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占い師
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ビルが立ち並ぶ街の片隅の、少し怪しげな雰囲気漂う路地裏に胡散臭げなお店が一軒。周りの建物に合わせる気がなく妙な存在感はあるけれど、そこが店だと示す看板ものぼりも何もない。表通りからの排気ガスなのか元からか、白の筈の扉は煤けてスモークフィルムが貼られた窓から中は覗けない。あまりにも怪しすぎるその店構えは玄関先でここが目的地かと5回くらい確認したい怪しさだ。
だが意外にもカララン、と軽快なドアベルの音をたてて開いた扉の向こうから女子高生が3人、キャッキャと楽しそうな声を上げながら現れる。手にはそこら辺のコピー用紙でも引っ付かんで書きました、という事務的な雰囲気の紙を持っているけれど彼女達は互いに見せ合い読み合ってはまた明るい声を響かせた。
「ホント当たる~!すごいね」
「でしょ!?あたしも先輩に教えて貰ったんだぁ」
明るく話続ける彼女達がどこか非現実的な路地裏から現実感溢れる表通りに消えた後はまたいつもの怪しげな空気を醸し出す小さな店。煤けた扉もスモークフィルムの窓も、何だかやる気のなさそうな煉瓦の外観も怪しい雰囲気に溶け込んで、まるでそこだけ異空間。その扉の前にゆらり、と陽炎が立ち上った。
「あー、煩かった」
薄暗い部屋の中にどこまでも胡散臭げな紫の灯り。使いもしない水晶―――という名の変鉄もない大きなガラス玉―――を乗せたテーブルの上で無造作に玩ぶ。手の平で遠慮なく叩き、飽きると転がすしなやかな指先。
喉が渇いた、と立ち上がる背は高く均整のとれた体つきは同性の顰蹙を買いそうな程。
歩けば揺れる金髪は艶もよく、目鼻立ちの整った顔と相まって外国の俳優かと思わせる。が、彼はその碧眼を細めたかと思えば実にだらしなく大欠伸をした上にボリボリと尻をかいた。今にも放屁音が聞こえそうな仕草は決して他人には見せられない。
『ちょっと!レディの前でおしり掻くなんて失礼じゃない!?』
少しでもそれっぽく、と垂らした幕の向こうは生活感溢れる部屋が一つ。キッチンの冷蔵庫からコーラを取り出した彼は無謀にも炭酸一気飲みに挑戦し、今度は盛大にゲップした。
『だから!レディがいるのにそれはないでしょ!バカバカ!デリカシー欠如男!!信じらんない!』
「300歳超えたババアを日本ではレディとは呼ばない…いって!!」
薄暗く胡散臭い店から、開け放ったままの垂れ幕の下を何かが矢の如く通って男の頭を直撃、床に落ちるかと思えばそれはそのまま宙にとどまり男の頭に何度も何度もぶつかっている。
『誰がババアよ!失礼ね!…失礼ね!!』
「図星さされたからって怒るなよ」
『何ですって!?』
あー、はいはい、すんませんでしたー、とまるで悪いと思っていないやる気のない謝罪にその小さな生き物はぷん、とそっぽを向いた。
紅色の燐光を纏う謎の生き物。体調15センチ程の小さな体。よく見ればそれは人間の形をしている。
長い金髪は緩くウェーブがかかり、顔立ちは西洋の美姫。金の長い睫毛に縁取られた蒼い瞳は今は怒りでつり上がっている。男を虜にする艶かしい体を燐光と同じ紅色のワンピースで包み、背中にある真っ白な翼から光を燐粉のように撒き散らしながら忙しなく羽ばたく。まるで絵本の中から出てきたかのような出で立ちの謎の生き物はぶつぶつと文句を言い続けているけれど男は意に介さない。これが彼らの日常だ。
「つーか仮にも熾天使に謝らせるとかそっちが失礼じゃね?」
『追放されてるくせにバカじゃないの?』
だから監視役の智天使がいるんでしょ、と鼻で笑われ男は謎の生き物の尻付近を指で弾いた。
途端に上がるスケベ!だのセクハラ!だのと騒ぐ声は無視。
胸元に当てた手が心のどこかにある傷痕を押さえ込んだ―――その時。
―――こんにちは…
消え入りそうな声が店から届く。
