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51.秘された事実(1)
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「来月にクルツ公国への巡礼を行うことが正式に決まった」
アンネリーゼかイェルクと面会してから数日後、父の執務室へと呼び出された。
部屋に入った途端にアンネリーゼにそう告げる、モルゲンシュテルン侯爵の表情は暗い。
「本来ならば、フォイルゲンから直接向かう予定だったからな。………ミアには既に用意を進めるように伝えてあるが………体調が優れないのであれば陛下に………」
「わたくしは問題ありません。先日聖殿を訪れて、祈りを捧げるのに問題はないと、イェルク神官様からお伺い致しました。体力も、問題なく回復しておりますし、クルツまでは馬車で二日程でしょう?」
父の心配を少しでも取り除けるように、アンネリーゼは微笑みを浮かべる。
「………本当に、お前という娘は…………」
ふっと息を吐き出すと、モルゲンシュテルン侯爵は、目を細めてアンネリーゼを見つめた。
「無理を、するな。いくら記憶がなくても、お前の心は傷ついている。………本当に………、巫女姫に選ばれたばかりに、お前は不幸に………」
そこまで言って、侯爵ははっとして右手で口元を覆った。
「………今のは失言だった」
きまりの悪そうな表情を浮かべた父を、アンネリーゼはじっと見つめる。
そして何かを決意したかのようにぎゅっと手を握り締めた。
「あの………お父様。ルートヴィヒ様の件以外にもわたくしに話していない事があるのでは、ないですか?」
アンネリーゼは、訊きたくてずっと訊けなかった疑問を口にする。
すると、侯爵ははっと目を見開いた。
「…………それは、クラネルト男爵令嬢や『ギュンター』という方と関係があることなのですか?」
その途端、ガタンという大きな音が室内に響いた。
それは、侯爵が立ち上がった拍子に椅子を倒した音だった。
侯爵は酷く動揺した様子で、アンネリーゼを呆然と見つめている。
「どこで………、いや、誰がお前にその名をっ?!」
いつもは穏やかな父の顔が、みるみるうちに憤怒に染まっていくのを目の当たりにして、アンネリーゼはたじろいだ。
先日ミアにクラネルト男爵令嬢の話をしたときも、ミアが怒り出したのを思い出す。
だが、真実を知るためには、ここで引く訳にはいかなかった。
「その、実は先日王立図書館に出かけた際に、クラネルト男爵令嬢がわたくしに話し掛けて来られたのです。その際に………」
「あの小娘…………っ!」
侯爵は怒りに任せて己の拳を執務机へと叩きつける。
父の様子を見る限り、尋常でないことだけははっきりと理解が出来た。
アンネリーゼかイェルクと面会してから数日後、父の執務室へと呼び出された。
部屋に入った途端にアンネリーゼにそう告げる、モルゲンシュテルン侯爵の表情は暗い。
「本来ならば、フォイルゲンから直接向かう予定だったからな。………ミアには既に用意を進めるように伝えてあるが………体調が優れないのであれば陛下に………」
「わたくしは問題ありません。先日聖殿を訪れて、祈りを捧げるのに問題はないと、イェルク神官様からお伺い致しました。体力も、問題なく回復しておりますし、クルツまでは馬車で二日程でしょう?」
父の心配を少しでも取り除けるように、アンネリーゼは微笑みを浮かべる。
「………本当に、お前という娘は…………」
ふっと息を吐き出すと、モルゲンシュテルン侯爵は、目を細めてアンネリーゼを見つめた。
「無理を、するな。いくら記憶がなくても、お前の心は傷ついている。………本当に………、巫女姫に選ばれたばかりに、お前は不幸に………」
そこまで言って、侯爵ははっとして右手で口元を覆った。
「………今のは失言だった」
きまりの悪そうな表情を浮かべた父を、アンネリーゼはじっと見つめる。
そして何かを決意したかのようにぎゅっと手を握り締めた。
「あの………お父様。ルートヴィヒ様の件以外にもわたくしに話していない事があるのでは、ないですか?」
アンネリーゼは、訊きたくてずっと訊けなかった疑問を口にする。
すると、侯爵ははっと目を見開いた。
「…………それは、クラネルト男爵令嬢や『ギュンター』という方と関係があることなのですか?」
その途端、ガタンという大きな音が室内に響いた。
それは、侯爵が立ち上がった拍子に椅子を倒した音だった。
侯爵は酷く動揺した様子で、アンネリーゼを呆然と見つめている。
「どこで………、いや、誰がお前にその名をっ?!」
いつもは穏やかな父の顔が、みるみるうちに憤怒に染まっていくのを目の当たりにして、アンネリーゼはたじろいだ。
先日ミアにクラネルト男爵令嬢の話をしたときも、ミアが怒り出したのを思い出す。
だが、真実を知るためには、ここで引く訳にはいかなかった。
「その、実は先日王立図書館に出かけた際に、クラネルト男爵令嬢がわたくしに話し掛けて来られたのです。その際に………」
「あの小娘…………っ!」
侯爵は怒りに任せて己の拳を執務机へと叩きつける。
父の様子を見る限り、尋常でないことだけははっきりと理解が出来た。
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