に、男に対する復讐心を幾度となく燃やしたことだろう。だが今の彼女は正義に輝く光沢のある瞳を持っている。
「そうか。頼りにしているぞ、リーザ」
俺達は目を合わせた後、再度走り出した。
仰向けに寝そべる俺を見下ろしているのは金髪の少女リーザ、人間を迷いなく殺せる逸材だ。彼女はきっと殺し屋か何かに違いない。
「何で? なんで生きてるの?」
どんぐり眼をぱちぱちとさせ、額に汗を垂らすリーザ。口元が多少ひきつっているのが分かる。それも無理はないだろう、心臓を貫いたはずの人間が虫の息で生きているのならまだしも、潰された目は元に再生し、傷口などなくなっているのだから。
「お、お前、何者……」
後ずさるリーザに俺は好機と読んで立ち上がった。
「俺か? そうだな……不死者、とでも言っておこうか」
「あ、アンデッド……」
冷徹でもなく、あの取り繕ったどんぐり眼でもなく、眼を見開いて本気で恐怖している様子のリーザ。
一歩ずつ俺が近づくと、彼女は一歩下がる。
「お前は、触れちゃならねぇモンに触れちまったようだ……」
「え……あ……」
ポキポキと指の骨を鳴らしながら近づく。後ずさっていたリーザは逃げることを諦めたのか、マチェーテを構える。
正直戦闘は困る、俺は死なないが痛いものは痛い、それに格闘術とかも知らないし。
「まあ待て、話を聞け。俺はお前に道を――」
「ふんっ!!!」
彼女のマチェーテが俺の脳天からまっすぐに喉元まで切り込まれる。
俺は顔面を真っ二つにしたそのマチェーテの柄を彼女の右手ごと掴んだ。
「タかラよォ……」
「ひっ……」
「はなシをきへっテ……」
「ご、ごめんなさ――」
修復率百パーセント。
「言ってんだろうがァァァアアア!!!」
マチェーテから離れた彼女の手を引き寄せ、反対の手で拳を作りリーザの顔面へ渾身の一撃。
マチェーテを手放したリーザはどたばたと地面を転がっていく。
「ああー痛かった……」
細い傷穴だった心臓はすぐに修復。二つに分かれた頭部の修復には数秒とかからなかったが、リーザの方は鼻血を流してダウン。
「これ、返しとくよ」
彼女の胸の上にマチェーテを置く。
「いたぁい……いたいよぉ……ひっぐ」
仰向けのまま目を擦りむせび泣くリーザに少し戸惑うが、今はメアリを捜し出すため、それでも道を聞くしかあるまい。
彼女の横にしゃがみ、問い出す。
「教えない……」
答えはNOだった。そう簡単に許可が出るとは思ってなかったが、なるほど、こいつはどうやらふてくされてるらしい。頬を膨らませぷいっとそっぽを向いてしまった。
……困った。俺はこの長い人生のうちでメアリくらいしか親しく関わった女性はいない。初期に比べてだいぶ感情をみせるようにはなったメアリだがそれでもこの子のような馬鹿正直な態度は滅多に見せない。
俺は対応に悩んでいた。
「な、なんでも言うこと聞きますから……」
何を言ってるんだ俺は。むしろ俺が脅迫する側にもなり得るというのになぜ下手に回ってるんだ。
その言葉に反応したリーザは俺に視線を向け、睨みつけるように目を細める。
「……私を、殺して」
軍人ですかあなたは。女の子が言うセリフじゃないと思うな。この世界の価値観や文化といったものがどれだけ俺のそれとかけ離れているものかは定かではないが、剣と魔法の世界。それは俺の世界でいうナイフと銃、といったところだろうか。だが剣とナイフを比較するのはまだしも銃と魔法は無理があるかもしれない。
残念ながら俺の世界ではまだ魔法というものは架空の存在である。魔法が実際どのようなものなのかということでさえその目で見るまで確定付けることはできないだろう。
ナイフと銃を使うのが兵士なら、彼女もまた兵士なのだろうか。下手をすれば自決という可能性もある。
……絶対にさせない。
俺の世界に、色はなかった。灰色の世界にたった一箇所だけ輝く星、メアリ。だがこの世界には俺が忘れかけていた色がある。空、海、土、植物……そして無論リーザもだ。下心があるように思えるかもしれないが、俺は性欲を失いかけていた。だがここに来たことにより睡眠に次ぐ性欲の喪失を回避することができ、歓喜に震える他ない。一見下品に思わせる性欲という感情は、自己を保つためには必要不可欠な存在だと思う。もちろん睡眠欲も。
それに懐かしきかつ美しき人類の姿を久しぶりに拝めたんだ、俺が殺すだなんてそんな乱暴な真似できるはずがない。
もちろん答えはNOだ。
それにこの子がかなりの悪で、殺さなければならない状況にあったとしても、俺はこの子を殺せないだろう。女の子を殺せば一生後悔することになる。終わりの見えない一生を延々とだ。
鼻血も止まり、呼吸も落ち着いてきたリーザは仰向けに寝たまま真っ直ぐ空に向けて手を伸ばす。
俺は伸ばされた手をただぼーっと眺めた。その細く白い、頼りがいのない腕には何か、この腕にしては重すぎる何かを抱えている気がした。それはそうだろう、こんな子が無意味に刃物振り回して人を襲うはずがない。何か理由があるに違いないのだ、俺が力になれたら……。
リーザの手がブンブンと虚空を掻く。おまじないか何かだろうか。俺は正座をしてその様を冷静に見守る。
その刹那、リーザが鋭い目つきで俺に顔を向けた。
「立ちたいから手を貸してって言ってるのに。バカ」
冷静に考えたら確かに手を貸せという動作に見えなくもないが言われてはいない。今まで触れるな近づくなみたいなオーラを出しておきながらわざわざ手を握らせるようなことは流石にしないと思ったのだ。
言われたからには俺は快く手を貸してやり、リーザを立たせる。
彼女は立った後、放した手をわさわさしてぼーっと眺めていた。
そして今度は俺とその手を見比べる。
「どうした?」
すると彼女は恐る恐る再度手を伸ばす。また、手を握れと?
マチェーテは地面にある、引き寄せ殺される、というリスクはないだろう。そもそも俺に「殺される」というリスクなど皆無であった。
そっと、その柔らかく冷たい手を握る。
「こっちの方が、いいかも……」
「こっちの方って……?」
殺し屋モードのリーザとは打って変わって、目尻はとろんと垂れ下がり、穏やかに上がる口角は多重人格の可能性さえ信じさせた。
「俺の手は食っても美味しくないぞ」
少しボケをかましてみる。いやもしかしたら本当に俺の手を食べる気なのかもしれない。だがこの神妙な間を繋ぐ言葉として最適なのはそういうことではない。
「お前、人の手を握るのは初めてか?」
リーザは首を横に振る。
「お前の手は、暖かい」
そりゃそうだ、人間だから。
握手をすることにより彼女の心境を変えたのは確かだが、それだけでは満足できまい、今のリーザになら道を聞いても快く受けてくれそうだ。
「……いやだ」
二回目の玉砕。だが俯き気味に答えた彼女のその手は、まだ放してくれそうにない。
何故教えてくれないのか、そこを冷静に探る必要がある。可能性としてはただ俺を困らせたいだけなのか。それとも道を知らない、俺のような新参者であるのか。
「質問を変えよう、お前はここら辺に詳しいのか」
「詳しいもん」
ふむ。それならば俺を困らせたいだけのようだ。
仕方ない、あまりしたくはなかったが、力ずくでいうことを聞かせるしかないか。
◇
レンガの建物が連なる村。時折スープの香ばしい香りがメアリの鼻下を撫でる。
「ここが俺の住む村、マヤだ」
森で出会った青年ジルクの案内により、人の住む村へと足を踏み入れることが出来たメアリ。生活感溢れる人々の声や料理の香り。足元の柔らかい感触は硬い感触に変わる。
「穏やかな村だな、それでいてとても賑わっている」
メアリの評価は高いようだ。ほっと息を吐くジルク。
「気に入って貰えて良かった。村の中を案内するよ」
そう言ってメアリの手を握り、先導する。
しばらく村を歩くと、今度は階段を降りて日光の温もりを感じなくなり、地下へ。
ひんやりと肌を摩る冷気は夏に感じようものなら心地のいいものかもしれない。
「悪いけど、少しここで待っていてくれ」
「分かった、待っていよう」
ジルクは小走りで階段を上り、地下から姿を消す。
ここは個室になっているようだ、迂闊に動き回って物を倒したりなんかしたら事だ、メアリはそこでじっと待っておくことにした。
体感時間などとうに信用出来なくなったメアリだが、およそ五分がたった頃だろうか。階段から足音が聞こえてきた。
「なるほど、やはりそうだったか」
足音は一人のものだけではない、少なくとも十人はいる。陽も届かないこんな場所で自己紹介だなんて陰気なことするとは思えない。
メアリの訝しげな表情に、先頭を切って登場したジルクが問う。
「目が見えなくても流石に気づくか……いや、見えないからこそかな? 今お前はどんな状況にあるか知っているか?」
さっきまでの彼の口調とは比べる手間も必要ないほどに変わっている。トーンは低く、鋭い。視力を失ったメアリの耳にはそれがよく伝わってきた。
「ああ、私は今拉致されているのだろう。そしてこれから陵辱の渦に呑まれるのだ」
きひっと不気味な笑をこぼすジルク。それはメアリの脳内で正解のアラームとなった。
「これだけ長く生きていても人間の性を見抜くには事足りんというのか……」
足音が近づくもメアリは後ずさることなく、呆気なく両腕をとられ壁に押し付けられた。
メアリを押し付ける者の吐息が彼女の前髪に吹きかかる。
「はぁ……はぁ……メアリちゃんだっけ? 可愛いなぁ可愛いなぁ」
声質的に中年の男性、肥満気味と把握。吐息の温度が上がる、顔が近づいて来ている証拠だ。メアリの推測では下劣な接吻のあと、今でも腹部に擦るようにして当てられているナニかで陵辱される。
「コトンよ、これまで溜めておいたものを全て彼女の中に出してやれ」
「言われるまでもないぜジルク? 既に俺のモノははちきれそうなんだ。はやくスッキリしてぇよぉ……」
先に接触したのは唇ではなく舌。メアリの上唇を不気味に撫で回す。
「ああ美味しい……! 美味しいよぉメアリたんん!!」
ヒートアップした男の舌はメアリの唇を強引にこじ開けて口内に侵入する。
メアリの口内を満たすほどの図太い舌。ヌルヌルと彼女の舌に絡みつく。
「ぶっはぁ……んふっふぉお……」
時折出来る唇の隙間から荒い吐息を漏らす男。
下方では「本気。」と書かれたメアリのTシャツが豊満な胸を揉まれるついでに捲られ、地肌に男のナニかが擦られていた。
「すこ、すごい……メアリの肌すごくすべすべしてる……! あぁ……もうぢょっと、やばいかもっ……」
次の瞬間、男はメアリの膝を崩し、反り勃ったソレを彼女の唇に当てる。
「メアリ。コトンは童貞なんだ、みっともないほどに興奮しているが許してやってくれ」
また、きひっと笑いをこぼすジルク。メアリは悲鳴さえあげることはないが、抵抗もしない。しても力では勝てないと分かっているからだ。
「でゅふ……いくら無口なメアリちゃんも奥まで突っ込まれたら……」
今度は舌ではない、舌よりも硬く、それでも肉感のあるものがメアリの口をこじ開けていく。
◇
俺はリーザを力ずくでねじ伏せることに成功した。ペタッと諦めたように座り込む彼女は、それでも首を横に振る。
「もう一戦、あと一戦だけ……」
「しょうがないな、一戦だけだぞ」
お互いが向き合い、リーザの戦慄の眼差しが俺を突く。
「行くぞ……」
俺は拳をぐっと握りしめ、叫んだ。
「最初はグー! ジャンケン……!!」
次の瞬間、二人揃って「ポン!」と虚空にパンチを繰り出す。俺の手は拳、リーザは指を二本立ててVの字。
膝から崩れ落ちるのはリーザ。
「勝てないよぉ……ひっぐ」
俺たちがやっているのはジャンケン。五〇戦五〇勝で俺が勝ち越している。運ゲーであるジャンケンで勝率百パーセントを誇っている理由は一つ、彼女は出す手を「ポン」のかなり前に作ってしまっているからだ。
元々は三回戦の二本先取りってルールだったのに「もう一戦」が連なりこんなことに……。そこまでして俺に道を教えるのが嫌なのか?
「リーザ、そろそろ教えてくれないか。一番近くの村まで案内してくれるだけでいいんだ。その後は俺たちは無関係だ、お前のことは追いかけたりしないし探したりもしない」
村に行けば人がいる、その分だけ情報もたくさんあるはずだ。とりあえず今はできるだけ多くの人と出会い、情報を提供してもらわなければならない。彼女のことはちょっと惜しい気もするが、メアリを捜し出すことが最優先。そのためならたとえ女神のプロポーズであっても迷わず断ろう。
力なく座り込むリーザは口先だけちょびちょびと動かして返す。
「それが嫌なんだもん……」
「ん? 何だって?」
彼女はガバっと立ち上がり、叫ぶ。
「和人と離れるのが嫌なのっ!!」
困った。この反応に関しては返す言葉を用意していなかった。目をそらすでも無く、頬を赤らめるでもない彼女の真っ直ぐな表情は、まさに無邪気、無垢、正直という言葉がこれ以上ないくらいに当てはまる。
俺はちょこんと彼女の頭にチョップ。痛くないはずだが「へぅっ」と反射的に声を漏らし両手で頭を抑えるリーザの愛嬌に口角が上がりそうになるのを堪える。
「人のこと散々切りつけておいて……」
そういえばこいつ、会った時とは随分と変わってるな。人見知りなのか?
リーザは柔らかそうな金髪を人差し指でくるくると絡めさせ、申し訳なさそうに俯く。
「だって……だって」
俺が不死身じゃなかったらこんなやり取りもなかったわけだ。それでも不死身な俺が彼女に出会ったということは何かの縁なのかもしれない。リーザが今までどれだけの人を殺してきたか知らないが、それを問い詰め、責め立てるのは軍人に人を殺すなと言っている様なものだ。彼女もまた何かを守るために「戦っていた」と思うことにしよう。
リーザの頭に、今度は手のひらをポンとのせ、撫でてやる。
「行こうか、一緒に……ん?」
俺の言葉に、俯いていた顔がパァっと上がって歓喜の表情になるリーザを気にする余裕が無い程に胸が焼ける感覚に襲われる。
「なんだ、これ」
熱い、苦しい、鬱陶しい。この嫌な感覚はなんだ?
そして何よりも俺を支配しているのは「不安」だった。俺の中から「自信」と呼べるものが不安に押し潰され、そして更にそれは大きく募っていく。
「和人……?」
俺の異変に気がついたのか、リーザが心配そうに袖を引っ張ってくる。
次の瞬間、心臓にピリっと鋭い痛みが走ると、反射的に俺の顔はリーザの背後を見据えた。
不安が募り、不安に支配され、押し潰され、そしてそこから出た答えは失ったはずの自信を通り越し……「確信」へと変わる。
「メアリ、そこか……」
俺の向く先を振り返るリーザは慌てて俺を止めにかかる。
「この先はダメ」
「どうしてだ」
「マヤがいるから……私でも勝てない」
マヤというのは人の名前だろうか、リーザでも勝てないということはかなり腕の立つ者だろう。しかしメアリが危険に晒されているということは間違いない。この胸焼けともとれる胸騒ぎは放ってはおけないのだ。
歩みを進めようとする俺を両手で抑えるリーザ。
「だめだってば!」
「お前がそんなに恐れるほどの相手なら、尚更行かないといけないんだ俺は」
「どうして?」
大切な友人がそこにいる可能性が高いこと、その友人は盲目であるということ、そして友人もまた、俺のようにここら辺に関しては全くの無知であることを話した。
「その友だち、女の人?」
「ああ、そうだ」
なぜ、そんな絶望に見舞われたような顔をする?
「マヤは……みんな金髪。だって、金髪の人としか……」
この世界もまた、灰色になった。リーザでさえも、灰色に。
その灰色の世界に、赤黒く燃え盛るのは俺の右手、憎悪が幻覚となって現れたのだろうか。
「リーザ、ありがとうな」
彼女の肩にぽんと左手を置き、その横を通過する。
伸ばそうとする彼女の手が届かぬよう、俺は肩に置いた手で勢いよく突き放した。
「ぎゃふっ!」
尻餅を着いたリーザに振り向くことなく、俺は次第に大きくなっていく赤黒い炎を右手に走り出した。
やはりリーザは追ってくる。
「和人、止まって!」
止まる理由が無い、意味が無い。メアリが危険な目にあっている、それだけで「止まる」ということに関する如何なる理由も無意味となる。
強引に止めようと俺の手を握ろうとしたリーザが悲鳴を上げた。
不本意に俺の足が止まる。
「ああっ……! うっ……」
一瞬だけ触れた彼女の人差し指の先が爛れている。
「リーザ……?」
右手の炎を見る。まさかこいつが? 幻覚じゃないのか。大袈裟になるのか適当なのかはわからないが、これはひょっとして魔法? しかし何故いきなり魔法なんかが……トリガーになる可能性といえばメアリの危険? 実際にメアリが危険にさらされている現場を見た訳では無いが、彼女と何かしらで通じた俺の体がそう教えてくれたのかもしれない。そしてそんなメアリ守るための防衛機能……。ここに来る前までは平和な世界にいたから発動することが無かったのか。もしこの炎が、メアリが感じる危険度に比例して大きくなっているのだとしたら……。
既に炎は俺の体を包み込めるほどに大きく燃え盛っていた。
「ごめんリーザ。俺、行かないと」
「私も行く」
また困る反応だ。マチェーテの柄を再び握るリーザに俺は時間を食っていた。
それを察したのかリーザは眉をくいっと上げて力強い声音で続ける。
「これからは、正義のために振るうから。もう『復讐』なんかじゃないから」
その長く、美麗に揺れる金髪は彼女にとって負の遺産となっているのかもしれない。嫌でも視界に映るその金髪に、男に対する復讐心を幾度となく燃やしたことだろう。だが今の彼女は正義に輝く光沢のある瞳を持っている。
「そうか。頼りにしているぞ、リーザ」
俺達は目を合わせた後、再度走り出した。
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