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20話ー『剣と拳の一騎打ち』
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立体機動から停止までの動作を何とか無事にこなした俺は、深いため息を吐き出して頭上を眺める。
まばらに浮かぶ白い入道雲と、目に染みるほどの青空がメインモニター越しに映る。
その中に人為的な機械が、複数機プロペラの羽音を立てて飛び交っていた。
(さっき頭上に見えたのは、あのドローンか)
どうやらこの決闘、複数のドローンで撮影して全国中継されているらしい。
(それに物凄いギャラリーの数だな)
首を回して周囲を見渡せば、そこには無数の人集りが出来ている。
グレゴリオが事前に手配を済ませていたのだろう。
野球ドームのように外壁からすこし高い位置に据えられた座席には、既に無数の国家王国騎士たちが座り、今か今かと俺たちの闘う様子を待ち侘びているのが伺える。
「だが、本番はこれからだ。それと気が変わった。
もし私が貴様に勝ったら、貴様にはこの俺の部下として、国家王国騎士に降って貰おう」
そう言ったグレゴリオの言葉に、俺は自分自身の耳を疑ってしまう。
「はっ?」と思わず訪ね返して、俺はグレゴリオの剣型の魔導戦機に首を向けた。
「気に食わんが認めると言っている。
どこぞの馬の骨かも分からん庶民の冒険者だと認識していたが、このドッグファイトに関しては、明らかに私の負けだろう。
だが、だからこそ、私は貴様が部下に欲しくなった。
貴様ーー私の犬になるつもりはないか?」
「犬になるつもりは一切ない。もし断ると言ったら?」
「無論ーー力づくで犬にするまでの話」
そう言ってグレゴリオは、手にしたロングソードの切っ先を俺の機体へと向けてくる。
そもそも俺に断るデメリットはないが、だからと言って別に断らない理由にはならない。
強いて言うなら、グレゴリオの犬と言うのは、かなりのデメリットになるだろう。
そう言った意味では、俺は自由の身でありたいと思う。
「一体どんな風の吹き回しなんだ?」
興味本位で尋ねると、グレゴリオはそのロングソードの切っ先で肩を叩く。
「私の速度を超えて来るような冒険者が、今まで何故、第一内地アサで胡座をかいていたのかは分からない。
だが、私はこの通り、貴様の実力を認めているのだ」
純粋な称賛と受け取っても良いのだろうか?
確かにその提案を俺が呑めば、俺は無条件で国家王国騎士にはなれるのだろう。
だけど、問題はそこではない。
「悪いが俺は、お前の提案に乗る気はない」
こちらとしても、それを断るだけの理由がある。
「私の犬になるのが、そんなに不服かな?」
「不服だな」
無論、それも勿論ある。
だけど俺が気になっているのは、ミント・ボンハーネット魔道具店のことだ。
グレゴリオの今までの性格からして、自分が認めた強者に対しては随分と甘い性格のようだ。
(だけど、それじゃあダメなんだよな……)
俺がもしここでグレゴリオの提案を受けてしまえば、ミントに残された借金は果たしてどうなる?
あの魔道具店はどうなる?
祖父から受け継いだと言うあの魔道具店の借金は、今も国家にあると言う。
そしてあの時、グレゴリオはミントに何をした?
あの魔導具店でどんな行動を取るに至った?
彼はーー自分よりも弱いと認めた弱者に対して、どう対応できると言うのだろう?
問わねばならないのは、そのことの本質だった。
「俺が仮にその提案を受けて国家王国騎士になったとして、ミント・ボンハーネット魔道具店の借金はどうなる?」
「知れたことを聞く。
そんな他愛もないことを確認して何がしたい?
ーー言った筈だ。
私は、貴様の冒険者としての実力を認めているのだと。
あのオンボロ魔導具店と、ミント・ボンハーネットの実力を認めている訳では決してないッ!!
