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番外編
廣森朝陽 1
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俺の親は碌でもない奴らだった。父親は酒とギャンブル狂いで有り金全部費やし、母親は男狂いでしょっちゅう家に違う男を連れ込んでいつの間にか行方を眩ませた。
俺が成人まで生きていられたのは金に困った父親が俺に援交まがいの事をさせてたからだと言っても過言ではないと思う。未成年の体を好き勝手するくせに、可哀想だという理由で食事に連れ出してくれたり金を渡してくれるクソみたいな大人がいなかったらとっくに餓死してただろう。
だからこの世界に来て混乱してるうちに捕まって、売られた先が娼館だったとしても大して気にはならなかった。ただああ、ここでもか、と諦めにも似た気持ちになっただけだ。
だけどグレイブ・アンヘルに出会って、アンリに出会って、全てが変わった。
生に執着はなかった。自分の体にだって何の思い入れもなかった。それなのに、アンリが俺なんかを大切にするから。まるで心の奥底に乱暴に触れたら壊れるとでも言いたげに優しく接するから。
――初めて死ぬのが怖いと思った。
「アサヒ」
ふ、と目を開けると目の前にさらりと落ちてくるオレンジ色の髪。鼻先で揺れるそれがくすぐったくて指に絡めた。真っすぐで、まるで本人の性根と同じその様に思わず笑う。
「何ですか」
「いやぁ、ほんとアンリの髪って真っすぐだな、って思って」
5度目の人生もアンリを選んだのは、どうせ死ぬなら一緒にいたかったからだ。それにどう逃げてみても結局いつも同じ結末に辿り着くから、だったら無理して離れる必要もない。この手を取って、側で生きて、最期は愛する二人を殺して一緒に連れて逝く。何度も同じ人生を繰り返すのはもしかしたら二人を置いて逝ってしまったからかも知れない。そう思ったから今回は絶対一緒に連れて逝こうって決めた。
「アサヒ?」
不思議そうなアンリの髪を引っ張って唇を寄せたら、仕方がないとでも言いたげな小さなため息と共に唇を塞がれた。いつもみたいに深くない、ただ合わせるだけの子供のようなキスは物足りないけどそろそろ起きる時間だ。
「アンリ、今日もよろしくな」
「本当に何なんですか?」
そう言いながら、また何かやらかしたのかと不審げながら抱き着いて待つ俺を抱き起こす。
アンリは魔術師だ。基本的に華奢だけど俺一人抱えるくらい簡単だと言いながら、影で鍛えてるというのは先代からこっそり教えて貰った。
(あ~あ、死にたくねぇな)
俺の最期はあっけない。住んでた村に出たモンスターから皆を、アンリとアルベールを守ろうと思って。森の奥から現れるそいつらの巣がそこにあると思って向かった。魔力のない俺にもはっきり見える瘴気に本能的にまずいとは思ったんだ。だけど家族の為に退くわけにはいかないから、戦って、戦って、それで――気付いた時には遅かった。俺には耐えられるはずのない魔力の塊が目の前にあって、次に感じたのは焼けるような熱さと、その後で凍えるような寒さに代わって。倒れ込んだ地面がいやに濡れてる、なんて考えてたけどそれは俺自身から流れ出る血だった。
その後の事は思い出したくない。
(今度こそアンリが苦しまないように)
――一緒に死んでくれ
俺が成人まで生きていられたのは金に困った父親が俺に援交まがいの事をさせてたからだと言っても過言ではないと思う。未成年の体を好き勝手するくせに、可哀想だという理由で食事に連れ出してくれたり金を渡してくれるクソみたいな大人がいなかったらとっくに餓死してただろう。
だからこの世界に来て混乱してるうちに捕まって、売られた先が娼館だったとしても大して気にはならなかった。ただああ、ここでもか、と諦めにも似た気持ちになっただけだ。
だけどグレイブ・アンヘルに出会って、アンリに出会って、全てが変わった。
生に執着はなかった。自分の体にだって何の思い入れもなかった。それなのに、アンリが俺なんかを大切にするから。まるで心の奥底に乱暴に触れたら壊れるとでも言いたげに優しく接するから。
――初めて死ぬのが怖いと思った。
「アサヒ」
ふ、と目を開けると目の前にさらりと落ちてくるオレンジ色の髪。鼻先で揺れるそれがくすぐったくて指に絡めた。真っすぐで、まるで本人の性根と同じその様に思わず笑う。
「何ですか」
「いやぁ、ほんとアンリの髪って真っすぐだな、って思って」
5度目の人生もアンリを選んだのは、どうせ死ぬなら一緒にいたかったからだ。それにどう逃げてみても結局いつも同じ結末に辿り着くから、だったら無理して離れる必要もない。この手を取って、側で生きて、最期は愛する二人を殺して一緒に連れて逝く。何度も同じ人生を繰り返すのはもしかしたら二人を置いて逝ってしまったからかも知れない。そう思ったから今回は絶対一緒に連れて逝こうって決めた。
「アサヒ?」
不思議そうなアンリの髪を引っ張って唇を寄せたら、仕方がないとでも言いたげな小さなため息と共に唇を塞がれた。いつもみたいに深くない、ただ合わせるだけの子供のようなキスは物足りないけどそろそろ起きる時間だ。
「アンリ、今日もよろしくな」
「本当に何なんですか?」
そう言いながら、また何かやらかしたのかと不審げながら抱き着いて待つ俺を抱き起こす。
アンリは魔術師だ。基本的に華奢だけど俺一人抱えるくらい簡単だと言いながら、影で鍛えてるというのは先代からこっそり教えて貰った。
(あ~あ、死にたくねぇな)
俺の最期はあっけない。住んでた村に出たモンスターから皆を、アンリとアルベールを守ろうと思って。森の奥から現れるそいつらの巣がそこにあると思って向かった。魔力のない俺にもはっきり見える瘴気に本能的にまずいとは思ったんだ。だけど家族の為に退くわけにはいかないから、戦って、戦って、それで――気付いた時には遅かった。俺には耐えられるはずのない魔力の塊が目の前にあって、次に感じたのは焼けるような熱さと、その後で凍えるような寒さに代わって。倒れ込んだ地面がいやに濡れてる、なんて考えてたけどそれは俺自身から流れ出る血だった。
その後の事は思い出したくない。
(今度こそアンリが苦しまないように)
――一緒に死んでくれ
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近々番外編をあげます。
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