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「リザ…大丈夫?」
リザたちが食堂に入ると、生徒たちが騒めいた。
ステラが心配そうにリザを見る。ステラの隣のジェイクも心配顔だ。
「気にしないわ」
リザは二人に笑いかけると端の方の席に座った。
「俺、買ってくるよ。二人とも何が良い?」
「サンドイッチ五人前」
ジェイクが言うと、当然のようにステラが答えた。
「リザは?」
「…スープを」
「それだけで良いのか?」
「うん。あんまりお腹すいてないの」
リザは少し笑ってジェイクを見た。
リザの不正行為の件は訂正されないままだ。ロイドがローズと舞踏会で二曲踊った事も相まって「ロイド殿下はリザに愛想を尽かし婚約破棄の機会を窺っている」との説が今有力な噂話となっていた。
ローズは元々のかわいさもあり一般の男子生徒にも人気がある。ロイドがローズを選んでも誰も不思議には思わないのだ。
「ローズ嬢に問題があるとすれば身分くらいか」
ある男子生徒が言うと、
「ロイド殿下は第二王子で王太子ではないとは言え、男爵令嬢じゃあなあ」
「どこかの上位貴族の養女になれば良いだろう?」
「そうだな。第二王子派の家なら喜んで受け入れるだろう」
そう盛り上がる。リザにギリギリ聞こえるくらいの音量だ。
「ロイド殿下から何か反応はあったの?」
ステラが聞くと、リザは首を横に振る。
「ううん。何も」
「…ロイド殿下も何をお考えか、よくわからないわね」
リザが生徒会室でロイドに「ローズとくっついて婚約を解消して」と言ってからもうすぐ二週間になる。
ロイドからは接触もないし、手紙すらも来ない。
「もう私に興味がないんじゃない?そもそも興味を持たれてたとも思えないけど」
リザは休日に家に戻った時、父侯爵に「婚約解消を申し入れたい」と相談してみたが「王族との縁談をこちらからお断りする事はできないよ」と諭された。
まあ、それはそうよね…
「次の定例茶会はいつ?」
「今度のお休みの日」
ジェイクが戻って来て、山盛りのサンドイッチをステラの前に置く。また戻って自分の昼食のトレイにリザのスープも乗せて持って来た。
「リザ、一切れでも食べたら?」
ステラが言うと、リザは首を横に振る。
「少しは食べた方が良いぞ。腹が減ってると碌な事考えないし。ほら」
ジェイクがサンドイッチを一切れ持つと、リザの口元に押し付ける。
「もうリザが口を付けたから食べるしかないな」
「そうね」
ステラも頷く。
「もう」
リザは苦笑いしながらサンドイッチを咥えた。
食堂に入って来たロイドはリザたちの様子を見て、踵を返す。
「殿下、昼食は?」
一緒に来たクラスメイトが声を掛けるが、
「食欲がなくなった」
ロイドはそう言って去って行った。
-----
定例茶会の日、ロイドは執務室にいたが何も手に付かずにいた。
今日は来るだろうか。
リザに「婚約解消してください」と言われた日、ロイドは生徒会の面々に不正行為について聞いてみたが、どうにも要領を得ない説明しかなく、証拠はないようなのに皆「リザが非難されるのは当然」という態度だった。
それでなくても「ローズはかわいい」「ローズは良い子だ」「ローズに好かれている殿下は幸せ者だ」「早くローズと付き合え」「リザと婚約解消し、ローズと婚約しろ」と皆の言う事が段々と激化しているようでロイドは不思議に思っているのだ。
「殿下、リザ様がおいでになりました」
侍従のアベルが執務室に入って来て、ロイドは少し緊張した。
「殿下にはご機嫌麗しく…」
お茶の準備がされた中庭に行くと、リザが立ち上がって礼を取る。
「堅苦しい挨拶は良い」
「はい」
リザとロイドは席に座る。侍女がお茶を入れて席から離れた。
「……」
「……」
沈黙が続いた。
ロイドはリザを見る。リザは俯いていた。
「…すまない」
ロイドが言うと、顔を上げる。
「何を謝られているのですか?」
リザが眉を寄せて首を傾げる。琥珀色の瞳がロイドを見ていた。
「色々と謝罪しなければならない事はあるが、まずは…婚約者に指名した事を」
婚約者に指名した事を謝るとは、どう言う事だろうか。
私を婚約者にした事を…後悔してる?
