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「すみません、お風呂ありがとうございました」
夏樹がそろりとリビングに顔を出すと、ソファーに腰掛けていた北野が手元の書類から顔を上げた。
「ああ。何か冷たいものでも飲むか? 楽にしてくれ」
勧められるままに、北野が座っていたソファーの向かいに腰を下ろす。北野は冷蔵庫からお茶を取り出し、グラスに注いで持って来てくれた。
「お湯は熱くなかったか? 俺はいつも熱めの設定だから……おい、その足はどうした?」
お茶のグラスをテーブルに置いた北野は、ふと夏樹の足元に目をやって、驚いた声を出した。
「え、何? ……ああ」
夏樹も、ふと自身の足元を見る。右足の甲が、赤く腫れたようになっていた。
「ちょっとね。踏まれたんだよ、川原部長に」
これは夕方、ホテルのラウンジで三國専務と話している時に、夏樹を牽制した川原が踏んだ跡だ。苦笑して説明する夏樹に北野が眉をひそめる。
「踏まれた時は痛かったんだけど、もう大丈夫だよ。押さえたらちょっと痛いくらいだから。お湯であっためたから赤くなったんだね」
「……へぇ。川原部長、ね」
北野は低く呟くと、待ってろ、と何かを取りに行った。そして薬箱を持って来ると、中から湿布薬を取り出した。
「え、いいよ、大丈夫だよ」
「いや、これは夜中に疼くぞ。貼っておいた方がいい」
そう言うと夏樹の足元に屈み込み、スウェットの裾を少し上げた。
手際良く湿布薬を当てて、伸縮性のあるネット包帯を足首まで被せる。そしてスウェットの裾を戻すと、北野は夏樹の隣に腰を下ろした。
「あの……すみません」
「いや、構わない。痛むようなら鎮痛剤があるから、言ってくれ」
ごそごそと鎮痛剤の残りを確認した北野は、薬箱の蓋を閉めた。
「あの、このスウェットもありがとうございます。何か新品みたいだけど……」
「ああ、サイズは合ってるみたいだな、良かった。169センチなら、楓と同じくらいだからな」
夏樹と楓は体型だけは似ていた。
夏樹がそろりとリビングに顔を出すと、ソファーに腰掛けていた北野が手元の書類から顔を上げた。
「ああ。何か冷たいものでも飲むか? 楽にしてくれ」
勧められるままに、北野が座っていたソファーの向かいに腰を下ろす。北野は冷蔵庫からお茶を取り出し、グラスに注いで持って来てくれた。
「お湯は熱くなかったか? 俺はいつも熱めの設定だから……おい、その足はどうした?」
お茶のグラスをテーブルに置いた北野は、ふと夏樹の足元に目をやって、驚いた声を出した。
「え、何? ……ああ」
夏樹も、ふと自身の足元を見る。右足の甲が、赤く腫れたようになっていた。
「ちょっとね。踏まれたんだよ、川原部長に」
これは夕方、ホテルのラウンジで三國専務と話している時に、夏樹を牽制した川原が踏んだ跡だ。苦笑して説明する夏樹に北野が眉をひそめる。
「踏まれた時は痛かったんだけど、もう大丈夫だよ。押さえたらちょっと痛いくらいだから。お湯であっためたから赤くなったんだね」
「……へぇ。川原部長、ね」
北野は低く呟くと、待ってろ、と何かを取りに行った。そして薬箱を持って来ると、中から湿布薬を取り出した。
「え、いいよ、大丈夫だよ」
「いや、これは夜中に疼くぞ。貼っておいた方がいい」
そう言うと夏樹の足元に屈み込み、スウェットの裾を少し上げた。
手際良く湿布薬を当てて、伸縮性のあるネット包帯を足首まで被せる。そしてスウェットの裾を戻すと、北野は夏樹の隣に腰を下ろした。
「あの……すみません」
「いや、構わない。痛むようなら鎮痛剤があるから、言ってくれ」
ごそごそと鎮痛剤の残りを確認した北野は、薬箱の蓋を閉めた。
「あの、このスウェットもありがとうございます。何か新品みたいだけど……」
「ああ、サイズは合ってるみたいだな、良かった。169センチなら、楓と同じくらいだからな」
夏樹と楓は体型だけは似ていた。
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