逆転機ニルヴァーシュ -朝斬りの夜明け-【バンダナコミック01】

ボス子ちゃま

文字の大きさ
15 / 50

15話ー『再会・グレゴリオ・ライオット二世』

しおりを挟む
(ーーウゲッ、まさかグレゴリオのヤツと再会するとはッ!!)

 引き攣った笑みを浮かべて俺も半歩と下がると、横合いではミントが思いっきり頭を振った。

「しゃしゃっ、借金のご返済でしたら、必ず後日には致しますので!!
 今日のお取り立ては、何卒ご勘弁を……っ!!」

 ブゥン、と振り下ろされた頭が、店内の床につかん勢いで思いっきり下げられる。
 ペコペコと何度も頭を下げるミントに、グレゴリオは「んっ?」と視線を上げて顎に手をつく。

「借金? あぁ、そう言えばここは、あのオンボロ魔道具店、ミント・ボンハーネット魔道具店でしたか」

 思い出したようにクツクツと喉を鳴らしたグレゴリオは、手近にあった本棚から一冊の魔導書を取り出す。
 その中身の魔導書を床へと落とすと、

「全く汚い店内だ」

 そう言って魔道具を足蹴にして、粉々に踏み砕いた。

「ひっ!!」

 と言うミントの情けない声があがる。
 店の事情は詳しく知らないけど、ひょっとしてミントって俺の友だちなんじゃない?
 ーー貧乏。
 そう言っていたミントの言葉と“借金”と言うワードから、どうやら俺たちは似た者同士であることを理解する。
 つまり俺たちは、お互い様。
 金に恵まれない腐れ縁の仲と言う訳だ。

「にしても酷いことをするな。勿体ねえ……」

「お前、一体何をしている?」

「何って、見て分かんねえのかよ?
 店内の掃除をしているんだ」

 そう言って俺は、床に散らばる魔道具の欠片を拾い集めて、そのすべてをミントの手元に返してやる。

「ゴミは、ゴミ箱に捨てろとお母さんから習わなかったのか?」

「ゴミは、リサイクルしたほうがどう考えてもお得だろ?」

 対抗心を募らせ、俺はグレゴリオに口答えをする。
 せっかくミントが作った魔道具に対する所業と言い、俺を殺したことと言い。
 俺はどうにもグレゴリオのことが、現時点ではあまり好きにはなれないみたいだ。

「ふん。どうやらこの店内には、ゴミ拾いが二匹居るだけで、お目当ての不法入国者は居ないようだな?」

「まっ、そういうことだ。引き取ってくれ」

 俺がグレゴリオにそう告げると、バツの悪そうにフンと鼻を鳴らしたグレゴリオは、俺から視線を外して店内の様子を舐めるように見る。

「とは言え、このまま手持ち無沙汰で帰ると言うのも癪に障る……おい」

 そう言ってグレゴリオは、水平に腕を振るう。
 すると背後に控えていた国家王国騎士たちが、ゾロゾロと店内に侵入して来て一斉に本棚を荒らし始めた。
 その手に取った魔道具を床へと叩きつけては、足蹴にしてその中身の魔道具を踏み砕きまくる。

「ハハッ、最低だなお前ら」

 こんなヤツらが国家王国騎士なら、俺は一生冒険者で良かったのかも知れない。
 次々と魔道具を破壊し、嘲笑を漏らしてクツクツと笑う国家王国騎士たち。
 その所業を見ていたミントが、一番近くに居た国家王国騎士へと向かって泣きついた。

「ーーやっ、やめてくださいッ!!
 その魔道具は、私が素材を取って来て、苦労して仕上げた大事な売り物の魔道具なんですッ!!」

 ガシャンと食器が割れるような音が店内に響く。
 涙目のミントに抱きつかれた一人の国家王国騎士が、その腕をウザったそうに振り払う。

「ふんッ!! 身なりの汚え庶民が、この私に触れるんじゃあないッ!!」

 そう言って突き飛ばされたミントが、床に尻もちをついて涙を浮かべる。

「良いかッ!? この国では、国家王国騎士こそがお前らよりも上の権力者なんだッ!!
 それにこのクソオンボロ店は、祖父の遺産を相続した際、国へ多額の借金をしている身なんだぞ?
 それを返せないと言うなら、何かしらで払って貰うのが当然であろうッ!!」

 そう言って国家王国騎士たちは、尚も辞めることなく魔道具を次々と壊していく。

「一体、どんな想いで作られた物なんだろうな?」

 冒険者である俺には、魔道具士マギカ・ツーラーであるヤツらの気持ちは、実際のところはよく分からない。
 だけど、こんなことは間違っていると、俺は直感でそう思う。
 ミントを突き飛ばした国家王国騎士。
 それとはまた別の国家王国騎士が、尻もちをついたミントの髪に手を触れようとする。
 その直前で俺は、その国家王国騎士の手首を力強く握る。

「もうその辺で良いだろうッ!!
 ミントの作った魔道具は、この魔道具店の大事な売り物なんだッ!!
 そんなことをしたら借金を返すだなんて、余計に出来なくなるだけじゃないかッ!!」

 そんな理不尽な話が、あって良い訳がない。
 金を返せと言いながら、その金になるかも知れない魔道具を壊す。
 それでは、元も子もないと普通に考えれば分かるだろう。
 コイツらがやっているのは、借金の取り立てと言う名目のただの憂さ晴らしだ。

「大事にしていた物を、他者に力づくで奪われる。
 その苦しみが、俺には痛いほどよく分かるから……」

『気が付けニシジマッ!!
 この世の中、お前の思い通りになんてなりゃあしねえッ!!
 お前みたいな弱者はなッ!!
 いつだって俺みてえなクズに奪われちまう側なんだッ!!』

