文字サイズ
小
中
大
特大
6 / 67
6 秘密の約束
荒ぶる心に任せた勢いで、柚佳の口唇を食む。顔を少し右に傾けて、より密着するように。
身体の奥底に、くすぶった熱のようなものがある。頭の隅にちらつく後ろめたさが、そこに油を注いでいる。仄暗いそれに突き動かされて、自分を制御する事ができない。
閉じていた瞼を薄く開いて窺う。ぎゅっと目を瞑った様子の彼女は……体を強張らせたように微動だにせず、頑なに口を結んだままだ。唇を離して乞う。
「……柚佳、口を開けて」
「嫌」
目元を赤くした表情で、上目遣いに拒まれたので……背筋がゾクゾクする。
「もしかして。煽ってるの?」
意地悪したくなって聞いたら、目を見開いた必死の様相で弁明してくる。
「ちがっ……! 確かに、教えてとは言ったけど。まだ慣れてないのに、そんな……大人なやつは、早いと思うの!」
慌てた様子の柚佳が可愛くて、小さく笑う。
「慣れたらいいんだ? そして……慣れる予定なんだ」
落ち着き払った顔をして言い及ぶ。微笑み掛ける。
「っ……海里……。今に見てなさいよ」
恨みの籠もった目で睨まれた。
少し前まで彼女の気持ちが解らなくて、知らない人のように見え焦っていたけど。柚佳は、やっぱり柚佳だ。オレの大事な幼馴染で、誰よりも可愛い。
……傍にいられるんだったら、何だってする。篤と柚佳が付き合うようになったら、きっともう「キスの練習相手」という関係も……彼女には必要ない。その為に、わざわざ『あと九日』だと……オレに教えたのだろう。
「篤との仲を応援する」……。この関係は、そんな綺麗なもんじゃない。ただオレが……柚佳を繋ぎ止めておきたいだけの、不毛な関係。目が覚めたら、それまで見ていた夢を忘れてしまうみたいに。彼女もオレの元から去ってしまう。
――嫌だと……叫んでいる自分が、この身の内に存在する。
残りの九日で彼女の気持ちを変えたいと、意識の深くで閃く思考を捉まえた。
続け様に「篤をイチコロにするキス」の練習という建前で「柚佳をイチコロにするキス」を、秘密裏に探るという……下衆な計略に思い至る。
眉根を寄せて沈黙しているオレを、心配そうに見上げてくる。囁きが聞こえる。
「海里?」
薄目で見る。柚佳がいけないのだ。
こんなに頭を悩ませなきゃならないのも。篤に後ろめたく思うのも。自分が……とんでもない心の汚れた奴だと気付いてしまったのも。全部全部、柚佳が可愛いのがいけない。篤と両想いの癖に、オレとキスをする……何を考えているのか分からない柚佳が悪いのだ。
彼女の両手を、自分の両手で握る。指先は細く甲は滑らかだった。少なからず緊張する。思えば、手を繋ぐのも。これが初めてかもしれない。
「覚悟を決めたよ」
「覚悟?」
伝えると、きょとんとした顔をされた。そんな柚佳に笑う。
「もちろんオレたちのこの関係は、篤やクラスの奴らに秘密なんだろ? バレた時に、きっと……お前は振られるからな。オレも絶対、篤に殴られるだろうな。……まぁ、バレた時は。一緒に地獄に堕ちてやるよ」
ああ、ダメだな。柚佳と篤が付き合い出して独りになっても、彼女を忘れられる気がしない。苦笑する。
目の前の柚佳は僅かに息を止めたような呼吸をした後、眉尻を下げて微笑んだ。
「うん。ありがとう海里」
感想 0
あなたにおすすめの小説
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい
過去のある出来事から、空手や合気道を習うようになった私。
そして、いつしか最強女子と言われるようになり、
男子が寄りつかなくなってしまった。
中学では恋がしたいと思い、自分を偽って
学校生活を送ることにしたのだけど。
ある日、ひったくり犯を撃退するところを
クラスメイトの男子に見られてしまい……。
「お願い。このことは黙ってて」
「だったら、羽生さん。
俺のボディーガード兼カノジョになってよ」
「はい!?」
私に無茶な要求をしてきた、冴えないクラスメイトの
正体はなんと、大財閥のイケメン御曹司だった!?
* * *
「ボディーガードなんて無理です!」
普通の学校生活を送りたい女子中学生
羽生 菜乃花
×
「君に拒否権なんてないと思うけど?」
訳あって自身を偽る隠れ御曹司
三池 彗
* * *
彗くんのボディーガード兼カノジョになった
私は、学校ではいつも彼と一緒。
彗くんは、私が彼のボディーガードだからそばにいるだけ。
そう思っていたのに。
「可愛いな」
「菜乃花は、俺だけを見てて」
彗くんは、時に甘くて。
「それ以上余計なこと言ったら、口塞ぐよ?」
私にだけ、少し意地悪で。
「俺の彼女を傷つける人は、
たとえ誰であろうと許さないから」
私を守ってくれようとする。
そんな彗くんと過ごすうちに私は、
彼とずっと一緒にいたいと思うようになっていた──。
「私、何があっても彗くんのことは絶対に守るから」
最強女子と隠れ御曹司の、秘密の初恋ストーリー。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1〜
お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。
とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。
最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。
先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?
推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕!
※じれじれ?
※ヒーローは第2話から登場。
※5万字前後で完結予定。
※1日1話更新。
※noichigoさんに転載。
※ブザービートからはじまる恋
青にきらめく世界は、君の色でできている。
「浅羽くん、今日も好きです!」
「……毎日毎日、あきないね」
「うん! 浅羽くんにあきるなんてこと、絶対にありえないよ!」
素直でまっすぐな優しい女の子。
音無 青羽(おとなし あおば)
×
愛想もなく素行も悪いクールイケメン。
浅羽 蒼空(あさば そら)
陽だまりのような笑顔でまっすぐ思いを伝えてくれる青羽に、蒼空は少しずつ惹かれていく。
だけど彼女は、とある秘密を抱えていて……。
これは、悲しい事故とやさしい神様のいたずらから始まった、甘くて切ない恋の物語。
『バロン秘密結社』の仲間たち 〈Ⅳ〉― 小さな密航者 ー
金太のクラスに新しく転校生がやって来た。
その転校生は意外なことにあの河合老人の孫だったのだ。
ニューヨークから帰国したのだが、スーツケースにとんでもない物が紛れ込んでいた。それは目を疑うくらいの小さなおじさんだった。
ロビンの仲間はその小さなおじさんをアメリカに帰すように奮闘するのだった。
氷の王子へ、とっておきの花言葉!
学校一の人気者は、笑顔を見せない"氷の王子"。
……なのに!
放課後、お花屋さんで見つけた王子は、お客さんににこにこ笑う、とってもやさしい人だった!?
花屋のお手伝いをすることになった心菜には、
お花のひみつと、学校では見られない先輩の笑顔が待っていた!
「ありがとう」
「応援してる」
「ごめんね」
「好き」
お花って、こんな気持ちまで伝えられるの!?
花言葉、お花屋さんのお仕事、そして、ドキドキの初恋!
花屋へ行くたび、先輩の新しい一面を見つけて、心菜の恋はどんどん大きくなっていく!
笑って、キュンとして、読めばきっとお花を贈りたくなる!
花と恋がいっぱいつまった、とびっきりキラキラの青春ラブストーリー!!
※表紙のみAIを使用しています。