【完結】幼馴染に裏切られたので協力者を得て復讐(イチャイチャ)しています。

猫都299

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二章 復讐のその後

60 番外編5 一心同体(※沢西春夜視点) + 番外編6 イチャイチャ

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 約束した時間の三十分前に着いた。ショッピングモール一階の出入口付近で明を待つ。

 壁を背にしてバス停を眺める。ボーッとしていた。昨日は一睡もしていない。近頃、忙しくて爆睡する日も多かったのだが。今日は明と会えるのが楽しみ過ぎて寝付けなかった。

 まだ時間もあるからと、肩に掛けていたボディバッグから本を取り出す。読み掛けの文庫本を持って来た。このところ読書する時間を作れていなかったからちょうどいい。

 ページを開いた時、バスが停車したのを見た。期待した通り、バス停へ降り立つ人の中に明を見付けた。

 いつもと髪型が違う。普段は後ろで一つの三つ編みにしているのに、今日は下ろしている。ウェーブになっていて頗る可愛い。オレの着ているジャンパーと同じ色合いのジャンパーの下に、水色のトレーナーと濃い緑色のスカートという出で立ちで……辺りをキョロキョロと見回している仕草も。

 その可愛さに、バス停の周辺にいた男どもも目を奪われている。

「凄い可愛過ぎる……オレの彼女が可愛過ぎる……くっ!」

 寝ていないテンションで暴走してしまいそうな予感がする。

 欲望を鎮めようと本に視線を向ける。心を落ち着けてから明と話そう。深呼吸しつつページを読む。しかし。

 文字が頭に入って来ない……!

 それもその筈だ。本が逆さになっていた。

「春夜君お待たせ!」

 暖かい日溜まりのような声だと思う。

「あっ、明。えっ? 今日……何か……えっと髪……」

 テンパってしまい、今気付いた体で聞いた。

「あ、うん。今日は変えてみたんだけど、どうかな?」

「凄くいいです。かわ……何でもないです」

 「可愛い」と言い掛けて、咄嗟に誤魔化した。思い至ったからだ。

 オレ……最近「可愛い」って言い過ぎ? もしかして明に「褒め言葉、それだけ?」と呆れられていないか? 今は大丈夫だったとしても、未来では……?

 悪寒がする。

 今日は「可愛い」を封印して、別の言葉で表現できないかやってみよう。



 寝ていない日はヤバい。普段、気になっている事を口にしてしまった。明がオレの事をどう思っているのか。岸谷先輩についても。

「すみません、つい言い過ぎてしまって。『もう気にしてないです』って言っておきながら……。この話はもうしません。最近疲れていて暗く考えがちでした。今日、明と会えるのを励みにしていました。凄く楽しみだったんです。もし明が嫌じゃなければオレと……イチャイチャしてほしいです」

 口走って目が覚めた。『イチャイチャしてほしいです』。

 オレーー! 内に秘めている願望も漏れてる! もっと……こう……オブラートに包みたかったのに……。



 今日はある目的があって、このショッピングモールへ来た。クリスマスに彼女へプレゼントを渡したい。

 何がいいかなと、結構な時間を使って考えた。そして決めた。指輪を贈る。

 我ながら重いなと思うけど、変更する気はなかった。

 先週には事前の下調べの為、一人でここへ来た。明の指輪のサイズが分からなくて、再び彼女を連れて来店すると宝飾店の店員さんに約束した。



 雑貨や洋服などをキラキラした目で見て回る明は、控え目に言ってもかわ……おっと。

 明がマネキンに着せてあるワンピースを熱心にチェックしている。

「……明はこういう服が好きなんですね」

「花柄で裾の長めなところが好みだけど、合うサイズがないみたい」

「そうなんですね……残念です。着ているところを見てみたかったです。今日着ている服とは少し違う印象だけど、どっちを着ても凄く……げほほっ……いいと思います」

 オーーーレぇぇぇ! また「可愛い」と言おうとした!

 頭を抱えたくなる。

「ポンコツ過ぎて歯痒いな」

 自分の語彙力のなさに失望していた。

「春夜君……?」

 明が聞いてくる。もしかして今、脳内の呟きが口に出てた?

「あっ! すみません何でもないです。次の店に行きましょう」

 誤魔化す為に促した。



 明を靴の店へ誘導し、隣にある宝飾店へ連れて行けた。指輪のサイズもゲットできた。

 だから午後にフードコートでハンバーガーを食べていた際はホッとしていた。まさか明と過ごす、この穏やかな時に暗雲が掛かるなどと想像もしていなかった。

 ふと……目が何かを捉えた。明がポテトを食べている右斜め後ろを、オレたちとは反対の方へ歩いて行く二人組に。

 あれは、内巻先輩と湧水……?

 明がオレの視線に気付いて後方を確かめようとしている。咄嗟に呼び掛けた。彼女に知られたくない。内巻先輩と明が会ったら、四人で行動する事になりそうだから。

「クリスマスイブの日に会いたいんですけど……」

 大事な件を切り出した。

「私も誘おうと思ってたんだよ!」

 屈託なく笑って、オレの欲しい言葉をくれる。
 結果がどうなろうとも。伝えようと決めていた。



 フードコートを出て歩いていた。このショッピングモールには恐らく、まだ内巻先輩たちがいる。危険だ。オレは今日を目一杯に堪能するつもりだった。鉢合わせしないように場所を移動したい。

 明に提案しようと横を向く。明がいない。振り返る。後方で立ち止まっている彼女に違和感を覚えた。

「明?」

「あっ……えっと……」

 彼女が何か言い掛けた。けれど、それを遮って相手の手を引く。

「明、ごめん。今、急いでて」

 ヤバイヤバイヤバイ。

 明の後方……大分離れた場所だったけど、内巻先輩たちがいたぞ? 気付かれたら捉まる……!

