推し変したら婚約者の様子がおかしくなりました。ついでに周りの様子もおかしくなりました。

オルロ

文字の大きさ
12 / 28

いろいろ考えるのは面倒くさいよな。

しおりを挟む
 ルドは推しだ。推しなんだが、顔が良すぎて近づかれるとめちゃくちゃドギマギする。
 
「ち、近い、近いよ、ルド。少し離れて。」

 その顔はおでことおでこ、いやもう少し近づけばキスだって可能な距離だった。
 あまりの近さにきっと、俺の顔はみたこともないぐらい真っ赤になっているだろう。
 その顔はあんまり見られたくない。

「…………これが、ふぁんさ?」

 そんな俺の葛藤を知ってか知らずかルドはあくまで純粋な疑問をぶつけるように俺に尋ねた。ルドとしては俺の反応を見てそれが何なのか確かめたいってのがあるのだろうけど。

「う、うーん。そうだけど。」

 結局ルドにはなんとも曖昧な返事を返すことなった。厳密に言えば過剰すぎて少し違うとは思うんだが、それをルドに説明したところで、あまり理解を得られないと思ったからだ。それに、これ以上推しから何かされたら俺の心臓が持たないってのが俺の本音だ。

「そうか。これがふぁんさなのか。」
「………え、えーと………」
「ふぁんさって、凄いんだな。」

 これが無自覚故の恐ろしいところか……。

 それからルドは終始楽しそうにしていた。

「また、明日もここで一緒に食べてもいいか?」
 
 なんということだろう。

 それは推しからの思ってもみない提案だった。
 ただ、ルドの推しをしている自分としてはそれはとてつもなく魅力的な提案であることには違いない。

 推しと一緒にご飯を食べる約束。

 こんなシュチュエーションは普通に生きていたらなかなか味わえないものだろう。

 それに、推しからそんなにキラキラした目で見られたら断りづらいってのが正直なところだ。

「い、いいの?」
「ふ、なんで疑問形?じゃあまた明日だな。」

 うん、これで良かったんだ。きっと。
 だって推しの笑顔。
 凄く嬉しそうなんだもん。





「あぁ~~~!推しの顔が良すぎるぅぅぅ。」

 あんなの反則じゃないか?
 と一人で意味のない発言をする。
 売店のバイトは休み。
 自室には俺だけで、カインはまだ帰ってないみたいだった。だから、ベッドの上で悶えていても誰にも文句は言われることはない。
 今この部屋にカインが居たらきっとうるさいって怒鳴られてたと思うけど。

「はぁ、ルドってほんと日本に居たら一流アイドル並みに持て囃されても可笑しくないよなぁ。」

 この世界にアイドルという存在がいないのがいいのか、悪いのか。あんなの現実のファンイベントなんかでやってたら発狂もんだったに違いない。
 ルド、彼は本当に罪な男だ。

 ……シュークリームも早く作ってあげたいな。

 あんなに楽しみにしてくれてるんだ。きっと喜んでくれるだろう。

 さて、そんなこんなで門限まであと少しって時間にカインが部屋に戻ってきた。

「遅かったな。何してたんだ?」
「うわー、でたでた。アンタ、オレの行動何でもかんでも把握してないと気がすまないわけ?そういう嫉妬深いとこなくしたほうが良いよー?」
「なわけないだろ!ただ気になっただけだ。……カインだって多少は俺のこと気にしてるときあるだろ。俺だってそれと同じだ。」

 カインの態度は俺を小馬鹿にしたような何処か煽っているかのような感じだ。それに食い気味に返す俺も、その態度に乗せられてしまっているみたいで少し悔しい。

「……アンタ、それわざと?」
「……どういう意味だ?」
「さぁね、どういう意味なんだろうね。」

 なんだコイツ。ナゾナゾでもしているのだろうか?それとも俺がカインに何かしたのだろうか。いや、どちらかと言うと、今何かされてるのは俺の方だ。

「…………降参だ。教えてくれ。」
「えー。別に教えることでもないと思うけど?分からない?」
「分からない。というかなんでそんな嫌みったらしいんだよ。」
「だって、アンタ、無自覚なんだもん。それがムカつくから絶対教えてやんない。」
「なんだそれ。意味わからん。」

