幼なじみに契約結婚を持ちかけられました。

ねーさん

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「いや!」
 リンジーは顔を背けようとするが、髪と膝を掴まれて、更に男にのし掛かられていて身動きが取れなかった。
 男はリンジーの下唇をぎゅっと噛む。
「いっ…」
 ブツっと歯が食い込む感触がして、口の中に血の味が広がる。顎に血が流れる感触がした。
「ああ…余り女性に興味がないので心配だったのですが、血は良いですね。興奮します」
 男は少し顔を離すと、自分の唇に付いたリンジーの血をペロリと舐める。
「へ…変態!」
「ありがとうございます」
 口角を上げる男。
「褒めてない!!」
「ははは」
 笑いながら、男はまた顔を近付ける。

「や…めて!」
 顔を背けようとすると、髪の毛をギリギリと引っ張られた。
「いた…うう…」
 涙が滲む。
「涙目もそそられます」
 男はリンジーの顎に流れた血を顎先から口元へベロリと舐めた。
「や…なんで…?」
 涙が頬を伝う。
「お察しの通り、私の目的は第一王子を廃し、第二王子を王太子に擁立する事です」

 この男がケントの側近で、第二王子派なのはわかったけど、それが私と何の関係が…?
「貴女の家は伯爵家で、しかも困窮している。王太子となられるケント殿下の後ろ盾としては不足どころではなく、不適。ケント殿下には然るべき家から然るべき令嬢を娶っていただかなくてはなりません。しかし、ケント殿下は貴女のために第二王子の立場すら捨てようとしている」
「!」
 …何でこの男がそれを知ってるの?
 婚約解消の条件。私とケントしか知らない筈の。でもケントが他の人にそれを言う訳がない。
 男は手を伸ばし、リンジーの唇の傷を親指で押さえる。
「…っ」
「痛そうですね」
 どこか楽しそうに男は言う。唇を押さえられ、喋れないリンジーは、目を見開いて男を見つめた。
「ああ、何故私がを知っているのか、ですか?」
 男はニッコリ笑うと、唇を押さえていた親指をリンジーの口に押し込んだ。
「…うっ」
「何故知っているかは簡単です。見せてもらったんですよ」
 親指と人差し指で傷を挟むとぎゅっと摘む。
「いっ…」
 痛い。この男、加虐趣味者だわ。それに「見せてもらった」ってどう言う事?
「ザイン君に」
「…ぇ?」
 ザイン?
「ええ。ザイン君に見せてもらったんです。あの封筒を」
 リンジーの身体を跨いで両膝をつき、髪と唇から手を離すと、男は自分の着ているシャツの胸ポケットに手を入れた。
 眼鏡と白い薬包を取り出し、薬包を人差し指と中指に挟んで眼鏡を掛けると、指に付いたリンジーの血が男の頬にも付着する。
「あ…」
 学園の図書室の司書の人!
 話した事もないし、遠くから見掛けた事があるだけだけど、ヒューイみたいな黒髪だなって…思って…
 …え?
 ちょっと待って。この男とザインが知り合い?
 ザインが図書室の司書と知り合いだなんて、聞いた事ないわ。
 もしかして…それを隠さなきゃいけないような間柄だって事?

「貴女には大人しくヒューイ・グラフトンと結婚していただきたかったんですがね。そうしたら第一王子を廃する計画も予定通り進められたのに」
 男は眉間に手をやり、眼鏡を押し上げながら言う。
「貴女のせいで計画が狂ったのですよ。本来はケント殿下が学園を卒業されてから始動する計画でしたが、その前に貴女のために第二王子の地位を捨てられてはかなわない」
 男は顎を上げてリンジーを見下ろした。
 寒気がするほど冷たい視線。
「何を…」
 男はまた素早く片手を伸ばし、リンジーの髪を掴むと、リンジーの身体と重なるように自分の身体を前に倒す。
「う…」
 ずっしりとした重みにリンジーは小さく呻くと眉を顰めた。
 男はリンジーの顔に自分の顔を近付ける。

「王太子妃の前提条件ってご存知ですか?」
「…前提…?」
 重さで息が苦しい。目の前に男の冷たい瞳が見えて、眼鏡のフレームが鼻筋に触れた。

「処女である事」

 ニヤリと笑う。
「周りからは、貴女は婚約者と既に関係にあると思われていますが、実はそうではない事はケント殿下も私も知っています。だからこれから私が貴女の純潔を散らします。これでヒューイ・グラフトンも婚約破棄を決意するでしょうから、ザイン君の希望にも添えますし」
 …ザイン?ザインの希望?

「抵抗されると燃えますし、痛がるのを見るのも楽しそうなんですが、さすがにかわいそうなので、少し朦朧とする薬を飲ませて差し上げましょう」
 男は笑いながら指に挟んでいた薬包を摘むと、リンジーと自分の顔の間に示す。
「いや…」
「まあまあ。私なりの慈悲ですよ」
 髪を掴んでいた手を外すと、リンジーの顎を掴んで口を開かせ、薬包の中の粉を口の中に入れた。








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