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第一章 異世界に来ちゃった
何が起きた?
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告白されたあの日からも3人はこれまでと変わることなく、普段のように接してくれてーーー微妙にボディタッチは増えた気はするーーー、正直構えてしまってた俺としてはありがたい。
それに甘えてなかなか答えを出さない俺は酷いヤツだと思う。でも1人を選ぶなんて出来ないんだ。みんなそれぞれ好きなところあるんだもん…。
そう。好きか嫌いか、と言われたら好き。でもそれが恋愛の好きか聞かれるとまだちょっと良くわからない。パーピュア達に相談したらメイディから
「最終的には体を許せるかどうか、ですよ」
なんて明け透けに言われて、キャーーッてなったのはパーピュアも一緒だった。何でだよ。パーピュアは婚約者いるだろ!
か、体かぁ…!!俺まだ尻は大事だな…!
そんなわけであれからまた1ヶ月過ぎたけど、未だに答えを出さないまま甘えてしまっています。
魔力訓練は割りと進んだ方で、あともう少し制御できるようになったら旅に出れる、ってパーピュアからもお墨付きをもらえるまでになった。
けどこの日は何だか朝からバタついてて、何だろう?って思ってたんだ。
ローゼンもディカイアスも朝から出掛けてて、いつもなら現れるティエもいない。魔術訓練も今日は休みだって言われて暇だな、と思う反面物凄く嫌な予感がしてた。
いつもと違う。
いつもなら聞こえる騎士達の声が聞こえない。
しん、と静まり返ってる騎士団寮に鳥の声すら聞こえてこないなんておかしいだろう。
だからこっそり部屋を抜け出して様子を見に行ったんだ。もしかしたら騎士団総出の魔物退治なだけかもしれないし、と無理矢理言い聞かせて不安を押し込んで。
でも、寮を出た途端怒声や呻き声、悲鳴のような声が聞こえてきた。敵襲とかの声じゃなくて、
「しっかりしろ!」
「今治癒術師が来るからな!寝るなよ!目を閉じるな!!」
そんな声だ。
声の方向へ向かいながら心臓が早鐘のように鳴った。
冷や汗も吹き出してきて、何度か汗を拭って…それでも止まらない足はやがてそこへ辿り着いた。
普段天候不良の時に使ってる屋内鍛練場に敷かれた防水シート。
その上に寝かされている騎士団のみんな。応急手当てはしてあるけど、息も絶え絶えな人が何人もいる。
あの人は…足がない。
向こうの人は…辛うじて腕がついてるけど、もうほとんど千切れかけてる。
「い…っ」
チカッ、といつもの光が瞬いて、頭が痛くて、それで…俺は…
思い出した。
「ひ…っ、う、あぁぁぁぁぁーーーーーッ!!!!」
あぁ、そうだった。あの日俺はまたアイツに誘拐されて、目の前で…
「ーーーーーッ!!!」
吐き気が込み上げるまま外に向かって嘔吐する。吐いても吐いても楽にならなくて、涙が滲んでくる。そんな俺の背中を誰かがさすってくれた。
「スナオ…!どうしてここにいるの!」
「ティ、エ…」
「部屋に戻りなさい!」
そうだ…。あの日も崖から落ちた俺を庇って一緒に落ちたのはティエだ。大丈夫、って宥めてくれる優しい声を思い出す。
だけどそのティエをグイッと押し退けた血塗れの手が見えて、俺は
「ひ…っ」
と息を飲んだ。
「スナオ!手を貸してくれ!!」
「パーピュア…?」
その手の持ち主はパーピュアだった。額には珠のような汗をかき、手袋をはめた手は血塗れだ。腰に下げた鞄にハサミや包帯が見えていて、応急手当てをしながら治癒魔法をかけているんだろう、と何となくの予測がついた。
「ちょっと!スナオはまだ…!」
「ティエは黙ってろ!」
止めようとするティエを怒鳴り付けて俺に向き直るパーピュアは真剣で必死な目をしている。血塗れの手袋を外してもう満杯になりかけているゴミ箱に放り、俺の両腕を掴んだ。
「ひ…!や、やだ…っ」
振り払おうとする腕はパーピュアに押さえ込まれて動かない。
怖い…!怖い!!
「イヤだ…っ!!!」
あいつの顔が思い浮かんで渾身の力を振り絞ったけど、それでもパーピュアの腕は振りほどけなくて、恐怖からパニックになりかけて…次の瞬間。
パンッ!!
と鋭い音がした。
「ピュア!!!」
「うるさい!黙ってろ!!!…スナオ!この惨状が見えてるな!!?見えてるなら手伝え!!お前の力が必要なんだ!!!」
俺は叩かれた頬を押さえて呆然としながら肩を揺さぶるパーピュアを見つめる。その背後でまた怪我人が運び込まれて来るのが見えた。
あれは…。
「ローゼン…?」
「まだまだ怪我人が運ばれてくる!いいか、前も言ったが僕は1人ずつしか癒せない!でもお前は違う!お前なら今ここにいる全員を癒せるんだ!!お前なら命をふるいにかけずに全員を助けられるんだ!!!手を貸してくれ!!!ローゼンが…っ、みんなが死んでもいいのか!!?」
それでも動かない俺に焦れたのか、もう一度俺の肩を揺さぶるパーピュアの頬を涙が伝う。
「お前の力が必要なんだ!!!今!お前にしか出来ないんだ!!神子スナオ!!!」
「俺…しか…」
パーピュアはそれ以上言わず、グイッと涙と汗を拭うと足早に治癒に戻っていく。
俺は……いいのか?このまま、怖いからって逃げても。
パーピュア達治癒術師も限界なんだろう。1人、2人と魔力切れで倒れてる。
そんな状況で俺1人見なかった事にして逃げるのか?
俺にしか出来ない事、やりたかったんじゃないのか?
俺にも出来る事はあるってブラック企業のあいつらに思い知らせてやりたくはないのか?
「スナオ…、良いのよ。無理しなくても」
「ティエ…」
そっ、と肩に手を置くティエの向こうで傷を負ったみんなが呻いている。
メイディは自分も腕に傷を負っているのではないか。服の上から布を巻いて縛っただけの応急手当てを済ませて怪我人の治癒に当たってる。
パーピュアだって何度も額の汗を拭って、必死で怪我人を癒してる。
なのに、俺はこのまま見捨てて逃げるのか?それでまたみんなと笑い合えるか?
「…俺、やる…。やってみる、から…」
そうだ。ここにいるのはあの日の誘拐犯達じゃない。俺に優しくしてくれた騎士団のみんななんだ。
「ティエ…側にいて…」
恐怖に震える足を叱咤して。
怪我人達の中心まで自分の足で歩いて。
今俺にしか出来ない事、やるんだ…!!
それに甘えてなかなか答えを出さない俺は酷いヤツだと思う。でも1人を選ぶなんて出来ないんだ。みんなそれぞれ好きなところあるんだもん…。
そう。好きか嫌いか、と言われたら好き。でもそれが恋愛の好きか聞かれるとまだちょっと良くわからない。パーピュア達に相談したらメイディから
「最終的には体を許せるかどうか、ですよ」
なんて明け透けに言われて、キャーーッてなったのはパーピュアも一緒だった。何でだよ。パーピュアは婚約者いるだろ!
か、体かぁ…!!俺まだ尻は大事だな…!
そんなわけであれからまた1ヶ月過ぎたけど、未だに答えを出さないまま甘えてしまっています。
魔力訓練は割りと進んだ方で、あともう少し制御できるようになったら旅に出れる、ってパーピュアからもお墨付きをもらえるまでになった。
けどこの日は何だか朝からバタついてて、何だろう?って思ってたんだ。
ローゼンもディカイアスも朝から出掛けてて、いつもなら現れるティエもいない。魔術訓練も今日は休みだって言われて暇だな、と思う反面物凄く嫌な予感がしてた。
いつもと違う。
いつもなら聞こえる騎士達の声が聞こえない。
しん、と静まり返ってる騎士団寮に鳥の声すら聞こえてこないなんておかしいだろう。
だからこっそり部屋を抜け出して様子を見に行ったんだ。もしかしたら騎士団総出の魔物退治なだけかもしれないし、と無理矢理言い聞かせて不安を押し込んで。
でも、寮を出た途端怒声や呻き声、悲鳴のような声が聞こえてきた。敵襲とかの声じゃなくて、
「しっかりしろ!」
「今治癒術師が来るからな!寝るなよ!目を閉じるな!!」
そんな声だ。
声の方向へ向かいながら心臓が早鐘のように鳴った。
冷や汗も吹き出してきて、何度か汗を拭って…それでも止まらない足はやがてそこへ辿り着いた。
普段天候不良の時に使ってる屋内鍛練場に敷かれた防水シート。
その上に寝かされている騎士団のみんな。応急手当てはしてあるけど、息も絶え絶えな人が何人もいる。