存在感が希薄な弱々しい気配。急に空気がひんやりと冷えて、常人ならば不安を感じてしまいそうな程。
けれど男は盛大な溜め息を一つつくと再び店へと足を踏み入れた。
男の呼び名は二色(にしき)。それが名字か名前か知るものはいない。本人ですらわかっていないのだから、この世に一人だって知るものはいないのだろう。勿論本名は他にある。が、彼は自分の名を知らない―――いや、名乗れない。封じられた真名は封じた相手の許しがない限り解放されることはない。
彼の記憶はここではない別の場所にいた頃から、追放されここで店を構える羽目になった所まで鮮明だ。
なのに、全ての原因である相手の姿だけが真っ白に塗り潰されている。相手と何があって今自分がこうしているのかを理解しているのに、相手の姿も交わした言葉も、その声もさえも思い出すことは出来なくて。
胸にあるその感情を言葉にすることは―――やはり出来ない。それが彼への罰なのだ。
「で?死霊が占いの店なんかに何の用?」
向こうが透けるお客さまの首筋は血まみれ。ナイフで掻き切ったらしき傷は下の骨まで到達している。
―――ひとを、
ほろほろと透明な滴の様なものを流す死霊が紡ぐ消え入りそうな声。人を、捜しているんです。そう呟くそれは儚く震える。
(仕方ねぇな。話くらい聞いてやるか)
二色はもう一度溜め息をついた。
◇
好きだったんだ。好きで好きで好きで、どうしようもないくらい大好きで。
だから、あんなことになっちゃった。
それは猛暑の続く夏のある日。熱風さえも吹かないうだるような熱帯夜。見上げた空には街灯りに邪魔され見えにくいけれど、それでもぽつぽつと星があった。
スマートフォンが、鳴っていた。
着信音を響かせては途切れ、すぐにまた鳴り始める電話。
彼は―――大和は体を震わせながらもう何十回目かの着信を見つめる。番号は登録されていない。いや、その相手の番号は何度も登録して、何度も着信を拒否した。なのに何度でも番号を変えてはかけてくる相手の事を大和は欠片も知らないのである。
どこの誰なのか。何をしている人なのか、何故大和を知っているのか。
大和が知っているのはその声―――、知らない男の声だけだ。
また切れて、すぐに鳴り出すそれについに手を伸ばしたのは出なければいつまでも鳴りやまない事をここ数ヵ月で学習しているから。
『こんばんは、大和。今日のサマーニット、すごく似合ってたよ。可愛かった』
柔らかい声。恐らく電話の向こうで微笑んでいると思わせる暖かな声だ。けれどその内容に大和はまた大きく身震いした。
今日は恋人とデートを楽しんだ。先日買ったサマーニット。彼が選び、大和も気に入って購入したそれを着て出掛け帰ってきたのは1時間程前。
彼はいつどこで大和を見ていたのだろう?アパートから出た時?帰った時?それともデートの間、すぐ側にいたのだろうか。
「―――っ、もういい加減にしてください!!本当に警察に行きますよ!?」
電話の向こうから、ふふ、と含み笑いが返る。
『相手にされなかったでしょう?』
電話を取り落としそうになったのは、男が言外に述べたように既に恋人と相談し警察に行っていたからだ。
しかし“イタズラ”の相手が男だということ、家まで押し掛けられているわけではなく脅迫じみた事も言われていない。だから少し事情を聞かれただけで帰された。
恐らく警察は事件にならなければ動いてはくれないだろう、とその日の内に恋人が同棲を進めてくれて、明日には彼のアパートへ引っ越す事になっているのに。
『ねぇ、大和。うちにおいで?』
「嫌です。知らない人の家になんか行けません。もう俺に電話をかけてくるの、やめてください!」
勇気を振り絞って叫ぶ。けれど男はくすくすと笑った。
『いいよ、大和が来るまで悠里君と遊んでるから』
ガッ、と何かの音と共に微かな呻きが聞こえる。
まさか、と思った。聞き間違いか、男の自演か。
『ね、悠里君?』
咄嗟に電話を切って震える指先で呼び出した恋人の、―――悠里の番号。呼び出し音は数回。電話が繋がって。
