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とある国に、宝石のような瞳を持つ、美しく賢く優しい王子様がおりました。
豪華なお城に住み、豪華なご飯を食べ、豪華な服を着ている王子様。
しかし王子様は自分が不幸せだと思っていました。
なぜなら、王子様には自分が生まれる前、別の人として生きていた記憶があったのです。
生まれ変わる前の王子様は、我儘で自分勝手で周りの人を傷付け、大変な迷惑をかけたので、とても嫌われていました。
王子様はどうにかして生まれ変わる前の罪を償いたいと思います。しかし、なすすべもなく辛く苦しむ日々を送っていました。
そんな時、王子様の前に現れたのは美しい少女。
少女は魔法使いだと名乗ります。
「王子様、貴方は生まれ変わる前、とても嫌われていましたね」
それを聞いた王子様は落ち込み、俯いてしまいます。
少女は言います。
「私が貴方に会いに来たのは貴方の罪の意識を消すためです」
王子様は顔を上げました。
少女は言います。
「何故なら私は sin deleteする者だから」
少女が差し出す手を王子様は握りました。
「貴方は反省しています。だから神様が私にsin deleteを命じました」
魔法がかかり、王子様の心がみるみる明るく、軽くなっていきます。
いつの間にか周りはお城の舞踏会に変わり、王子様は少女と踊っていました。
少女の麗しいドレスの裾はふわりと揺れ、クルクルと足取りも軽く、王子様も少女も周りのみんなも笑顔です。
「ああ…私は許されたのだ」
王子様は少女を抱きしめます。
「私と結婚してください」
王子様の言葉に、少女は首を横に振りました。
「神様の魔法の効力は十二時まで。本当の私は平民の平凡な少女です。王子様とは結婚できません」
十二時になれば少女の麗しいドレスは消え去ってしまいます。
「さようなら王子様。どうかこれからはお幸せに」
少女は十二時になる前に王子様の前から走り去ってしまいました。
お城の階段を急いで駆け抜ける途中、よろめいた少女は青い硝子でできた踵の高い靴を脱ぎ捨てます。
王子様は少女を追い掛けますが、すでに少女の姿は見えません。
脱ぎ捨てられた硝子の靴に気が付いた王子様がその靴を拾い上げました。
数日後、王子様にかけた魔法で魔力が尽きた少女の元へ王子様がやって来ます。
そして青い硝子の靴を差し出しました。
「この靴が足に合う人をさがしています」
少女が靴を履くと、足にピッタリ!
「やっと見つけた、私のsin delete」
王子様は少女を抱きしめます。
王子様を助けるために魔力を使い果たした元魔法使いの少女は敬意を込めて「シンデレラ」と呼ばれるようになりました。
-----
「『そして二人はいつまでも幸せに暮らしました』めでたし、めでたし」
ニーナが絵本を閉じると、並んでソファに座っているリオンがクスクスと笑う。
「『生まれ変わり』とか出て来て意外に鋭いが、俺が前世で嫌われ者だったり、ニーナが魔法使いだったり、当然だけど色々違って面白いな」
「シンデリート、シンデリー…、シンデレー…シンデレラ。ちょっと無理があるなあ。それに何で私が『美しい少女』なの!何でここにエラ成分が入って来た!?」
急に舞踏会に場面展開したり、靴を脱ぎ捨てちゃったり、都合良く魔法が十二時で解ける設定だったり、無理矢理感がすごい。
絵本の表紙を見ながらぶつぶつ呟くニーナの肩を抱き、自分の方へ引き寄せるリオン。
ニーナの頭がポスンとリオンの胸に当たった。
「ニーナは美しいというよりかわいい系だよな」
リオンはチュッとリップ音を当ててニーナの額にキスをする。
「リオンは『人々が上手く辻褄を合わせた物語を作る』って言ったけど、これ上手く辻褄合ってる風で合ってないんじゃ…?」
少し頬を赤くしながらもニーナはキスなど意に介さないかのように話を続けた。
「物語は変化して行くものだから、最初はこんなモンじゃないかな?」
言いながら頬にもキス。
「うーん、まあ…そうかも」
瞼にもキス。
いよいよ唇に───という気配を察してニーナは持っていた絵本をリオンの口元に当てた。
最近巷で話題の絵本。タイトルは「シンデレラ」。
あの舞踏会から早くも数年が経ち、リオンは立太子し、もうすぐリオンとニーナの結婚式。
それを祝してこの国の王太子が元平民の妃を選んだエピソードをモチーフに書かれた物語だ。
「これからエラとレジスが来るんだからダメ」
上目遣いでリオンを見て、少し恥ずかしそうなニーナ。
「ああ…結婚の日取りが決まったんだったか?」
「そうなの。レジスの公爵家の後継としての立場が固まってきたからそろそろって」
チュッ。
口元の絵本を笑顔でどかすと、嬉しそうに話すニーナの唇にリオンの唇が触れる。
「!」
「ニーナがかわいくて我慢できなかった」
「もう!」
悪戯っぽく笑うリオンの胸をニーナはポカポカと叩いた。
「早く俺たちの結婚式の日が来ればいいのにな」
ニーナを抱きしめるリオン。
「リオンは慣れてるから平気だろうけど、私は大勢の人の前は緊張するから『早く来ればいいな』と『来ないで~』が半々…」
ため息混じりに言いながら、リオンの背中に手を回した。
「軍礼装や燕尾服、タキシードの俺を一番近くで見れる日だと思えばどうだ?」
ニーナは目を見開いてリオンを見る。
「…ものすごく楽しみになって来た」
瞳を輝かせるニーナ。
リオンは破顔し、ニーナの頬に口付けをした。
───そして二人はいつまでも幸せに暮らしました。
〈 了 〉
とある国に、宝石のような瞳を持つ、美しく賢く優しい王子様がおりました。
