13 / 230
13.盗み聞き
しおりを挟む
ジークヴァルトは、自分を庇ってアンネリーゼの存在を隠したのか、それとも別の意図があるのか。
とにかく、今『自分』という存在をウルリヒに知られてはジークヴァルトの立場が悪くなるのは間違いないと考え、アンネリーゼはその場に静かに屈み込んだ。
「だが誰かが助けた可能性もあるだろう?!」
「仮にそうだとしても、それを私にどう把握しろと?」
明らかに苛立った様子のウルリヒに、呆れたようにジークヴァルトは溜息をつきながら問いかける。
「貴殿に不可能などなかろうに。何せ最強の『ヴァルツァー王国の守護者』だからな」
内容は、ジークヴァルトを褒めている筈なのに、強い嘲りを含んだ様な口振りに、アンネリーゼの隣に佇むニーナの表情が、怒りに歪んだ。
「貴様っ………!」
「構うな、エルンスト。………ウルリヒ殿。私はもうこれ以上、話をすることはないので、お引取り願いたい」
「話はまだ済んでいないぞっ?!」
あくまで紳士的に、ジークヴァルトは対応しているが、ウルリヒの方はそこまで言われても尚引き下がろうとしなかった。
「………大人しく帰らないのであれば、我が領地を荒らす不届き者として、強制的に排除させていただく事になりますよ?」
「ひっ………?!」
丁寧な口調で、けれども低く、底冷えのするような冷たい声でジークヴァルトがそう告げるとジークヴァルトがそう告げた途端、ウルリヒは情けない悲鳴を上げる。直後にバタバタという足音が響いて、それは段々と遠ざかっていった。
「………立ち去った、みたいね」
無意識のうちに緊張していたのか、アンネリーゼは鼓動が早くなっていたことに気が付いた。
ゆっくりと呼吸を整え、ゆっくりと立ち上がる。
「………こんなところで盗み聞きとは、感心しませんね」
間近で声がして、驚いて顔を上げると、いつの間にかジークヴァルトが目の前に立っていた。
「………クラルヴァイン辺境伯様………?」
ジークヴァルトの金色の双眸が、真っ直ぐにアンネリーゼを射抜いた。
「聞いていたのなら、分かるでしょう。あの者は、あなたを探しています」
「………はい」
「………私を、咎めないのですか?」
「え?」
意外な問いかけに、アンネリーゼは軽く目を見開いた。
「何故、わたくしがクラルヴァイン辺境伯様を咎めるのですか?」
「………あの者は、あなたの過去を知っている。あなたが、何者なのかを。それなのに、俺は嘘をついて、あの者をあなたから遠ざけた」
ジークヴァルトの口調が、いつもの穏やかなものではなく、少し乱暴で少年らしいものに変わっていることに、アンネリーゼは気が付いた。
とにかく、今『自分』という存在をウルリヒに知られてはジークヴァルトの立場が悪くなるのは間違いないと考え、アンネリーゼはその場に静かに屈み込んだ。
「だが誰かが助けた可能性もあるだろう?!」
「仮にそうだとしても、それを私にどう把握しろと?」
明らかに苛立った様子のウルリヒに、呆れたようにジークヴァルトは溜息をつきながら問いかける。
「貴殿に不可能などなかろうに。何せ最強の『ヴァルツァー王国の守護者』だからな」
内容は、ジークヴァルトを褒めている筈なのに、強い嘲りを含んだ様な口振りに、アンネリーゼの隣に佇むニーナの表情が、怒りに歪んだ。
「貴様っ………!」
「構うな、エルンスト。………ウルリヒ殿。私はもうこれ以上、話をすることはないので、お引取り願いたい」
「話はまだ済んでいないぞっ?!」
あくまで紳士的に、ジークヴァルトは対応しているが、ウルリヒの方はそこまで言われても尚引き下がろうとしなかった。
「………大人しく帰らないのであれば、我が領地を荒らす不届き者として、強制的に排除させていただく事になりますよ?」
「ひっ………?!」
丁寧な口調で、けれども低く、底冷えのするような冷たい声でジークヴァルトがそう告げるとジークヴァルトがそう告げた途端、ウルリヒは情けない悲鳴を上げる。直後にバタバタという足音が響いて、それは段々と遠ざかっていった。
「………立ち去った、みたいね」
無意識のうちに緊張していたのか、アンネリーゼは鼓動が早くなっていたことに気が付いた。
ゆっくりと呼吸を整え、ゆっくりと立ち上がる。
「………こんなところで盗み聞きとは、感心しませんね」