『大和、来てくれるでしょ?』
警察には連絡が出来なかったのは男の手に悠里がいたから。何をされるのかわからない恐怖が通報を躊躇わせた。だから親しい友人に理由を告げ、一人扉の前に立つ。
チャイムを押して数秒。開いた扉の向こう側の彼とは初めての対面。
オートロックの高級マンションに住むその男は見た目ではその異常性が全くわからない。30代くらいか。今年20歳になったばかりの大和よりも年を重ねた気配。仕事帰りなのかきちんとしたスーツ姿で後ろに撫で付けた髪は上品さを醸し出す。
「悠里はどこですか」
「ああ、やっぱりその服とても似合うよ。大和は何を着ても魅力的だね」
「悠里を返してください!」
取り付く島のない大和に苦笑した男に手招かれ流石に怯む。室内に足を踏み入れたら男のテリトリーだ。
ふ、と思いついてまた悠里の電話を鳴らす。音が聞こえなければ帰るつもりだった、のに。
室内からは着信を知らせる電子音。一緒にいるとき何度か聞いた悠里の着信音と全く同じで、大和が電話を切ればピタリと止まる。二度繰り返しても結果は同じ。
男が微笑んだ。
「さ、上がって。大和」
中に悠里がいる。一人じゃない。二人なら、閉じ込められたとしてもチャンスは作れるはず。
足を踏み入れて直ぐ様男から離れる目的と悠里を探すために手近な部屋へと飛び込んだ。
「―――っ、悠里!!!」
「ば、か…っ、早く、」
早く逃げろ、と血に濡れた唇が小さく紡ぐ。大和の写真だらけの異様な部屋の中両手両足を縛られて床に転がされている悠里。顔は血まみれで腫れ上がり、股に小さなナイフが突き刺さっている。痛みに呻きながらも何度も言葉を紡いだ。
逃げろ、お前だけでも逃げてくれ、と。
「や、いやだ、悠里も…っ」
後ろから力任せに大和の腕を引いた男の足が悠里の腹を蹴り飛ばす。苦痛の声が漏れて咳き込んで喘鳴交じりの呼吸を繰り返す彼をもう何度か蹴った男がやめて、と叫ぶ大和の体を床へと突き飛ばした。
「やっと、やっと手に入れた…大和…」
男がのし掛かる。体格差は歴然で、しかし成人男性に渾身の力で暴れられては流石に厄介だったのだろう。
何度も平手で打たれた。何度も何度も。狂気じみている、とでも言えるほどに。
ようやく男の手が止まった時には大和の顔も血にまみれ抵抗は弱まっていた。
「―――ああ…、ごめん。ごめんよ、大和…。君が僕の言うことを聞かないから手をあげてしまった…。ね、いい子にしていて?ようやく僕らは繋がることが出来るんだから」
信じられないその言葉にも殴られた衝撃と恐怖で抵抗する意思が捩じ伏せられて―――衣類を剥ぎ取られ気持ちの伴わない一方的な行為を強いられたその瞬間も指先一つ、動かせなかった。
◇
あの日から始まった悪夢はどんどんエスカレートした。
どうやら気を失っている間に場所を移動させられていたようで友人に伝えていた住所は役立たず。どこかの山中の小屋の中、来る日も来る日も男に犯された。
悠里も隣室にいて最初の頃は男の猟奇的な声と共に暴行の音が響いていたのだけれど、大和が男の言いなりになると告げてから暴行の音は止んだ。代わりに男に抱かれる時には大きな声で喘がされ、卑猥な言葉を口にすることを強要されて。全てを悠里に聞かれている、その事がたまらなく悲しかった。
こんな猟奇的な事をしているのに、彼は常人と同じように仕事に向かう。彼が仕事に行っている、その間だけは二人の時間。彼らは互いに励まし合いながらこの数週間を耐えていた―――耐えている、筈だ。
二日三日前から悠里の声を聞いていない。何度呼び掛けても隣室からは物音一つしない。厳重に枷をかけられた足では部屋から出ることさえ出来なくて、ただ名前を呼ぶことしか出来ない。
「悠里…、悠里、悠里…会いたいよぉ…。声、聞きたい…。悠里…死んでないよね…?生きてるよね?応えてよ、悠里…。一人にしないで…」
男が隣室へ食事を運んでいる姿は見るけれど本当に悠里が食べているのだろうか?
あの男が悠里の手当てなんてするだろうか?
