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135.ささやかな独占欲

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ノイマン伯爵の名前を聞いても、もう心も何も動かない冷静な自分に、アンネリーゼは気がついた。
ヒルダと友人関係だということも知らなかったという事実に、驚きすらもなかった。

「とにかく、気をつけるに越したことはありませんわ!私達も、なるべく情報を集めますから、アンネリーゼ様は祈りの儀式の準備に専念して下さいませ」
「ええ、ありがとうございます」

友人の令嬢たちに精一杯の笑顔を向けて、アンネリーゼは感謝の言葉を口にした。


「良き友を、持っているようだ」

令嬢達が帰ったのを確認すると、すかさずジークヴァルトが話しかけてきた。

「ええ。どの方も、美しさと知性を兼ね備えた素晴らしい淑女ですし、何よりもお話して楽しいのです」
「そうか」

短く相槌を打つと、ジークヴァルトは金色に煌めく双眸を、すうっと細めた。

「………あの令嬢の情報が真実ならば、既に魔女が動いているのかもしれないな」

ジークヴァルトの周りを漂う空気が、急激に冷たくなっていった気がして、アンネリーゼははっと息を呑んだ。

「クラネルト男爵家の娘の婚約者ならば、魔女との繋がりがあるだろう。単純に考えるのなら、クラネルト男爵家が動きやすいように、アンネリーゼに恨みのあるクレーデル伯爵家を囮に使おうとして、噂をばら撒いている可能性はあるが………」
「………ノイマン伯爵は、あまり思慮深い方ではありませんが、プライドだけは高いので命令されたり、誰かの指示で動くというのはあまり考えにくいですが、わたくしは彼の全てを知っているわけではないので………」

愚かとまでは言わないが、どちらかと言うと、衝動的に動くことが多かったギュンターの事を思い出す。
そのせいで、彼と婚約していた期間はアンネリーゼにとって決して幸せとはいえないものだった。
あの婚約破棄以降、ギュンターと直接顔を合わせたことはなかったが、新しい婚約者であるフローラとはうまくいっているという話を聞くと、自分はギュンターに嫌われていたせいであのような態度を取られたのかもしれないという劣等感にも似た暗いが湧き上がってくる。

「………止めよう。あなたの口から、他の男の話は聞きたくないし、それが例え過去の出来事であっても、あなたの心を他の男が占拠するのは、我慢ならない」

アンネリーゼの表情が沈むのを見ていたジークヴァルトは、苦しそうな表情を浮かべてそう言い放つと、アンネリーゼをそっと抱きしめた。
じわりとジークヴァルトの力強い体温が伝わってくるのを感じて、アンネリーゼは安堵にも似た、優しい幸福感が自分を包み込んでいくのを感じたのだった。
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