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一章、1
1、14静かでない朝
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静かな朝の空気の中、俺は目を覚ました。部屋の明かりは付いている。ハワイアンミュージックも流れている。ただ部屋は寒くて、起き上がるのを躊躇う。スマホを確認すると5時。問題なく仕事に間に合うだろう。
横を見ると隆志は寝ている。俺は修学旅行の時を思い出していた、隆志と同室でやや夜更かしをして絵を描いていたあの日々を。だが同時に気がついた。
「亮介が居ない?」
亮介の布団は乱暴に捲られて彼はスマホすら置き去りに。俺は立ち上がる。
「亮介! いるなら返事をしろ!」
俺は戸棚を開けてみた、中には居ない。2階の他の部屋を見ても亮介の姿はなかった。
階段を駆け降りてリビングにも明かりが付いていない。戸を開けて入ったら亮介はいた、彼の周りには描きかけの紙が散らばっている、隆志とノリで買ったスケッチブック、亮介にせがまれて買ったアナログの漫画セット、Gペンなどのペン類も使われた形跡がある。
「良かった。亮介! 今日はいつにも増して頑張ってるな」
近づいた俺は彼の顔を見た。血走った目、目の下には隈が現れ、手にはペンだこができて血が滲んでいる。
「亮介。まさか夜中もやってたのか? もう休め」
「ダメなんだ、休ませてくれない!」
亮介の手を見たそこには大きな手が添えられている。俺は亮介の背後を見た、あの大きな女性がいる。朝になってやや明るくなった部屋に人の住居で過ごすには余りにも大柄の女性が。
「亮介……!」
俺は亮介を掴む女性の手を掴んだ。俺の手では女性の腕をしっかりと掴むのは無理だった。亮介を引っ張ってもびくともしない。
そして俺は彼女の体は冷たく氷に触れたような感触に驚く。
「お願いします! 亮介を許しください!」
女性は俺の声に反応してその目を向けた。青白い顔に垂れた前髪の奥に見える暗闇、周囲の明るさが一切入らない絶対的な闇。その目に後ずさる俺。逃げたいが逃げたら亮介が……。
「何があった? うえー!」
後ろから隆志がやってきた。
「引き離そうとしたが、離れなかったんだ!」
「取り憑かれちまったってことか。だが、なぜ亮介は描き続けてる?」
「確かに。亮介、なぜ漫画を描こうとしてる?」
「私を描けって、ずっと聞こえてるんだ。後ろからずっと女の声が!」
俺と隆志は顔を見合わせた。
「亮介は下書きしか出来ない」
「このままじゃ危険だろう。睡眠不足が続いたら命に関わる」
「じゃあ隆志が」
「ごめん直樹。本当は僕ずっと描けないんだ……。なんか手が止まっちゃうんだよ!」
「でも俺もそんなに時間取れない……」
「直樹は仕方ない。今日は僕が見ててやる、仕事行ってこいよ」
「いや。俺も休む。2人より3人だろ」
「そうだな!」
亮介は答えなかった、ただ自分のタブレットとスタイラスペンを持ち血走った目を向けている。
彼がこんなに集中しているのを見たのは初めてだった。でもこんなに苦しむ彼を見たのも初めてだった。彼の人生だってここまで人並みに苦労してきたのに。
横を見ると隆志は寝ている。俺は修学旅行の時を思い出していた、隆志と同室でやや夜更かしをして絵を描いていたあの日々を。だが同時に気がついた。
「亮介が居ない?」
亮介の布団は乱暴に捲られて彼はスマホすら置き去りに。俺は立ち上がる。
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俺は戸棚を開けてみた、中には居ない。2階の他の部屋を見ても亮介の姿はなかった。
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「良かった。亮介! 今日はいつにも増して頑張ってるな」
近づいた俺は彼の顔を見た。血走った目、目の下には隈が現れ、手にはペンだこができて血が滲んでいる。
「亮介。まさか夜中もやってたのか? もう休め」
「ダメなんだ、休ませてくれない!」
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俺は亮介を掴む女性の手を掴んだ。俺の手では女性の腕をしっかりと掴むのは無理だった。亮介を引っ張ってもびくともしない。
そして俺は彼女の体は冷たく氷に触れたような感触に驚く。
「お願いします! 亮介を許しください!」
女性は俺の声に反応してその目を向けた。青白い顔に垂れた前髪の奥に見える暗闇、周囲の明るさが一切入らない絶対的な闇。その目に後ずさる俺。逃げたいが逃げたら亮介が……。
「何があった? うえー!」
後ろから隆志がやってきた。
「引き離そうとしたが、離れなかったんだ!」
「取り憑かれちまったってことか。だが、なぜ亮介は描き続けてる?」
「確かに。亮介、なぜ漫画を描こうとしてる?」
「私を描けって、ずっと聞こえてるんだ。後ろからずっと女の声が!」
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亮介は答えなかった、ただ自分のタブレットとスタイラスペンを持ち血走った目を向けている。
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