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 三次選考の最終日の朝、朝食の場である食堂へ宰相とルーカスたち侍従が何人かやって来て、三次選考通過者として、シャーロットとマリア、それにクラリス、フェリシティ、オードリーを含む二十名を発表した。
 通過した者には今日この後、四次選考としてユリウスと面接し、その他の者はこのまま帰宅するよう説明を受ける。
「殿下に拝謁賜った後はそのまま帰っても良いのよね?結果は明日、知らせが来るんだっけ」
 部屋に戻る廊下を歩きながらマリアが言う。
「うん。でも順番はまたくじ引きだから一緒に帰れないかも知れないわね」
 そうシャーロットが言うと、マリアは首を横に振った。
「私が先だったらロッテが終わるまで待ってるわ」
「じゃあ私が先だったらマリアが終わるまで待ってるね」

 面接前は部屋で待ち、係が呼びに来たらサロンへ移動、順番にユリウスと面接し、終了後は帰宅するという流れが説明され、シャーロットとマリアは先に終えた方が図書室で待つと約束をした。
「それでは、ロッテ様とクラリス様に朝引いて頂いたくじで決まりました番号をお渡しいたします。王太子殿下の拝謁は一人十分を予定しており、お昼には一時間程度の休憩がありますので、順番から予想されるお時間の三十分まえには部屋ここでお待ちください。それから、殿下と話された内容は四次選考の結果が出るまでは他言されないようにお願いいたします」
 シャーロットとクラリスの部屋に来た侍女がそう説明しながら、順番を書いた紙を渡す。
「はい」
「わかりました」
 侍女が退出して、シャーロットとクラリスは折り畳まれた紙を開いた。
「十一番か…午後になるかな?マリアは何番だったんだろ?クラリスは?」
「二十番。最後です」
 くじでトリを引くとは。さすがヒロインかっこ推定かっこ閉じだわ。

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 コンコンとノックの音がして、マリアがシャーロットたちの部屋にやって来た。
「ロッテ、何番だった?」
「十一」
「私は三番よ。クラリスは?」
「二十番です」
「あら最後なのね。これは王太子殿下の印象に残るんじゃない~?」
 ニヤニヤして言うマリアにクラリスは驚いた表情を見せる。
「ええ!?」
「冗談よ。最後だと待ち時間が長いわね」
「はい…持って来た本を読んでいようかと」
「私は順番までは編み物していようと思うの」
 シャーロットがそう言うと、マリアは頷いた。
「バザーが近いものね。私は三番だったからすぐ呼ばれそうだし、部屋に戻ってるわ。終わったら図書室にいるわね。クラリス、選考通るかどうかはわからないけど、もう私たちお友達だからまた会いましょうね」
 マリアはクラリスに微笑みかける。クラリスは嬉しそうに
「はい!ありがとうございます」
 と言った。

「ロッテさん、それコースターですか?」
 針を持って手を動かすシャーロットをクラリスが覗き込む。
「ええ。これが一番早くたくさん作れるから…」
「たくさん作るんですか?」
「教会のバザーに出すの。本当は夏期休暇だからもっと凝った物を作れる筈だったんだけど、選考これがあったから余り作れなくて…」
「教会の…」
 せっせと手を動かすシャーロットをソファの向かいから見るクラリス。
「あ!それはもしかして西地区の教会ですか?」
「うん。そうよ」
「西地区の教会のバザーで売られているレース小物がすごくかわいくて人気だって、すぐ売り切れちゃうから早く行かなくちゃって、ウチのメイドたちが話してて…あれはロッテさんが作ってたんですか!」
「毎回完売してるっていうのは聞いてたけど…そうなんだ。それは嬉しいわ」
 編む手は止めずににっこりと笑うシャーロット。

「じゃあこれ、家に帰ったらメイドに羨ましがられますね。きっと」
 クラリスは自分のドレスの胸元に付けたシャーロットからもらったブローチを指差す。
「今日も着けてくれたんだ」
「だってかわいいんですもの。マリアさんも髪に着けてましたよね?」
「そうだったわね。じゃあ私も着けようかな」
「はい!ロッテさんの水色のドレスにとっても似合うと思います」
 立ち上がってバッグからブローチを取り出して来ると、クラリスがそれをシャーロットのドレスの襟元に留めてくれた。



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