不安ばかりが膨らんで、悠里、悠里、と壊れたレコードのように繰り返していた大和は部屋の扉が開く音にびくりと跳ねた。まだ帰宅時間ではなかった筈なのに男が帰ってきたのだ。
「大和、何してるの?」
瞬間、カッと頭に血が上る。最早我慢の限界だった。せめて悠里の無事を確認しなければ平静ではいられない、その思いが叫びに変わる。
「会わせてよ…!!悠里に会わせて!あんたが何しようと俺は悠里の物なんだから!」
普段だったら絶対に言えなかった。確実に殴られていただろうから。けれど不安に苛まれ男に辱しめ続けられ憔悴した心が理性を押さえつけて本音を叫んだ。
何をしようと自分達の絆は切れない、と。
男はしばらく大和を新種の生物を見るように眺めていたけれどやがて小さくくすりと笑う。
足の鎖を外して引きずられ放り投げられた隣室は吐き気を催しそうな程の腐敗臭に包まれていた。
真夏の日差しが差し込み、熱の籠った生温い部屋の中ブンブンと蝿が飛び交っている。
男は手慣れたように殺虫剤を吹き付けて、やはりくすくすと笑った。
「―――悠、里…?」
腐り落ちた肉片を包むのはあの日悠里が着ていた服で、一部覗いている白骨は変な方向へ曲がっている。
「2週間前くらいかなぁ?死んだよ」
大和が男の言いなりになると告げた翌日だ。大和が抵抗しなくなったから暴力が止んだのではなく、必要がなくなったから止んだのだ。
後ろから抱いてくる男を突き飛ばす大和の瞳に映るのは床に転がるナイフ。
冷静になる余裕など欠片もなかった。
頸動脈を掻き切って上がる血飛沫で辺りを染め上げながら腐って骨の見える愛しい恋人の体を抱き締めて大和は最期を迎えた。
◇
―――でもね、確かに聞こえてたんだ。悠里の声…
二人で頑張ろう、必ずここから逃げるんだ、と。それは彼が死んだ日と言われたよりも何日も先まで聞こえていた。
頑張ろう、諦めるな、大丈夫、俺がついてる。
何度も励ましてくれて、心が壊れてしまいそうな状況の中でも何とか自分を保てていたのはその声のおかげで。
―――自殺しちゃった俺が、悠里と同じところにいけるわけないの…知ってる
だからせめて最後に一目だけでも悠里に会ってお礼と謝罪を言いたいのだと告げる死霊を二色はやはり盛大な溜め息と共に見つめた。
「俺が占えるのは過去と近い未来だけ。人捜しなんて出来るわけねぇだろ」
死霊は悲しげにほろほろ涙を溢しているけれど、二色の声は続く。
「大事なもんてのは大体側にあんだよ」
―――…え?
―――大和
ゆらり、と揺らぐ陽炎が人の形をとった。大和が会いたくて会いたくてたまらなかった恋人の形。優しげな微笑みに強い瞳。死んだあとまで可能な限り恋人を励まし続けた悠里の姿を。
二色の目の前で二人が抱き合う。
既に“お迎え”はそこまで来ている。
殺害された悠里は“天国”、自らを殺めた大和は“煉獄”。ようやく会えたのにまた離れ離れになる運命。
死した身だからかそれを察している二人はしっかりと抱き合った。
―――俺も煉獄に落としてくれ
迎えの相手に告げるけれど上の決定は絶対だ。
それでも諦めきれない悠里が言い募る。大和と一緒じゃなければどこにもいかない。生まれ変われなくてもいい。大和とこのまま霊体で残る、と。
(ホント人間てバカだよな)
二色が立ち上がる音を敏感に聞き付けた死霊の視線を受け止め彼はふん、と鼻を鳴らした。
「このまま居座った所で良くて地縛霊、悪くて悪霊。生きてる人間に迷惑だ」
―――あんたに…!
