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83.回想(6 SIDE:ジークヴァルト)
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「血の、契約…………」
魔族が血の契約を結ぶということは、自分の命を差し出すにも等しい行為。
軽々しく口にすることすらも憚られるような、重たいものだ。
それほどの契約を、交換条件で提示してきたということは、彼がそれ相応の覚悟を持っている事を暗に示していた。
だが、相手は魔族だ。
本当に信用出来る相手ではない。
呪いがおそらく事実なのは分かったが、それ以外の事までこの男が真実を述べているとは限らない。
それに、そもそも魔法騎士である自分が戦う相手は魔族や魔獣だ。
アリッサの分も、ヴァルツァーを護ると心に決めたにも関わらず、魔族と馴れ合うような真似をするのか。
そんな相反する気持ちが迷いとなってジークヴァルトの中で渦巻いていく。
「…………断る」
どのくらいの間考えていただろうか。
静かに、ジークヴァルトは口を開いた。
「でしょうね」
青年はほんの少し肩を竦めてみせたが、何故かがっかりした様子はなかった。
「いきなり呪いを掛けられて、混乱もしているでしょう。返事は急ぎません。………ですが、もしあなたがその気になったら、私を呼んでください」
にやりと不敵な笑みを浮かべると、青年は再び大鷹に姿を変えて、闇夜に飛び立っていった。
魔鳥の青年の言葉の意味を知るのに、そう長い時間は掛からなかった。
ジークヴァルトの生家である、クラルヴァイン辺境伯領は大部分が森に覆われた文字通りの辺境の領地だ。
それでも、いくつかの村があり、皆が平和に暮らしていた。
そして、その生活はずっと続いていくはずだった。
「………疫病だと…………?」
父であるクラルヴァイン辺境伯が、呆然と呟いた。
「報告では、領民のおよそ半数以上が罹患し、既に数百人が死亡しているとの事で………」
「何故、そんな状況になるまで放っておいたのだ?!」
自警団からの報告を受けたクラルヴァイン辺境伯が、苛立たしげに声を荒らげた。
「あなた…………」
「父上、怒ったところで、状況がよくなるわけではありません」
城内にある執務室に集まった両親と兄が、深刻そうな顔をしているのを見るのが、ジークヴァルトには辛かった。
疫病は、魔族の起こす厄災の一つ。つまり、この地に疫病が発生したのは女神の加護が薄れてきている証拠だった。
こんなはずでは、無かったのに。
アリッサは、精一杯頑張った。自分自身を犠牲にしてまで。
それなのにこんなのは、あまりにも理不尽ではないのだろうか。
「とにかく、神官を…………、それから薬師も呼ばなければ…………」
ジークヴァルトは、悔しさを飲み込むと、ゆらりと立ち上がった。
魔族が血の契約を結ぶということは、自分の命を差し出すにも等しい行為。
軽々しく口にすることすらも憚られるような、重たいものだ。
それほどの契約を、交換条件で提示してきたということは、彼がそれ相応の覚悟を持っている事を暗に示していた。
だが、相手は魔族だ。
本当に信用出来る相手ではない。
呪いがおそらく事実なのは分かったが、それ以外の事までこの男が真実を述べているとは限らない。
それに、そもそも魔法騎士である自分が戦う相手は魔族や魔獣だ。
アリッサの分も、ヴァルツァーを護ると心に決めたにも関わらず、魔族と馴れ合うような真似をするのか。
そんな相反する気持ちが迷いとなってジークヴァルトの中で渦巻いていく。
「…………断る」
どのくらいの間考えていただろうか。
静かに、ジークヴァルトは口を開いた。
「でしょうね」
青年はほんの少し肩を竦めてみせたが、何故かがっかりした様子はなかった。
「いきなり呪いを掛けられて、混乱もしているでしょう。返事は急ぎません。………ですが、もしあなたがその気になったら、私を呼んでください」
にやりと不敵な笑みを浮かべると、青年は再び大鷹に姿を変えて、闇夜に飛び立っていった。
魔鳥の青年の言葉の意味を知るのに、そう長い時間は掛からなかった。
ジークヴァルトの生家である、クラルヴァイン辺境伯領は大部分が森に覆われた文字通りの辺境の領地だ。
それでも、いくつかの村があり、皆が平和に暮らしていた。
そして、その生活はずっと続いていくはずだった。
「………疫病だと…………?」
父であるクラルヴァイン辺境伯が、呆然と呟いた。
「報告では、領民のおよそ半数以上が罹患し、既に数百人が死亡しているとの事で………」
「何故、そんな状況になるまで放っておいたのだ?!」
自警団からの報告を受けたクラルヴァイン辺境伯が、苛立たしげに声を荒らげた。
「あなた…………」
「父上、怒ったところで、状況がよくなるわけではありません」
城内にある執務室に集まった両親と兄が、深刻そうな顔をしているのを見るのが、ジークヴァルトには辛かった。
疫病は、魔族の起こす厄災の一つ。つまり、この地に疫病が発生したのは女神の加護が薄れてきている証拠だった。
こんなはずでは、無かったのに。
アリッサは、精一杯頑張った。自分自身を犠牲にしてまで。
それなのにこんなのは、あまりにも理不尽ではないのだろうか。
「とにかく、神官を…………、それから薬師も呼ばなければ…………」
ジークヴァルトは、悔しさを飲み込むと、ゆらりと立ち上がった。
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