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「リオン殿下、ニーナ嬢が心配なのはわかりますが、執務に集中してください」
リオンの執務室に置かれた自身の執務机に向かい、リオンを横目で見ながらジェラルドが言うと、書類を見ながらも内容が頭に入って来ていなかったリオンは、持っていたペンを自らの執務机に置いてため息を吐いた。
「はあ…ジェラルドはそう言うが、ニーナはカミーユに会いに行ったんだぞ?心配するなというのが無理だ」
カミーユは拘禁部屋にいる。鉄格子があるあの部屋ではニーナに直接手出しはできないが、暴言を吐いてニーナを傷付けるかも知れない。
前世の美由は莉音の周りにいた女性を敵視していた。B-rightに長く付いてくれていた女性マネージャーは無理矢理異動させたし、事務所やテレビ局やライブのスタッフにも酷い事を言って泣かせたり、辞めさせたりしたのだから。
「では、ニーナ嬢と一緒に行かれたら良かったのでは?」
「そうすると言ったが、ニーナに断られた」
不満気に言うリオンに、ジェラルドは苦笑いを浮かべる。
「それでは待つしかありませんね。執務が手に付かないようであれば、私と共にニーナ嬢の妃教育の計画を立てますか?」
ジェラルドは持っていた紙を持ち上げた。
「どんな計画なんだ?」
立ち上がりリオンの執務机の前へ行くと、ジェラルドは紙を差し出す。
「ニーナ嬢は元々頭の良い方ですので、所謂座学についてはそんなに時間を取っておりません。ただ、王には王の帝王学があるように、妃には妃の帝王学のようなものがあります。そちらと共に王族としての立ち居振る舞いを学ぶ時間を多く取ろうかと計画しております」
「そうか」
ジェラルドに差し出された紙を手に取り、じっと見た。
そして眉間に段々と皺が寄っていく。
「……」
「ご不満が?」
「これではニーナが休まる時間がない。とは言え俺の立太子までにある程度の課程を終えないといけないしなあ…」
うーんと唸るリオン。
「そうです。もうすぐ婚約を整える手筈になっていますし、婚約すれば今冬の陛下の誕生パーティーには婚約者として出席しないといけません。リオン殿下の立太子式も一年後、とにかく時間がありませんから、ニーナ嬢にはがんばっていただくしかありませんね。ただ、学園を卒業するまでは平日には講義は入れていませんし、長期休暇には王家の別荘へ招待いたします。まあ、それも一週間程度で申し訳ないですが」
ジェラルドがそう言い、リオンがげんなりした表情になった時、ノックの音がして、ニーナが執務室に入って来た。
「カミーユに嫌な事、傷付くような事を言われなかったか?」
リオンは立ち上がると、ニーナの手を取ってソファの方へと導く。
「んー…特には。話をして、多少の情状酌量の余地はあるのかな、とは思いました」
「そうなのか?」
ソファに座ると、ニーナはリオンが持っていた紙へと手を伸ばした。
執務に関する事に、求められないのに口を出したり首を突っ込んだりするニーナではないが、今の行動はその紙に書かれた文字列の一番最初に自分の名前が見えたせいだ。
紙に触れる前に手を止める。
「すみません。私の名前が見えたので…」
「妃教育の計画書だ。見て構わないよ」
リオンはニーナに紙を渡した。
ジェラルドは、ニーナが妃教育計画の余りの詰め込みように嫌悪の表情を浮かべるかと想像していた。が、ニーナはじっくりとその紙を見た後で
「これではまだ足りないと思います」
と言うと、何も予定を書いてない平日の欄に「歴史」「文化」「産業」などと持っていたペンで書き込む。
それを見ていたジェラルドは、驚いたように眉を上げた。
「ニーナ、平日は学園の授業の課題や予習復習もあるだろう?さすがにやり過ぎじゃ…」
リオンが言うと、ニーナはぐっと握り拳を握る。
「リオン殿下、私の経歴を考えれば、やり過ぎという事はないんです。それに、やっている処を周囲に見せるのも大切だと思いますし」
平民出の王太子妃など前例のない事を周囲に認めてもらうには、今までの妃教育よりもっともっと厳しくなければ!とニーナは力説する。
「しかし、それで週末には王城に来て各分野からの教師から講義を受けるなんて大変じゃないか」
心配そうなリオン。
「王城に来るのはご褒美ですよ。だって…リオン殿下に会えますよね?」
首を傾げて、上目遣いでリオンを見ると、リオンは嬉しそうに笑った。
「もちろん」
「ほら!何しろ毎週『推し』に会えるんですよ!勉強だってリオン殿下のため…つまり推し活です!だから全然苦になりません!」
握った拳に一層力を入れて力説するニーナに、思わずリオンは笑い出す。
「ははは!なるほど推し活か。じゃあ俺は頑張ってファンサしなくちゃいけないな」
そうして笑い合うリオンとニーナを見ながら、ジェラルドは息を吐いた。