「だから、俺はもう何も奪わせたくないんだ」

「ぼぼっ、冒険者の分際で俺たち権力者に逆らうつもりかッ!?」

「だったら何だ?」

 ギュッ、と力を込めて手首を掴む。
 ミントの髪に手を触れようとした国家王国騎士が、「ぐぁッ!!」と手首を抑えて後ろへと下がる。
 続いてグレゴリオを睨みつけた俺は、一目散にグレゴリオに向かって走ると、その右拳で左頬を貫く。
 グイッ、とねじ込むように直撃した俺の右ストレート。
 その一撃でグレゴリオの身体が吹き飛び、「グオッ!?」とうめき声をあげて店内の床に尻もちをつく。

「野郎、やりやがった……ッ!!」

「グレゴリオ様をぶん殴ったぞッ!?」

「考えらんねえ、俺たちには……ッ!!」

 その光景に店内の国家王国騎士たちが、全員揃って唖然としてその場に立ち尽くす。
 青ざめた表情で見守られるグレゴリオは、その真っ赤に染まった左頬を手先で撫でる。

「なんだ……? 何が起きて……」

 パンチが速すぎて、自分の身に何が起こったのか、全く理解していないらしい。
 グレゴリオは呆然と頭にクエスチョンマークを浮かべて、その左頬をさすさすと撫でた。
 次第に痛み始めるその左頬の熱が、たった今自分が殴られたのだと否応なく理解させるまでーー。

「き、貴様ッ!! よ、よくも庶民の分際でこの私の顔をぶったなッ!?」

「あぁ、ぶったな」

「ーーま、ママにもぶたれた事がないのに……ッ!!」

 恨みがましく俺を睨めつけるグレゴリオは、その額に青筋を浮かべると、部下の肩を借りてゆらゆらと立ち上がる。
 空き手で腕を水平に振るう。

「ーーや、やれッ!! グレゴリオ一番隊ッ!!
 そいつらを職務妨害の罪でひっ捕らえるんだッ!!」

 直後に俺とミントを取り囲む、グレゴリオ率いる一番隊の国家王国騎士たち。

「悪いミント。俺……我慢できなかった」

「い、いえ!!
 でも、良いんですか? ターニャさん。
 国家王国騎士の皆さんに喧嘩なんか売っちゃって……」

「うん、良いか悪いかで言うなら、状況は良くないなぁ」

「ダメじゃないですかぁ!!」

 ヒィッ!! と喉を震わせて立ち上がったミントを横目に、俺は作業机に置かれていた白い手袋を手に取った。

「この作業用の手袋、ちょっと借りても良いか?」

「はい、それは良いですけど、一体何をするつもりなんですか?」

「サンキュー、ミント」

 そう言って俺は、グレゴリオの眼下にその白い手袋を投げ捨てる。

「なッ!? たたたッ!! ターニャさんッ!!
 あなたーーなんてことをしてるんですかッ!?
 その手袋の意味が、分かってやってるんですかッ!?」

「あぁ、知ってる。だからやった」

 俺はにこりとミントに微笑み、それからグレゴリオにその手袋の意味を突き返す。

「拾えよグレゴリオ」

 その行動がもたらす意味。
 それは、国家王国騎士としての決闘の合図を意味している。

「ぐぅ~ッ!! 貴ッッッ様ァッ!!
 仮にも庶民の分際で、国家王国騎士の真似事ぉおおおおッ!!」

「この手袋の意味が、お前ならよく分かる筈だろ?
 お前も仮にも国家王国騎士の一人だと言うなら、この俺と一対一で決闘をしろグレゴリオ」

「ぬ~~んッ!! クソボケがァッ!!
 良いだろうッ!! この国のエリートたる私に喧嘩を売ったことぉッ!!
 その身を持って後悔させてやるゥッ!!
 ーーただしぃッ!!
 やるのは、互いに魔導戦機を使った一騎打ちだぁッ!!
 負けたら勝者の従僕として、その望みを叶えることッ!!
 私の望みはお前ら二人の処刑と、このオンボロクソ魔道具店の解体だぁッ!!」

 そう言ってグレゴリオは、今にも剣を引き抜こう勢いで顔を真っ赤に染めて憤慨する。

「分かった。それで問題ない。
 こちらの望みも、同じく二つ。
 ミントの借金をチャラにすること。
 そしてーーこの俺の国家王国騎士入りだ。
 お前が推薦してくれ」

「こ、ここっ、国家王国騎士になりたいだとォッ!?
 どこまでもクソふざけた冒険者だぁッ!!
 お前のようなゴミクズがぁッ!!
 この私に勝って、国家王国騎士になるだとうッ!?
 なれる訳がないだろうッ!! マヌケえッ!!」

「うん、でもーー勝負はやってみなくちゃ分からないだろ?」

「こっ、ここここっ、このクソボケがぁあああああッ!!
 万に一つも、お前が私に勝つなどッ!!
 ずぇえええっっっったいにあり得ないから、安心しろ、このゴミクズがぁあああああッ!!」

 ーーペッ、と床に落とされた白い手袋に唾を吐き捨てたグレゴリオは、カンッと足を力強く踏み鳴らしてその場でターンする。

「着いて来いウンコ。今日がお前の命日だ」

「光栄だよ。ウンコ連れて歩く国家王国騎士を見るのは、初めてさ」

「う~~~んッ!! こがぁあああああッ!!
 ーー決闘は、これより第二内地ヒルの闘技場で執り行う」

 そう言ってズカズカと肩を揺らし、店内から出ていくグレゴリオに続く。俺とミントも揃って魔道具店を後にする。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...