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28.失われた過去(1)
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「国王陛下からの呼び出し………?」
モルゲンシュテルン侯爵は、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら頷いた。
隣にはアンネリーゼの母親である侯爵夫人が今にも倒れそうな顔色をしながら座っている。
平穏な日常を送っていたアンネリーゼが父に呼び出されたのは、目覚めてから丁度三ヶ月が経った日だった。
「遅かれ早かれ、こうなることは分かっていたが………この際、お前にはきちんと伝えておかねばなるまい」
「あなた………」
まるで今から死刑宣告を言い渡されるような、そんな雰囲気だった。
「………アンネリーゼ。お前が記憶を取り戻さないなら、私はそれでも構わないと思っていた。………それだけ、お前が無くした記憶は、お前にとって辛く、酷いものだから………」
アンネリーゼと同じ、深い蒼色の瞳は揺らぎながらアンネリーゼを見つめる。
「わたくしは、平気です」
両親が、敢えてアンネリーゼの過去について、特に行方不明になったことについての話を避けているのは分かっていた。
それがここに来て、急に伝えようとするということは、国王からの呼び出しがあった事と関係するのだろう。
どちらかというと、話さざるを得ない状況になったと考えたほうが無難だった。
「………お前の持つ魔力は特別なものでな。その魔力を持つために、百年に一度聖殿へと祈りを捧げる巫女姫に選ばれたのだ。………それがつい一年前の事だった」
「巫女姫………?」
その話なら、本で読んだことがあった。
大陸で信仰されている、創造の女神を祀る聖殿で、百年に一度行われる祈りの儀式。
祈りを捧げるのは、七色の魔力を身に宿した『巫女姫』と呼ばれる乙女なのだそうだ。
「お前は護衛騎士達と共に隣国フォイルゲンの聖殿で祈りを捧げ、クルツへと向かう途中で消息を絶った。………おまえが行方不明となった後、お前と行動を共にしていたクレーデル伯爵令息の遺体が発見されたと聞いたときは、生きた心地がしなかった………」
アンネリーゼは冷静に父の言葉を聞いていたが、クレーデル伯爵子息という言葉を聞いた途端に、どくんと心臓が跳ねた気がした。
「クレーデル伯爵令息、とは………、どなたです?」
訊いてはいけないような気がしたが、アンネリーゼは尋ねずにはいられなかった。
アンネリーゼの問いかけに、侯爵夫人が耐えられずに泣き崩れる。
そんな妻の背中を慰めるように擦りながら、モルゲンシュテルン侯爵は、ゆっくりと最愛の娘に真実を伝えた。
「クレーデル伯爵家の次男、ルートヴィヒ・クレーデル殿………。王国騎士団の騎士で………アンネリーゼ………お前の、婚約者だ」
父親の言葉に、アンネリーゼは大きく目を見開いた。
モルゲンシュテルン侯爵は、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら頷いた。
隣にはアンネリーゼの母親である侯爵夫人が今にも倒れそうな顔色をしながら座っている。
平穏な日常を送っていたアンネリーゼが父に呼び出されたのは、目覚めてから丁度三ヶ月が経った日だった。
「遅かれ早かれ、こうなることは分かっていたが………この際、お前にはきちんと伝えておかねばなるまい」
「あなた………」
まるで今から死刑宣告を言い渡されるような、そんな雰囲気だった。
「………アンネリーゼ。お前が記憶を取り戻さないなら、私はそれでも構わないと思っていた。………それだけ、お前が無くした記憶は、お前にとって辛く、酷いものだから………」
アンネリーゼと同じ、深い蒼色の瞳は揺らぎながらアンネリーゼを見つめる。
「わたくしは、平気です」
両親が、敢えてアンネリーゼの過去について、特に行方不明になったことについての話を避けているのは分かっていた。
それがここに来て、急に伝えようとするということは、国王からの呼び出しがあった事と関係するのだろう。
どちらかというと、話さざるを得ない状況になったと考えたほうが無難だった。
「………お前の持つ魔力は特別なものでな。その魔力を持つために、百年に一度聖殿へと祈りを捧げる巫女姫に選ばれたのだ。………それがつい一年前の事だった」
「巫女姫………?」
その話なら、本で読んだことがあった。
大陸で信仰されている、創造の女神を祀る聖殿で、百年に一度行われる祈りの儀式。
祈りを捧げるのは、七色の魔力を身に宿した『巫女姫』と呼ばれる乙女なのだそうだ。
「お前は護衛騎士達と共に隣国フォイルゲンの聖殿で祈りを捧げ、クルツへと向かう途中で消息を絶った。………おまえが行方不明となった後、お前と行動を共にしていたクレーデル伯爵令息の遺体が発見されたと聞いたときは、生きた心地がしなかった………」
アンネリーゼは冷静に父の言葉を聞いていたが、クレーデル伯爵子息という言葉を聞いた途端に、どくんと心臓が跳ねた気がした。
「クレーデル伯爵令息、とは………、どなたです?」
訊いてはいけないような気がしたが、アンネリーゼは尋ねずにはいられなかった。
アンネリーゼの問いかけに、侯爵夫人が耐えられずに泣き崩れる。
そんな妻の背中を慰めるように擦りながら、モルゲンシュテルン侯爵は、ゆっくりと最愛の娘に真実を伝えた。
「クレーデル伯爵家の次男、ルートヴィヒ・クレーデル殿………。王国騎士団の騎士で………アンネリーゼ………お前の、婚約者だ」
父親の言葉に、アンネリーゼは大きく目を見開いた。
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