11 / 80
10
しおりを挟む
10
学園は十五歳になる年に入学し、四年間学び十八歳で卒業する。貴族の令息令嬢は幼い頃より家庭教師に学び学園へ入学するが、貴族でない者は家の都合により五歳から十歳には初等教育校へ入学し、数年間字や計算などを学び、成績優秀者やお金のある商家の子供などが学園へと入学する。
全寮制で、いかに高位の貴族でも侍女や侍女、メイドなどを伴う事はできない決まりだ。もちろん王族でも。
学園は一学年が春期、秋期、冬期の三月期制で、春期と秋期の間に約二ヶ月の夏季休暇、秋期と冬期の間、冬期と春期の間にそれぞれ約二週間の冬期休暇、春期休暇がある。
「セラはベンジャミン殿下とステファン殿下と仲が良いの?」
学園の寮のアイリスの部屋で、お茶を飲んでいたセラフィナがアイリスの方を見て首を傾げた。
「お兄様たち?そうね。歳の離れた妹だからかわいがっていただいているわ」
「ベンジャミン殿下が二十七歳で、ステファン殿下が二十五歳?セラと十一歳と九歳違いね」
と言う事はウォルター殿下とは九歳と七歳違いか。
「私は妹だからかわいがっていただいているけど、お兄様は弟だからなかなか複雑みたいよね…」
セラフィナがため息混じりに言う。
「この間ウォルター殿下から少しお聞きしたわ」
この国では爵位や家督を継ぐのは男性と決まっている。
家を継ぐべき男性が居ない場合は一時的に女性が代行する事もあるが、最終的には親類の男性が家を継いだり、養子を取る、娘婿を迎えるなどして男性が後継となる。
それは王家も同じで、王女には継承権がなく、王子のみが王位を継承する者となり得るのだ。
「……」
アイリスは先日のウォルターの話を思い出した。
ウォルターたちの父親であるこの国の王太子と、婚約者の東国の王女は十二歳、歳が離れていた。
そのため、王太子が学園で第一王子ベンジャミンと第二王子ステファンの母親と出会った時、王女はまだ幼い子供だったのだ。
東国との関係上、王女との婚約を解消する事はできず、王太子は男爵家の娘であるベンジャミンとステファンの母親を側妃に据えた。
そして側妃との間に第一王子、第二王子が生まれ、更に数年後、東国から王女を正妃として迎えウォルターとセラフィナが生まれたのだ。
「東国とは国境を接して紛争が絶えない。特に国境となる連山の一つから銀が採取されると国境線を巡っての攻防が激しくなったんだ」
「はい」
そうウォルターが言うと、アイリスは頷く。
「そこで、国境線は連山の麓、連山は土地も産出物も両国で共有し平等に分配すると条約が結ばれた。これが約三十年前だね。その時、父上と母上の婚約が取り決められた」
この国の王太子に東国の王女が嫁ぐ。政略結婚であり、友好の標であり、人質みたいなものでもあるのね…
「更に、父上たちの次の代での婚姻もその時決められたんだ。兄上…第二王子ステファンと東国の王女。兄上が東国へ婿入する事になっていた。しかし…」
ウォルターはそう言うと、眉を顰めた。
「東国の王女は政略結婚を嫌って出奔してしまったんだ」
「……」
そうだ。その時この国でも騒ぎになったわ。
確か私がガードナー家に来てから何年か経った頃…そう言えば、ウォルター殿下とお姉様が婚約されたのって、ステファン殿下の婚約破棄騒動の直ぐ後じゃなかった?
