隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる

玉響

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220.想い

 ルドヴィクの思わぬ告白に、アリーチェは一瞬聞き間違えたのかと思い、目を瞬く。

「思えば私は、出会う前からあなたに惹かれていたのかもしれない。………炎の中に倒れるあなたをこの腕に抱いた瞬間、今まで感じたことのない気持ちが胸の中で沸き起こり、渦巻いた。苦しくて、切なくてもどかしいのに、身を焦がすような強いその感情が何なのかは分からなかったが、ただひたすら願ったのは、あなたが目を覚ますことだけだった」

 今度は完璧な眉を切なげに顰める。
 こうして見ていると、ルドヴィクは意外に表情豊かであるらしかった。
 彼がそんな風に思ってくれていたという事実に、アリーチェの中で罪悪感が膨らんでいく。

「…………でも、わたくしは…………」

 アリーチェは聞こえるか聞こえないかという位の小さな声で呟いた後、唇を噛んだ。
 目が覚めた直後、アリーチェは命の恩人であるルドヴィクに対してお礼の言葉を述べるどころか、彼に対して罵声を浴びせたのだから、振り返ってみると自分でも心底呆れてしまう。
 ルドヴィクに優しくしてもらう権利などないのに、優しくしてもらいたいと願ってしまう相反する感情に戸惑い、虹色の瞳を不安げに揺らした。

「………それは、あなたが無事でさえいてくれればいいという私の自己満足以外の何物でもありませんでした」

 アリーチェの様子には気がついていないらしいルドヴィクはまた、穏やかな微笑みを浮かべて見せた。
 その表情に、アリーチェは胸を打つ鼓動が、一気に跳ね上がるのを感じ、そわそわと落ち着かず、アリーチェはルドヴィクから目を逸らして俯いた。


「あなたの気持ちなど考慮せず、カヴァニスに残した騎士たちや、パトリス殿から得たセヴランとティルゲルがあなたの行方を探っているという情報によりあなたをあのように部屋に閉じ込め、追い詰めた。…………それがあなたの身の安全を守る一番の方法だと信じて…………」

不意にルドヴィクが動く気配がして、アリーチェが顔を上げると、向かいに座っていたルドヴィクがアリーチェの前まで歩み寄ってきていた。

「ルドヴィク、様………?」

呟くように彼の名を呼ぶと、ルドヴィクは黙ったまま身体を折り、突然、座ったままのアリーチェを抱き締めた。
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