小さな魔法使い

なかなか

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オープニング

02

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みなさんこんにちは、ミーレです!
最近寒くなって来ていますがいかがお過ごしでしょうか

わたしの住む村も、つい先日冬を迎えました
コンコンと降り積もる雪はとても幻想的で、思わず外を駆け回っていたらお母さんに怒られてしまいました…

「ほら、ミーレ、また手元がおるすになってるよ!」

「はぁ~い…」


しかしここ最近とても寒くなったため、修行がとても大変なんです。
魔法薬を作るには特殊な薬草を使うんですけど、それが取れるのは山の奥で、冬には雪で閉ざされるような場所にあるんです。

だから、今日は今年最後の採取のためにお母さんに無理やり駆り出されてしまいました。

何が辛いかって寒い中山奥まで行かないといけないんです…

どうして遊ぶときはあまり寒く感じなかったのに今はこんなに寒いんでしょうか。

吐く息が白く空に立ち上るのを見ながら、手元に目を戻し採取を再開します。
あぁ、これが全部砂糖だったらいいのに…
そしたらちっとも苦にならないのに。

「ほら、あと少しだから頑張りなさい」

「うん、わかってるー」

わかってるけど、辛いものは辛いんです。
手も、手袋してるのにかじかんでほとんど感覚もないほどです。

「これが終わったら、いいところに連れてってあげるから」

「え~、いいところー?」

「そ、いいところ。あんたもきっと気にいると思うよ」

「うーん…じゃあ頑張る!」

しかたない、頑張りますか!
はぁあああああああ!
やる気を注入!
ミーレの作業速度が5上がった!
さぁがんばるぞぉー!

「まったく、いつもこんぐらい真面目に取り組んでくれれば…」

「ん?何か言った、お母さん?」

「いーや、なんもいってないよ。その調子でがんばりなーって」

「はーい」

最近ママはお小言が多くなっているような気がします。
なんでなんでしょうね。

ーーーーーー

「お、終わった~!」

「はい、お疲れ様。うん、こんだけあれば残りのこの冬の分は持ちそうだね」

「えへへへ、私えらいでしょー?」

今日は本当に頑張ったから、お母さんの取った量ともあんまり変わんないほどです!

「ん~、量はいいんだけどね…、ほら、これ見てみなさい?」

そういってお母さんが私の取った分の籠から一房の薬草を取り出します。

えっと、これはうん、サミュの草です。
サミュはいろいろな薬の元になる草で、私達の生活には欠かせないんです。
魔法薬だけじゃなく、一般の薬にもなります。

「サミュがどうかしたの?」

「ほら、この裏側。赤く斑点模様があるでしょ?これ、サミュモドキじゃないの。よくみないと」

「うわぁ…ご、ごめんなさい…」

サミュモドキっていうのは、サミュによく似た草なんですが、その裏にはさっきお母さんが言ったように赤い斑点があるからそこを見れば一目瞭然なんですが…

やってしまいました…
ミーレ、一生の恥というやつです…

「これには、微量だけど毒があるんだからちゃんとみないと」

「はーい」

「帰ったらもう一度、一緒に確認し直そうか」

「うん…」

はぁ、ショックです…やっぱり自分のペースは守らないとダメですね
ミスが多くなって結局手間と時間が余計にかかってしまいます。

「ほら、元気だしな!誰にだって最初はこんなミスぐらいあるさ、そのために私がいるんだから」

「うん…」

お母さんはそう言ってくれるけど、でも、やっぱり悔しいものは悔しいんです!
やはり将来立派な魔女を目指す身としてはこんな初歩の初歩で失敗するなんて…

「まったく…ほら、はやくいくよ!」

「え、ど、どこに?」

「言ったでしょ?いい場所に連れてってあげるからって。わすれたの?」

「う、ううん!覚えてる!」

…その、本当は少し忘れちゃってたりします!

「さ、ほら自分の籠背負って…少し歩くからね、ゆっくりいくよ」

「あいあいさー!」

お母さんは一体どこに連れて行ってくれるんでしょうか!
今からドキドキです!!