「そう。僕がその時、ガードナー伯爵令嬢との婚約を申し出たんだ」
アイリスの顔色を読んでウォルターが言う。
「そうだったんですか」
そう言うアイリスを見て、ウォルターは少し笑った。
「兄上が…ステファンではなく第一王子ベンジャミンが、ステファン兄上の代わりに僕を東国へ差し出そうとしたからね」
「え!?」
アイリスが驚いた表情を見せるとウォルターは自嘲気味に笑う。
「いくら長子継承とは言え、兄上は側妃の子、僕は正妃の子だから。僕を王太子…国王に、と担ぎ上げようとする勢力もいるんだ。だから兄上は僕を東国へ行かせて自分の立場を固めようとしたんだよ」
理屈はわかる。わかるけど…
「ステファン兄上と婚約していた王女以外に王女が居なかったのもあってね。兄上の婿入先はないが、僕は母が東国出身だから母の実家や親類などがある。東国へ行かせて、そこで東国の令嬢と結婚すれば良いと」
学園は十五歳になる年に入学し、四年間学び十八歳で卒業する。貴族の令息令嬢は幼い頃より家庭教師に学び学園へ入学するが、貴族でない者は家の都合により五歳から十歳には初等教育校へ入学し、数年間字や計算などを学び、成績優秀者やお金のある商家の子供などが学園へと入学する。
全寮制で、いかに高位の貴族でも侍女や侍女、メイドなどを伴う事はできない決まりだ。もちろん王族でも。
学園は一学年が春期、秋期、冬期の三月期制で、春期と秋期の間に約二ヶ月の夏季休暇、秋期と冬期の間、冬期と春期の間にそれぞれ約二週間の冬期休暇、春期休暇がある。
「セラはベンジャミン殿下とステファン殿下と仲が良いの?」
学園の寮のアイリスの部屋で、お茶を飲んでいたセラフィナがアイリスの方を見て首を傾げた。
「お兄様たち?そうね。歳の離れた妹だからかわいがっていただいているわ」
「ベンジャミン殿下が二十七歳で、ステファン殿下が二十五歳?セラと十一歳と九歳違いね」
と言う事はウォルター殿下とは九歳と七歳違いか。
「私は妹だからかわいがっていただいているけど、お兄様は弟だからなかなか複雑みたいよね…」
セラフィナがため息混じりに言う。
「この間ウォルター殿下から少しお聞きしたわ」
この国では爵位や家督を継ぐのは男性と決まっている。
家を継ぐべき男性が居ない場合は一時的に女性が代行する事もあるが、最終的には親類の男性が家を継いだり、養子を取る、娘婿を迎えるなどして男性が後継となる。
それは王家も同じで、王女には継承権がなく、王子のみが王位を継承する者となり得るのだ。
「……」
アイリスは先日のウォルターの話を思い出した。
ウォルターたちの父親であるこの国の王太子と、婚約者の東国の王女は十二歳、歳が離れていた。
そのため、王太子が学園で第一王子ベンジャミンと第二王子ステファンの母親と出会った時、王女はまだ幼い子供だったのだ。
東国との関係上、王女との婚約を解消する事はできず、王太子は男爵家の娘であるベンジャミンとステファンの母親を側妃に据えた。
そして側妃との間に第一王子、第二王子が生まれ、更に数年後、東国から王女を正妃として迎えウォルターとセラフィナが生まれたのだ。
「東国とは国境を接して紛争が絶えない。特に国境となる連山の一つから銀が採取されると国境線を巡っての攻防が激しくなったんだ」
「はい」
そうウォルターが言うと、アイリスは頷く。
「そこで、国境線は連山の麓、連山は土地も産出物も両国で共有し平等に分配すると条約が結ばれた。これが約三十年前だね。その時、父上と母上の婚約が取り決められた」
この国の王太子に東国の王女が嫁ぐ。政略結婚であり、友好の標であり、人質みたいなものでもあるのね…
「更に、父上たちの次の代での婚姻もその時決められたんだ。兄上…第二王子ステファンと東国の王女。兄上が東国へ婿入する事になっていた。しかし…」
ウォルターはそう言うと、眉を顰めた。
「東国の王女は政略結婚を嫌って出奔してしまったんだ」
「……」
そうだ。その時この国でも騒ぎになったわ。
確か私がガードナー家に来てから何年か経った頃…そう言えば、ウォルター殿下とお姉様が婚約されたのって、ステファン殿下の婚約破棄騒動の直ぐ後じゃなかった?
「そう。僕がその時、ガードナー伯爵令嬢との婚約を申し出たんだ」
アイリスの顔色を読んでウォルターが言う。
「そうだったんですか」
そう言うアイリスを見て、ウォルターは少し笑った。
「兄上が…ステファンではなく第一王子ベンジャミンが、ステファン兄上の代わりに僕を東国へ差し出そうとしたからね」
「え!?」
アイリスが驚いた表情を見せるとウォルターは自嘲気味に笑う。
「いくら長子継承とは言え、兄上は側妃の子、僕は正妃の子だから。僕を王太子…国王に、と担ぎ上げようとする勢力もいるんだ。だから兄上は僕を東国へ行かせて自分の立場を固めようとしたんだよ」
理屈はわかる。わかるけど…
「ステファン兄上と婚約していた王女以外に王女が居なかったのもあってね。兄上の婿入先はないが、僕は母が東国出身だから母の実家や親類などがある。東国へ行かせて、そこで東国の令嬢と結婚すれば良いと」
7
あなたにおすすめの小説
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
溺愛のフリから2年後は。
橘しづき
恋愛
岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。
そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。
でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?
訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
私の日常
林原なぎさ
恋愛
恋愛事にはなんとなくのマイペースな松岡 歩(まつおか あゆ)とイケメン高スペックな西園寺 秀一(さいおんじ しゅういち)の授かり婚物語
*2019/08/09をもって本編を完結します
*2019/09/12をもって一旦完結にします
*また読みたいなどのお声がありましたら更新するかもしれません
*ここまで読んで頂き、ありがとうございます
*私の日常のサイドストーリーも更新していきますので宜しくお願い致します
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる