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57.護衛騎士
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その日は、日が昇る前からアンネリーゼは聖殿内で身を清め、純白のドレスを身に纏う。
「本来であればフォイルゲンから直接クルツへと入国する予定でしたので、本来予定していた経路とは異なりますが、問題なければ四日ほどでクルツの都に到着出来るかと存じます」
イェルクは一通りの説明をアンネリーゼにしたあと、一人の騎士を連れてきた。
「ご紹介が遅くなり申し訳ございません。此度より巫女姫の護衛騎士を務めますジーク・バルテルです」
巫女姫の護衛騎士のみ着用が許される、純白の騎士服を纏った背の高い男性が、アンネリーゼに向かって騎士の礼をとった。
「お初にお目にかかります、巫女姫様。ジーク・バルテルと申します」
平凡な栗色の髪に、同じく平凡な茶色の瞳をした、年若い青年だった。顔はそこそこ整っているが、驚くほどの美形という程ではない。
それなのに、アンネリーゼは彼の姿を見た途端に胸の奥がざわめくのを感じた。
ここのところ色々な事がありすぎて、少し気持ちが不安定になっているのだろうか。
アンネリーゼは不思議に思いながらも、ジークに向かって微笑みかける。
「アンネリーゼ・モルゲンシュテルンと申します。これから、よろしくお願い致しますね」
そう言いながら、どうしてか暴れる心臓を、落ち着かせようと深呼吸をしてみるが、うまくいかない。
「ジークは私の縁者ですが、魔法と剣の腕は確かですので、心配は御無用です」
イェルクがいつもと変わらぬ柔和な笑みを向けながら教えてくれたが、その表情がいつもとは違って見えた気がした。
「必ずや巫女姫様の御身をお守り致します」
そう言って顔を上げたジークの瞳が、ほんの一瞬金色に見えた気がしてアンネリーゼははっと息を呑んだ。
「………何か私の顔についていましたか?」
アンネリーゼの反応に気がついたのか、ジークはアンネリーゼの顔をじっと見つめてくる。
アンネリーゼもジークの顔を見返したが、やはり彼の瞳は茶色だった。
「あ、いえ…………」
やはり、見間違いだったのかと落胆する自分に気がついて、アンネリーゼは困ったようにジークから視線を外した。
「問題がないようであれば、そろそろ出立の時間になりますので、馬車の方にご移動願います」
「………分かりました」
うっすらと笑みを浮かべたジークがアンネリーゼに手を差し出す。
そんな彼の手に、自分の手を重ね合わせた瞬間、一際強く、アンネリーゼの心臓が跳ねた。
(………わたくし、一体どうしてしまったのかしら…………)
ジークと触れている部分が、頬が酷く熱く感じて、アンネリーゼは戸惑いながら、視線を泳がせたのだった。
「本来であればフォイルゲンから直接クルツへと入国する予定でしたので、本来予定していた経路とは異なりますが、問題なければ四日ほどでクルツの都に到着出来るかと存じます」
イェルクは一通りの説明をアンネリーゼにしたあと、一人の騎士を連れてきた。
「ご紹介が遅くなり申し訳ございません。此度より巫女姫の護衛騎士を務めますジーク・バルテルです」
巫女姫の護衛騎士のみ着用が許される、純白の騎士服を纏った背の高い男性が、アンネリーゼに向かって騎士の礼をとった。
「お初にお目にかかります、巫女姫様。ジーク・バルテルと申します」
平凡な栗色の髪に、同じく平凡な茶色の瞳をした、年若い青年だった。顔はそこそこ整っているが、驚くほどの美形という程ではない。
それなのに、アンネリーゼは彼の姿を見た途端に胸の奥がざわめくのを感じた。
ここのところ色々な事がありすぎて、少し気持ちが不安定になっているのだろうか。
アンネリーゼは不思議に思いながらも、ジークに向かって微笑みかける。
「アンネリーゼ・モルゲンシュテルンと申します。これから、よろしくお願い致しますね」
そう言いながら、どうしてか暴れる心臓を、落ち着かせようと深呼吸をしてみるが、うまくいかない。
「ジークは私の縁者ですが、魔法と剣の腕は確かですので、心配は御無用です」
イェルクがいつもと変わらぬ柔和な笑みを向けながら教えてくれたが、その表情がいつもとは違って見えた気がした。
「必ずや巫女姫様の御身をお守り致します」
そう言って顔を上げたジークの瞳が、ほんの一瞬金色に見えた気がしてアンネリーゼははっと息を呑んだ。
「………何か私の顔についていましたか?」
アンネリーゼの反応に気がついたのか、ジークはアンネリーゼの顔をじっと見つめてくる。
アンネリーゼもジークの顔を見返したが、やはり彼の瞳は茶色だった。
「あ、いえ…………」
やはり、見間違いだったのかと落胆する自分に気がついて、アンネリーゼは困ったようにジークから視線を外した。
「問題がないようであれば、そろそろ出立の時間になりますので、馬車の方にご移動願います」
「………分かりました」
うっすらと笑みを浮かべたジークがアンネリーゼに手を差し出す。
そんな彼の手に、自分の手を重ね合わせた瞬間、一際強く、アンネリーゼの心臓が跳ねた。
(………わたくし、一体どうしてしまったのかしら…………)
ジークと触れている部分が、頬が酷く熱く感じて、アンネリーゼは戸惑いながら、視線を泳がせたのだった。
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