呪われた騎士は記憶喪失の乙女に愛を捧げる

玉響

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210.不老不死の呪い(2)

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ジークヴァルトは露呈した胸の紋章を忌々しげに見た後、アンネリーゼの方をちらりと見た。
アンネリーゼを庇うようにダミアンが立ちはだかっているが、その事を魔女は気にも留めていないようだった。

「ねぇ…………。があったことで、あなたは死にたくなるような苦しみを味わったかしら?」

魔女は楽しそうに尋ねた。

「………そんなことはもう忘れた。俺にとってはどうでもいいことだ」

ジークヴァルトの感情の籠らない金色の瞳が、ゆっくりと魔女に向けられた。

「つまらないわね。せっかくあなたが死を切望するほどの苦しみに耐えかねて、私に縋って助けを乞うところが見たかったから、わざわざその呪いを与えてあげたというのに、強情だわ。…………ならば、嫌でもあなたが私の前に傅くように、仕向けてあげましょうか…………?」

魔女は囁くようにそう告げると、今までの中で一番美しく、一番残忍な笑みを浮かべた。
そして、ゆったりとした足取りでジークヴァルトに近寄ると、顕になった胸の呪いの部分を、指先で軽く小突いた。

と。

ジークヴァルトの身体、正確には魔女が触れた呪いの部分から、じわじわと闇の力が溢れ出した。
そしてそれは段々と渦を巻いていく。

「ぐっ…………!」

息苦しさと鋭い痛みに、ジークヴァルトは思わず顔を歪めた。
これはやはり、呪いを受けた時と同じ魔法だ。
だが、既に不老不死の呪いを受けている自分には、何の効果もないはずだ。
では何故魔女は再びこの魔法を発動させようというのだろう。
肉体的な苦痛に耐えながら、ジークヴァルトは呼吸を整えようと試みたが、中々うまくいかなかった。
抵抗したくても出来ない状況に、ダミアンが心配そうな視線を投げかけてくる。

「あはははっ!流石に私が目を付けただけのことはあるわ。これほどまでに凝縮された質の高い闇の魔力は中々お目にかかれないもの…………」

うっとりとしながら暫くその魔力を見つめていた魔女だったが、どのくらいの間ふと思い出したかのようにアンネリーゼの方に視線をやった。

「………知ってる?人間が最も辛いと感じることを……………?」

魔女はジークヴァルトの身体から噴出した闇の魔力に、泉の水を掬い上げるように触れた。
闇の魔力はするりと魔女の腕から身体を伝っていくようだった。

「それはね…………自分のせいで、自分が最も大切な…………最愛の存在をことなのよ」

魔女がすっと真っ赤な爪が一際目を引く指先を、アンネリーゼへと向けた。
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