呪われた騎士は記憶喪失の乙女に愛を捧げる

玉響

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112.告白(8)

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「………しかし、離れれば離れるほどにあなたを慕う気持ちは大きくなって、どうしようもなくなったときに、国王から護衛騎士の打診が来て、………あなたに逢いたいという気持ちを抑えることが出来ずに、承諾したんです。………魔法で姿を変え、ジーク・バルテルという偽名を使ってまであなたの側に居ようとしただなんて………愚かでどうしようもないと思いませんか?」

自嘲の色を浮かべたジークヴァルトの声は僅かに掠れて聞こえる。
一言一言吐き出される言葉が、水に波紋を広げるようにアンネリーゼの心をざわつかせた。

「…………わたくしは…………ジーク様を愚かだなどと思いません」

アンネリーゼは躊躇いながらも、ジークヴァルトの背中に手を回した。

「ジーク様がその決断をしてくださったからこそ、ジーク様とまたこうしてお会いできたのではありませんか。………ですから、感謝、はしているのだと思います」

ドクン、ドクンと自分の拍動が耳元まで響いてくるようだった。
何とか気持ちを落ち着かせようと、深く呼吸を繰り返すと、アンネリーゼは羞恥心に震えそうになるのを堪えながら、己の胸の内に秘めた気持ちを、口にする。

「ですが、ジーク様は………わたくしが、どれだけ苦しんだのか…………、ご存知ないでしょう?」

触れているジークヴァルトの背中が、大きく揺れた。
彼の表情を伺うことは出来ないが、おそらくあの素晴らしく美しい顔を苦しげに歪めているのだろう。

「まっさらな記憶の中に、ふとした瞬間に浮かんでくるに心を奪われて………護衛騎士に選ばれた全く容姿の異なる騎士にその方の面影を見ていたわたくしの気持ちなど、ご存知ないでしょう………っ?」

最後の方は半ば叫ぶようにして、ジークヴァルトに気持ちをぶつける。
混乱と、怒り、そして歓喜。様々な感情がアンネリーゼの中で混ざり合い、溢れ出してきた。

「え…………、…………っ?!」

一瞬の間を置いて、ジークヴァルトは息を呑むと、アンネリーゼを抱き締める腕の力を緩め、彼女に視線を合わせた。

「あの、ですね…………アンネリーゼ?それは、まるで俺のことを………その、好きだと言っているように………聞こえるんですが…………?」

白皙の美貌が、頬を赤らめているのがはっきりと分かった。
視線も彷徨い、どこか挙動不審にさえ見えた。

「………わたくしは、そう申し上げているつもりですけれど…………」

アンネリーゼは恥ずかしそうに、けれども艶やかに微笑む。
それを見たジークヴァルトは、その場で、文字通り、見事なまでに硬直したのだった。
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