 走ってエレベーターの前まで来た。

 だめだ。エレベーターがこの階へ到着するまで、まだ時間が掛かりそうだ。ここで待っていたら見付かる……!

 エレベーター横にあるドアを開け、階段を下った。



「春夜君っ!」

 呼び止められてハッとした。振り向いて明を見る。今にも泣きそうな顔をしている癖に「ごめんね。何でもないよ?」と微笑んでくる。彼女の様子が変だ。不安が湧き起こる。

 何でもない訳がないよな?

 眉間に皺を寄せる。

 理由を話さずに急いだのがまずかったのかもしれない。
 それとも、ほかに何か……。オレが何か、彼女の嫌がる事を……知らず知らずのうちにやらかしていたのかもしれない。

 見据えた。

「嘘つかないでください」

 慎重に言及する。

「ちゃんと言ってください」

 真剣に望む。

 相手の瞳がうるっとする様に胸が締め付けられる。

 彼女が口を開く。予想外の要望を聞いた。

「私、まだ一緒にいたい」

 …………。

 明は「可愛い」次元の可愛さを、軽く超越してきた。もはや言葉では言い表せないくらい尊い。

「だめだ……もう」

 抑えていた思考が音を上げた。

 これじゃあ「可愛い」って言うのも既にオブラートに包まれているよな。
 表す言葉は彼女へ抱く気持ちの一端に過ぎない。

「可愛いです」

 伝えると驚いたように目を大きくして見てくる。

「え?」

 聞き返されたので再び、しっかりと言う。

「可愛いです。今日、特に。何でそんなに……可愛くしてるんですか?」

 期待していた。オレの為にしてくれたんじゃないかなって。

 階段の上の方からドアの開閉音が聞こえドキリとする。下って来たのは親子連れで、内巻先輩たちではなかったので安堵した。

 踊り場まで下りる。親子連れが去った後でキスした。

 もういい。内巻先輩が何だ。鉢合わせても明は譲らない。たとえ明が内巻先輩を選んだとしても。絶対に放してやらねぇ。

「こんな所で……ちょっと待って?」

 明が恥ずかしがって拒んでくる。決意を込めて言った。

「嫌です」

「あれー?」

 聞こえた明るめの声に、背筋がゾクッとする。ついに捉まってしまった。

「明ちゃんじゃーん!」

 階段を下りて来る内巻先輩を睨んだ。

 内巻先輩の後方で湧水が手を合わせて「ごめん」のポーズをしている。湧水も睨んでおいた。

「やらしー。こんな所でイチャついたらダメだよー? あっ! そうだ! 明ちゃんたちも一緒に回ろーよ!」

 早速言ってきた。

 絶対に明は渡さねぇ!

 口を開き掛けた。

「晴菜ちゃん、ごめんね」

 澄んだ声音が響く。驚いて隣を見る。

「今日は春夜君といたいの」

 彼女は神妙な表情で告げた。そしてやや恥ずかしそうに俯いて続ける。

「その……今もイチャイチャできる大切な時間だから、邪魔しないでほしいの」

 絶句した。

「くあーー!」

 内巻先輩が歯軋りしながら呻った。

「分かった。明ちゃん。分かった。分かるよう努力するよ……!」

 内巻先輩は口をへの字にしつつ立ち去った。
 湧水がその後に続く。

 擦れ違う際にこっちを見た。口元をニコニコさせ「じゃな」と一言だけ喋って階段を下りて行く。

 薄々感じていたが。湧水……、まさかお前の彼女って……?



 二人だけになった踊り場のスペースに沈黙が落ちた。

 感動で、暫く言葉が出なかった。

 明もオレとイチャイチャしたいと思ってくれていて、オレを優先してくれた。

「よかったかな? 晴菜ちゃんたちと回りたかった……? 春夜君」

 オレ……明の気持ちを侮ってた。明ってオレの事、そんなに好きなの?

 以前、クイズの選択肢のように聞いた事はあったけど。

 オレの事を気にして、しゅんとしている姿に唾を呑んだ。


◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇

 晴菜ちゃんに一緒に回ろうと誘われたけど、断った。
 彼女たちが去った後で聞いてみる。

「よかったかな? 晴菜ちゃんたちと回りたかった……? 春夜君」

「だめだ……もう」

「え?」

「オレ、自惚れてもいいんですね?」

 デジャヴが起こっている。さっきもこんな会話をしたような……?

 今度は、私からキスしてみた。「どんな反応をされるかな?」と内心ドキドキしていた。さっきと逆で「こんな所で……ちょっと待って?」と言われるのかも?

 言われたら「嫌です」って言ってやろうと思っていた。

「こんな所じゃダメです」

 ん?

 春夜君はきっぱりと言い切って、私の手首を掴んできた。
 導かれるまま建物の外へ出る。

 ショッピングモール前の交差点で、信号待ちをしている時分に尋ねた。

「春夜君……?」

「何でそんなに可愛いんですか?」

「……ありがとう。春夜君に可愛いって思われたくて」

「……そう」

 その後、念願が叶ってイチャイチャできたんだけど…………えっと。ここでは話せないかな。
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