天才星術師にティータイムを

かるぼん

文字の大きさ
10 / 16
第一章

シュンカの家にて

しおりを挟む
翌朝。

セイトとミラは、屋敷を出て、北の森へと向かって歩いていた。

「朝の空気は気持ちが良いなぁ。
これが仕事じゃなかったら、もっと気持ち良いんだろうなぁ。」

未だにぶつぶつと愚痴をこぼすセイトに、ミラは呆れたように言葉を返す。

「まだ、言ってるんですか。
そもそも、引き受けたのはセイト様なんですから、しっかり責任持って仕事してください。」

横を歩くミラを半目になって睨むセイトに、怯むことなく事実を述べるミラは、強者である。


他愛もない世間話をしながら歩いていると、森が見えてきた。
その近くに一軒の家が見えた。

「ああ、あれがシュンカの家だな。」

シュンカに、『森に向かって歩いてくればすぐに分かるから』、と言われていたので、確証を持ってあの家がシュンカの家だと分かった。

家の隣には柵で囲まれた土地があり、そこは畑のようだった。
これが、昨日、シュンカが交渉に持ち出した"茶畑"だろう。

玄関の前に立ったセイトは、手の甲でノックをした。

中から女性の返事が聞こえて、すぐに扉が開いた。

シュンカにそっくりな女性だったが、シュンカよりも大人びた顔立ちをしている。
シュンカの母親だろう、とすぐに察しがついた。

「あら、こんにちは。
えっと、もしかして、占い師さん?」

首をかしげる女性に、ハッとして、セイトは自己紹介をした。

「はじめまして、町で占い師をやっております、セイトと申します。
シュンカ殿の依頼で参りました。
シュンカ殿は…」

「あ!占い師さん!!
来てくれたのね!」

またもや、セイトの言葉を途中で遮るシュンカ。

「こら、シュンカ。
占い師さん、まだ話終わってなかったでしょう?
人の話は最後まで聞かないとダメよ。」

母親が娘に注意をする姿は、まさしく親子だった。

「俺は大丈夫ですので、お気になさらず。
それでは、俺はこれから森に入り、弟君を探して参ります。
あなた方は、危険ですから、家の中で待機していてください。
では。」

一礼して、後ろを向いたセイトを、シュンカが呼び止める。

「あ、あの!」

セイトが振り向くと、不安げにこちらを見るシュンカがいた。

「あ、あの…。」

気まずそうにもじもじとするシュンカに、「ああ。」と言って、体ごとシュンカに向き合った。

「?」

不思議そうにセイトを見るシュンカに、セイトはにこりと笑った。

「そういえば、弟君の名前、聞いてなかったよ。
探すとき、名前を呼べないのはつらいからね。」

本当は、シュンカが何を言いたいのかは分かっていた。
きっと、

ー危ない目に合わせることになってごめんなさい。

そう言いたかったのだと思う。

でも、そんな気遣いは無用だ。

安心させるように、優しく微笑んだ。

「えっ、えと…。」

予想外の問いかけだったのだろう。
シュンカは一瞬、戸惑った様子だった。
しかし、もやもやしていた心が、セイトの堂々とした立ち姿、言葉を聞いて、晴れていくようだった。

「弟は、シュウト、っていうの。
私たちの名前を合わせると、『春夏秋冬』になるのよ。
素敵でしょ。」

にかっと笑うシュンカを見て、セイトも安心した。

「ああ、素敵だな。
それならやっぱり、二人は一緒にいないといけないな。」

そう言って、セイトとミラは森へと入っていったのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...