あんたに何がわかるのかと激昂しかけた鼻先に、突き付ける。
淡く光る金の切符。人間には見えないそれを取り出した瞬間人形のふりを続けていた小さな生き物から呆れた溜め息が漏れ出たけれど。
「天国行き切符、2名様分。それ持ってさっさと逝けよ。商売の邪魔」
(俺も大概―――バカだよな)
心から愛する人と引き離される痛みを、二色は知っている。
何度も何度もお礼を告げて涙ながらに死霊が消えたその後で。
『あなたね、仮にも七大天使が無断であんなことして…天界に帰る気あるの?』
「さー?」
肩を竦めてリビングへ消えていく背中に溜め息をついた。
想い合う恋人同士。それが彼を揺さぶったのは間違いない。
今では相手の姿を思い出すことも禁じられている、彼の恋人。向こうは七大天使の一人をたぶらかした、と恐らくは大出世だろう。あの男が望んでいても、望んでいなかったとしても。
愛してはならない相手を愛して天界から天使の煉獄、地上へ落とされて尚彼の心は変わらない。
顔も声も封じられ思い出せない恋人を、この煉獄からただ―――恋い焦がれるのだ。
悪魔に恋した憐れな天使の物語。
だが意外にもカララン、と軽快なドアベルの音をたてて開いた扉の向こうから女子高生が3人、キャッキャと楽しそうな声を上げながら現れる。手にはそこら辺のコピー用紙でも引っ付かんで書きました、という事務的な雰囲気の紙を持っているけれど彼女達は互いに見せ合い読み合ってはまた明るい声を響かせた。
「ホント当たる~!すごいね」
「でしょ!?あたしも先輩に教えて貰ったんだぁ」
明るく話続ける彼女達がどこか非現実的な路地裏から現実感溢れる表通りに消えた後はまたいつもの怪しげな空気を醸し出す小さな店。煤けた扉もスモークフィルムの窓も、何だかやる気のなさそうな煉瓦の外観も怪しい雰囲気に溶け込んで、まるでそこだけ異空間。その扉の前にゆらり、と陽炎が立ち上った。
「あー、煩かった」
薄暗い部屋の中にどこまでも胡散臭げな紫の灯り。使いもしない水晶―――という名の変鉄もない大きなガラス玉―――を乗せたテーブルの上で無造作に玩ぶ。手の平で遠慮なく叩き、飽きると転がすしなやかな指先。
喉が渇いた、と立ち上がる背は高く均整のとれた体つきは同性の顰蹙を買いそうな程。
歩けば揺れる金髪は艶もよく、目鼻立ちの整った顔と相まって外国の俳優かと思わせる。が、彼はその碧眼を細めたかと思えば実にだらしなく大欠伸をした上にボリボリと尻をかいた。今にも放屁音が聞こえそうな仕草は決して他人には見せられない。
『ちょっと!レディの前でおしり掻くなんて失礼じゃない!?』
少しでもそれっぽく、と垂らした幕の向こうは生活感溢れる部屋が一つ。キッチンの冷蔵庫からコーラを取り出した彼は無謀にも炭酸一気飲みに挑戦し、今度は盛大にゲップした。
『だから!レディがいるのにそれはないでしょ!バカバカ!デリカシー欠如男!!信じらんない!』
「300歳超えたババアを日本ではレディとは呼ばない…いって!!」
薄暗く胡散臭い店から、開け放ったままの垂れ幕の下を何かが矢の如く通って男の頭を直撃、床に落ちるかと思えばそれはそのまま宙にとどまり男の頭に何度も何度もぶつかっている。
『誰がババアよ!失礼ね!…失礼ね!!』
「図星さされたからって怒るなよ」
『何ですって!?』
あー、はいはい、すんませんでしたー、とまるで悪いと思っていないやる気のない謝罪にその小さな生き物はぷん、とそっぽを向いた。
紅色の燐光を纏う謎の生き物。体調15センチ程の小さな体。よく見ればそれは人間の形をしている。
長い金髪は緩くウェーブがかかり、顔立ちは西洋の美姫。金の長い睫毛に縁取られた蒼い瞳は今は怒りでつり上がっている。男を虜にする艶かしい体を燐光と同じ紅色のワンピースで包み、背中にある真っ白な翼から光を燐粉のように撒き散らしながら忙しなく羽ばたく。まるで絵本の中から出てきたかのような出で立ちの謎の生き物はぶつぶつと文句を言い続けているけれど男は意に介さない。これが彼らの日常だ。
「つーか仮にも熾天使に謝らせるとかそっちが失礼じゃね?」
『追放されてるくせにバカじゃないの?』
