呪われた騎士は記憶喪失の乙女に愛を捧げる

玉響

文字の大きさ
203 / 230

203.光

しおりを挟む
「……いいわ。おしゃべりはこのくらいにして、相手をしてあげる」

仄かな怒りを宿したように見える魔女の紫の瞳が、僅かに細められた。

「まず手始めに、戦うことすらできないその小娘から殺してあげましょうか?」

魔女はぺろりと舌を出して唇を舐めた。
アンネリーゼは反射的に息を吞む。
今の状況で、自分が足手まといになるということは十分すぎる程に分かっていた。

悔しい。
アンネリーゼは強くそう思った。
巫女姫などと呼ばれていても、所詮は凡人でしかない自分が、僅かな力にさえも慣れない自分に歯痒さを感じる。

「させるか!」

ジークヴァルトがアンネリーゼに防御魔法を張った瞬間、ぱちりと何かが弾けるような気配がして、アンネリーゼの身体が眩い光を放った。

「……………っ?!」

一体何が起きたのか理解できず、ジークヴァルトもダミアンも、禍月の魔女も、そしてアンネリーゼ自身も、瞠目する。

ただ、その眩い光はアンネリーゼの胸の辺りから溢れ出すように光を放っている。
その光はどんどん強くなり、目を開けていられないほどの光となって辺り一面を包み込んだ。
同時に、空っぽだったはずの魔力が身体を満たしていくのを感じた。
戸惑いながら、アンネリーゼが何とか視界を確保しようと顔をしかめながら目を開くと、光の中で一瞬誰かの影が見えた気がした。

「…………アリッサ様?」

無意識に、アンネリーゼの口がその名を紡ぐ。
するとその影は一瞬、アンネリーゼに向かって微笑んだ気がした。
と。
温かな美しい光が全てを包んだまま弾け飛んだ。

アンネリーゼははっとして目を開く。
空を覆う不気味な雲はそのままだったが、その空を貫いていた赤黒い光の柱は綺麗に消え去っていた。

「アンネリーゼ!」

呆然とするアンネリーゼをジークヴァルトがすぐに抱きしめる。

「魔力が戻っている…………?一体何が…………?」

ジークヴァルトにはアリッサ彼女の姿が見えなかったのだろうか。
それともあれは幻だったのだろうか。
アンネリーゼは迷いながら口を開いた。

「アリッサ様が…………見えた気がしました。もしかしたら………、私達を助けようとしてくださったのでしょうか…………?」

アンネリーゼはぎゅっと胸元で手を握りしめた。
アリッサに対して嫉妬心を燃やし、ジークヴァルトに彼女への想いが無いと知ってからは喜びすら感じていたのに、彼女はそんな自分に手を差し伸べてくれたというのが信じられなかった。

アリッサには、敵わない。
巫女姫とは、彼女のような存在でなければならないと、アンネリーゼは胸が苦しくなるのを感じた。
しおりを挟む
感想 144

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

覇王に執着される傾国の男装騎士〜忘却の接吻を、愛しき宿敵へ〜

甘塩ます☆
恋愛
男装騎士アーサーは、かつての宿敵・カイル王に捕らわれ、「専属メイド」として屈辱的な奉仕を命じられる。しかし、復讐のために自分を弄ぶはずのカイルが向けたのは、狂気にも似た深い愛だった。

泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。

待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

【完結】お父様(悪人顔・強面)似のウブな辺境伯令嬢は白い?結婚を望みます。

カヨワイさつき
恋愛
魔物討伐で功績を上げた男勝りの辺境伯の5女は、"子だねがない"とウワサがある王子と政略結婚結婚する事になってしまった。"3年間子ども出来なければ離縁出来る・白い結婚・夜の夫婦生活はダメ"と悪人顔で強面の父(愛妻家で子煩悩)と約束した。だが婚姻後、初夜で……。

処理中です...