間近で声がして、驚いて顔を上げると、いつの間にかジークヴァルトが目の前に立っていた。
「………クラルヴァイン辺境伯様………?」
ジークヴァルトの金色の双眸が、真っ直ぐにアンネリーゼを射抜いた。
「聞いていたのなら、分かるでしょう。あの者は、あなたを探しています」
「………はい」
「………私を、咎めないのですか?」
「え?」
意外な問いかけに、アンネリーゼは軽く目を見開いた。
「何故、わたくしがクラルヴァイン辺境伯様を咎めるのですか?」
「………あの者は、あなたの過去を知っている。あなたが、何者なのかを。それなのに、俺は嘘をついて、あの者をあなたから遠ざけた」
ジークヴァルトの口調が、いつもの穏やかなものではなく、少し乱暴で少年らしいものに変わっていることに、アンネリーゼは気が付いた。
13
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
覇王に執着される傾国の男装騎士〜忘却の接吻を、愛しき宿敵へ〜
甘塩ます☆
恋愛
男装騎士アーサーは、かつての宿敵・カイル王に捕らわれ、「専属メイド」として屈辱的な奉仕を命じられる。しかし、復讐のために自分を弄ぶはずのカイルが向けたのは、狂気にも似た深い愛だった。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。
待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。
婚約破棄された堅物令嬢ですが、鬼の騎士団長の娘として宮廷の陰謀を暴くのに忙しいので、美貌のカストラート(実は王子)に溺愛される暇はありません
綾森れん
恋愛
「お前のような真面目くさった女はいらない。婚約は破棄させてもらう!」
婚約者だった公爵令息に冷酷に言い放たれたリラ・プリマヴェーラ。
だが、彼女の心にあったのは悲しみではなく―― 十年前の王族暗殺事件を調査したいという情熱だった。
伯爵令嬢であるリラは、鉄の掟を守る『鬼の騎士団長』の娘。
彼女には恋よりも何よりも優先すべき使命があった。それは、十年前に幼い王子が暗殺された事件の真相を暴き、父を、そして王国を陰謀から救うこと。
婚約破棄直後、彼女の前に現れたのは、天使の歌声を持つ美貌のカストラート(去勢歌手)、アルカンジェロだった。
彼が十年前の事件について密かに調べていることを、リラは知ってしまう。
真相を探るため、リラは彼を自分の音楽教師として迎え入れ、距離を縮めていく。
事件解決の協力者として彼と接するうち、リラは謎めいたアルカンジェロに危機を救われることになる。
しかし、リラは知らない。
アルカンジェロの正体が、十年前に暗殺されたはずの第三王子であることを。
そして彼にとってリラこそが、初恋の女性であることを。
彼は十年間、密かにリラを想い続けていたのだ。
王位を狙う者たちから身を隠すため、声楽の技術を駆使して、教会歌手として大聖堂で生き延びてきたアルカンジェロだったが、王家を巡る不穏な陰謀が静かに動き始めていた。
捜査に猪突猛進な堅物令嬢と、彼女を影から支え執着を見せる、カストラート歌手のふりをした王子。
宮廷の闇を切り裂く二人の恋と事件の行方は――?
※本作は、過去に投稿していた『真面目くさった女はいらないと婚約破棄された伯爵令嬢ですが、王太子様に求婚されました。実はかわいい彼の溺愛っぷりに困っています』の設定・キャラクター・構成を大幅に改稿し、新作として再構成したものです。
物語の結末やキャラクターの掘り下げを強化しておりますので、初めての方も、以前お読みいただいた方もお楽しみいただけます。
【完結】お父様(悪人顔・強面)似のウブな辺境伯令嬢は白い?結婚を望みます。
カヨワイさつき
恋愛
魔物討伐で功績を上げた男勝りの辺境伯の5女は、"子だねがない"とウワサがある王子と政略結婚結婚する事になってしまった。"3年間子ども出来なければ離縁出来る・白い結婚・夜の夫婦生活はダメ"と悪人顔で強面の父(愛妻家で子煩悩)と約束した。だが婚姻後、初夜で……。
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる