Your Voice 〜君の声に僕は恋をした〜

Matcha

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最終章 「君の声」

Your Voice #7 「文化祭」

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——小森が、「いない」。

叶斗が僕にそう言った。

「え?どういうことだ?」

僕は叶斗の言った言葉が理解出来なかった。

「だから…!小森が何処にも居ないんだって!」

叶斗は僕を説得するように言う。

「…え?体育館も音楽室も探したのか!?」

僕は焦りながら叶斗に訊く。

「…ああ。」

叶斗は言いたくなさそうな雰囲気でそう僕に返答した。

「…結局、本番への恐怖は変わってなかったのね。」

…そう、蔑むように僕らの後ろにいた三河先輩が呟く。

そして、三河先輩は言う。

「呆れた、合唱はもう中止ね。私は帰るから。」

彼女はそう僕らに言い残し、去っていこうとする。

「ちょっと待ってくれ。あともう一つだけ、探し切れてない場所がある。」

「もし…、そこにいなければ?」

三河先輩は訝しんだ表情をして言う。

「合唱は中止だ、さっき言った通り帰っていいよ。」

すると三河先輩は、こう言葉を口にした。

「…三十分。三十分で見つからなかったら、そこに小森は居なかったと見做す(みなす)から。」

「わかった。」

僕がそう言うと。

「…早く見つけてきなさいよ?「私も、小森と合唱したかった」んだから…。」

「ああ。」

僕はそう言って、今度こそ目的の場所へ走り出した。

本当は三河先輩も、今日の文化祭の合唱を楽しみにしてたんだな…。

小森を見つけれたら、伝えてあげようかな。そう思いながら僕は、「ある場所」へ脚の回転を速めて向かっていった。



そして僕は、「ある場所」へ辿り着く。

そうその場所とは——、



「…やっぱり、ここだよね。」

「…颯人くん?どうしてここが…?」

小森は僕が来たことにびっくりしていた。

そう。小森がいた場所は、僕が初めて小森の美しい歌声を聴いた場所である、いつもの「教室」だった。

じゃあなんで叶斗は一番可能性のある、「教室」を捜さなかったのか。

実は僕らの教室のある校舎は老朽化が進んでおり、もし万が一のことがあるかもしれない、と生徒会と教師総出で考えた結果、念のため、あまり大規模での人の移動はやめておいたほうがいいという判断になり、文化祭の出し物や楽器の演奏は学校の中庭や新しく建てられたもう一つの校舎でやることになったのだ。

そのため、古い校舎の方の教室には鍵が掛かっているはず、なのだけれど。

まぁ今考える問題ではないと思い、僕は小森に本題のことについて訊く。

「…なんで、逃げたんだ?」

一番、シンプルでかつ、返しやすい問いなはずだ。

でも、小森はこう返してきた。

「…言いたくない。」

「な、なんで…」

「…言ってしまったら、今度こそ、君に「見放されちゃう」から。」

小森は申し訳なさとプレッシャーへの恐怖の狭間で闘っているような、苦しそうな声でそう言う。

僕はすぐこう返した。

「そんなことない…!」

「あるの!!」

小森は今にも泣きそうな震えた声で僕に向かって叫ぶ。

「じゃあさ、今まで僕が君の弱音を聴いて一度でも君を軽蔑したことある?」

僕は真剣な声で小森にそう訊く。

「えっ…。」

小森はあまり見たことのない真剣な僕の声を聴いて少し怯える。しかし、すぐに…

「…ううん。」

と呟きながら、小森は首を横に振る。

僕は小森のその行動を見て、こう言う。

「そうだよね…。だから…少しずつでもいいから…、聞かせて。」

すると、

「…分かった。」

と、小森は理由を話しだしてくれた。

理由はやはり、みんなが自分の声を聴いてどう思うんだろうという心配という名のプレッシャーに押し負けていたとのことだった。

「ありがとう。話してくれて。」

僕は一度、あのまま理由を溜め込まず、自分に話してくれた小森に感謝する。

「こちらこそ、ごめんね。急に逃げ出したりして。」

そう小森は言い、続けて、

「私、頑張るよ。みんなの思いも、「君の想い」も乗せて歌うよ。」

「あぁ。みんなに響かせよう。君の声を。〘Your Voice〙を…!」

「うん…!」

僕は小森と合唱の舞台である体育館へ向かって歩き出す。ただ、何故か僕は何か忘れているような気がした。

歩き出してすぐに、ふと、小森が僕にこう訊く。

「そういえば、三河先輩たちは?」

「あぁ、三河先輩たちならもう体育館に——」

「——って、そうだ…!!30分以内に三河先輩のいるところへ戻らないといけないんだった!」

「えっ!ど、どういうこと!?」

小森は訳がわからないという表情をして僕に問う。

だが、今は時間がない。そのため、

「話は後!僕に付いてきて!」 

「う、うん!」

僕らは全力疾走でなんとか予定通りの30分以内に体育館に辿り着いた。

「ふふっ、よく見つけたわね。30分ぴったりだよ。」

三河先輩は息が上がっている僕たちを見て微笑みながらそう言った。

「ほんとに性格悪いなこの先輩」

「あら、私、今からでも合唱するの辞退できるのよ?」

「すみません何もないです」

そんな即興コント(?)をカマして、僕は間を置いて言う。

「じゃあ、行こうか。」

そう、僕は3人に言って、僕たちは舞台の上へ向かって歩き出す——。



——結果、僕たち4人の合唱は大成功に終わった。だけど、この4人で舞台で合唱している時、何よりも僕が嬉しかったことがある。

それは、小森が幸せそうに、笑顔でみんなに「自分自身の、全力の歌声」を届けられていたことだ。

そして文化祭が終わった後のこと…。

僕は「話があるの」と言われ、小森に校舎の近くにある中庭に呼び出された。

「あ、ありがと。文化祭終わって疲れてるのに来てくれて。」

小森は気を遣ってそう言う。

「全然。疲れてるのはお互い様だろ?で、話って?」

「単刀直入に言うね——。」

「ああ。」



「——私、「アイドル」になりたい。」
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