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挨拶の最後列に並んだカミーユは舞台上のリオンを見つめた。
ああ…莉音だわ。
「リオン殿下は莉音だけど、莉音とは別人だわ」
あの女が何やら言ってたけど、やっぱり莉音は莉音よ。
私の莉音。
前世みたいに早く私をその瞳に映して。
ヒソヒソと声が聞こえて来る。
「ねぇ、あの方、紫のドレスを着ておられるわ」
「紫は王族の色なのに」
「令嬢ではなく付き添いの方だから…」
「いや、いくら付き添いでも王妃殿下のドレスと同じような色味ではないか」
「さすがにそれは良くないだろう」
カミーユを見て囁かれる声に、カミーユは心の中で笑っていた。
私のドレスはただの紫色じゃない。莉音の色、バイオレットよ。
王妃殿下のドレスは国王陛下の色、パープルだわ。
バイオレットを纏えるのは、私だけなの。
-----
「バイオレット!?」
ジェラルドに付いて大広間に戻って来たニーナは遠目にも目立つ紫色のドレスに思わず声を上げる。
「妃でも婚約者でもないのに…」
ジェラルドは目を眇め、眉を顰めた。
「バイオレットは推しのテーマカラーなんです。私も前世では身の回りの物のほとんどが紫色でした。けどここでは紫は王族の色だから……私だって推しの色のグッズ…身に付けたい…っけど我慢してるのに…」
ニーナは悔しそうに拳をグッと握る。
前世の莉音の事を「莉音」と言えば、音は同じだから周りからは王子リオンを呼び捨てにしているように聞こえる。だから前世の莉音の事を話す時には名前の代わりに「推し」と表現すると取り決めたのだ。
「小物などはともかく、紫のドレスを身に付けられるのは王族の妃か婚約者のみです」
「わかってますヨ…だから我慢してるってば……」
段々と小声になりながら呟いた。
「マーゴットお義姉様とカトリーヌお義姉様がお義母様と一緒だけど、やっぱり居心地が悪そうですね」
エラが口元に手を当てて言い、カミーユのドレスを見ていたニーナもカミーユと一緒にいる二人の令嬢に視線をやる。
マーゴットとカトリーヌは二人の瞳の色に合わせた緑色のドレスだ。マーゴットは背が低くてぽっちゃり体型なので、濃い緑色にAラインのスカートの裾に刺繍やレースが施され視線を下に集中させるデザインになっている。カトリーヌは背が高くスリムな体型なので薄い緑色のスレンダーライン、シフォン素材でウエストマークを低めにしてある。
二人の雰囲気に良く似合っていて、カミーユが一時期「どちらかをリオンの妃に」と本気で思っていたという事が伺い知れた。
そんなマーゴットとカトリーヌも、母親が紫という、この国では一般には避けるべき色のドレスを着、周り中から顰蹙を買っている事に居た堪れない様子でオドオドと下を向いている。
「…さすがにちょっとかわいそうかも。さっきの私とはまた違う注目の浴び方だもん」
さり気なく目立たないように舞台の方へ近付きながらニーナが呟いた。
「あの女はこれからどうするつもりなのでしょう?」
ジェラルドが言うと、ニーナは首を傾げる。
「うーん…挨拶の場では国王陛下や王妃殿下もいらっしゃいますから、あまり決定的な事は言えないでしょうし…」
「いっそ不敬罪に該当するような言動をしてくれれば身柄を拘束できるのですがね」
眉を顰めるジェラルド。
うーん、それだとゴールドバーグ公爵様やエラやお義姉様たちにも累が及びそう。
三人はこれ以上近付くと不自然という所で足を止めた。
リオンが令嬢たちと挨拶を交わす声は聞こえないが、表情は見える位置だ。
リオン殿下ももうカミーユに気付いてるよね?表情には出てないけど…
挨拶の場は仕方ないけど、その後カミーユをリオン殿下に近付けないようにするにはどうすればいいだろう。
「ニーナ嬢」
「はい!?」
声を掛けられて振り向くと、そこにクラークが立っている。隣にはテオバルトとレジスもいた。
「公爵様」
「リオンたちへの挨拶が終わればダンスも始まる。今日はいつもの夜会や舞踏会とは違い、ダンスの申し込みは『家』に対する申し込みだから、エスコートして来た身としてはニーナ嬢の傍にいなくては。それに『守る』と約束したしね」
ニコリと笑うクラーク。
「俺もね。関係者だからニーナの傍にいなくちゃ」
テオバルトも笑って言う。
…結局まだ説明聞けてないから、みんなして何を企んでるのかわからないんだよね。公爵様もテオバルト様も笑顔のポーカーフェイスだしさ。
「ニーナ、順番だ」
レジスがニーナの肩を軽く叩いた。
舞台の方を見ると、カミーユを先頭に、マーゴットとカトリーヌが後ろについて壇上への階段を上がっている。
リオンの表情はいつもと変わりないが、緊張しているのがニーナに伝わってきた。
リオンと、カミーユの視線が合う。
「………いやだな…」
ニーナはリオンを真っ直ぐに見つめたまま呟いた。
挨拶の最後列に並んだカミーユは舞台上のリオンを見つめた。