ゴミを作るような輩を認めろとでも言うつもりか、貴様は?」
ーーそれが答えだった。
(あぁ、じゃあやっぱり俺の取るべき選択は、初めから決まっていた訳だ……)
「交渉は、決裂だよグレゴリオ」
キッパリとそう断言して、俺はグレゴリオにそう告げる。
「ミントの魔道具は、ゴミなんかじゃない」
格納庫で言った言葉を、俺は再びグレゴリオに言い聞かす。
(この魔道具があったおかげで、俺はこの第二内地ヒルの敷地内に辿り着くことが出来たんだ……)
それはまだ世間には認められてはいない、もう一つの才能。
(ーーそれを、俺がこの拳と共に証明する)
ゆっくりと拳型の魔導戦機ネオの腕部を動かし、俺はその拳から一本だけ指を突き立てる。
「剣と拳、どちらが勝るかここに決めよう」
「やれやれ、少しは利口な男だと思っていたんだが、私の宛が外れたようだ。
この世にある戦いの全ては、基本的にはリーチの長さが物を言う。
剣は、拳よりも強く。槍は、剣よりも強く。
そして銃は、剣よりも強い。
人類史におけるその争いの歴史の象徴において、最も遠距離から実力が行使できる“魔法”はッ!!
どんな戦争においても“最強”だッ!!
見せてやろうッ!! 我が“魔法剣”の真髄をッ!!」
そう言ってグレゴリオの魔導戦機ネオが、その右腕を動かしてロングソードを水平に薙ぎ払う。
その瞬間ーー深緑色の刀剣から炎の刃が燃え盛る。
誰が見ても魔法だと分かるその刃が、風を切って進みながら俺の機体のメインカメラへと迫る。
もう当たろうかと言うその直前、俺は瞬間的に裏拳を使って魔法剣の炎を薙ぎ払う。
パンッ、と言う拳を打ち鳴らす音が、闘技場内に響き渡つまた。
たったそれだけの動作で掻き消えた魔法剣。
そのことに観客席に座っていた、知らない国家王国騎士たちが目を向いた。
「お前は、俺の拳の下に降《くだ》れグレゴリオッ!!」
そう言って俺は親指を地面に突き出し、グレゴリオに向かって下剋上を告げる。
ーー拳と剣の闘いが、今ここに幕を開く。
まばらに浮かぶ白い入道雲と、目に染みるほどの青空がメインモニター越しに映る。
その中に人為的な機械が、複数機プロペラの羽音を立てて飛び交っていた。
(さっき頭上に見えたのは、あのドローンか)
どうやらこの決闘、複数のドローンで撮影して全国中継されているらしい。
(それに物凄いギャラリーの数だな)
首を回して周囲を見渡せば、そこには無数の人集りが出来ている。
グレゴリオが事前に手配を済ませていたのだろう。
野球ドームのように外壁からすこし高い位置に据えられた座席には、既に無数の国家王国騎士たちが座り、今か今かと俺たちの闘う様子を待ち侘びているのが伺える。
「だが、本番はこれからだ。それと気が変わった。
もし私が貴様に勝ったら、貴様にはこの俺の部下として、国家王国騎士に降って貰おう」
そう言ったグレゴリオの言葉に、俺は自分自身の耳を疑ってしまう。
「はっ?」と思わず訪ね返して、俺はグレゴリオの剣型の魔導戦機に首を向けた。
「気に食わんが認めると言っている。
どこぞの馬の骨かも分からん庶民の冒険者だと認識していたが、このドッグファイトに関しては、明らかに私の負けだろう。
だが、だからこそ、私は貴様が部下に欲しくなった。
貴様ーー私の犬になるつもりはないか?」
「犬になるつもりは一切ない。もし断ると言ったら?」
「無論ーー力づくで犬にするまでの話」
そう言ってグレゴリオは、手にしたロングソードの切っ先を俺の機体へと向けてくる。
そもそも俺に断るデメリットはないが、だからと言って別に断らない理由にはならない。
強いて言うなら、グレゴリオの犬と言うのは、かなりのデメリットになるだろう。
そう言った意味では、俺は自由の身でありたいと思う。
「一体どんな風の吹き回しなんだ?」
興味本位で尋ねると、グレゴリオはそのロングソードの切っ先で肩を叩く。
「私の速度を超えて来るような冒険者が、今まで何故、第一内地アサで胡座をかいていたのかは分からない。
だが、私はこの通り、貴様の実力を認めているのだ」
純粋な称賛と受け取っても良いのだろうか?
確かにその提案を俺が呑めば、俺は無条件で国家王国騎士にはなれるのだろう。
だけど、問題はそこではない。
「悪いが俺は、お前の提案に乗る気はない」
こちらとしても、それを断るだけの理由がある。
「私の犬になるのが、そんなに不服かな?」
「不服だな」
無論、それも勿論ある。
だけど俺が気になっているのは、ミント・ボンハーネット魔道具店のことだ。
グレゴリオの今までの性格からして、自分が認めた強者に対しては随分と甘い性格のようだ。
(だけど、それじゃあダメなんだよな……)
俺がもしここでグレゴリオの提案を受けてしまえば、ミントに残された借金は果たしてどうなる?
あの魔道具店はどうなる?
祖父から受け継いだと言うあの魔道具店の借金は、今も国家にあると言う。
そしてあの時、グレゴリオはミントに何をした?
あの魔導具店でどんな行動を取るに至った?
彼はーー自分よりも弱いと認めた弱者に対して、どう対応できると言うのだろう?
問わねばならないのは、そのことの本質だった。
「俺が仮にその提案を受けて国家王国騎士になったとして、ミント・ボンハーネット魔道具店の借金はどうなる?」
「知れたことを聞く。
そんな他愛もないことを確認して何がしたい?
ーー言った筈だ。
私は、貴様の冒険者としての実力を認めているのだと。
あのオンボロ魔導具店と、ミント・ボンハーネットの実力を認めている訳では決してないッ!!
ゴミを作るような輩を認めろとでも言うつもりか、貴様は?」
ーーそれが答えだった。
(あぁ、じゃあやっぱり俺の取るべき選択は、初めから決まっていた訳だ……)
「交渉は、決裂だよグレゴリオ」
キッパリとそう断言して、俺はグレゴリオにそう告げる。
「ミントの魔道具は、ゴミなんかじゃない」
格納庫で言った言葉を、俺は再びグレゴリオに言い聞かす。
(この魔道具があったおかげで、俺はこの第二内地ヒルの敷地内に辿り着くことが出来たんだ……)
それはまだ世間には認められてはいない、もう一つの才能。
(ーーそれを、俺がこの拳と共に証明する)
ゆっくりと拳型の魔導戦機ネオの腕部を動かし、俺はその拳から一本だけ指を突き立てる。
「剣と拳、どちらが勝るかここに決めよう」
「やれやれ、少しは利口な男だと思っていたんだが、私の宛が外れたようだ。
この世にある戦いの全ては、基本的にはリーチの長さが物を言う。
剣は、拳よりも強く。槍は、剣よりも強く。
そして銃は、剣よりも強い。
人類史におけるその争いの歴史の象徴において、最も遠距離から実力が行使できる“魔法”はッ!!
どんな戦争においても“最強”だッ!!
見せてやろうッ!! 我が“魔法剣”の真髄をッ!!」
そう言ってグレゴリオの魔導戦機ネオが、その右腕を動かしてロングソードを水平に薙ぎ払う。
その瞬間ーー深緑色の刀剣から炎の刃が燃え盛る。
誰が見ても魔法だと分かるその刃が、風を切って進みながら俺の機体のメインカメラへと迫る。
もう当たろうかと言うその直前、俺は瞬間的に裏拳を使って魔法剣の炎を薙ぎ払う。
パンッ、と言う拳を打ち鳴らす音が、闘技場内に響き渡つまた。
たったそれだけの動作で掻き消えた魔法剣。
そのことに観客席に座っていた、知らない国家王国騎士たちが目を向いた。
「お前は、俺の拳の下に降《くだ》れグレゴリオッ!!」
そう言って俺は親指を地面に突き出し、グレゴリオに向かって下剋上を告げる。
ーー拳と剣の闘いが、今ここに幕を開く。
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