「…こうなってみると、リオン殿下に一番相応しいのはニーナ嬢だと思えて来るのが不思議ですよね」
「リオン殿下、ニーナ嬢が心配なのはわかりますが、執務に集中してください」
リオンの執務室に置かれた自身の執務机に向かい、リオンを横目で見ながらジェラルドが言うと、書類を見ながらも内容が頭に入って来ていなかったリオンは、持っていたペンを自らの執務机に置いてため息を吐いた。
「はあ…ジェラルドはそう言うが、ニーナはカミーユに会いに行ったんだぞ?心配するなというのが無理だ」
カミーユは拘禁部屋にいる。鉄格子があるあの部屋ではニーナに直接手出しはできないが、暴言を吐いてニーナを傷付けるかも知れない。
前世の美由は莉音の周りにいた女性を敵視していた。B-rightに長く付いてくれていた女性マネージャーは無理矢理異動させたし、事務所やテレビ局やライブのスタッフにも酷い事を言って泣かせたり、辞めさせたりしたのだから。
「では、ニーナ嬢と一緒に行かれたら良かったのでは?」
「そうすると言ったが、ニーナに断られた」
不満気に言うリオンに、ジェラルドは苦笑いを浮かべる。
「それでは待つしかありませんね。執務が手に付かないようであれば、私と共にニーナ嬢の妃教育の計画を立てますか?」
ジェラルドは持っていた紙を持ち上げた。
「どんな計画なんだ?」
立ち上がりリオンの執務机の前へ行くと、ジェラルドは紙を差し出す。
「ニーナ嬢は元々頭の良い方ですので、所謂座学についてはそんなに時間を取っておりません。ただ、王には王の帝王学があるように、妃には妃の帝王学のようなものがあります。そちらと共に王族としての立ち居振る舞いを学ぶ時間を多く取ろうかと計画しております」
「そうか」
ジェラルドに差し出された紙を手に取り、じっと見た。
そして眉間に段々と皺が寄っていく。
「……」
「ご不満が?」
「これではニーナが休まる時間がない。とは言え俺の立太子までにある程度の課程を終えないといけないしなあ…」
うーんと唸るリオン。
「そうです。もうすぐ婚約を整える手筈になっていますし、婚約すれば今冬の陛下の誕生パーティーには婚約者として出席しないといけません。リオン殿下の立太子式も一年後、とにかく時間がありませんから、ニーナ嬢にはがんばっていただくしかありませんね。ただ、学園を卒業するまでは平日には講義は入れていませんし、長期休暇には王家の別荘へ招待いたします。まあ、それも一週間程度で申し訳ないですが」
ジェラルドがそう言い、リオンがげんなりした表情になった時、ノックの音がして、ニーナが執務室に入って来た。
「カミーユに嫌な事、傷付くような事を言われなかったか?」
リオンは立ち上がると、ニーナの手を取ってソファの方へと導く。
「んー…特には。話をして、多少の情状酌量の余地はあるのかな、とは思いました」
「そうなのか?」
ソファに座ると、ニーナはリオンが持っていた紙へと手を伸ばした。
執務に関する事に、求められないのに口を出したり首を突っ込んだりするニーナではないが、今の行動はその紙に書かれた文字列の一番最初に自分の名前が見えたせいだ。
紙に触れる前に手を止める。
「すみません。私の名前が見えたので…」
「妃教育の計画書だ。見て構わないよ」
リオンはニーナに紙を渡した。
ジェラルドは、ニーナが妃教育計画の余りの詰め込みように嫌悪の表情を浮かべるかと想像していた。が、ニーナはじっくりとその紙を見た後で
「これではまだ足りないと思います」
と言うと、何も予定を書いてない平日の欄に「歴史」「文化」「産業」などと持っていたペンで書き込む。
それを見ていたジェラルドは、驚いたように眉を上げた。
「ニーナ、平日は学園の授業の課題や予習復習もあるだろう?さすがにやり過ぎじゃ…」
リオンが言うと、ニーナはぐっと握り拳を握る。
「リオン殿下、私の経歴を考えれば、やり過ぎという事はないんです。それに、やっている処を周囲に見せるのも大切だと思いますし」
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「しかし、それで週末には王城に来て各分野からの教師から講義を受けるなんて大変じゃないか」
心配そうなリオン。
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首を傾げて、上目遣いでリオンを見ると、リオンは嬉しそうに笑った。
「もちろん」
「ほら!何しろ毎週『推し』に会えるんですよ!勉強だってリオン殿下のため…つまり推し活です!だから全然苦になりません!」
握った拳に一層力を入れて力説するニーナに、思わずリオンは笑い出す。
「ははは!なるほど推し活か。じゃあ俺は頑張ってファンサしなくちゃいけないな」
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