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一通の手紙

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そんなある日。
シンデレラの家に一通の手紙が届いた。
封を切り、中で二つに折り畳まれていた手紙を開いてみると、そこにはこう記されていた。

『この度、我が国の王子主催の舞踏会を開くことになりました。
身分を問わずご招待致しますのでお気軽にお越し下さい。
ですが、ドレスコードがございます。この規則は守って頂きますよう、よろしくお願い致します。
日時は二週間後の夜七時から。
会場は城の中央ホールを開放致します。
それでは、貴方様のお越しを心よりお待ちしております。
舞踏会取締委員会』

読み終えて、シンデレラはまず思った。
ー身分は問わないくせにドレスコードは守れって、つまり、ごく一般の町民は端から受け入れてねぇじゃねぇか、と。
下らない、とくしゃくしゃに丸めようとしたところで、双子がシンデレラの肩越しに手紙を覗いてきた。
「姐さん、手紙?誰から来たの?」
「え、王子様?舞踏会を開くの?王子様に会えるの?」

「「行ってみたい!!」」

弾丸のように飛んでくる義妹たちの声とキラキラした目。
たった今、手紙を捨てようとしていたとは、とても言えなかった。
「そうね、でもドレスコードがあるのよ。
私たちの家には、ドレスも、それを買うお金もないわ。」
シンデレラはなだめるように双子の方を向いて言った。
しゅん…、と落ち込んだ様子の双子に、シンデレラは胸が苦しくなる。
シンデレラ家族の生活は、小物や服を作り、それらを売ることで、なんとか支えられていた。
しかし、それはあくまで、必要最低限のお金しか捻出していなかった。
とてもドレスを買うお金まで作ることはできないのだ。
シンデレラはまず父を恨み、さらに、余分なお金を生み出せない自分をも憎らしく思った。

ーふと、一つの考えが頭に浮かんだ。
自分は一体、何をしてお金を作っていただろうか。
そう、『小物や服を作って』、だ。
何も、ドレスを買わなくても、作ればいいではないか。
庶民は舞踏会に来れないだろうと思っている王子共々、ぎゃふんと言わせてやる、とシンデレラの雑草魂に火が点いた瞬間であった。
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