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「バネッサさんの方が少女漫画みたいに『幼なじみのお兄ちゃんには妹としか見てもらえないけど、私、お兄ちゃんを追いかけて来たわ!』って感じなのかと思ったら、グリフ様の方が『年下の幼なじみに兄じゃなく男として見て欲しい』って少年漫画展開だったのね」
シャーロットの説明を聞き終えたマリアはシャーロットのベッドに突っ伏して言った。
「そうね」
シャーロットはクスクスと笑う。
「ロッテ、笑ってるけど、良いの?グリフ様はルーカス様が選んだロッテのお相手だったのに」
少し顔を上げてシャーロットを上目遣いで見るマリア。
「手紙を読んだ時はちょっと複雑だったけど、実際にバネッサさんを見たら何だか嬉しくなって来ちゃって…」
「嬉しい?」
「うん。私より大きい女性がストライクな男性もいるんだなあと思って」
嬉しそうに言うシャーロットを見上げるマリア。
いるでしょ。それは。と言い掛けて、ロッテの周りには前世から今まで実際いなかったんだもんね。とマリアは思い直す。
「それに、グリフ様は私とちゃんとお付き合いしてた訳でもないし、良いも悪いもなくない?それなのにお手紙で知らせてくれただけでも誠実だと思うし」
「でもロッテが王太子妃候補になってなかったら、今頃付き合ってたでしょ?」
「ちゃんと付き合ってて、グリフ様がバネッサさんと出会ったら…そっちの方がしんどかったかも」
「あー…」
それもそうか。
「…ねえロッテ」
「ん?」
「今日…ユリウス殿下がロッテを助けてくださったのよ?」
マリアは上目遣いでシャーロットをじっと見た。
「…え?」
眼を見開くシャーロット。
「こうして、ロッテを庇って。大丈夫だって仰られたけど、お怪我をされたの」
マリアがシャーロットを見ながら起き上がって、自分の腕で何かを抱く様子を示す。
「怪我!?」
青褪めるシャーロット。
気を失う前に見た紫の影は、幻じゃなく、本当にユリウス殿下だったの?
怪我?
また私はユリウス殿下にお怪我を負わせたの?
「お怪我を…」
小刻みに震え出すシャーロットの手を、マリアの手がそっと包む。
「…ロッテ、やっぱりユリウス殿下を…好きなのね?」
「!」
シャーロットはハッとして首を横に振る。
「そんな!不敬だわ」
「大丈夫。私は誰にも言わないわ」
「……」
シャーロットは無言で首を横に振り続ける。
「ロッテ」
違う。
ユリウス殿下の様なリアル王子様にこんな大女が「恋」するなんてあり得ない。
正真正銘の王子な上に、ユリウス殿下は王太子、次の国王陛下よ。
畏れ多い。不敬。
…大きな存在すぎて、怖い。
でも…
「ロッテ」
マリアがシャーロットの手を撫でた。
でも、ユリウス殿下はオードリー様と結婚されるんだと思うと、胸が痛くて痛くて堪らない。
認めたくない。
認めたくない…けど。
…私、ユリウス殿下が好きなんだ。
-----
血の滲んだ背中を隠すため、マントを身に付け、ジムカーナ大会が終了させ王宮に戻ったユリウスは、そのまま母である王妃の部屋を訪れた。
知らせを受けたルーカスが王妃の部屋の外で待っていると、ユリウスが出て来る。
「ルーカス、ロッテは?」
王妃の部屋から出て来たユリウスは青白い顔をしていた。
「ロッテは大丈夫です。ユリウス殿下、お顔の色が…医療棟へ参りましょう」
「いや、部屋に戻る」
ルーカスの前に立ち、廊下を歩いて行くユリウス。
「しかし…」
「大した傷ではない。大丈夫だ」
「殿下」
「大丈夫だ」
「……」
「……」
そのまま黙って歩く。
「ルーカス」
ユリウスの部屋の傍まで来ると、ユリウスは振り向かずにルーカスを呼んだ。
「はい」
「執務室から本を取って来てくれ」
「はい。どちらの本をお持ちしましょう」
「栞が挟んである本だ。わかるだろう?」
ユリウスは振り向かずに部屋へ入って行く。
「…はい」
今まで私室にも、寮にもお持ちにならなかったロッテの作った栞を、手元に置く気になられたのか?
顔色が悪かったのは怪我のせい?それとも王妃殿下と話した内容のせいだろうか?
王妃殿下と何を話されて、何が変化したんだ?
ルーカスは執務室へ向かいながら考える。
ああ、しかし、とにかく怪我を診てもらわねば。本を持って行く時、医師を連れて行くしかないか。そうすれば渋々にでも治療を受けていただけるだろう。
執務室に入り、シャーロットの作った栞を挟んである本を本棚から引き抜く。
栞は、前に見た時と同じ頁に、同じ様に挿んであった。
「…封印を解くような気分だな」
ルーカスはそう呟くと、本を閉じて、万が一にも栞が落ちたりしないよう、小口を掌の方に向けて持つと、執務室を後にした。
「バネッサさんの方が少女漫画みたいに『幼なじみのお兄ちゃんには妹としか見てもらえないけど、私、お兄ちゃんを追いかけて来たわ!』って感じなのかと思ったら、グリフ様の方が『年下の幼なじみに兄じゃなく男として見て欲しい』って少年漫画展開だったのね」
シャーロットの説明を聞き終えたマリアはシャーロットのベッドに突っ伏して言った。
「そうね」
シャーロットはクスクスと笑う。
「ロッテ、笑ってるけど、良いの?グリフ様はルーカス様が選んだロッテのお相手だったのに」
少し顔を上げてシャーロットを上目遣いで見るマリア。
「手紙を読んだ時はちょっと複雑だったけど、実際にバネッサさんを見たら何だか嬉しくなって来ちゃって…」
「嬉しい?」
「うん。私より大きい女性がストライクな男性もいるんだなあと思って」
嬉しそうに言うシャーロットを見上げるマリア。
いるでしょ。それは。と言い掛けて、ロッテの周りには前世から今まで実際いなかったんだもんね。とマリアは思い直す。
「それに、グリフ様は私とちゃんとお付き合いしてた訳でもないし、良いも悪いもなくない?それなのにお手紙で知らせてくれただけでも誠実だと思うし」
「でもロッテが王太子妃候補になってなかったら、今頃付き合ってたでしょ?」
「ちゃんと付き合ってて、グリフ様がバネッサさんと出会ったら…そっちの方がしんどかったかも」
「あー…」
それもそうか。
「…ねえロッテ」
「ん?」
「今日…ユリウス殿下がロッテを助けてくださったのよ?」
マリアは上目遣いでシャーロットをじっと見た。
「…え?」
眼を見開くシャーロット。
「こうして、ロッテを庇って。大丈夫だって仰られたけど、お怪我をされたの」
マリアがシャーロットを見ながら起き上がって、自分の腕で何かを抱く様子を示す。
「怪我!?」
青褪めるシャーロット。
気を失う前に見た紫の影は、幻じゃなく、本当にユリウス殿下だったの?
怪我?
また私はユリウス殿下にお怪我を負わせたの?
「お怪我を…」
小刻みに震え出すシャーロットの手を、マリアの手がそっと包む。
「…ロッテ、やっぱりユリウス殿下を…好きなのね?」
「!」
シャーロットはハッとして首を横に振る。
「そんな!不敬だわ」
「大丈夫。私は誰にも言わないわ」
「……」
シャーロットは無言で首を横に振り続ける。
「ロッテ」
違う。
ユリウス殿下の様なリアル王子様にこんな大女が「恋」するなんてあり得ない。
正真正銘の王子な上に、ユリウス殿下は王太子、次の国王陛下よ。
畏れ多い。不敬。
…大きな存在すぎて、怖い。
でも…
「ロッテ」
マリアがシャーロットの手を撫でた。
でも、ユリウス殿下はオードリー様と結婚されるんだと思うと、胸が痛くて痛くて堪らない。
認めたくない。
認めたくない…けど。
…私、ユリウス殿下が好きなんだ。
-----
血の滲んだ背中を隠すため、マントを身に付け、ジムカーナ大会が終了させ王宮に戻ったユリウスは、そのまま母である王妃の部屋を訪れた。
知らせを受けたルーカスが王妃の部屋の外で待っていると、ユリウスが出て来る。
「ルーカス、ロッテは?」
王妃の部屋から出て来たユリウスは青白い顔をしていた。
「ロッテは大丈夫です。ユリウス殿下、お顔の色が…医療棟へ参りましょう」
「いや、部屋に戻る」
ルーカスの前に立ち、廊下を歩いて行くユリウス。
「しかし…」
「大した傷ではない。大丈夫だ」
「殿下」
「大丈夫だ」
「……」
「……」
そのまま黙って歩く。
「ルーカス」
ユリウスの部屋の傍まで来ると、ユリウスは振り向かずにルーカスを呼んだ。
「はい」
「執務室から本を取って来てくれ」
「はい。どちらの本をお持ちしましょう」
「栞が挟んである本だ。わかるだろう?」
ユリウスは振り向かずに部屋へ入って行く。
「…はい」
今まで私室にも、寮にもお持ちにならなかったロッテの作った栞を、手元に置く気になられたのか?
顔色が悪かったのは怪我のせい?それとも王妃殿下と話した内容のせいだろうか?
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ルーカスは執務室へ向かいながら考える。
ああ、しかし、とにかく怪我を診てもらわねば。本を持って行く時、医師を連れて行くしかないか。そうすれば渋々にでも治療を受けていただけるだろう。
執務室に入り、シャーロットの作った栞を挟んである本を本棚から引き抜く。
栞は、前に見た時と同じ頁に、同じ様に挿んであった。
「…封印を解くような気分だな」
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