 カインはそれ以上何もいうつもりがないらしく、手に着替えを持つとそのまま部屋を出ていこうとする。共同風呂の方へと向かうらしい。

「カイン。夕食は?食べてきたのか?」
「軽く軽食食べてきたからね。この時間帯に食堂行っても余り物しかないでしょ?……まさかアンタまだ食べてなかったの。」
「…………悪いのか……。」
「アンタ、そういうとこだよホント。」

 カインは呆れたようにため息をつくと俺に見向きもせず、部屋を出ていった。
 しかし、これには俺にも言い分がある。
 先ず、アレク寮長。仮に彼に出くわしたとき、1人だと話しかけられるリスクが高い。まぁ、2人の時でも話しかけられる可能性があるが、カインの性格的にうまく話を交わしてくれそうなので一緒にいると心強いのだ。
 だからなるべく寮内では一緒に行動したいと思っている。
 だから、それを実践中なのだ。
 そして、もう一つの理由があるとすればカインとのこと。
 今朝の寝言もそうだが、最近のカインが何を考えているのかいまいちよくわからない。気まぐれなのか、俺を困らせて楽しんでいるのか。
 どっちみち、俺とカインがいまいち仲良くなれてないことが原因なのかもしれないと俺は思う。
 寮だけでなく、学内でも話せればいいのだが、カインは俺と違って交友関係が広い。
 そこに割って入る勇気は生憎俺にはない。

「……人間関係ってこんなに難しいもんだったか?」

 日本にいた頃は考えもしなかったが、問題のある人間に成り代わると、いろいろと面倒くさいことになるらしい。 

 今の俺にはルドという心の拠り所があるだけ救いだ。

 しかし、どっちみち今日は一人飯になるみたいだ。
 この時間帯ならほとんど人はいないだろうし、今行ってもアレク寮長とは出くわさないよな。

 これが特大フラグであることを俺は後から知った。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

転生したら同性の婚約者に毛嫌いされていた俺の話

鳴海
BL
前世を思い出した俺には、驚くことに同性の婚約者がいた。 この世界では同性同士での恋愛や結婚は普通に認められていて、なんと出産だってできるという。 俺は婚約者に毛嫌いされているけれど、それは前世を思い出す前の俺の性格が最悪だったからだ。 我儘で傲慢な俺は、学園でも嫌われ者。 そんな主人公が前世を思い出したことで自分の行動を反省し、行動を改め、友達を作り、婚約者とも仲直りして愛されて幸せになるまでの話。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

【8話完結】勇者の「便利な恋人」を辞めます。~世界を救うより、自分の幸せを守ることにしました~

キノア9g
BL
「君は便利だ」と笑った勇者を捨てたら、彼は全てを失い、私は伝説の魔導師へ。 あらすじ 勇者パーティーの万能魔術師・エリアスには、秘密があった。 それは、勇者ガウルの恋人でありながら、家事・雑用・魔力供給係として「便利な道具」のように扱われていること。 「お前は後ろで魔法撃ってるだけで楽だよな」 「俺のコンディション管理がお前の役目だろ?」 無神経な言葉と、徹夜で装備を直し自らの生命力を削って結界を維持する日々に疲れ果てたエリアスは、ある日ついに愛想を尽かして書き置きを残す。 『辞めます』 エリアスが去った翌日から、勇者パーティーは地獄に落ちた。 不味い飯、腐るアイテム、機能しない防御。 一方、エリアスは隣国の公爵に見初められ、国宝級の魔導師として華麗に転身し、正当な評価と敬意を与えられていた。 これは、自分の価値に気づいた受けが幸せになり、全てを失った攻めがプライドも聖剣も捨てて「狂犬」のような執着を見せるまでの、再構築の物語。 【勇者×魔導師/クズ勇者の転落劇】 ※攻めへのざまぁ要素(曇らせ)がメインの作品です。 ※糖度低め/精神的充足度高め ※最後の最後に、攻めは受けの忠実な「番犬」になります。 全8話。

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

処理中です...