「…いや、それより前の事からだな」
「それより前?」
ロイドはリザを真っ直ぐに見つめて言った。
「リサコ」
「リザ…大丈夫?」
リザたちが食堂に入ると、生徒たちが騒めいた。
ステラが心配そうにリザを見る。ステラの隣のジェイクも心配顔だ。
「気にしないわ」
リザは二人に笑いかけると端の方の席に座った。
「俺、買ってくるよ。二人とも何が良い?」
「サンドイッチ五人前」
ジェイクが言うと、当然のようにステラが答えた。
「リザは?」
「…スープを」
「それだけで良いのか?」
「うん。あんまりお腹すいてないの」
リザは少し笑ってジェイクを見た。
リザの不正行為の件は訂正されないままだ。ロイドがローズと舞踏会で二曲踊った事も相まって「ロイド殿下はリザに愛想を尽かし婚約破棄の機会を窺っている」との説が今有力な噂話となっていた。
ローズは元々のかわいさもあり一般の男子生徒にも人気がある。ロイドがローズを選んでも誰も不思議には思わないのだ。
「ローズ嬢に問題があるとすれば身分くらいか」
ある男子生徒が言うと、
「ロイド殿下は第二王子で王太子ではないとは言え、男爵令嬢じゃあなあ」
「どこかの上位貴族の養女になれば良いだろう?」
「そうだな。第二王子派の家なら喜んで受け入れるだろう」
そう盛り上がる。リザにギリギリ聞こえるくらいの音量だ。
「ロイド殿下から何か反応はあったの?」
ステラが聞くと、リザは首を横に振る。
「ううん。何も」
「…ロイド殿下も何をお考えか、よくわからないわね」
リザが生徒会室でロイドに「ローズとくっついて婚約を解消して」と言ってからもうすぐ二週間になる。
ロイドからは接触もないし、手紙すらも来ない。
「もう私に興味がないんじゃない?そもそも興味を持たれてたとも思えないけど」
リザは休日に家に戻った時、父侯爵に「婚約解消を申し入れたい」と相談してみたが「王族との縁談をこちらからお断りする事はできないよ」と諭された。
まあ、それはそうよね…
「次の定例茶会はいつ?」
「今度のお休みの日」
ジェイクが戻って来て、山盛りのサンドイッチをステラの前に置く。また戻って自分の昼食のトレイにリザのスープも乗せて持って来た。
「リザ、一切れでも食べたら?」
ステラが言うと、リザは首を横に振る。
「少しは食べた方が良いぞ。腹が減ってると碌な事考えないし。ほら」
ジェイクがサンドイッチを一切れ持つと、リザの口元に押し付ける。
「もうリザが口を付けたから食べるしかないな」
「そうね」
ステラも頷く。
「もう」
リザは苦笑いしながらサンドイッチを咥えた。
食堂に入って来たロイドはリザたちの様子を見て、踵を返す。
「殿下、昼食は?」
一緒に来たクラスメイトが声を掛けるが、
「食欲がなくなった」
ロイドはそう言って去って行った。
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定例茶会の日、ロイドは執務室にいたが何も手に付かずにいた。
今日は来るだろうか。
リザに「婚約解消してください」と言われた日、ロイドは生徒会の面々に不正行為について聞いてみたが、どうにも要領を得ない説明しかなく、証拠はないようなのに皆「リザが非難されるのは当然」という態度だった。
それでなくても「ローズはかわいい」「ローズは良い子だ」「ローズに好かれている殿下は幸せ者だ」「早くローズと付き合え」「リザと婚約解消し、ローズと婚約しろ」と皆の言う事が段々と激化しているようでロイドは不思議に思っているのだ。
「殿下、リザ様がおいでになりました」
侍従のアベルが執務室に入って来て、ロイドは少し緊張した。
「殿下にはご機嫌麗しく…」
お茶の準備がされた中庭に行くと、リザが立ち上がって礼を取る。
「堅苦しい挨拶は良い」
「はい」
リザとロイドは席に座る。侍女がお茶を入れて席から離れた。
「……」
「……」
沈黙が続いた。
ロイドはリザを見る。リザは俯いていた。
「…すまない」
ロイドが言うと、顔を上げる。
「何を謝られているのですか?」
リザが眉を寄せて首を傾げる。琥珀色の瞳がロイドを見ていた。
「色々と謝罪しなければならない事はあるが、まずは…婚約者に指名した事を」
婚約者に指名した事を謝るとは、どう言う事だろうか。
私を婚約者にした事を…後悔してる?
「…いや、それより前の事からだな」
「それより前?」
ロイドはリザを真っ直ぐに見つめて言った。
「リサコ」
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