あの人は…足がない。
向こうの人は…辛うじて腕がついてるけど、もうほとんど千切れかけてる。
「い…っ」
チカッ、といつもの光が瞬いて、頭が痛くて、それで…俺は…
思い出した。
「ひ…っ、う、あぁぁぁぁぁーーーーーッ!!!!」
あぁ、そうだった。あの日俺はまたアイツに誘拐されて、目の前で…
「ーーーーーッ!!!」
吐き気が込み上げるまま外に向かって嘔吐する。吐いても吐いても楽にならなくて、涙が滲んでくる。そんな俺の背中を誰かがさすってくれた。
「スナオ…!どうしてここにいるの!」
「ティ、エ…」
「部屋に戻りなさい!」
そうだ…。あの日も崖から落ちた俺を庇って一緒に落ちたのはティエだ。大丈夫、って宥めてくれる優しい声を思い出す。
だけどそのティエをグイッと押し退けた血塗れの手が見えて、俺は
「ひ…っ」
と息を飲んだ。
「スナオ!手を貸してくれ!!」
「パーピュア…?」
その手の持ち主はパーピュアだった。額には珠のような汗をかき、手袋をはめた手は血塗れだ。腰に下げた鞄にハサミや包帯が見えていて、応急手当てをしながら治癒魔法をかけているんだろう、と何となくの予測がついた。
「ちょっと!スナオはまだ…!」
「ティエは黙ってろ!」
止めようとするティエを怒鳴り付けて俺に向き直るパーピュアは真剣で必死な目をしている。血塗れの手袋を外してもう満杯になりかけているゴミ箱に放り、俺の両腕を掴んだ。
「ひ…!や、やだ…っ」
振り払おうとする腕はパーピュアに押さえ込まれて動かない。
怖い…!怖い!!
「イヤだ…っ!!!」
あいつの顔が思い浮かんで渾身の力を振り絞ったけど、それでもパーピュアの腕は振りほどけなくて、恐怖からパニックになりかけて…次の瞬間。
パンッ!!
と鋭い音がした。
「ピュア!!!」
「うるさい!黙ってろ!!!…スナオ!この惨状が見えてるな!!?見えてるなら手伝え!!お前の力が必要なんだ!!!」
俺は叩かれた頬を押さえて呆然としながら肩を揺さぶるパーピュアを見つめる。その背後でまた怪我人が運び込まれて来るのが見えた。
あれは…。
「ローゼン…?」
「まだまだ怪我人が運ばれてくる!いいか、前も言ったが僕は1人ずつしか癒せない!でもお前は違う!お前なら今ここにいる全員を癒せるんだ!!お前なら命をふるいにかけずに全員を助けられるんだ!!!手を貸してくれ!!!ローゼンが…っ、みんなが死んでもいいのか!!?」
それでも動かない俺に焦れたのか、もう一度俺の肩を揺さぶるパーピュアの頬を涙が伝う。
「お前の力が必要なんだ!!!今!お前にしか出来ないんだ!!神子スナオ!!!」
「俺…しか…」
パーピュアはそれ以上言わず、グイッと涙と汗を拭うと足早に治癒に戻っていく。
俺は……いいのか?このまま、怖いからって逃げても。
パーピュア達治癒術師も限界なんだろう。1人、2人と魔力切れで倒れてる。
そんな状況で俺1人見なかった事にして逃げるのか?
俺にしか出来ない事、やりたかったんじゃないのか?
俺にも出来る事はあるってブラック企業のあいつらに思い知らせてやりたくはないのか?
「スナオ…、良いのよ。無理しなくても」
「ティエ…」
そっ、と肩に手を置くティエの向こうで傷を負ったみんなが呻いている。
メイディは自分も腕に傷を負っているのではないか。服の上から布を巻いて縛っただけの応急手当てを済ませて怪我人の治癒に当たってる。
パーピュアだって何度も額の汗を拭って、必死で怪我人を癒してる。
なのに、俺はこのまま見捨てて逃げるのか?それでまたみんなと笑い合えるか?
「…俺、やる…。やってみる、から…」
そうだ。ここにいるのはあの日の誘拐犯達じゃない。俺に優しくしてくれた騎士団のみんななんだ。
「ティエ…側にいて…」
恐怖に震える足を叱咤して。
怪我人達の中心まで自分の足で歩いて。
今俺にしか出来ない事、やるんだ…!!
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