コントレイルとちぎれ雲

葉月凛

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 思わずベッドの反対側から逃げようとした薫の肩を、体のでかい男に掴まれ押し戻される。
 佐々木が薫の足を引っ張り、男が頭側に乗り上げてきた。

 ベッドが広い。男3人がゆうに乗れるこの大きさは、キングサイズだろうか。

 頭の上であぐらをかいた男に羽交い締めにされ、体の自由を奪われる。何とかほどこうと体を捻ると、後ろからくすくすと笑い声が聞こえた。

「擽ってえんだよ、あんま動くな」
「っ、」

 背中に、ごり、と固い物を感じて薫は固まった。男が、ゆらゆらと腰を揺らす。

「……おう。気持ちいいぜ」

 男の怒張を背中にごりごりと擦られて、全身に鳥肌が立った。

 佐々木が体に跨り、薫のシャツのボタンを上から1つずつ外す。最後の1つを外してするりと前をはだけると、目を細めて口端を上げた。

「へぇ、結構いい体してんじゃん。めっちゃ好み」

 佐々木の冷たい手が薫の肌を撫でる。するすると這い回る手が首筋に纏わり、顎を持ち上げると薄い唇を重ねてきた。

「っ!」

 力任せに顔を背けると、ぐっと首を絞められた。

「うぐっ! ぐほっ! げほっ」
「あらあら。兄ちゃん、あんま逆らわない方がいいよ? 怪我するから」

 まだテーブルの前でビールを飲んでいる男が笑う。

 ひとしきり噎せた薫が、佐々木を睨み付けた。

「なーに、唇はダメってか? 可愛いねぇ」
「……いっ!」

 首筋に顔を埋めた佐々木に、鎖骨付近を思い切り噛み付かれる。そのまま舌を這わせ、胸の尖りをぎり、と噛まれた。

「ここにピアスつけてやろうか? 俺とお揃いの、ブルートパーズ」

 いやらしく笑う佐々木の耳に、透明感のあるブルーのピアスが光っていた。

「……こんなことしてただで済むと思ってるのか? 犯罪だろ」
「何だって? 犯罪? くくっ、笑えるねぇ。心配すんな、こんなことにいちいち目くじら立てる程、警察は暇じゃないんだよ」
「………」

 そういえば、こいつの父親は警察関係だったか。まさか、父親がもみ消しでもするのだろうか? そうだとしたら、腐ってる。

 佐々木の手が、薫のズボンのベルトに手を掛けた。

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