【完結】キスの練習相手は幼馴染で好きな人【連載版】

猫都299

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61 ジェットコースター

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 遊園地へ到着したオレたちは早速、ジェットコースターのある場所へと向かう。

 バスを降りて遊園地へと歩む途中、最初に何に乗るかという話題で盛り上がっていた。篤妹が今までジェットコースターに乗った事がないと言っていたので、話がまとまった経緯がある。

 篤妹は目を輝かせている。

「私、ジェットコースターに乗るのが夢だったんです!」

 順番待ちの間も、女子たちはお喋りしている。篤妹が、そわそわした様子なのを……篤が見守っている。奴が口元を綻ばせているのを見てしまった。オレには分かる。妹に対する眼差しではない事が。度を越している。普通の奴がしたら「ニヤニヤ」になるところも、篤だと絵になるからイケメンは狡いと思う。

 オレには心配事がある。

「柚佳……大丈夫なのか? ジェットコースター。お前、車酔いする事あったよな? 激しい乗り物、だめじゃないのか?」

「大丈夫! ジェットコースター、大好きなの!」

「そうか……」

 嬉しそうな柚佳に……オレはそれ以上、何も言えなくなる。
 隣にいるマキが、下を向いて小刻みに震えている。

「マキ、お前――」

 マキに話しかけようとしていた時、オレたちの順番が来た。階段を上って行った先で、ジェットコースターに乗り込む。

「柚佳ちゃんの隣は私!」

 花山さんが柚佳の腕に自分の腕を絡めて、ニヤリとした視線を寄越してくる。

「えっ! えっと?」

 柚佳が何度も、オレと花山さんを交互に見る。
 彼女は花山さんに誘導されて、ジェットコースターの一番前の席へ座らされている。花山さんの後方の席にはマキが座る。その隣にオレ、オレたちの後ろの席に篤と篤妹が座った。
 柚佳が、何かに戸惑っている様子で振り返ってくる。

「柚佳? もしかして、やっぱりジェットコースター苦手なんじゃないのか?」

 もう一度、聞いてみた。

「違うの。そうじゃなくて……」

 柚佳の視線が、オレの隣へと移る。

「え?」

 疑問に思ってマキを見ると、顔色が悪い。その頃には、ジェットコースターは動き始めていて。いつの間にか高い所へと運ばれていた。落ちる。
 ふわっと……ひと時浮遊する感覚があって、その後の事は思い出せない。乗っていたほとんどの時間で、目を閉じていたからかもしれない。



 ベンチに座って空を眺めている。クジラに似た雲が段々と違う形になっていく様を、ぼーっと目に映しているだけの時間。隣で、ベンチの背もたれにダラッと背中を預けている親友が呟く。

「あーかっこわりぃ。何で一発目から、ジェットコースターなんだよ。わざとか? 美南ちゃんは俺がジェットコースター苦手なの、知ってたよな……」

「ドンマイ。でもお前、気を付けろよ。いくら柚佳たちが近くにいないからって。今日は一日中、マキのフリしておけ」

「今、胸の辺りがムカムカしてて。それどころじゃない」

「オレも、そんな感じ」

 同意して、また空を見る。雲が増えてきたな。まさか。雨、降らないよな?

 ……柚佳を心配するフリをして、苦手なジェットコースターに乗らなくて済む口実を探したけど……ダメだった。初めて柚佳と遊園地に来れて、苦手だから乗れないとは言えなかった。結果、今はマキと二人で、ベンチに座って休んでいる。

 ジェットコースターから降りた後、具合の悪くなったマキとオレの為に、柚佳と花山さんは飲み物を買いに行ってくれた。トイレに行きたいと言い出した篤妹と、一人で行かせるのは心配だからと言い残し付いて行った篤は……トイレを探しに行ったまま戻りが遅い。迷っているのかもしれない。

「お前、正直に言えばよかっただろ? ジェットコースターは苦手だから乗らないって」

 オレも、そんな事を言える立場じゃないけど。言ってしまう。

「言える訳ねーだろ! もしかしたら、今なら苦手なのも克服できるかもしれないって……思っちまったんだよ! 俺が愚かだったよ!」

 立ち上がった親友が、キレ気味に反論する。オレたちの近くを歩いていた親子が、早足に通り過ぎて行く。

「お前、その格好で男声出すなよ。めっちゃ怪しまれてるぞ」

「あいつらにバレなかったら、そんな事どうだっていい」

 ボスンと、もう一度ベンチへ座って怒りを表すように腕組みしている親友……マキ姿の和馬を眺める。
 今日は白の膝下までの長さのタイトなスカートに、黒のハイネックのインナーとワインレッドのカーディガン、黒タイツという出で立ちだ。

「その服、どうやって調達したんだ?」

 女物の制服といい……日頃、気になっている謎について尋ねた。マキは、ぶすっとした顔で返答する。

「姉貴に借りた」

「へえ。もしかして……お前のその趣味も、お姉さん譲りなのか?」

「俺の趣味じゃねーし! 姉貴の趣味だ! 美容師やってて、よく化粧の練習台にされてた。だから覚えちまって、自分でもできるようになった」

「なるほど」

 親友の苦難の歴史を聞いて笑った。和馬は細いし、顔も中性的なタイプだ。けれど、そこからこんな美少女が生まれるとは。

「お姉さんスゲーな」

 腹を押さえて笑った。いつもなら「他人事だと思って! 俺の身になってみろ!」とか言い返される筈の場面で、急に静かになった親友を不思議に思う。顔を上げる。

 十メートルくらい前方に、飲み物を胸に抱えた花山さんと……柚佳。立ち止まっていた彼女たちと視線が重なる。柚佳が目を見開いて、こちらを凝視している。………………今の話、聞かれた?


 頬に冷たい雫が当たる。雨が降り出したと気にする余裕もない。オレたち四人は立ち尽くした。
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