豪華なお城に住み、豪華なご飯を食べ、豪華な服を着ている王子様。
しかし王子様は自分が不幸せだと思っていました。
なぜなら、王子様には自分が生まれる前、別の人として生きていた記憶があったのです。
生まれ変わる前の王子様は、我儘で自分勝手で周りの人を傷付け、大変な迷惑をかけたので、とても嫌われていました。
王子様はどうにかして生まれ変わる前の罪を償いたいと思います。しかし、なすすべもなく辛く苦しむ日々を送っていました。
そんな時、王子様の前に現れたのは美しい少女。
少女は魔法使いだと名乗ります。
「王子様、貴方は生まれ変わる前、とても嫌われていましたね」
それを聞いた王子様は落ち込み、俯いてしまいます。
少女は言います。
「私が貴方に会いに来たのは貴方の罪の意識を消すためです」
王子様は顔を上げました。
少女は言います。
「何故なら私は sin deleteする者だから」
少女が差し出す手を王子様は握りました。
「貴方は反省しています。だから神様が私にsin deleteを命じました」
魔法がかかり、王子様の心がみるみる明るく、軽くなっていきます。
いつの間にか周りはお城の舞踏会に変わり、王子様は少女と踊っていました。
少女の麗しいドレスの裾はふわりと揺れ、クルクルと足取りも軽く、王子様も少女も周りのみんなも笑顔です。
「ああ…私は許されたのだ」
王子様は少女を抱きしめます。
「私と結婚してください」
王子様の言葉に、少女は首を横に振りました。
「神様の魔法の効力は十二時まで。本当の私は平民の平凡な少女です。王子様とは結婚できません」
十二時になれば少女の麗しいドレスは消え去ってしまいます。
「さようなら王子様。どうかこれからはお幸せに」
少女は十二時になる前に王子様の前から走り去ってしまいました。
お城の階段を急いで駆け抜ける途中、よろめいた少女は青い硝子でできた踵の高い靴を脱ぎ捨てます。
王子様は少女を追い掛けますが、すでに少女の姿は見えません。
脱ぎ捨てられた硝子の靴に気が付いた王子様がその靴を拾い上げました。
数日後、王子様にかけた魔法で魔力が尽きた少女の元へ王子様がやって来ます。
そして青い硝子の靴を差し出しました。
「この靴が足に合う人をさがしています」
少女が靴を履くと、足にピッタリ!
「やっと見つけた、私のsin delete」
王子様は少女を抱きしめます。
王子様を助けるために魔力を使い果たした元魔法使いの少女は敬意を込めて「シンデレラ」と呼ばれるようになりました。
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「『そして二人はいつまでも幸せに暮らしました』めでたし、めでたし」
ニーナが絵本を閉じると、並んでソファに座っているリオンがクスクスと笑う。
「『生まれ変わり』とか出て来て意外に鋭いが、俺が前世で嫌われ者だったり、ニーナが魔法使いだったり、当然だけど色々違って面白いな」
「シンデリート、シンデリー…、シンデレー…シンデレラ。ちょっと無理があるなあ。それに何で私が『美しい少女』なの!何でここにエラ成分が入って来た!?」
急に舞踏会に場面展開したり、靴を脱ぎ捨てちゃったり、都合良く魔法が十二時で解ける設定だったり、無理矢理感がすごい。
絵本の表紙を見ながらぶつぶつ呟くニーナの肩を抱き、自分の方へ引き寄せるリオン。
ニーナの頭がポスンとリオンの胸に当たった。
「ニーナは美しいというよりかわいい系だよな」
リオンはチュッとリップ音を当ててニーナの額にキスをする。
「リオンは『人々が上手く辻褄を合わせた物語を作る』って言ったけど、これ上手く辻褄合ってる風で合ってないんじゃ…?」
少し頬を赤くしながらもニーナはキスなど意に介さないかのように話を続けた。
「物語は変化して行くものだから、最初はこんなモンじゃないかな?」
言いながら頬にもキス。
「うーん、まあ…そうかも」
瞼にもキス。
いよいよ唇に───という気配を察してニーナは持っていた絵本をリオンの口元に当てた。
最近巷で話題の絵本。タイトルは「シンデレラ」。
あの舞踏会から早くも数年が経ち、リオンは立太子し、もうすぐリオンとニーナの結婚式。
それを祝してこの国の王太子が元平民の妃を選んだエピソードをモチーフに書かれた物語だ。
「これからエラとレジスが来るんだからダメ」
上目遣いでリオンを見て、少し恥ずかしそうなニーナ。
「ああ…結婚の日取りが決まったんだったか?」
「そうなの。レジスの公爵家の後継としての立場が固まってきたからそろそろって」
チュッ。
口元の絵本を笑顔でどかすと、嬉しそうに話すニーナの唇にリオンの唇が触れる。
「!」
「ニーナがかわいくて我慢できなかった」
「もう!」
悪戯っぽく笑うリオンの胸をニーナはポカポカと叩いた。
「早く俺たちの結婚式の日が来ればいいのにな」
ニーナを抱きしめるリオン。
「リオンは慣れてるから平気だろうけど、私は大勢の人の前は緊張するから『早く来ればいいな』と『来ないで~』が半々…」
ため息混じりに言いながら、リオンの背中に手を回した。
「軍礼装や燕尾服、タキシードの俺を一番近くで見れる日だと思えばどうだ?」
ニーナは目を見開いてリオンを見る。
「…ものすごく楽しみになって来た」
瞳を輝かせるニーナ。
リオンは破顔し、ニーナの頬に口付けをした。
───そして二人はいつまでも幸せに暮らしました。
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