210 / 230
210.不老不死の呪い(2)
しおりを挟む
ジークヴァルトは露呈した胸の紋章を忌々しげに見た後、アンネリーゼの方をちらりと見た。
アンネリーゼを庇うようにダミアンが立ちはだかっているが、その事を魔女は気にも留めていないようだった。
「ねぇ…………。それがあったことで、あなたは死にたくなるような苦しみを味わったかしら?」
魔女は楽しそうに尋ねた。
「………そんなことはもう忘れた。俺にとってはどうでもいいことだ」
ジークヴァルトの感情の籠らない金色の瞳が、ゆっくりと魔女に向けられた。
「つまらないわね。せっかくあなたが死を切望するほどの苦しみに耐えかねて、私に縋って助けを乞うところが見たかったから、わざわざその呪いを与えてあげたというのに、強情だわ。…………ならば、嫌でもあなたが私の前に傅くように、仕向けてあげましょうか…………?」
魔女は囁くようにそう告げると、今までの中で一番美しく、一番残忍な笑みを浮かべた。
そして、ゆったりとした足取りでジークヴァルトに近寄ると、顕になった胸の呪いの部分を、指先で軽く小突いた。
と。
ジークヴァルトの身体、正確には魔女が触れた呪いの部分から、じわじわと闇の力が溢れ出した。
そしてそれは段々と渦を巻いていく。
「ぐっ…………!」
息苦しさと鋭い痛みに、ジークヴァルトは思わず顔を歪めた。
これはやはり、呪いを受けた時と同じ魔法だ。
だが、既に不老不死の呪いを受けている自分には、何の効果もないはずだ。
では何故魔女は再びこの魔法を発動させようというのだろう。
肉体的な苦痛に耐えながら、ジークヴァルトは呼吸を整えようと試みたが、中々うまくいかなかった。
抵抗したくても出来ない状況に、ダミアンが心配そうな視線を投げかけてくる。
「あはははっ!流石に私が目を付けただけのことはあるわ。これほどまでに凝縮された質の高い闇の魔力は中々お目にかかれないもの…………」
うっとりとしながら暫くその魔力を見つめていた魔女だったが、どのくらいの間ふと思い出したかのようにアンネリーゼの方に視線をやった。
「………知ってる?人間が最も辛いと感じることを……………?」
魔女はジークヴァルトの身体から噴出した闇の魔力に、泉の水を掬い上げるように触れた。
闇の魔力はするりと魔女の腕から身体を伝っていくようだった。
「それはね…………自分のせいで、自分が最も大切な…………最愛の存在を失うことなのよ」
魔女がすっと真っ赤な爪が一際目を引く指先を、アンネリーゼへと向けた。
アンネリーゼを庇うようにダミアンが立ちはだかっているが、その事を魔女は気にも留めていないようだった。
「ねぇ…………。それがあったことで、あなたは死にたくなるような苦しみを味わったかしら?」
魔女は楽しそうに尋ねた。
「………そんなことはもう忘れた。俺にとってはどうでもいいことだ」
ジークヴァルトの感情の籠らない金色の瞳が、ゆっくりと魔女に向けられた。
「つまらないわね。せっかくあなたが死を切望するほどの苦しみに耐えかねて、私に縋って助けを乞うところが見たかったから、わざわざその呪いを与えてあげたというのに、強情だわ。…………ならば、嫌でもあなたが私の前に傅くように、仕向けてあげましょうか…………?」
魔女は囁くようにそう告げると、今までの中で一番美しく、一番残忍な笑みを浮かべた。
そして、ゆったりとした足取りでジークヴァルトに近寄ると、顕になった胸の呪いの部分を、指先で軽く小突いた。
と。
ジークヴァルトの身体、正確には魔女が触れた呪いの部分から、じわじわと闇の力が溢れ出した。
そしてそれは段々と渦を巻いていく。
「ぐっ…………!」
息苦しさと鋭い痛みに、ジークヴァルトは思わず顔を歪めた。
これはやはり、呪いを受けた時と同じ魔法だ。
だが、既に不老不死の呪いを受けている自分には、何の効果もないはずだ。
では何故魔女は再びこの魔法を発動させようというのだろう。
肉体的な苦痛に耐えながら、ジークヴァルトは呼吸を整えようと試みたが、中々うまくいかなかった。
抵抗したくても出来ない状況に、ダミアンが心配そうな視線を投げかけてくる。
「あはははっ!流石に私が目を付けただけのことはあるわ。これほどまでに凝縮された質の高い闇の魔力は中々お目にかかれないもの…………」
うっとりとしながら暫くその魔力を見つめていた魔女だったが、どのくらいの間ふと思い出したかのようにアンネリーゼの方に視線をやった。
「………知ってる?人間が最も辛いと感じることを……………?」
魔女はジークヴァルトの身体から噴出した闇の魔力に、泉の水を掬い上げるように触れた。
闇の魔力はするりと魔女の腕から身体を伝っていくようだった。
「それはね…………自分のせいで、自分が最も大切な…………最愛の存在を失うことなのよ」
魔女がすっと真っ赤な爪が一際目を引く指先を、アンネリーゼへと向けた。
21
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
覇王に執着される傾国の男装騎士〜忘却の接吻を、愛しき宿敵へ〜
甘塩ます☆
恋愛
男装騎士アーサーは、かつての宿敵・カイル王に捕らわれ、「専属メイド」として屈辱的な奉仕を命じられる。しかし、復讐のために自分を弄ぶはずのカイルが向けたのは、狂気にも似た深い愛だった。
泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。
待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【完結】お父様(悪人顔・強面)似のウブな辺境伯令嬢は白い?結婚を望みます。
カヨワイさつき
恋愛
魔物討伐で功績を上げた男勝りの辺境伯の5女は、"子だねがない"とウワサがある王子と政略結婚結婚する事になってしまった。"3年間子ども出来なければ離縁出来る・白い結婚・夜の夫婦生活はダメ"と悪人顔で強面の父(愛妻家で子煩悩)と約束した。だが婚姻後、初夜で……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる