【本編完結】農民と浄化の神子を並べてはいけない

ナナメ

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第一章 異世界に来ちゃった

精一杯生きる

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 白目になる俺の肩をポン、と叩いて

「ひとまず今のお前はまだ魂自体定着してない。神子として働くにしたって状態を安定させて、せめて魔力の使いすぎ以外で倒れないようにしないとどうにもならん」

 と言いながら、うん、と一人頷く。
 いやいや、待って?それって……その精…………いやいやいやいや、え?

「どなたかとヤりなさい、と?」

「……それが一番手っ取り早いけど……イヤなんだろ?」

「そりゃそうだ」

 女の子がいなくて、俺が女の子の役割になるなんて言われて「あらやだわ、元気な子生めるかしら」だなんて直ぐ様割り切れないです。

「だからとりあえず僕の処方した薬を飲め。薬としては偽薬の類いだが、とにかくこっちの物を定期的に体に入れておけばかなり時間はかかるけど、何とかなるはずだ」

「パーピュア様ぁぁぁぁぁ!!!」

 ガシッ、と思わず抱き付くと、

「やめろ!こんな所殿下に見られたら僕がえらい目に遭うだろうが!!」

 物凄い勢いで引き剥がされて怒られた。ごめんなさい。
 お約束通りに行けば殿下とやらが偶然入ってきて目撃されちゃうパターンだけど、幸いな事にお約束は起こらなかったです。良かった。
 そんなわけで今日からは偽薬という名のラムネ的な物を適度に舐めつつ、食事もしっかりとってぶっ倒れない為の対策に乗り出そうと思います。というかみんながやたら薬の時間を気にしてたり、食事量を気にしてたりしたのはこういう事だったのか……。俺は本当に知らない間にみんなに助けられてたんだなぁ……。ありがたや。


 その日の夜、帰ってきたローゼンさんにお帰りなさいを言う間もなくガシッ、と肩を掴まれた。

「また倒れたと伺いました!大丈夫ですか?」

 ペタペタと顔やら腕やら触って確かめてるローゼンさんに、

「心配かけてごめんなさい……。パーピュアさんに色々聞きました。いつも俺の体調、気を付けててくれたんでしょ?」

 ありがとう、と下げた頭をローゼンさんの大きな手が撫でてくれる。うん。やっぱり子供扱いだよな……、と思いつつもこの瞬間自分が子供に戻った気がして、くすぐったいような嬉しいような気分になるのも確かだ。
 しかもローゼンさんは仕事終わりで疲れてるだろうに、わざわざ俺の為に食堂じゃなく自炊してくれてるんだ。何て出来た人なんだ……!俺なんか一人暮らしの時は帰るのが夜中だった、っていうのもあるけど24時間スーパーで冷凍食品とかインスタントばっかり買ってたもんな。自炊するぞ、と張り切って買った炊飯器とかオブジェと化してたし。ほんとすごいよ、この人。
 いつもみたいに、「手伝います」「倒れた人は座っててください」のやり取りの後出された暖かい食事は見た目も盛り付け方も完璧だ。何でこんなに手早く綺麗に出来るんだろう。すごいなぁ。早く元気だって認めてもらって、料理とか教えてもらおうかな。いつまでローゼンさんの部屋でお世話になるのかわからないけど、せめてもの恩返しに夕飯くらい作って待っていたいんだけどな。

「明日からパーピュアさんに魔力の使い方を教わろうと思って」

 俺のコーヒー好きをティエが伝えたらしく、あの日以降ローゼンさんは食後にコーヒーまで入れてくれるようになった。ほんと出来たお人ですよ……。だから早く色々安定させてお返しがしたい。

「倒れたばかりなのに……大丈夫ですか?」

「うん。パーピュアさんがもしもの時は何とかしてくれるって言ってました」

「そうですか……」

 あれ、眉毛ハの字でどうしたんだろ。そんなに困らせる事言ったかな?

「……無理はしていませんか?」

「無理はしてないです。元々じっとしてるのが苦手なので、俺も何かやりたいです」

「体が辛いとかは?」

「んー……自覚症状は……なくて……」

 何せ熱が出てた事も知らないからな!そうか、このハの字は困ってるんじゃなく、心配してくれてるんだな。

「適正調べるのにもまずタグ壊しちゃううちはダメだって言われたし、何かあったらすぐ誰かに言います」

 誰かと言うか、そこにいるパーピュアさんに言うことになるだろうけど……元同じ日本人だと知ったからかすごく心強いし。たった一人放り出されたパーピュアさんは凄いよな。一杯不安もあっただろうに……今は自分の顔イケメン、とか言い放っちゃうくらい馴染んでるもんな。俺も元の世界に戻っても意味ないってわかったし、早く馴染めるように頑張ろう。
 日本に全く未練がないかと言えばそうでもないけど……住めば都、って母さん良く言ってたしな。もうここにいるしかないのなら、ここで精一杯生きようと思います。

 ◇

 さて。そんなこんなで早一ヶ月と少し。
 あの日パーピュアに神子だとバレてから、あれよあれよと言う間に国民に神子が降臨したとお触れが出てしまった。あのまま黙っていてディカイアスやレイアゼシカの立場が悪くなってしまうのは嫌だから「神子なんてやりたくない!」と言えるわけなかったし、何より神子が降臨したなら、と王都周辺警備担当だった第一騎士団はそのまま神子の護衛任務も兼任、という事になって馴染みのみんなが俺を守ってくれるようになった。
 全く知らない人達と過ごすなんて不安で嫌だと思ってたからそこは素直に嬉しかったし、だからこそ神子を引き受けたという面もある。――――このまま一文無しで穀潰しになるのも嫌だったし……。
 そして『神子』とはこの世界で至上の存在だからみんなにさん付けや敬語はやめろ、と散々注意されまくってようやく最近違和感なく呼べるようになった所。
 相手年上とか王子様とかだぞ……。最初の数週間は胃痛で大変だったよ……。パーピュアに偽薬じゃなく本物の胃薬を処方してもらったくらいだ。
 そして魔力の制御も何となく出来るようになって、水とか風とか出せるようになったんだよ!これが一番嬉しいかも知れない!!俺の厨二魂が騒ぐぜ……!!
 まぁそれでもパーピュア曰く、まだまだ序の口で初歩の魔法以上の物を使うと倒れてしまうからと固く禁止されている。まだ俺も尻は大事だし、お口でアレを受け止める勇気もございませんのできっちり約束は守っている。未だに油断すると向こうに引っ張られるから、偽薬は手放せないしね……。
 で、何で俺は今……

「ここまで来れば安心か……?」

「いや!まだ油断できねぇぞ……。相手は精鋭の第一騎士団だ」

 また誘拐されてるんでしょうかね……?


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