転生令嬢と王子の恋人

ねーさん

文字の大きさ
14 / 42

13

しおりを挟む
13

 ゴヴァンに伴われて生徒会室に入ると、生徒会長の机にランドルフ・リードが座り、副会長の席にマーク・スペンサーが、応接セットにはクリストファー・マーシャルとエリック・ドイルが座っていた。
 …ロイド殿下はいないのね。
 リザは生徒会室を見渡して小さく息を吐く。
 流石に婚約者からやってもいない不正行為を糾弾されるのは辛過ぎる。

「来たか。リザ・クロフォード」
 ランドルフが立ち上がり、リザの前に移動すると、他の三人も立ち上がり、ランドルフに並んだ。ゴヴァンもランドルフたちの後ろに立ち、一対五で向かい合う形になった。
「確かに君は成績優秀だが、いきなり一位を、それもほぼ満点で取るとはおかしいだろう」
 ランドルフが言うと皆が頷く。
「おかしいですか?」
 リザはわざと大きく首を傾げた。
「私、最近とても勉強しておりますし、当然考査の対策もしておりますわ」
「君はロイド殿下の婚約者だろう?王族との結婚が決まっているのに必死に勉強する意味がどこにある?ただ一位を取りたかっただけだろう?」
 ランドルフはリザを嘲笑うように言う。
「では、将来が決定している私が不正をしてまで一位を取りたかった理由は何ですか?」
 リザはランドルフを睨む。
「殿下に近付くローズへの圧力のため」
「は?」
「ローズに自分の方が上だと分かりやすく誇示するため、ではないのか?」
 リザはローズが成績が良いのか悪いのかすら知らないのだが、確かにローズが学年一位を取ったとは聞いた事はないのでリザが一位になれば確実にローズよりは上だと示せるだろう。
「そんなマウント取るような真似…」
 リザがそれをして何の意味があるのか。
「マウント?」
「いえ」
「…つまり、自分の方が優秀だと示す事でローズを落胆させるのが目的だ」
「ローズさんは私が一位になった事で落胆しているのですか?」
「そうだ。可哀想に『殿下に私は相応しくない』と泣いていた」
 ランドルフが眉間に皺を寄せながらそう言うと、後ろの四人も痛ましそうな表情かおをする。
「お前はローズを傷付けたかったんだろう?まんまとそうなって満足か?」
 今まで黙っていたマークがリザを睨みながら言う。
「ローズを泣かせるなんて…」
 エリックも呟く。
 ああ、みんなローズさんを好きなのね…
 でも普通好きな女性が他の男性を想って泣いていたら、慰めてあわよくば自分の方を振り向かせたいと思うものなんじゃないの?揃って「ローズが可哀想」と私に敵意を向けてくるなんて…これがゲームの強制力なの?
「…先程、ニューマン先生は『不正行為を認めた』と仰いました。証拠があるなら示してください。ないなら他の生徒の前で私の汚名を晴らしてください」
 リザは低い声で言う。
「汚名?お前はローズを傷付けた。充分な罪だ」
 マークが口角を上げて言う。
「…スペンサー様は私が証拠もなく不正行為を疑われても、ローズさんを傷付けたのだから仕方ないと?」
「そうだ」
 不正行為をしたと思われた私が、皆からどんな目で見られるか、どんな噂をされるか…それを。
「ローズさんが勝手に傷付いたのよ。私のせいじゃないわ」
 リザはスカートを握りしめる。
「はあ?」
 五人の咎めるような視線がリザを刺した。
「ローズさんがロイド殿下を好きなら、私はいつでも婚約解消に応じますから!だからもう私を巻き込まないで!」
 そう言うと、リザは踵を返し生徒会執務室の扉へ向かう。
 悔しくて涙が滲んだ。

 勢い良く扉を開けると、そこにロイドが立っていた。
「ロイド殿下…」
 リザがロイドを見上げるとロイドは呆然として口を開く。
「…不正行為で生徒会室に呼ばれたと…聞いて…」
 リザの眼から涙が溢れた。
「何故泣いている?」
「殿下のせいです」
「…俺の?」
 ロイドがリザの方へ手を伸ばすが、リザは後退さがってそれを避けた。
「殿下はさっさとローズさんとくっついて、私との婚約を解消してください!」
 リザはロイドの脇をすり抜けて走り出す。
「リザ!」
 背中にロイドの声が聞こえた。
 殿下に初めて名前を呼ばれたわ。
 リザは廊下を走りながらそう思った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

えっ私人間だったんです?

ハートリオ
恋愛
生まれた時から王女アルデアの【魔力】として生き、16年。 魔力持ちとして帝国から呼ばれたアルデアと共に帝国を訪れ、気が進まないまま歓迎パーティーへ付いて行く【魔力】。 頭からスッポリと灰色ベールを被っている【魔力】は皇太子ファルコに疑惑の目を向けられて…

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さくら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

処理中です...