ああ…莉音だわ。
「リオン殿下は莉音だけど、莉音とは別人だわ」
あの女が何やら言ってたけど、やっぱり莉音は莉音よ。
私の莉音。
前世みたいに早く私をその瞳に映して。
ヒソヒソと声が聞こえて来る。
「ねぇ、あの方、紫のドレスを着ておられるわ」
「紫は王族の色なのに」
「令嬢ではなく付き添いの方だから…」
「いや、いくら付き添いでも王妃殿下のドレスと同じような色味ではないか」
「さすがにそれは良くないだろう」
カミーユを見て囁かれる声に、カミーユは心の中で笑っていた。
私のドレスはただの紫色じゃない。莉音の色、バイオレットよ。
王妃殿下のドレスは国王陛下の色、パープルだわ。
バイオレットを纏えるのは、私だけなの。
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「バイオレット!?」
ジェラルドに付いて大広間に戻って来たニーナは遠目にも目立つ紫色のドレスに思わず声を上げる。
「妃でも婚約者でもないのに…」
ジェラルドは目を眇め、眉を顰めた。
「バイオレットは推しのテーマカラーなんです。私も前世では身の回りの物のほとんどが紫色でした。けどここでは紫は王族の色だから……私だって推しの色のグッズ…身に付けたい…っけど我慢してるのに…」
ニーナは悔しそうに拳をグッと握る。
前世の莉音の事を「莉音」と言えば、音は同じだから周りからは王子リオンを呼び捨てにしているように聞こえる。だから前世の莉音の事を話す時には名前の代わりに「推し」と表現すると取り決めたのだ。
「小物などはともかく、紫のドレスを身に付けられるのは王族の妃か婚約者のみです」
「わかってますヨ…だから我慢してるってば……」
段々と小声になりながら呟いた。
「マーゴットお義姉様とカトリーヌお義姉様がお義母様と一緒だけど、やっぱり居心地が悪そうですね」
エラが口元に手を当てて言い、カミーユのドレスを見ていたニーナもカミーユと一緒にいる二人の令嬢に視線をやる。
マーゴットとカトリーヌは二人の瞳の色に合わせた緑色のドレスだ。マーゴットは背が低くてぽっちゃり体型なので、濃い緑色にAラインのスカートの裾に刺繍やレースが施され視線を下に集中させるデザインになっている。カトリーヌは背が高くスリムな体型なので薄い緑色のスレンダーライン、シフォン素材でウエストマークを低めにしてある。
二人の雰囲気に良く似合っていて、カミーユが一時期「どちらかをリオンの妃に」と本気で思っていたという事が伺い知れた。
そんなマーゴットとカトリーヌも、母親が紫という、この国では一般には避けるべき色のドレスを着、周り中から顰蹙を買っている事に居た堪れない様子でオドオドと下を向いている。
「…さすがにちょっとかわいそうかも。さっきの私とはまた違う注目の浴び方だもん」
さり気なく目立たないように舞台の方へ近付きながらニーナが呟いた。
「あの女はこれからどうするつもりなのでしょう?」
ジェラルドが言うと、ニーナは首を傾げる。
「うーん…挨拶の場では国王陛下や王妃殿下もいらっしゃいますから、あまり決定的な事は言えないでしょうし…」
「いっそ不敬罪に該当するような言動をしてくれれば身柄を拘束できるのですがね」
眉を顰めるジェラルド。
うーん、それだとゴールドバーグ公爵様やエラやお義姉様たちにも累が及びそう。
三人はこれ以上近付くと不自然という所で足を止めた。
リオンが令嬢たちと挨拶を交わす声は聞こえないが、表情は見える位置だ。
リオン殿下ももうカミーユに気付いてるよね?表情には出てないけど…
挨拶の場は仕方ないけど、その後カミーユをリオン殿下に近付けないようにするにはどうすればいいだろう。
「ニーナ嬢」
「はい!?」
声を掛けられて振り向くと、そこにクラークが立っている。隣にはテオバルトとレジスもいた。
「公爵様」
「リオンたちへの挨拶が終わればダンスも始まる。今日はいつもの夜会や舞踏会とは違い、ダンスの申し込みは『家』に対する申し込みだから、エスコートして来た身としてはニーナ嬢の傍にいなくては。それに『守る』と約束したしね」
ニコリと笑うクラーク。
「俺もね。関係者だからニーナの傍にいなくちゃ」
テオバルトも笑って言う。
…結局まだ説明聞けてないから、みんなして何を企んでるのかわからないんだよね。公爵様もテオバルト様も笑顔のポーカーフェイスだしさ。
「ニーナ、順番だ」
レジスがニーナの肩を軽く叩いた。
舞台の方を見ると、カミーユを先頭に、マーゴットとカトリーヌが後ろについて壇上への階段を上がっている。
リオンの表情はいつもと変わりないが、緊張しているのがニーナに伝わってきた。
リオンと、カミーユの視線が合う。
「………いやだな…」
ニーナはリオンを真っ直ぐに見つめたまま呟いた。
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