だから監視役の智天使がいるんでしょ、と鼻で笑われ男は謎の生き物の尻付近を指で弾いた。
途端に上がるスケベ!だのセクハラ!だのと騒ぐ声は無視。
胸元に当てた手が心のどこかにある傷痕を押さえ込んだ―――その時。
―――こんにちは…
消え入りそうな声が店から届く。
存在感が希薄な弱々しい気配。急に空気がひんやりと冷えて、常人ならば不安を感じてしまいそうな程。
けれど男は盛大な溜め息を一つつくと再び店へと足を踏み入れた。
男の呼び名は二色(にしき)。それが名字か名前か知るものはいない。本人ですらわかっていないのだから、この世に一人だって知るものはいないのだろう。勿論本名は他にある。が、彼は自分の名を知らない―――いや、名乗れない。封じられた真名は封じた相手の許しがない限り解放されることはない。
彼の記憶はここではない別の場所にいた頃から、追放されここで店を構える羽目になった所まで鮮明だ。
なのに、全ての原因である相手の姿だけが真っ白に塗り潰されている。相手と何があって今自分がこうしているのかを理解しているのに、相手の姿も交わした言葉も、その声もさえも思い出すことは出来なくて。
胸にあるその感情を言葉にすることは―――やはり出来ない。それが彼への罰なのだ。
「で?死霊が占いの店なんかに何の用?」
向こうが透けるお客さまの首筋は血まみれ。ナイフで掻き切ったらしき傷は下の骨まで到達している。
―――ひとを、
ほろほろと透明な滴の様なものを流す死霊が紡ぐ消え入りそうな声。人を、捜しているんです。そう呟くそれは儚く震える。
(仕方ねぇな。話くらい聞いてやるか)
二色はもう一度溜め息をついた。
◇
好きだったんだ。好きで好きで好きで、どうしようもないくらい大好きで。
だから、あんなことになっちゃった。
それは猛暑の続く夏のある日。熱風さえも吹かないうだるような熱帯夜。見上げた空には街灯りに邪魔され見えにくいけれど、それでもぽつぽつと星があった。
スマートフォンが、鳴っていた。
着信音を響かせては途切れ、すぐにまた鳴り始める電話。
彼は―――大和は体を震わせながらもう何十回目かの着信を見つめる。番号は登録されていない。いや、その相手の番号は何度も登録して、何度も着信を拒否した。なのに何度でも番号を変えてはかけてくる相手の事を大和は欠片も知らないのである。
どこの誰なのか。何をしている人なのか、何故大和を知っているのか。
大和が知っているのはその声―――、知らない男の声だけだ。
また切れて、すぐに鳴り出すそれについに手を伸ばしたのは出なければいつまでも鳴りやまない事をここ数ヵ月で学習しているから。
『こんばんは、大和。今日のサマーニット、すごく似合ってたよ。可愛かった』
柔らかい声。恐らく電話の向こうで微笑んでいると思わせる暖かな声だ。けれどその内容に大和はまた大きく身震いした。
今日は恋人とデートを楽しんだ。先日買ったサマーニット。彼が選び、大和も気に入って購入したそれを着て出掛け帰ってきたのは1時間程前。
彼はいつどこで大和を見ていたのだろう?アパートから出た時?帰った時?それともデートの間、すぐ側にいたのだろうか。
「―――っ、もういい加減にしてください!!本当に警察に行きますよ!?」
電話の向こうから、ふふ、と含み笑いが返る。
『相手にされなかったでしょう?』
電話を取り落としそうになったのは、男が言外に述べたように既に恋人と相談し警察に行っていたからだ。
しかし“イタズラ”の相手が男だということ、家まで押し掛けられているわけではなく脅迫じみた事も言われていない。だから少し事情を聞かれただけで帰された。
恐らく警察は事件にならなければ動いてはくれないだろう、とその日の内に恋人が同棲を進めてくれて、明日には彼のアパートへ引っ越す事になっているのに。
『ねぇ、大和。うちにおいで?』
「嫌です。知らない人の家になんか行けません。もう俺に電話をかけてくるの、やめてください!」
勇気を振り絞って叫ぶ。けれど男はくすくすと笑った。
『いいよ、大和が来るまで悠里君と遊んでるから』
ガッ、と何かの音と共に微かな呻きが聞こえる。
まさか、と思った。聞き間違いか、男の自演か。
『ね、悠里君?』
咄嗟に電話を切って震える指先で呼び出した恋人の、―――悠里の番号。呼び出し音は数回。電話が繋がって。
『大和、来てくれるでしょ?』
警察には連絡が出来なかったのは男の手に悠里がいたから。何をされるのかわからない恐怖が通報を躊躇わせた。だから親しい友人に理由を告げ、一人扉の前に立つ。
チャイムを押して数秒。開いた扉の向こう側の彼とは初めての対面。
オートロックの高級マンションに住むその男は見た目ではその異常性が全くわからない。30代くらいか。今年20歳になったばかりの大和よりも年を重ねた気配。仕事帰りなのかきちんとしたスーツ姿で後ろに撫で付けた髪は上品さを醸し出す。
「悠里はどこですか」
「ああ、やっぱりその服とても似合うよ。大和は何を着ても魅力的だね」
「悠里を返してください!」
取り付く島のない大和に苦笑した男に手招かれ流石に怯む。室内に足を踏み入れたら男のテリトリーだ。
ふ、と思いついてまた悠里の電話を鳴らす。音が聞こえなければ帰るつもりだった、のに。
室内からは着信を知らせる電子音。一緒にいるとき何度か聞いた悠里の着信音と全く同じで、大和が電話を切ればピタリと止まる。二度繰り返しても結果は同じ。
男が微笑んだ。
「さ、上がって。大和」
中に悠里がいる。一人じゃない。二人なら、閉じ込められたとしてもチャンスは作れるはず。
足を踏み入れて直ぐ様男から離れる目的と悠里を探すために手近な部屋へと飛び込んだ。
「―――っ、悠里!!!」
「ば、か…っ、早く、」
早く逃げろ、と血に濡れた唇が小さく紡ぐ。大和の写真だらけの異様な部屋の中両手両足を縛られて床に転がされている悠里。顔は血まみれで腫れ上がり、股に小さなナイフが突き刺さっている。痛みに呻きながらも何度も言葉を紡いだ。
逃げろ、お前だけでも逃げてくれ、と。
「や、いやだ、悠里も…っ」
後ろから力任せに大和の腕を引いた男の足が悠里の腹を蹴り飛ばす。苦痛の声が漏れて咳き込んで喘鳴交じりの呼吸を繰り返す彼をもう何度か蹴った男がやめて、と叫ぶ大和の体を床へと突き飛ばした。
「やっと、やっと手に入れた…大和…」
男がのし掛かる。体格差は歴然で、しかし成人男性に渾身の力で暴れられては流石に厄介だったのだろう。
何度も平手で打たれた。何度も何度も。狂気じみている、とでも言えるほどに。
ようやく男の手が止まった時には大和の顔も血にまみれ抵抗は弱まっていた。
「―――ああ…、ごめん。ごめんよ、大和…。君が僕の言うことを聞かないから手をあげてしまった…。ね、いい子にしていて?ようやく僕らは繋がることが出来るんだから」
信じられないその言葉にも殴られた衝撃と恐怖で抵抗する意思が捩じ伏せられて―――衣類を剥ぎ取られ気持ちの伴わない一方的な行為を強いられたその瞬間も指先一つ、動かせなかった。
◇
あの日から始まった悪夢はどんどんエスカレートした。
どうやら気を失っている間に場所を移動させられていたようで友人に伝えていた住所は役立たず。どこかの山中の小屋の中、来る日も来る日も男に犯された。
悠里も隣室にいて最初の頃は男の猟奇的な声と共に暴行の音が響いていたのだけれど、大和が男の言いなりになると告げてから暴行の音は止んだ。代わりに男に抱かれる時には大きな声で喘がされ、卑猥な言葉を口にすることを強要されて。全てを悠里に聞かれている、その事がたまらなく悲しかった。
こんな猟奇的な事をしているのに、彼は常人と同じように仕事に向かう。彼が仕事に行っている、その間だけは二人の時間。彼らは互いに励まし合いながらこの数週間を耐えていた―――耐えている、筈だ。
二日三日前から悠里の声を聞いていない。何度呼び掛けても隣室からは物音一つしない。厳重に枷をかけられた足では部屋から出ることさえ出来なくて、ただ名前を呼ぶことしか出来ない。
「悠里…、悠里、悠里…会いたいよぉ…。声、聞きたい…。悠里…死んでないよね…?生きてるよね?応えてよ、悠里…。一人にしないで…」
男が隣室へ食事を運んでいる姿は見るけれど本当に悠里が食べているのだろうか?
あの男が悠里の手当てなんてするだろうか?
不安ばかりが膨らんで、悠里、悠里、と壊れたレコードのように繰り返していた大和は部屋の扉が開く音にびくりと跳ねた。まだ帰宅時間ではなかった筈なのに男が帰ってきたのだ。
「大和、何してるの?」
瞬間、カッと頭に血が上る。最早我慢の限界だった。せめて悠里の無事を確認しなければ平静ではいられない、その思いが叫びに変わる。
「会わせてよ…!!悠里に会わせて!あんたが何しようと俺は悠里の物なんだから!」
普段だったら絶対に言えなかった。確実に殴られていただろうから。けれど不安に苛まれ男に辱しめ続けられ憔悴した心が理性を押さえつけて本音を叫んだ。
何をしようと自分達の絆は切れない、と。
男はしばらく大和を新種の生物を見るように眺めていたけれどやがて小さくくすりと笑う。
足の鎖を外して引きずられ放り投げられた隣室は吐き気を催しそうな程の腐敗臭に包まれていた。
真夏の日差しが差し込み、熱の籠った生温い部屋の中ブンブンと蝿が飛び交っている。
男は手慣れたように殺虫剤を吹き付けて、やはりくすくすと笑った。
「―――悠、里…?」
腐り落ちた肉片を包むのはあの日悠里が着ていた服で、一部覗いている白骨は変な方向へ曲がっている。
「2週間前くらいかなぁ?死んだよ」
大和が男の言いなりになると告げた翌日だ。大和が抵抗しなくなったから暴力が止んだのではなく、必要がなくなったから止んだのだ。
後ろから抱いてくる男を突き飛ばす大和の瞳に映るのは床に転がるナイフ。
冷静になる余裕など欠片もなかった。
頸動脈を掻き切って上がる血飛沫で辺りを染め上げながら腐って骨の見える愛しい恋人の体を抱き締めて大和は最期を迎えた。
◇
―――でもね、確かに聞こえてたんだ。悠里の声…
二人で頑張ろう、必ずここから逃げるんだ、と。それは彼が死んだ日と言われたよりも何日も先まで聞こえていた。
頑張ろう、諦めるな、大丈夫、俺がついてる。
何度も励ましてくれて、心が壊れてしまいそうな状況の中でも何とか自分を保てていたのはその声のおかげで。
―――自殺しちゃった俺が、悠里と同じところにいけるわけないの…知ってる
だからせめて最後に一目だけでも悠里に会ってお礼と謝罪を言いたいのだと告げる死霊を二色はやはり盛大な溜め息と共に見つめた。
「俺が占えるのは過去と近い未来だけ。人捜しなんて出来るわけねぇだろ」
死霊は悲しげにほろほろ涙を溢しているけれど、二色の声は続く。
「大事なもんてのは大体側にあんだよ」
―――…え?
―――大和
ゆらり、と揺らぐ陽炎が人の形をとった。大和が会いたくて会いたくてたまらなかった恋人の形。優しげな微笑みに強い瞳。死んだあとまで可能な限り恋人を励まし続けた悠里の姿を。
二色の目の前で二人が抱き合う。
既に“お迎え”はそこまで来ている。
殺害された悠里は“天国”、自らを殺めた大和は“煉獄”。ようやく会えたのにまた離れ離れになる運命。
死した身だからかそれを察している二人はしっかりと抱き合った。
―――俺も煉獄に落としてくれ
迎えの相手に告げるけれど上の決定は絶対だ。
それでも諦めきれない悠里が言い募る。大和と一緒じゃなければどこにもいかない。生まれ変われなくてもいい。大和とこのまま霊体で残る、と。
(ホント人間てバカだよな)
二色が立ち上がる音を敏感に聞き付けた死霊の視線を受け止め彼はふん、と鼻を鳴らした。
「このまま居座った所で良くて地縛霊、悪くて悪霊。生きてる人間に迷惑だ」
―――あんたに…!
あんたに何がわかるのかと激昂しかけた鼻先に、突き付ける。
淡く光る金の切符。人間には見えないそれを取り出した瞬間人形のふりを続けていた小さな生き物から呆れた溜め息が漏れ出たけれど。
「天国行き切符、2名様分。それ持ってさっさと逝けよ。商売の邪魔」
(俺も大概―――バカだよな)
心から愛する人と引き離される痛みを、二色は知っている。
何度も何度もお礼を告げて涙ながらに死霊が消えたその後で。
『あなたね、仮にも七大天使が無断であんなことして…天界に帰る気あるの?』
「さー?」
肩を竦めてリビングへ消えていく背中に溜め息をついた。
想い合う恋人同士。それが彼を揺さぶったのは間違いない。
今では相手の姿を思い出すことも禁じられている、彼の恋人。向こうは七大天使の一人をたぶらかした、と恐らくは大出世だろう。あの男が望んでいても、望んでいなかったとしても。
愛してはならない相手を愛して天界から天使の煉獄、地上へ落とされて尚彼の心は変わらない。
顔も声も封じられ思い出せない恋人を、この煉獄からただ―――恋い焦がれるのだ。
悪魔に恋した憐れな天使の物語。
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おはようございます。
このお話私好きです!
正直、痛すぎる表現とかもあって、悲しかったけれど、それでも、すごく好きで、このお話が好きな気持ちを伝えたくて感想書いてます(>_<)
二色のこと、もっと知りたいなぁと思いました!
他の作品も、読ませていただきますね!
失礼します(^^)
いらっしゃいませ、ゆう様^^とても励みになるコメントをありがとうございます。
これは数年前にサイトで書いていた物語なのですが、好きだと言って頂けてめちゃくちゃ嬉しいですー!!こちらにも感想を送って頂いて…身悶えして喜んでおります…!
いつか二色とお相手が再会できる話を書きたいな、と思っております(^^)
本当にコメントありがとうございます^^