ーーーーーー

「お、お母さんまだ着かないのー?」

歩き始めてからもうどれほどだったでしょうか…
足はもう棒のようで頭も自然に下がってしまいます。
歩き通しだったから寒さはあまり感じないけど、でもさすがに疲れて仕方がありません!
背負った籠の重さもまた大変なもので…

なんでこんなに私採取しちゃったんだろう…

「ほら、もう少しもう少し、この坂登り終えたらつくからがんばんなー」

私よりもっとたくさんの荷物を持っているはずなのにお母さんはどんどんスイスイと先を歩いていきます。

何か歩くコツでもあるんでしょうか。今度聞いてみようと心のメモに書いておきます

「うー、おーもーいー!」

「声だけは元気なんだから…ほら、もう少しもう少し!がんばりなー」

ようやく長かった坂も終わり、膝に手をつき大きく息をします。
ここでゼイゼイと息を荒だててはむしろ疲れてしまうので要注意です!

「はい、お疲れ様!ほら、前見てごらん?」

「う、うん…」

正直そんな余裕はなかったのですけどでも、頑張って前を向きます。

「うわぁ~、す、すごーいきれい…」

そこには、まさしく絶景が広がっていました!
あれほど長い坂もこのためならばなんのそのと思えるほどでした!

「でしょ?ここ、お母さんのお気に入りの場所なんだ、みんなには秘密なんだからね?」

「う、うん!」

眼下のたくさんの木々に雪がまるで砂糖のようにかかっていて、空からのお日様の光をキラキラと反射しています!
風が火照った体を冷ましてくれて、とても心地が良いのです
遠くには空を飛ぶ鳥の姿や、雪と雲のかかった山も見えています。

「じゃ、時間もいい頃合いだしご飯にしようか!」

「うん!」

お母さんが自分の籠の下からシートとお弁当を出してくれます。
私も、自分の籠の下から水筒を取り出します。
実はこの水筒、魔女御用達のもので保温効果がすごいんです!

その名も、魔法瓶!
…いえ、まぁ魔法じゃなくてただの技術品なんですけどね。

今朝入れて時間が経っているのに今でもポカポカ暖かいお茶が飲めるんです!

「じゃ、シート広げるからそっち持って」

「うん」

ばさぁ!
シートが風をはらんでゆっくりと地面に広がります。
重石代わりに籠を置いて、真ん中にお弁当と水筒をおきます。

「じゃ、はい、これ」

といって、お母さんがおしぼりを渡してくれます。
魔法瓶と同じような入れ物の中に入れていたのでぽかぽかしてて温かいです
かじかんだ手が痺れるような感覚がして、少しづつ感覚戻ってきました

手をあらったら、とってもおいしいお弁当の時間です!

「じゃ、いただきましょうか」

「うん!」

ーーーーーー

「はぁーおいしかった!」

「だねぇ…」

食後に暖かいお茶を飲みます。
きれいな景色を見ながらだと飲み慣れたお茶も格別に美味しく感じられます!

「ほら、ミーレ、あれを見てごらん」

「ん?」

お母さんが指差す方には…

「あれって…あれ?大きな…とり?」

鳥が飛んでいました。
でも…その大きさが、縮尺がなんだかおかしいような気がします

その近くに同じように鳥が飛んでいるように見えるんですが、大きさが全くもって違います。

大きい鳥の方がこっちに近いんでしょうか?

「うん、大きいでしょ?あれ、カミノザっていうんだよ」

「へ~。…ほんと、おっきいね!」

悠々と空を飛ぶその姿はここからではよく見えませんでしたがとてもかっこよかったのです
ふと、お母さんの方を見てみると何やら口に手を当てています

「なにやってるの、お母さん?」

「んー?ちょーっとみてな」

そういうと、すぅーって大きく息を吸うと、口から指笛でぴー!って大きな音を出しました!

ピュゥィーーー!

「うわぁ!いま、いま返事したよね!」
 
なんと、お母さんの指笛に反応して鳥さんが返事をしたんです!

「ふふふ、驚くには少し早いよ~、お、キタキタ」

「へ?って!え、ちょ、こ、こっち向かってない!?」

鳥さんがこっちに向かってきました!
ゆっくり旋回していたのに、こっちにまっすぐ進路を取ってきます!!

