陽キャ転生〜N oと言える日本人なので魔王討伐はいたしません〜

彩根梨愛

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一章

10.高尚な勇者

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ゴーレム討伐から数日。
城中は鬼才の勇者に湧いていた。
ゴーレムを物理攻撃用の剣を使わず魔法のみで討伐したというのは陽貴が想像に至らないほどの偉業であるらしい。
本来ゴーレムというのは魔法耐性が高くとてもじゃないが魔法で討伐できるものでは無いらしい。
つまり本来装備のない陽貴と魔法専門のシュオウでは討伐は難しく、かなり危険な状況だったということである。


「流石歴代最高の能力を持つといわれる勇者様でございます」

「まさかゴーレムをサンダーで倒してしまわれるとは……慈悲深き神よ此度の勇者様の召喚誠にありがとう存じます」

今日だけで五組を超える貴族からの賞賛を受け陽貴はただ微笑みを浮かべるのみ。
実際この数日でどれだけの人間に声をかけられたかは二十人を超えたあたりから数えるのをやめた。
シュオウは上司であるスズと、直接聞きたいと呼び出され王に報告を入れただけのようだが何処からか噂が広がっているらしい。
全くもって嬉しくは無いし、そもそも陽貴には説明されてもその凄さがいまいち分からなかった。


「偶然上手くいっただけですよ。シュオウが居るって分かっていたから何かあったとしても大丈夫だろう、ってやりたい放題しただけですし。彼に感謝しないと」

「ハルキ様…!光栄です」

「なんて謙虚なお言葉。流石謙虚で慈悲深く高尚な方だと噂の勇者様でございます」

「ん~。謙虚とかでは無いんですが」


陽貴からすれば魔法攻撃が効きにくいのは最初の攻撃で分かったが、なんの装備もないし仕方ないから魔法攻撃をしただけである。
しかも様子見に初級を打とうとして詠唱を忘れ中級を打ってしまったというグダグダぶり。
決して彼らの言う高尚な勇者とは程遠い。


「勇者様!」


いくら気が長く怒ったところを見たことがないと元の世界で言われた陽貴も、こうも毎日何度も同じ話で時間を取られると、疲労は感じるし色々支障が出てくる。



「……すみません。先生をおまたせしているのでもう行かなくては。また会えたら声掛けてくださいね。失礼」


終わったと思えば次々現れる貴族たちのご機嫌を損ねない程度にそう言うと急ぎその場を離れた。


「…キリが無い」

「それだけの事をしていますからね」

「……まぁみんながそう言うならそうなんだろうね」


少々疲れの見える顔で陽貴とは反対に自慢げなシュオウを引き連れ歩いていると先程とは打って変わった様子の貴族の様子が視界に入ってくる。
いつかの適性検査と同じ。
この国の人間は勝手に陽貴を崇め奉り、畏怖し軽蔑する。
この度の偉業はよりその溝を深める結果となった。
それも致し方ないことだと分かっているし、連れてきておいて勝手な話だとは思うが彼等からすれば過ぎたる力は恐ろしいものだろう。


「二週間後にハルキ様出立を祝う舞踏会がありますからね。少しでも今のうちに顔繋ぎをしておきたいのもあるとは思いますが」

「正直そういうのは遠慮したいんだけどね」


元の世界には舞踏会なんてものはなかったし、一般庶民の陽貴には肩身が狭く息が詰まるだけである。
そもそも出立するだけで大袈裟だというのが正直な感想であった。
そういうのは成果を出してからではないだろうか。



「ハルキ様も嫌なことがあるんですね」

「嫌というか…嫌なのかな。まあ俺庶民だからマナーとかダンスとか出来るかなとは思う」

「ふむ…ハルキ様の場合は多少型破りでも皆目を瞑ると思いますよ。神の使いにマナーが必要かという話ではあるので」

「ああ…神の使いね、そうだったな…なんか自覚なくて忘れちゃうんだよね」


少しは自覚を持った方が良いのかと思ったりもするけれど元々普通の人間として生きてきたのに神の使いだなんて言われて受け入れられない。
それで図に乗って有頂天になるわけにもいかないが、かといって身を削り期待や羨望を受け、応えなければならないというのも事実。
正直メリットがなく損な役回りだなというのが陽貴の感想である。
今までの勇者はどんな人間だったのだろうか。
同じ魂という割に周囲の反応からして自分が今までの勇者と違うことは薄々気がついている。三つ子の魂百まで、なんていうが現代の考えでは育つ環境が変われば人格も変わるという考え方もあるので違って当然なのかもしれない。


「ハルキ様はそういうところが親しみやすくて民から人気が出そうですが」

「そう?でも威厳ある感じに〃我は神の使いである、神に与えられしこの力で其方らに安寧をもたらそう〃とか言ったほうが人気でない?」

「それは崇め奉りますね」

「思っていた人気ではないかも」

「hum…ハルキ様は今のままでも存在が神々しいので安心してください」


存在が神々しい人は街でハンカチを落とした人と話し込んだり、カフェで堂々とお茶をしたりなんて溶け込めないだろうと思うのはハルキだけだろうか。


「あ、着きましたね。僕は控えることしかできませんが、陰ながら応援しておりますねハルキ様!」

「ありがとうシュオウ」


そして今日も今日とて何も躓くことなく陽貴の勇者になるための講習は淡々と過ぎていった。
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