ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?

ねーさん

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 ドドーンッ!!

 凄まじい音がして、次の瞬間、ウォルターの身体は宙に浮き、数メートル先の土の壁に叩きつけられた。

「う…」
 地面に倒れたウォルターは、打ち付けた肩を押さえて顔を上げる。
 日が入らず暗いはずなのに土煙りで白んだ視界。
 少し離れた所に同じように倒れている人影がぼんやりと見えた。
 あの服は…ベンジャミン兄上!?
「兄上!!」
 ウォルターが立ちあがろうとすると、足首に鋭い痛みが走る。
「っ!」

 顔を歪め、片足を引き摺りながらベンジャミンに近付くと、ベンジャミンは気を失ってはいるが、大きな怪我はないようで、ウォルターは「はあ…」と、大きく息を吐いた。
 
 ベンジャミンの傍に座り、辺りを見回す。
 土煙りが坑道の奥の方向へ流れていた。
 入口方向から空気が流れて来ているという事は有毒ガスなどの心配はなさそうか。
 何かが爆発した?
 事故なのか?それとも…
 ラウル殿下も近くにいたが姿が見えないな。視界が悪くて少し離れるとよく見えないが、違う方向へ飛ばされたのだろうか?

「ウォルター殿下!!」
 入口方向からデリックの声が聞こえる。
「デリック、ここだ」

 土煙りからうっすらと何人かの人影が見えて、近付くにつれ輪郭がハッキリと浮かび上がる。
 灯を持ったデリックと、ベンジャミンやラウルの従者が姿を現した。
「ウォルター殿下、お怪我は!?」
 デリックがウォルターの前に跪く。

「ベンジャミン殿下!」
 ベンジャミンの従者二人が倒れて気を失っているベンジャミンの傍に両膝をついた。
「大きな怪我はなさそうだけど、頭を打っているかも知れない。慎重に」
 ウォルターが言うと、従者は「はい」「わかりました」と頷く。

「ラウル殿下ー!」
 ラウルの従者が大声で呼びながら更に奥へと駆けて行き、土煙りへ姿が消えて行った。

「ラウル殿下は…?」
 視線でラウルの従者を見送りながらデリックが言う。
「わからない。僕の見える範囲にはいなかった。デリックは外にいたんだろう?外は何ともないのか?」
「ええ。急に爆音がして、地面が大きく揺れましたが、外は特に被害などはありません」
「そうか…」
 ウォルターはホッと息を吐く。

 アイリスは…少しは僕を心配してくれている?
 …いや。
 馬鹿だな。
 ウォルターは小さく首を横に振った。
「ウォルター殿下?」
 デリックが不思議そうにウォルターを見る。
「何でもない。とりあえずここを出よう。デリックは兄上の方へ手を貸してやって」
「わかりました。けど、ウォルター殿下は?足を痛めておられるでしょう?」
「まあ…でも骨は折れていないと思うから、一人で歩けるよ」

 従者の一人の背中へ、もう一人の従者とデリックとで慎重にベンジャミンの身体を背負わせると、従者とデリックがベンジャミンを支えるように手を添えて歩き出した。
 ウォルターは肩を押さえて、足を引き摺りながらその横を歩く。

 後ろから駆け足の足音が聞こえ、振り向くとラウルの従者の一人が見えた。
「ラウル殿下は?」
 ウォルターが言うと、ラウルの従者は速度は緩めずに
「少し奥に倒れておられました。意識はありますが、足と背中を負傷されているので」
 と言いウォルターたちの横を駆け抜ける際、小さく頭を下げる。
「担架を取りに行きます」
 と、続く言葉が前方へ小さくなりながら聞こえた。
「ラウル殿下も、怪我はあっても無事のようだね」
 ウォルターがホッとしたように言うと、デリックとベンジャミンの従者たちも頷く。

 眩しい光が見えて、先程ウォルターたちを追い越して行った従者が、何人かの鉱夫たちと共に担架を小脇に抱えて坑道へと入って行くのとすれ違った。

「休憩所に簡易ベッドを置いています。そこで手当てを」
 坑道を出たウォルターたちに近付いて来た責任者の恰幅の良い男性が言う。
「兄上をベッドへ。僕は後で良い」
 ベンジャミンを背負う従者を休憩所の方へ促すと、その休憩所の方から五十路の女性が走って来た。
「ウォルター殿下!!」
「おい!?メアリ!?」
 遠巻きにウォルターたちを見ていた鉱夫が走って来た女性を慌てて止める。
「?」
 ウォルターがその女性、メアリの方を見ると、メアリは自分を止める鉱夫の手を振り解こうとしながらウォルターを呼んでいた。
「ちょっ!離してよ!ウォルター殿下!」

 ベンジャミンを支える役を他の者へ引き継ぐと、デリックがウォルターとメアリたちの間に警戒するように立つ。
「僕に何か?」
 ウォルターが少し緊張しつつも言うと、メアリはウォルターをすがるような視線で見上げ、声を震わせて言った。

「ウォルター殿下の婚約者様が、攫われた…」



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