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「頭がぼんやりするわ…」
ベッドに座ったアリシアは片手を額に当てて呟く。
「丸々一日眠ってたものね」
ホリーがベッドの横に置いた椅子に座って言う。
「…あれからどうなったの?」
「私もアリシアと一緒にこちらへ移動しちゃったから詳しくは分からないんだけど」
「うん」
「『アリシア様親衛隊』からの情報によれば、殿下とマリーナ様はあのまま王宮に連れて行かれて、別々に事情を聞かれているらしいわ。マリーナ様は『こんなつもりはなかった』『私はただ殿下をお慕いしているだけで、婚約破棄して欲しいなんて言った事はない』って主張しているみたい。殿下の方は『『マリーナ以外と結婚するつもりはない』『私は運命の恋人に出会ってしまったんだ』ばかりらしいわ」
「…親衛隊…スゴイわね…」
どういう隊員がいるんだろうか。知りたいけれど知りたくない気持ちでアリシアは苦笑いした。
夕方、ノックの音がして「アリシア、いいかな?」と父レイモンドがアリシアの部屋に入って来る。
「アリシア気分はどうだ?ああ、ホリー嬢、かけたままで良いよ」
立ち上がりかけたホリーが座り直して会釈をする。レイモンドはソファセットの一人掛けソファをアリシアのベッドの方に向けて座る。
「大丈夫です。お父様」
「そうか。良かった。…今日は王宮に行って来て、多少は状況が見えたよ」
「はい」
「まずは、パリヤ殿下とアリシアの婚約は解消される。これは決定事項だ」
レイモンドの話によると、当初、宰相や議会の重鎮はパリヤに「アリシアを王太子妃にし、マリーナを側妃にしてはどうか」と提案したが、パリヤが「マリーナ以外と結婚するつもりはない」と断固拒否したそうだ。
その後、国王陛下から「何の非もない公爵家の令嬢へ一方的に婚約破棄を言い渡すなど、王子といえど到底許される事ではない」という意見が出され、多くの議員が賛同し、パリヤは廃太子、更には王位継承権を剥奪される事が近い内に決定される見通しとなった。
パリヤの一歳下の弟である第二王子セルダが次の王太子となるであろうとレイモンドは言った。
「…私がもっとパリヤ殿下に優しくして、心を通わせるように努力してたら、殿下はマリーナ様に心奪われる事もなくて、廃太子や王位継承権の剥奪なんて事にならなかったのかしら?」
アリシアはシーツを握り締める。
「何言うの、アリシア」
ホリーがシーツを握るアリシアの手に触れる。
「だって…王位継承権の剥奪なんて、想像もしてなかったわ」
「だからって、殿下が他の女性に惹かれたのは、アリシアの努力不足とかじゃないから。絶対に」
アリシアは「アリシア様は冷たい」と言ったマリーナを思い出していた。
パリヤ殿下とマリーナ様が特別親しい様子を見せた時「立場が」「身分が」と諌めるのではなく、嫉妬とか…そういう感情を殿下に見せていれば、結果は変わっていたのかしら…?
-----
真夜中のレイモンドの執務室でレイモンドとグレッグが向かい合って座っている。
昼間はレイモンドが王宮に赴き、グレッグはレイモンドの不在分の執務にも追われているので、落ち着いて話をしようとするとどうしてもこのような時間となるのだ。
「セルダ殿下が王太子となるのを拒否しておられると?」
グレッグが問うと
「ああ。議会では『セルダ殿下を王太子とし、ウィルフィス公爵令嬢を王太子妃とする』という方向で議論がされているが…」
そう言ってレイモンドが頷いた。
「アリシアが?セルダ殿下と?しかしセルダ殿下も婚約なされてますよね?」
「ああ。ゴルディ侯爵家の令嬢だ。…だが、アリシアは長年王太子妃延いては王妃となるべく教育を受けているからな。だが、セルダ殿下は『叔父上が王太子となり、ウィルフィス公爵令嬢と婚約して欲しい』と主張されている」
「は?叔父上…王弟殿下ですか?セルダ殿下は、王弟殿下に王太子の立場も、アリシアも押し付けようと?」
グレッグが憤りながら言うと、レイモンドはため息を吐く。
「グレッグ、落ち着きなさい。確かにそう見えるかも知れんが、セルダ殿下にはそんなおつもりはないと思うぞ。…確かにそう見えるが、な」
「…父上も結構怒っておられますね」
「当たり前だ。ウチのかわいいアリシアを、あっちへやったりこっちへやったり駒みたいな扱いしおって…」
ギリっと歯軋りをするレイモンドを見て、グレッグもため息を吐く。
「そのアリシアはどうしている?部屋に籠っていると聞いたが」
レイモンドが言うと、グレッグは肩を竦めた。
「ホリーが来てくれた時は話すんですが、一人の時は何か考え込んでいるようです」
「そうか…まあでもあれからまだ三…四日だからな」
レイモンドとグレッグがため息を吐いた時、執務室のドアが勢いよく開かれた。
入って来たのはアリシアだ。
「アリシア、こんな夜中にどうした?」
「お父様!」
グレッグの言葉に被せるようにアリシアは言い切った。
「私も『真実の愛』を貫きます!」
「頭がぼんやりするわ…」
ベッドに座ったアリシアは片手を額に当てて呟く。
「丸々一日眠ってたものね」
ホリーがベッドの横に置いた椅子に座って言う。
「…あれからどうなったの?」
「私もアリシアと一緒にこちらへ移動しちゃったから詳しくは分からないんだけど」
「うん」
「『アリシア様親衛隊』からの情報によれば、殿下とマリーナ様はあのまま王宮に連れて行かれて、別々に事情を聞かれているらしいわ。マリーナ様は『こんなつもりはなかった』『私はただ殿下をお慕いしているだけで、婚約破棄して欲しいなんて言った事はない』って主張しているみたい。殿下の方は『『マリーナ以外と結婚するつもりはない』『私は運命の恋人に出会ってしまったんだ』ばかりらしいわ」
「…親衛隊…スゴイわね…」
どういう隊員がいるんだろうか。知りたいけれど知りたくない気持ちでアリシアは苦笑いした。
夕方、ノックの音がして「アリシア、いいかな?」と父レイモンドがアリシアの部屋に入って来る。
「アリシア気分はどうだ?ああ、ホリー嬢、かけたままで良いよ」
立ち上がりかけたホリーが座り直して会釈をする。レイモンドはソファセットの一人掛けソファをアリシアのベッドの方に向けて座る。
「大丈夫です。お父様」
「そうか。良かった。…今日は王宮に行って来て、多少は状況が見えたよ」
「はい」
「まずは、パリヤ殿下とアリシアの婚約は解消される。これは決定事項だ」
レイモンドの話によると、当初、宰相や議会の重鎮はパリヤに「アリシアを王太子妃にし、マリーナを側妃にしてはどうか」と提案したが、パリヤが「マリーナ以外と結婚するつもりはない」と断固拒否したそうだ。
その後、国王陛下から「何の非もない公爵家の令嬢へ一方的に婚約破棄を言い渡すなど、王子といえど到底許される事ではない」という意見が出され、多くの議員が賛同し、パリヤは廃太子、更には王位継承権を剥奪される事が近い内に決定される見通しとなった。
パリヤの一歳下の弟である第二王子セルダが次の王太子となるであろうとレイモンドは言った。
「…私がもっとパリヤ殿下に優しくして、心を通わせるように努力してたら、殿下はマリーナ様に心奪われる事もなくて、廃太子や王位継承権の剥奪なんて事にならなかったのかしら?」
アリシアはシーツを握り締める。
「何言うの、アリシア」
ホリーがシーツを握るアリシアの手に触れる。
「だって…王位継承権の剥奪なんて、想像もしてなかったわ」
「だからって、殿下が他の女性に惹かれたのは、アリシアの努力不足とかじゃないから。絶対に」
アリシアは「アリシア様は冷たい」と言ったマリーナを思い出していた。
パリヤ殿下とマリーナ様が特別親しい様子を見せた時「立場が」「身分が」と諌めるのではなく、嫉妬とか…そういう感情を殿下に見せていれば、結果は変わっていたのかしら…?
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真夜中のレイモンドの執務室でレイモンドとグレッグが向かい合って座っている。
昼間はレイモンドが王宮に赴き、グレッグはレイモンドの不在分の執務にも追われているので、落ち着いて話をしようとするとどうしてもこのような時間となるのだ。
「セルダ殿下が王太子となるのを拒否しておられると?」
グレッグが問うと
「ああ。議会では『セルダ殿下を王太子とし、ウィルフィス公爵令嬢を王太子妃とする』という方向で議論がされているが…」
そう言ってレイモンドが頷いた。
「アリシアが?セルダ殿下と?しかしセルダ殿下も婚約なされてますよね?」
「ああ。ゴルディ侯爵家の令嬢だ。…だが、アリシアは長年王太子妃延いては王妃となるべく教育を受けているからな。だが、セルダ殿下は『叔父上が王太子となり、ウィルフィス公爵令嬢と婚約して欲しい』と主張されている」
「は?叔父上…王弟殿下ですか?セルダ殿下は、王弟殿下に王太子の立場も、アリシアも押し付けようと?」
グレッグが憤りながら言うと、レイモンドはため息を吐く。
「グレッグ、落ち着きなさい。確かにそう見えるかも知れんが、セルダ殿下にはそんなおつもりはないと思うぞ。…確かにそう見えるが、な」
「…父上も結構怒っておられますね」
「当たり前だ。ウチのかわいいアリシアを、あっちへやったりこっちへやったり駒みたいな扱いしおって…」
ギリっと歯軋りをするレイモンドを見て、グレッグもため息を吐く。
「そのアリシアはどうしている?部屋に籠っていると聞いたが」
レイモンドが言うと、グレッグは肩を竦めた。
「ホリーが来てくれた時は話すんですが、一人の時は何か考え込んでいるようです」
「そうか…まあでもあれからまだ三…四日だからな」
レイモンドとグレッグがため息を吐いた時、執務室のドアが勢いよく開かれた。
入って来たのはアリシアだ。
「アリシア、こんな夜中にどうした?」
「お父様!」
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「私も『真実の愛』を貫きます!」
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