「だいじょぶだぁーいじょーぶ、ほら、今たつと風で吹き飛ぶよ」

鳥さんはとても早く飛ぶのか、気がつくともうその羽ばたきを感じられるほど近くにいました。
そして、そのままこちらに近づいたとおもったら、私たちの目の前にゆっくりと着地したんです!

「よーしよしよし、よくきたねー。」

なんと、お母さんは鳥さんの近くに行ってその頭をなでなでしちゃってます!
鳥さんはやっぱりとても大きくて、私なんか一飲みしてしまいそうなほどです
お母さんの背の二倍か三倍近くあるんじゃないでしょうか。

「だ、大丈夫なの??」

「うん、ほらミーレもこっちきてこっちこっち」

お母さんがオイデオイデします。
私は恐る恐るお母さんの近くに行きました。
その間鳥さんはというととても大人しそうにお母さんに頭をださなでなでされたままです

「ほら、ミーレもなでなでしてみなー」

そう行ってお母さんが私の手を掴んで鳥さんの方に差し出します。

「え、わ、わ、わ!」

ふかぁ

とりさん、毛がとっても深くてモコモコしてました!

「ピュゥィ!」

「きゃ!」

鳥さんがいきなり鳴いたと思ったら私の方に首をグリグリしてきました!
一瞬食べられると思ったばかりにもう心臓がばくばくです…

「あたまなでてー、だってさ。ミーレもなでなでしてあげな」

「え、いいのかな」

「ピュゥィ!」

もちろんいいよ!とばかりに鳥さんが鳴きました。
私は、また恐る恐るとその頭に手を伸ばします。

「よ、よーしよし…」

胸と違って、頭は少し毛が薄いのか固い感触がします。
でも、やっぱりとっても暖かったです!

(わぁ、かわいい…)

私よりも何倍も大きいのに、そう思ってしまいました。
まるで、赤ちゃんのように甘えん坊さんです

「ふふ、気に入ってもらえたようね、ミーレも」

「う、うん…ど、どうしたの?この子?」

私は鳥さんをなでなでしたままお母さんの方を向いて質問をします。

「その子ね、私が育てたのよ。たしか…ミーレが3つ4つぐらいお姉ちゃんだったかな?」

「え、お母さんが育てたの!?」

「そ、びっくりした?ミーレがハイハイしてる横で育てたのよ」

「うん…すっごーい、びっくりした!」

「ふふ、それはよかった」

「でも、なんで今まで教えてくれなかったの?」

「ん?なにが?」

「この子のこと!教えてくれてもよかったのに…」

そしたら、もっと仲良くなれたのに!

「うーん、教えてあげたかったのは山々なんだけどね、タイミングの問題もあるし、何より村には連れてこれなかったからね」

「そ、そっかぁ~」

実は村の人たちには私たちが魔女であることは秘密なんです!
だから、この子みたいに大きな鳥さんを連れていったら怪しまれてしまうわけで…

カミノザなんて鳥、初めて知りましたがこんな動物が普通の動物な訳がありません。
きっと魔法ありきの動物なんでしょう。

「それじゃあ仕方がない…のかな」

「ま、ここにくればまた遊べるさ。それに、ほら、あとでさっきの指笛教えてあげるから」

「本当!?やった!」

ふふふ、これはいっぱい練習してこの子と遊べるようにならないと、です!

「じゃ、そろそろ帰ろうか」

「えー、私まだこの子と一緒にいたーい」

「だーめ、ほら、早く帰って薬草処理しないとダメになっちゃうよ?」

「あ…そうだったぁ…」

名残惜しいけど鳥さんとはここでお別れみたいです…

「そういえば、この子の名前なんていうの?」

「ん?あぁ、ぴーちゃん。ぴーちゃんっていうのよ、ね?」

「ピュゥィ!」

うっわーをぉ
なにそのネーミングセンス…
ほんと、私の名前パパにつけてもらってよかった…

「ぴーちゃん…そ、その、よろしくね」

「ピュゥ!!」

ぴーちゃんが気に入っているならいいけど…

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